鬼岩城の玉座の間へと急ぐハドラーちゃん達であったが、ガッルール、ガンガディア、ぶくぶくが立ち塞がる敵の足止めの為に戦地に留まった。
その事に舌打ちをするハドラーちゃん。
「まったく……俺の周りは心配性だらけの様だな」
それに対し、マトリフが嬉々として嫌味を言う。
「良いじゃねぇか。それだけあんたは慕われているって事だろ?ま、バーンだけでなくあんたからもこの地上を護らなきゃいけねぇ俺達にとっちゃ、色々と不味いんだがな」
「五月蠅い。本当に不味いのであれば、その気色悪い笑顔はやめろ!」
が、そんな呑気なやり取りも、フレイザード2号の叫びがそれを引き裂いた。
「は!?クレオ!下だ!」
「し、下ぁ!?」
その途端、クレオの真下から鋭利に尖った岩が勢いよく生えた。
「クレオ!」
何とか躱したクレオであったが、流石に無傷とは言えなかった。
「大丈夫か!?」
「何とかね」
そんなクレオ達のやり取りを視て、ハドラーちゃんは嫌な予感がした。
「まさか……いるのか?グランナード」
グランナード。
地底魔城にアバン一行に突入した直後、ハドラーが地底魔城の最深部を構成する花崗岩を削って急遽に禁呪法で生み出した岩石生命体。
が、禁呪法生命体の性格は製作者の性格が反映される。しかも、この頃のハドラーは既に魔軍司令時代に片足を突っ込んでいる状態。
故に、グランナードの性格は、先に作ったバルトスや後に作られたハドラー親衛騎団とは比べ物にならない程の狡猾で残忍かつ下劣だった。
だからなのか、ハドラーに潰された悪魔の目玉を見てアバンがハドラーの部下達の誇りを褒め称えた中、グランナードだけはアバンにも貶される程であった。
そんなグランナードが鬼岩城の中に居る……
ハドラーちゃんはホーモンの性格の変化に不安を感じた。
それに対し、鬼岩城の床から生える様に現れたグランナードは、何故ハドラーちゃんが自分の名前を知っているのかが気になって不快になった。
「てめぇ……なんで俺の名前を知ってんだ?自慢じゃないが生まれたばかりだって言うのによぉ」
グランナードの「産まれたばかり」と言う言葉に嫌な予感がするアバンとマトリフ。
「『産まれたばかり』だと?」
「てめぇ、禁呪法生命体か?」
対するグランナードは、嬉々として自己紹介した。
「オレの名はグランナード 合尾クレオパトラとか言う糞ホモをぐちゃぐちゃにする為に造られた鬼岩城の切り札さぁ」
その言葉に、ハドラーちゃんが不安そうにクレオを見る。
(もし、この時間軸のグランナードを作ったのがクレオとの因縁が深いホーモンだとしたら……)
自分と同じ轍を踏むホーモンの性格に不安が募るハドラーちゃん。
「と言う訳だ。だから、合尾クレオパトラとか言うゴミ腐女子を置いていけば……」
「お前と戦わずに通れると?」
グランナードの提案に不安になる一同。
「そんな話……信用出来ると思うか?」
が、グランナードはそんな不安を一笑する。
「はははは!疑り深いねぇ。俺の敵は腐女子とBLだけだ」
しかし、グランナードを信用出来ないロカとレイラが飛び掛かる。
「往け!アバン!こいつは俺達が引き受ける!」
アバンが一瞬迷うが、そんなアバンの肩をハドラーちゃんが叩く。
「……往くしかないな。その労は、大魔王バーンの首で労ってやれ」
ロカとレイラにグランナードの足止めを任せたが……
「ん?」
目の前に並ぶ巨大なチェスの駒がハドラーちゃんの目に留まる。
「こいつらは……」
動揺するハドラーちゃんの肩を叩く未来のヒュンケル。
「落ち着け。アレはヒムではない。ただの、道化だ」
それを聴いた巨大駒が不満そうに語り始めた。
「道化とは酷いな?失礼だとは思わぬか?」
すると、チェスのキングが変形した。
「今度はなんだ?」
ハドラーちゃんにとって、キングを担当する禁呪法生命体は未知の存在であった。
が、さっさと大魔王バーンを殺したいバランにとっては少し呆れていた。
「で!このパターンはあと何回続くんだ!」
「あんた、少し怒ってない?」
それに対し、キングは気にせず語り始める。
「我輩の名は―――」
「ハゲタカのマキシマムだろ?で、思ったよりキギロやグランナードがあんまり頑張っていないから、少し困っている……と言ったところか?」
そんなヒュンケルの言葉にハドラーちゃんは軽く驚いた。
「戦ったのか?こいつと?」
「戦った?違うな。ヒムとの戦いで疲弊したところを襲った卑怯者だ。生かしておく価値も無い」
それに対し、マキシマムは静かに怒った。
「さっきから失礼な奴だな?我輩は、大魔王バーン様を護る最強の守護神であるぞ」
それを聴いて軽く怒るハドラーちゃん。
「バーンを護る守護神?バーンのボディーガードを気取って裏でサボってるだけの木偶の坊が、何を偉そうな事を」
この時、ハドラーちゃんが思い出していた事は、ブロックを失う切っ掛けとなってしまった大魔王バーンとの一騎打ちの場面。
その場面を何度思い出しても、マキシマムの姿が出てこない。
マキシマムが本当に『大魔宮最強の守護神』ならば、彼がハドラーとバーンの闘いに乱入する程の献身さと狡猾さを発揮してもおかしくない筈だ。
(なら……こいつはなんだ?)
