ハドラーちゃんの強くてニューゲーム   作:モッチー7

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第33話

覚悟を決めて遂にギルドメイン山脈にやって来たハドラーちゃん。

(確かに前も大魔王バーンを裏切った事はあった……だが、大魔王バーンの敵として鬼岩城にやって来たのはこれが初めてだったな?)

前の時間軸ではハドラーが大魔王バーンの本当の目的を知る前、ハドラーが超魔生物に改造されている最中にダイの手で破壊された鬼岩城。

大魔王バーンに魔軍司令に任命された際に居城として与えられた鬼岩城。

そして……魔軍司令ハドラーが着飾った奴隷と言う道化を演じた舞台となった鬼岩城。

この時間軸ではハドラーちゃんがその鬼岩城を破壊しようとしているのだ。

ハドラーちゃんがそのために引き連れたのは、ガンガディア、ガッルール、クレオとその仲間達、フレイザード2号、バラン、異元扉、そして……

「俺は2度目だったな。鬼岩城と戦うのは」

ヒュンケル(未来)もまた、大魔王バーンの本当の目的を知らぬまま鬼岩城と地底魔城をアバン達から全てを奪う為の拠点として利用していた過去が有った。

「そうだったか?ま、あの時のお前は俺を恨んでいたから、鬼岩城にそこまでの未練は無いだろ?」

ヒュンケル(未来)は少し考えてからこう口にした。

「確かに未練は無いな。ま、恐怖心はあるが」

「珍しいな?お前が恐怖するとは」

「それは……この世界の鬼岩城の完成度によるがな」

そう。

ガンガディアは信じないかもしれないが、前の時間軸の鬼岩城は歩けるのだ!

お陰で、世界会議(サミット)の会場となったパプニカ王国は壊滅的な被害を受けてしまった。

故に、ハドラーちゃんは不安だった。

鬼岩城がまだギルドメイン山脈に残っているかを……

それは、ローズバトラーの様な魔物の出現により杞憂に終わった。

「早速……待ち伏せか!?」

「熱烈な歓迎、嬉しいねぇ!」

だが、これはローズバトラーではなくヘルバオムであり、その証拠に、

呪文封じ(マホトーン)だと!?)

そこへ、ガッルールがフレイザード2号を庇う。

「私には効かないよ!私は呪文を使わないからねぇ!」

更に、クレオがぶくぶく達に指示を出す。

「アフロとタタクは前に出て!ぶくぶくはタタクの後ろに隠れて!」

それに対し、オマンとア゙ュッナが反論する。

「ア゙ュッナ・ヲャッエョだ!」

「オマン・コォイックだ!」

「やめて!セクハラよ!」

オマン、ア゙ュッナ、クレオの口論を叱責するバラン。

「邪魔だ!他所でやれ!後……オマン・コォイックは確かにセクハラだ」

そう言うバランの顔は、少し赤かった。

「ちょっと!いい加減に私の本名を馬鹿にするのはやめて!」

が、そんなチャンスを生かす事無くヘルバオムは全滅した。

 

そこへ更に、鬼岩城が歩いて逃げるのではないかと言う不安を取り除くに足る大規模襲撃がハドラーちゃん達を襲った。

「やっぱりそう来ましたか」

「ここが本当にバーン軍の重要拠点だとするなら、想定で来た事態ですな」

「しかも、悔しいけど地底魔城より粒揃いだわ」

ガンガディアにとってもフレイザード2号にとっても別段焦る理由は無い。

無数の軍勢に思ったより長く粘られ、ハドラーちゃんの体力をそれなりに削がれるかもしれないと言う懸念と危惧がある。

が、ぶくぶく達が暮らす異世界で散々鍛え直した自分達がこの程度で敗北するとはどうしても思えない。

ただ、ハドラーちゃんだけは「誰?」と言われてしまった時にする筈であろう表情をしていた。

「数の暴力とは……数の暴力とはこんなに恥ずかしいものだったのか……」

それを聴いてガンガディアは嫌な予感がした。

「お待ちください!ハドラー様!」

「大量の捨て駒の後ろに隠れ、戦いの発端である当人が安全な玉座の間でぬくぬくか……」

その言葉に、クレオはホーモンの堕落を感じて不安そうな顔をする。

それに対し、ガンガディアは慌てて膝を折った。

「今回だけは御自愛ください!ハドラー様には大魔王バーンとの直接対決と言う大仕事があります!それまではハドラー様の心身を万全にする事こそ―――」

ハドラーちゃんはガンガディアが言ってく事が全く解らない程の善人じゃない。だが、数の暴力に頼る鬼岩城側の痴態が、ハドラーちゃんの前の時間軸の黒歴史を刺激してしまっていたのだ。

