ハドラーちゃんの強くてニューゲーム   作:モッチー7

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第31話

デルムリン島にてブラスと竜の騎士(ドラゴンのきし)であるバランが対峙していた。

「それはもしや……異元扉殿より大魔王バーンの方が危険だからでは?」

それを恐々と観ているゾーマズレディとバラモスエビル。

「何を言っているのだ?殺されるぞ……」

確かに、ブラスはハドラーに認められたとは言え一介の鬼面道士にすぎない。それに対して、バランは正真正銘の竜の騎士(ドラゴンのきし)だ。

2人が恐れ慄くのも無理は無い。

「なら……嬉々として地上を侵略しているハドラーやヴェルザーより、何もしておらんバーンの方が危険だと言うのか?」

その途端、ゾーマズレディは逃げる様にあからさまに距離を広げた。

「あーーーーー!」

「あの娘、儂やブラス殿より強い筈では?」

そんな情けないゾーマズレディに反し、ブラスは言い逃れる自信……もとい、確信があった。

「ですが、地上が完全消滅したら、地上を支配するどころではありませんぞ」

「地上界が、消える?」

バランはいやしくも竜の騎士(ドラゴンのきし)

地上界が窮地だと知れば居ても立っても居られない筈。それがブラスの予測であった。

だが、

「バーンが地上界を消して、何の得がある?」

バランの考えは至って普通過ぎた。

故に、大魔王バーンが地上界完全消滅を目論む意味や動機が直ぐには思い浮かばなかった。

ブラスにとってはそこが困った点だった。

確かに、ハドラーちゃんから地上界が邪魔で日光が魔界まで届かないとは聞かされていたが、そんな生活に慣れた者から視れば、文字通り「何を今更」なのである。

でも、他に答えが無いのでそう答えるしかない。

「地上界が邪魔で太陽の光が魔界まで届かないからでは?」

しかし……やはり動機としては弱くて説得力に乏しいモノだった。

「そんなに太陽の光を浴びたいのであれば、地上界まで来ればいい。これなら、ハドラーやヴェルザーの方が太陽の光を欲している様に視えるが?」

ブラスはとうとう言葉が詰まって後退りしてしまった。

「そ……それはぁ……」

その時、異元扉の扉が開いた。

「それでは、地上界に往きたくても行けない魔界の住民に太陽の光が届かんではないか」

異元扉の向こうにいたのは、威風堂々なハドラーちゃんだった。

「ハドラー様!?」

「ハドラー?」

 

ハドラーちゃんの威風堂々に竜の騎士(ドラゴンのきし)の威厳と誇りが傷付いた気がして不機嫌になるバラン。

「なんだその態度は?それはまるで―――」

それに対し、ハドラーちゃんは余裕そのものだった。

「どうせ、ヴェルザーが余計な真似をしなかったら、お前はこの俺の頸を斬っていた事だろうな?遠慮するな。もっと近くに来い」

「それは……この俺に討たれる心配が無いと言う自信の表れか?」

この時、ハドラーちゃんは前の時間軸の事を懐かじみて苦笑した。

魔軍司令時代のハドラーは、6大隊長の1人となったバランに内心臆し、バランの言動や視線に細心の注意を払った。

デルムリン島での戦いで後の終生の好敵手となるダイの正体を知ってからは、竜の騎士(ドラゴンのきし)が2人掛かりでハドラーを蹴落として魔軍司令の座を奪うのではないかと恐れ焦り、更にバランの言動や視線に細心の注意を払った。

その結果が、バルジ島での自身の敗北とフレイザードの戦死だった。

ハドラーがバランを恐れている理由を知らぬ者から観れば、あの時バランがバルジ島にいたら、ダイ達は間違いなく全滅していたと思うだろう。

この結果は、ハドラーちゃんにとっては正に黒歴史である。

だが、今のハドラーちゃんは違う。

たった1個で200万年分の進化・成長する進化の実を食べた故の自信が、ハドラーちゃんに竜の騎士(ドラゴンのきし)と対峙する度胸を与えた様だ。

寧ろ、自身の心の弱さを含めた邪魔者がいない状態でバランと一騎打ちが出来る事を内心喜んでいた。

ま、ガンガディアやフレイザード2号辺りが即座に反論するだろうが……

それに、異元扉が既に限界だった。異元扉にとって竜の騎士(ドラゴンのきし)に囚われた日は、正に死より恐ろしい恐怖体験なのだ。

「あかんて!はよ終わってなぁー!」

が、異元扉の意見はハドラーちゃんに聞き入れられず、寧ろ、ハドラーちゃんは冷静沈着かつ威風堂々としながら話を長引かせようとしていた。

それがかえってバランを珍しく後退りさせた。

(何だこの自信は?あのヴェルザーですら1度は黒の核晶(コア)に手を出す程万全な形でこの俺を迎え撃ったと言うのに……まるで一騎打ちを楽しんでいるかの様だ……)

