ハドラーちゃんの強くてニューゲーム   作:モッチー7

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第35話

ミストバーンは激怒した。

ハドラーちゃんがどんなに大魔王バーンに反旗を翻しても、バーンがハドラーちゃんの事を気に入っている内は、秘めたハドラーちゃんへの殺意を飲み込んで耐えて来た。

だが、鬼岩城がハドラーちゃんの最大閃熱呪文(ギラグレイド)を浴びた事で、遂にミストバーンの堪忍袋の緒が切れた。

「おのれハドラあぁーーーーー!」

激怒し過ぎたのか、ミストバーンの体から暗黒闘気が大量に溢れちゃっている。

「この城は、誰の城だと思っているうぅーーーーー!」

怒り狂うミストバーンに対し、ホーモンがただ一言、

「大魔王バーンが魔軍司令に授ける為に生み出した城……それだけの話だろ?」

だが、ミストバーンの怒りは収まらない。

「元はと言えば、あのバカが鬼岩城の最重要施設をさっさと完成させておけばぁー!」

「最重要施設?」

その時、突然現れたキルバーンが補足説明をする。

「つまり、この城は足が生えて歩けるんだよ……本来ならね」

「あーあ、せっかく世界旅行、楽しみにしていたのになぁー」

それを聴いたホーモンが諦めムードで返答する。

「つまり、魔軍司令候補である私の監督不行き届きであり、出来の悪い指揮が招いた惨劇と言う事か?」

キルバーンはそれを否定する。

「いや、ガルヴァスとか言う鈍足がこの城の建築監督を閑職と勘違いして、6大将軍を……じゃなかった5大(・・)将軍をアバン暗殺に使っちゃって、全滅させちゃったからねぇ」

「本当に馬鹿だよねぇ。豪魔軍師が聞いて呆れるよ」

「あ、今は0大(・・)将軍か」

そんなキルバーンとピロロの冗談交じりのガルヴァスへの陰口に耳を貸さないミストバーン。

「それは最早過ぎた事だ……そんな事より、ハドラーがこれ以上―――」

何かを察したキルバーンがミストバーンの首に大鎌を突き立てる。

「おっとストップ。それ、まだバーン様の許可を取ってないんでしょ?」

「いーけないんだいけないんだー♪バーン様に怒られるー♪」

「ぐっ!……」

いくら激怒していようと、大魔王バーンを盾にされたら、流石のミストバーンも折れるしかなかった……納得はしていないが。

「おーこわっ。ハドラーはミズトの触れちゃいけない部分に触れ過ぎた様だね?」

でも、それでもキルバーンはミストバーンに釘を刺す。

「だ、け、ど。君の本当の姿は、如何なる場合でもバーン様の御許しがなくてば、見せちゃいけないんじゃなかったけ?」

それを言われると、もう引くしかないミストバーン。

そんなミストバーンとキルバーンのやり取りを観て、ホーモンは1つの確信を得た。

(やはり、ミストバーンのあのフードはただのオシャレや趣味ではなかったか!)

渋々怒りを治めるミストバーン。

だが、せっかく終わりかけた激怒に油を注ぐ馬鹿が玉座の間に出現してしまった。

(……殺気!?)

「!?誰だ!?」

「ウヒョオ!怖え怖え!冗談だよぉ。軽く殺気を飛ばしたら気付くかなー。とか思って試してみただけだ。許してくれやァ」

そんな謎の声の場違いな態度に、キルバーンが呆れた。

「君も随分馬鹿な事をしてくれたねぇ?ミストのあの怒りに気付かないだなんて」

「いくら何でも鈍感過ぎるよねぇー」

「そりゃそうさ。生まれたてのベイビーだからなオレは」

謎の声の軽い性格にホーモンが頭を抱えた。

「すまないな……これも私の監督不行き届き(・・・・・・・)だ」

その言葉にピロロが驚いた。

「嘘ぉー」

「おいおい。これってまさか?」

ホーモンは観念したかの様に白状する。

「そうだ。これは私がこの城の壁を使って作った……切り札た」

その言葉に、キルバーンが少し引いた。

「おいおい。禁呪法で生み出された魔物は、創造主の感情の影響を強く受けるんじゃなかったのかい?」

「それだけ……この私を生み出す切っ掛けを作った諸悪の根源……ホモが嫌いなんだよ私は」

 