だが、ここで時間を使い過ぎたのが仇となった。
「ごふ!?」
気付けば、クレオの腹にツララの様な岩が刺さっていた。
「ほう……思ったより早かったな?……グランナード」
その途端、アバンとマトリフの顔からいつもの笑顔が消えた。
「なあぁーーーーー!?」
グランナードがここにいる。
それはつまり、ロカとレイラの敗北を意味していたからだ。
「と、思うだろ?」
「……え?」
「俺は、あいつらとは1秒も戦ってねぇよ。つまり、あの2人は無事だぜ」
グランナードがロカ達と戦わずにクレオの背後をとる事ばかり考えていた理由……
それってつまり、ホーモンの『腐女子やBLへの敵意と蔑視』の精神が反映された故の愚者思考に他ならない。
「あの2人も馬鹿だよなぁー。さっさとこの屑腐女子を差し出せば良かったものを」
ロカ達のアバンを思っての決意を嘲笑い馬鹿にするグランナードの姿に、BLのみでの妊娠・出産と言う最大級の希望である筈のホーモンの凋落と堕落に完全に打ちのめされるクレオ。
「そんな……ホーモン……」
これにはハドラーちゃんも黙っていない。
「貴様、本当にホーモンが生み出した禁呪法生命体だと言うのであれば、その汚い口を閉じろ。俺はホーモンの事を詳しくは知らんが、ホーモンが作り出した禁呪法生命体である貴様が下劣で下衆である程、ホーモンの威厳は見下されて地に堕ちるぞ」
が、そんなハドラーちゃんの怒りの言霊すら一蹴して嘲笑うグランナード。
「だはははは!それでこの俺を怒らせた心算か?威厳?そんなの腐女子やBLを根絶出来る方法に比べたら、毛の欠片より価値が
BLどころか威厳や誇りまで嘲笑うグランナードの姿に、世界最大の希望だと信じていたホーモンの堕落を目の当たりにしたクレオの体から覇気が抜け落ちていく……
完全に呆れたバランはたった1人で先に進もうとしたその時、ロカ達の無事を知った安堵からかアバンもグランナードへの挑発に参加した。
「悲しいですねぇ」
「ん?この俺に威厳の類が無いからか?そんなのBL―――」
「そのびーえるの意味はよく解りませんが、貴方の目には私とロカとの友情がそこまで達していないと判断された事が、私は非情に悲しいと言っているのです」
その直後、ヒュンケルはバランの手を引っ張った。
「良く視ておけ。ただ敵を倒す為の力だけが、強さのバラメーターではないと、このアバンが教えてくれる筈だ」
そう……
アバンはたったこれだけのやり取りだけで、この時間軸のグランナードを激しく激怒させる台詞を引き当てたのである。
「……な、ん、だ、とォォォォッ?」
「そう。私とロカの友情は、びーえるとは遠く及ばない見せかけのマヤカシだと思われてしまったとは……本当に……悲しいですねぇー……」
そんな芝居じみたアバンの挑発に怒り心頭となったグランナードは、改めて本来不要な戦いであるロカ達との戦いを決意する。
「ウガアァーーーーー!上等だゴラァ!そのロカとか言う糞男を殺して、てめぇがBLに墜ちかけた事を後悔させてやるぜぇー!」
こうして、グランナードは地中に潜ってロカ達の所に戻ってしまったのであった。
そんなグランナードのミスチョイスを言葉だけで成し遂げたアバンの智謀に、バランはある種の戦慄を覚えた。
「言ったろ?敵を倒す力だけが強さではないと」
1人残されたマキシマムは困っており、その困惑を読んだかの様にハドラーちゃんがマキシマムを睨む。
「おい……卑怯者」
「ぐ!?」
「お前まさか、あんなゴミ岩如きがクレオ相手にもっと善戦すると予想していただろう?」
(読まれた!?我輩の策を!?)