だが、バランには問い質さねばならない事が有った。

「それより、バーンが地上界を消そうとしていると言いふらしておるそうだな?」

バランのこの言葉に、改めてバランと一騎打ちする事が意外と難しい事を再確認した。

「つまり、貴様との決着は大魔王バーンの頸を斬ってから……と言う訳か?」

「本気でそう思っているのか?」

ハドラーちゃんは真顔で答える。

「確かに……大魔王バーンとはいずれ決着を着けねばならんとと思っている。地上界が消滅したら、俺は地上を征服出来んからな」

そんなハドラーちゃんの真顔が、バランを更に混乱させた。

(冗談や嘘を言ってる顔ではない。寧ろ、漸く勇気を振り絞ったと言った印象だ……まさか!バーンは本当に)

でも……バランの中ではやはり大魔王バーンが地上界を消滅させる動機が無い。

「何の得がある?」

「それは、俺の事か?それとも、大魔王バーンの事か?」

バランは一呼吸してから答えた。

「バーンの方だ」

 

ここでハドラーちゃんは思い出す。

魔界での戦いの日々を……

「誰が……クソ生意気……だと?俺は、思った事を言っただけだが」

魔界で喧嘩に明け暮れていた頃の幼いハドラーに喧嘩を売ったモンスター達が、慌ててハドラーの言い分を否定する。

「ふ、ふざけんな!『地上に攻め入るから部下になれ』とか言って回ってるだろうが!てめえみてえな痩せぽっちに、そんな夢みてぇな事、出来る訳が―――」

ハドラーは聞く耳持てないとばかりに言い訳をするモンスターの頭を踏んだ。

「この魔界は、今や最低の地獄だ。神々に見捨てられた牢獄……俺はこの腐った世界を出て、地上を支配する」

が、ハドラーに頭を踏まれたモンスターはまだウジウジと言い訳をする。

「地上に出る方法なんて誰も知らねぇ!何十年掛かるかも解んねえんだぞ!」

それでも、ハドラーの意志は固かった。

「何百年掛かろうが出るんだよ。過去に何度もそうした連中がいた事は解っている。俺の様に野心に燃える魔族や魔物達もきっといる筈だ。そいつらを束ねて……」

そして、ハドラーは真上を指差した。

「地上の魔王に……俺はなる!」

 

故に出せる答え。

それをハドラーちゃんは当然の様に言う。

「太陽の光が届かぬ魔界の暮らしは、地上界しか知らぬ者には想像も出来んよ」

「それを改善する為に、バーンは地上界を消そうとしていると」

「……だろうな」

 

ふと嫌な予感がしたハドラーちゃんは、バランにある事を頼んだ。

「それより、少しアルバイトを頼んでも良いか?」

「アルバイト?」

そう言いながら、ハドラーちゃんとバランは海の方を……もとい!邪な魔力で汚れた空の方を向いた。

「異元扉を使ってピストン運輸で援軍を地底魔城に送り込んでも良かったが、それだと時間が掛かってしまうからな」

「で、空から一気に……も出来なくて困っていると言う訳か……」

青空を汚す邪な魔力は姿を現さず、ただじっとバランが去るのを待ったが、ハドラーちゃんとバランはそこまで甘くなかった。

「出て来いよ」

「出て来いと言っている」

青空を汚す邪な魔力は……遂に観念してその姿を現す。

「ぬうぅーーーーー……何故判ったあぁーーーーー……」

ザボエラの「何故」発言に失笑するハドラーちゃんとバラン。

「『何故』だと?その体から卑劣以外の臭いを出した事が無い癖に、透明になったくらいで隠せる訳が無いだろ」

「歴代の竜の騎士(ドラゴンのきし)が多くの卑劣漢と戦ってきたが、ここまであからさまな卑劣漢は恐らく初めてだろうな?」

ここで……ザボエラの計画は狂った。

本来なら、大量の魔法の筒を運ぶモンスターを襲撃し、奪った大量の魔法の筒を自身の研究所に送り、中にいるモンスターを洗脳して自分の手駒にする、そして、デルムリン島を失ったハドラー軍の兵力は致命的に減衰する……

本来ならこうなる筈だったのに、まさか……もうハドラーちゃんとバランに捕まってしまうとは……

(不味いぞ!ここで何の成果も無く帰れば、間違いなくあの妙な小娘の下になってしまう!……そうなれば……)

ザボエラは確かに強大な魔力を持つ魔族で、多彩な知識を持つ賢者でもあった。

故に、前の時間軸のハドラーはザボエラを何度もスカウトした。

魔王時代の時はそのスカウトは間に合わなかったが、魔軍司令時代にて漸くザボエラのスカウトに成功した。

が、超魔生物に成った辺りから、ハドラーはザボエラの権謀術数と出世欲に悩まされてきた。

ザボエラは、ハドラーと違って前線を好むタイプではなかったのだ。寧ろ、暢気にチェスをするかの様に安全な場所で駒を動かしながら戦う事を好む卑劣漢だったのだ。

故に、ハドラーちゃんはザボエラとの距離をわざと広げた。自分がザボエラの卑怯の餌食にならない様に。

だからザボエラはデルムリン島に来たのだ。ハドラーやクレオに命を狙われているあの幼女の様な脳筋の下になったら、間違いなく前線に往く事を命じられ続ける人生が待っているからだ。

それを避けるための計画だったのに、どこがどう間違えたのか最も危険な存在に睨まれる羽目になった。

(最悪のシナリオだ……これであの脳筋の下に就く事は決定してしまった……)

ザボエラは無意識にハドラーちゃんを睨み、ハドラーちゃんを逆恨みする。

(基はと言えば、この馬鹿女が大魔王バーンがどうとかって言いながら、色々と余計なマネをしてくれおって!お陰で、このわしの人生設計が滅茶苦茶だ!)