「この俺に……この俺にまた数の暴力と言う恥を掛けと言うのか!?」

「ですが!」

「たわけ!あんな雑魚共とそれに頼って甘える屑如きに敗れるとでも言うのか!?」

そんなやり取りをフレイザード2号が不安そうに視守っていた。

「ハドラーちゃん……」

その時、ガンガディアの許に意外過ぎる助け舟がやって来た。

「相変わらずの脳筋だな?魔王様」

その声の主に、ハドラーちゃんはドキッとする。

「その声は……と、言う事は……」

この場にマトリフがいる。

という事は……

「いるのだろ?……出て来いアバン!」

ハドラーちゃんが叫んだ途端、ガンガディア達が慌ててハドラーちゃんを庇う。

「そう慌てんなって。今回の相手はお前らじゃねぇよ」

確かに、マトリフの目には今までの様な殺気が感じられない。

「お前達の狙いも……」

ハドラーちゃんは鬼岩城の方を見る。

「鬼岩城か?」

マトリフは観念したかの様に話し始める。

「本当なら今頃おめぇらの本拠地に乗り込んでる筈だったんだがなぁ、どう言う訳か、不死鳥のかがり火がギルドメイン山脈に浮気しやがってよ、言う事を聞いてくれないんだよ」

それを聴いて、ガンガディアが不安そうに鬼岩城を見た。

「あんたらの態度で謎は全て解けたよ。この中に、大魔王バーンの拠点が有るんだろ?」

「つまり、地底魔城より鬼岩城の方が強大って事?へこむねぇー」

フレイザード2号が皮肉な冗談を言う中、ハドラーちゃんは何か引っ掛かっていた。

(と言う事は、不死鳥のかがり火は魔力の源を追うアイテムとなるが……地底魔城ではなく鬼岩城になびいたとするなら、なぜ死の大地には反応しない?不死鳥如きでは大魔王バーンの嘘を見破れないと言う事か?)

だが、そんな事よりもだ、

 

ハドラーちゃんはこの状況に戸惑っていた。

自分と勇者アバンと竜の騎士(ドラゴンのきし)バランが、共通の敵を討つべく仲良く肩を並べている事にだ。

前の時間軸では絶対に有り得なかった事だ。

まあ、アバンは敵とは言えハドラーの戦士としての矜持にはそれなりの理解があったから、デルムリン島でのあの事件が無ければあるいはとも言えるが、バランは正直言って完全に有り得ない事だ。