一方、ハドラーちゃんは自身の最大閃熱呪文(ギラグレイド)で開けた穴から鬼岩城に侵入しようとしたが、

極大閃熱呪文(ベギラゴン)を片手……そんな筈は……」

バランの驚愕に、ハドラーちゃんはダメ出しの心算で言い放った。

「硬いぞバラン。この俺がこの前往った異世界では、極大閃熱呪文(ベギラゴン)を片手で放つなど、簡単に行えた。なぁ、ぶくぶく?」

それに対し、ぶくぶくは別の意味で首を傾げていた。

「と言うか、ベギラゴンを片手で放つのどこが凄いの?」

そんなぶくぶくの言葉にバランとマトリフが驚愕し過ぎた。

「何を言ってんだ貴様は!?」

極大閃熱呪文(ベギラゴン)を片手で放てるがどれだけ凄い事か、全然気付いていないのか!?」

寧ろ、ぶくぶくはバランとマトリフの驚愕し過ぎの方に驚いていた。

「……なんで?この2人が驚いている理由が判らん!」

つまり、ベギラゴンを片手で放つのがぶくぶく達が暮らす異世界では当たり前な事だったのだ。

それについてハドラーちゃんが大笑いする。

「はっはっはっはっ!世界はやはり広いな!?この世界の常識は、異世界では非常識になるらしいぞ?」

そう言いながら、ハドラーちゃんは異元扉の方を見た。

「それを教えてくれたのが……この異元扉だ」

「ぐっ!……」

ハドラーちゃんのこの言葉に、バランはリアクションに困った。

竜の騎士(ドラゴンのきし)の万能性に溺れたかバラン?学びなど、何時でもいくらでも出来るのだぞ」

バランは返す言葉が無かった……

 

さて、今度こそ鬼岩城に侵入しようとするハドラーちゃんだったが、ガンガディアとフレイザード2号が必死にハドラーちゃんの前を歩こうとする。

「ん?おいおい、お前達は鬼岩城の中身を知らんのだろ?なら、案内役が先頭を歩くのが筋だろ?」

だが、ロカがそれを否定する。

「いやいや、俺にはこの2人の気持ちが解るぜ。もしハドラーが戦う事になろうとも、そこまでにバーン達の戦力を極限まで削っておくのが、勝利の為の得策……そう考えてるんだろ?」

その言葉に、ハドラーちゃんは頭を抱えた。

「……フン!どいつもこいつも俺を案じたか。地底魔城には心配性が多いと見える」

「そうらしいな。俺達も同じ事をしようとしてたし」

そんなロカの言葉に驚くアバン。

「え!?」

そんなハドラーちゃん達のやり取りをポツンと観ているバランに気付いたクレオが声を掛ける。

「……辛いでしょうけど視た方が良いわよ。あれが、今の貴方に必要な物だから」

それに対し、バランは戸惑いながら質問する。

「この俺に足りないのは……仲間だと言うのか?」

それに対し、未来のヒュンケルが悲しげに答える。

「あんたは……もっと早くにラーハルトに出逢うべきだったな」

「ラーハルト?」

「……ある意味、ハドラーの地上侵攻の犠牲者だ。逢ったら優しくしてやってくれ」

その時、ある意味場違いな邪な呪力が湧いて出た。

「む!?やはり待ち伏せか!?」

「何者だ!?」

その質問に対し、邪な呪力は不快感を露わにした。

「何者だ?凹むねぇー」

「まさか!?その声は―――」

フレイザード2号にとっては邪な呪力がハドラーちゃんの侵攻を邪魔するか否か?そっちの方が重大だった。

「つまり、こいつも裏切り者と言う訳か?」

「くくく、お前が俺の後釜か?」

「私の事を覚えてないか……確かに、私がハドラーちゃんの仲間になったのは、ハドラーちゃんが破邪の洞窟制覇に挑戦中の時だったな?」

「つまり、お前は俺の後輩と言う訳だな?」

「黙れ!貴様がここに居るという事は、貴様は最早ハドラーちゃんの仲間ではない。そんな奴が偉そうに先輩面するな。迷惑だ!」

だが、木の根っこはフレイザード2号を無視してハドラーちゃんを襲った。

が、それをガンガディアが簡単に握り潰した。

「裏切りだと!?貴様はハドラーを見限って大魔王バーンに寝返ったか!?……キギロ!」

アバンに叫びに、ハドラーちゃん達が緊張した面持ちでどんどん増えていく木の根を注視するが、クレオ達は誰だか解らず困惑する。

「……誰?」

「俺の失策の1つだ。監督不行き届き(・・・・・・・)と言う奴だ」

その間、埒が明かないと判断したガンガディアが意を決して異世界修行の成果を発揮する。

「右手に火竜変化呪文(ドラゴラム)、左手に五指爆炎弾(フィンガー・フレア・ボムズ)