が、この長考がザボエラの致命的なミスとなった。

「1年間の異世界特訓の成果を竜の騎士(ドラゴンのきし)に魅せびらかすのが、こんな屑との戦いの中とはな……なんたる皮肉か」

(その構えは、極大爆裂呪文(イオナズン)!本格的にこのわしを消し去る気か!?)

この時、ザボエラは既に逃げる算段を考えていた。既に870年以上も生きているのに、未だに自分の命が惜しいのだ。

(本来なら、地底魔城に向かう援軍を捕らえる為に用意したこいつらを盾にして、その隙に瞬間移動呪文(ルーラ)で逃げる。これしかないわ)

援軍強奪失敗による降格の危険性については後で考えれば良い。先ずは自分の命を優先するザボエラ。

が、

「まさか、これが唯の極大爆裂呪文(イオナズン)だと思ったか?」

「え?」

ハドラーちゃんの次の言葉は、ザボエラにとってもバランにとっても予想外だった。

「右手に極大爆裂呪文(イオナズン)。左手に極大爆裂呪文(イオナズン)。合体!」

ザボエラもバランも、ハドラーちゃんの常識外の行動に驚いた。

「イ!?」

極大爆裂呪文(イオナズン)を……片手でだと!?」

そんなバランの驚きをおちょくるハドラーちゃん。

「お前、異元扉を忌み嫌っていたよな?異世界の何かがこの世界を侵食するからと……その危惧の結果がこれだ。ニートなんてもう時代遅れなんだよ!」

その一方、ザボエラは万が一に備えて引き連れて来た複数のサタンパピーに突撃を命じながら、自身は瞬間移動呪文(ルーラ)の準備をする。

「逃げるか……だとするならば……『私の部下となれ。さすれば世界の半分を貴様にやろう』を言う資格も言われる資格も……無いな」

ハドラーちゃんは、2つの極大爆裂呪文(イオナズン)を合体させ、極大爆裂呪文(イオナズン)を遥かに上回る強大な爆裂呪文を放った。

最大爆裂呪文(イオグランデ)!」

ザボエラは既に瞬間移動呪文(ルーラ)で逃走した……筈だった。

「何だったんだアレは……だが、当たらなければなんともないわ」

が、ザボエラの真後ろに巨大な球状のエネルギーが……

故に、バランとサタンパピーはハドラーちゃんが何をしたかったのかが解らなかった。

「……合体どころか、相殺になっていないか?」

だが、ハドラーちゃんはザボエラに一矢報いた自信があった。

「大丈夫。今回の最大爆裂呪文(イオグランデ)は、瞬間移動呪文(ルーラ)で逃走したザボエラにのみ当たる様に調節したから」

 

「ぐぎゃあぁーーーーー!?」

ハドラーちゃんの最大爆裂呪文(イオグランデ)によって爆散したザボエラの研究所を悪魔の目玉越しに観た大魔王バーンは、最大爆裂呪文(イオグランデ)についてこう予想した。

「ハドラーの爆裂呪文(イオラ)極大爆裂呪文(イオナズン)の域に達したか。わしのカイザーフェニックスにまた1歩近づきおったわ」

極大爆裂呪文(イオナズン)に匹敵する爆裂呪文(イオラ)ねぇー……正直、食らいたくないねぇー」

キルバーンの言い分は無視された。

 

一方、鬼岩城でクレオ達を待つ幼女は、ハドラーが最大爆裂呪文(イオグランデ)をある連中ではなくザボエラに向けた事に不満を感じていた。

「あくまで邪魔者をどかす事のみに集中するかハドラー?BLと言う外道の存在には目もくれずにか?」




原作の主人公であるダイの父親にして地上界の守護神『バラン』が、遂に本作に本格参戦です。
ま、今のところは大魔王バーンの地上界消滅計画の動機について猜疑的かつ懐疑的ですが。

あと、ハドラーちゃんが遂にダイの大冒険に登場しない呪文である『イオグランデ』を遂に実戦使用しました。
が、せっかくのイオグランデもザボエラのルーラによってザボエラの退路先であるザボエラの隠れ家に飛ばされてしまいましたが……

キギロ
「本末転倒だな。逃げた心算が敵の攻撃を自分の許に飛ばすとは……ま、あんな書き方では解り難いがな」
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