確かに、前の時間軸のバランは(形式上は)ハドラーの部下だった。が、ハドラーはそんなバランを部下と見下しきれず、寧ろ政敵として忌み嫌った。

故に、やはりこの構図は、ハドラーちゃんにとっては異様な光景であった。

「アバン……まさかこんな事になろうとはな……」

ハドラーちゃんの戸惑いを察したアバンは、出来るだけ明るく振舞った。

「何を言ってるんです?大魔王バーンを野放しにしたら地上が消えると言ったのは、貴女ですよ」

アバンのこの言葉に敏感に反応したのは、ハドラーちゃん達ではなくバランの方だった。

「うぐっ!」

「あれ?ハドラーから大魔王バーンの話を聴かなかったんですか?」

バランの焦りの理由を察したガンガディア達は、ここぞとばかりにクスッと笑った。

ぶっちゃけ、このタイミング以外で竜の騎士(ドラゴンのきし)を失笑するチャンスは、おそらく訪れないだろう……

とは言え、これ以上バランを怒らせるのは良くないので、ハドラーちゃんがフォローする。

「まあ、そうバランの事を笑ってやるな。何も、この地上を狙っておるのは俺や大魔王バーンだけではない。そうだろ?」

が、大魔王バーンの危険性を見抜けず優先順位を誤った事は事実であり、バランはその事を恥じた。

「もっと早くに気付いておれば、俺は既にバーンを斬っていた……恥だ、クソッ!」

「それだけ、大魔王バーンは油断が出来ぬ相手と言う事だ」

そんな事より、ハドラーちゃんにとっては、まさかアバンが味方になるとはと言う事の方が、やはり大きかった。

「そんな事より、良いのかアバン?」

「……何の事です?」

「地上を救う為に戦うお前が、地上を侵略する俺の味方をしても?」

アバンは溜息混じりで答えた。

「確かに、私は地上に暮らす人々達が笑顔で幸せになってくれたらと思う。故に、やはり君達の地上侵攻を容認出来ない……でも、どっちにしろこの地上が消えずに残っていなければ、このやり取りに意味はありません」

そして、アバンは満面の笑みで言い放った。

「だ、か、ら、最後まであがいてジタバタするんですよ」

そんなアバンの笑顔に面食らうハドラーちゃん。

「……本当に敵わんなアバン。だから貴様は手強いと言えるのだな」

が、この3人の会話を楽しむ時間も残り僅かとなった。

「そんな事よりハドラー様、この御客様達、どうします?」

 

少し(?)待たせてしまったが、ハドラーちゃんはいよいよ鬼岩城側の軍勢と対立する事にした。

「よおよおよお!貴様らの最期の会話はもう終わりか?」

「もっと楽しめよ?これが最期の会話なんだからさ」

「運が無かったな。こんな場所に迷い込んじまってよ」

それを聴いたガッルールは内心馬鹿だと思った。

「死んだなこいつら……天下の竜の騎士(ドラゴンのきし)様に向かって……」

が、アバンの戦友であるロカがそれをやんわりと否定する。

「待ちなって。どんなに戦っても滅多に消耗しねぇ体力バカがここにいるぜ!」

それを聴いたガンガディアがクスッと笑う。

「つまり、貴様が盾となって竜の騎士(ドラゴンのきし)の消耗を最小限に抑えると言うのか?」

だが、バランは納得しなかった。

「不要だ。この程度、人畜無害な空気と同じだ」

そんな素っ気無いバランに対し、マトリフもまたバランの突進をやんわりと阻む。

「まあそう言うな。こう言うのは遠慮無く受け取るのが紳士ってもんだぜ」

「何を言っている?この俺をなめているのか?」

「逆だよ。あんたは切り札だからギリギリまで取っておきたいんだよ」

そして、マトリフは東の空を見る。

「それに……もう『夜明け』だぜ?」

「夜明け?それがどう―――」

その直後、何者かの呪文攻撃が鬼岩城側の軍勢を攻撃した。

「今度はなんだ!?」

その正体は、パプニカの兵士達であった。

「総員!呪文放てぇーーーーーい!」

「人間側の援軍!?」

「そう言う事。俺達がバーンの拠点に突入する前に敵軍に襲われた時の為に、各国の猛者に集まって貰う様に頼んだんだよ!」

マトリフのこの言葉に、ハドラーちゃんは少し考えこんだ。

(それはつまり、鬼岩城を大魔王バーンとの最終決戦地とみなした訳だな?)

その間も、人間側の援軍はどんどん増えていった。

「悪いがアバンよ、ジニュアール家に有ったキメラの翼は全部使っちまったぜ。顔見知りに全部配っちまったからよ!」

(やはりそうか!)

「たすけにきたぞ!ゆうしゃさま!」

「チョコマ!?ギュータのみんなも!」

そのギュータの軍勢の中に、1度はギュータから逃げたディードックとその海賊仲間達も混ざっていた。

「待たせたな旦那!血の気の多い奴を、バッチリ揃えて来たぜぇ!」

正に総力戦!

ならば、ハドラーちゃんに今度こそ迷いはない!

ハドラーちゃんが異元扉に縋る目がその証拠だった。

(なら……望み通り、今日を大魔王バーンの命日にしてくれるわ!)




今までは、大魔王バーンを斃す為の修行と言い聞かせながら迷走しておりましたが、ここからは、最終章・鬼岩城編です!
ハドラーちゃんとその配下達、アバンとその仲間達、そしてバラン……
原作では最期まで並び立つ事が無かった3勢力が、大魔王バーンと言う共通の敵を倒す為に共闘する!

以上!
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