ガンガディアがやろうとしている事に驚くフレイザード2号。

火炎系呪文(メラゾーマ)5発を同時発射!?それはいくら何でも負担が大き過ぎるって!」

そんなフレイザード2号の忠告に対し、ガンガディアは苦しそうな笑顔で答えた。

「なに。相手は地上界完全消滅を目論む大魔王バーン。これぐらいの無茶は、せねばな!合体!」

火竜変化呪文(ドラゴラム)五指爆炎弾(フィンガー・フレア・ボムズ)を合体させる事で火球を連射する凶悪な魔竜へと変身したガンガディア。

「おいおい。毎日の様に知識がどうとか言っていたあんたが、こんなやぶれかぶれな姿に成り下がるとはな?」

「ハドラー様の地上支配を邪魔するゴミを掃討するのだ。こっちもゴミまで堕ちるさ」

予想外の展開に立ち尽くすハドラーちゃんの手を冷徹に引っ張るフレイザード2号。

「ハドラー!今はこの戦いの結果を見届けてる場合じゃない!この鬼岩城を叩き壊しに来たんだろ!?」

そんなフレイザード2号の叱咤を受け、ハドラーちゃんが悔しそうに舌打ちしながらガンガディアに命令する。

「ガンガディア!俺の許可無く死ぬ事許さんからな!肝に銘じておけよ!」

そんなハドラーちゃんの悲痛な叫びに、ぶくぶくは意を決した。

「なら、僕様もここに残ろう。こんな薄汚れた裏切り者に、僕様の気の合う友を奪われるのは、我慢がならんからね!」

こうして、ガンガディア&ぶくぶくVSキギロが鬼岩城内で始まったのだ。




前回の後書きはかなり不真面目だったので、今回は真面目に行きます。

で、今回のテーマは『バランは何故ダンやアバンになれなかったのか?』です。
その最大の要因は、やはり竜の騎士(ドラゴンのきし)の使命に馬鹿真面目過ぎた事と竜の騎士(ドラゴンのきし)の万能性が凄過ぎた事でしょう。

ダイの大冒険の勇者は『剣術や呪文に精通している万能職である一方、各分野においては専門職には劣る』。なので専門職が何人かついてやらないといけないと言う事情がある。それに、勇者は『勇気ある者』と言う意味合いもあるので、それは他の者達と仲良くなる勇気を持っていると言う意味合いでもあると思います。だからこそ、比類なき人望を得て地底魔城決戦やロロイの谷決戦であれだけの大軍勢がダイやアバンに力を貸してくれたのでしょう。

それに引き換え、竜の騎士(ドラゴンのきし)は人の心・竜の力・魔族の魔力を併せ持った究極の戦士。つまり、数人の専門職の力を借りる必要も無く、無理をしてまで他者と仲良くなる必要も無い。その上、竜の騎士(ドラゴンのきし)は世界の均衡を保つバランサー的存在故、危険だと判断された者は弁明の余地無く徹底的に滅ぼされる定めに有ります(冥竜王ヴェルザーやアルキード王国がいい例)。これでは怖がれはすれど大勢との絆を育める筈が無く、認められた者しか隣に居ちゃいけない孤高で孤独な存在に成り下がるのも、無理はありません。

これだけだと、ある意味『強くてニューゲーム』を否定している様に見えますが、クロノトリガーの強くてニューゲームの真の醍醐味は、ラヴォスを倒すタイミングをずらす事による歴史改変です。
つまり、バランの考えを変えるのはまだ間に合う筈です!
……そう、信じたいです。

後、あえて生かしておいたキギロの処遇に難儀しました。
まさか、本作を執筆している段階ではキギロが地底魔城決戦まで生き延びるとは予想もしていませんでした!
本当にびっくりです!
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