「策士策に溺れるか……策を超える強大な力の前では、貴様の軽い浅知恵は焼け石に水の様だな?!」
真っ直ぐマキシマムの許へ歩き出すハドラーちゃんを見て慌てて止めようとするフレイザード2号。
「まあまあまあ!あんな奴、ハドラーちゃんの手を煩わせるまでもないって―――」
それに対し、ハドラーちゃんはフレイザード2号を安心させるかの様に鼻で笑った。
「フッ。なら、この程度で疲れている様では、大魔王バーンの頸は遠いわ!それと……」
ハドラーちゃんはふと覇気を完全に失ったクレオを見る。
「もっと苦しそうにしている奴が、そこにいるだろ?そっちを看てやれ」
確かに、クレオとフレイザード2号は同性愛仲間ではある。だが、そこはやはりハドラーちゃんが生み出した―――
そんなフレイザード2号の不安を全く気にせずにずんずんとマキシマムに近づくハドラーちゃん。
「ポーン!」
マキシマムが命じると、8体のポーンが一斉にハドラーちゃんを何度も殴った。
「ハドラ様あぁーーーーー!」
いつもはハドラーちゃんを『ちゃん』付けで呼ぶフレイザード2号が、8体のポーンに何度も殴られ続ける光景を見て瞼が全開になる程驚愕していた。
が……
当のハドラーちゃんは別の意味で不満だった。
「なんだ?この冷たいだけの拳は?全く効かぬわ!」
覇者の剣での一閃で8体のポーンを一掃するハドラーちゃん。
「たわけ。その様な熱意が籠らぬ拳が、この俺に効くか!」
「ナイト!」
が、2体のナイトもさっきのポーンと同じ運命を辿った。
「真っ直ぐ過ぎるわ。操り人形に成り下がるだけが、忠誠の示し方では、ないわ!」
「ビショップ!」
「軽くて浅い。これでは、誰からも勝利を、奪えぬわ!」
「ルーク!」
「遅い。そんな動きでは、誰も、護れぬわ!」
「クイーン!」
「判断が鈍いな。上に立つ者は、常に、堂々とはっきりとせんとな」
結果、行く手を塞いだ巨大駒は、マキシマムを残して全てハドラーちゃんが破壊してしまった。
(これで……今度こそ親衛騎団とお別れか……)
ハドラーちゃんが悲し気になる中、駒を全て破壊されたマキシマムは完全に蒼褪めていた。
「全滅……我輩の駒が……全滅……だと……」
ハドラーちゃんと戦って散った者達を『駒』と呼んだマキシマムの言葉が、ハドラーちゃんを更に不機嫌にした。
「全滅?何の事かな?」
ハドラーちゃんの殺気に満ちた視線に臆するマキシマム。
「ヒッ!?」
「俺はまだ、1度も貴様に勝っておらぬぞ?」
対して、完全に臆したマキシマムは、1人逃げようとして飛び上がった。
「ではっ!さらばだっ!また会おうぞぉーーーーーっ!ショアッ!」
「あ、逃げた?」
が、ハドラーちゃんがこの様な気に入らん者をそう簡単に見逃す筈がなかった。
「これがアバンなら、『無駄な労力を消費せずにラッキーだった』と言うだろう。だが……」
「あれ?」
アホ面と共に、これまた間抜けな断末魔を残して、マキシマムは粉々に吹っ飛んだ。
「俺はそこまで、賢くも優しくもない。貴様の様な屑を粉々にせんと気が済まぬ残忍で無謀な大馬鹿。それが俺だ!」
スーパースキャンでハドラーちゃんの体を調べればよかったものを……!マキシマム、まさに自滅。
原作ではアバンに散々酷評されたグランナードの登場ですが、この時間軸ではホーモンが作った事になっています。
ただただ立ち塞がる強敵を仲間が引き受けてその隙に主人公が進行する……パターンは前回やって飽きたので、今回は変則してレイラの挑発を無視して前に進んだクレオを追う(ハドラーちゃんとマキシマムの闘いに乱入する)と言う狡猾な選択を、ホーモン産グランナードにやらせました。
禁呪法生命体の性格は、製作者性根に影響される。と言う設定を利用する事で、クレオにとって最大の希望である『BL妊娠・出産』を全否定する程、ホーモンが凋落し堕落した事を表現した心算でしたが、いかがでしょうか?
後、グランナードについて1つ問題があり、グランナードの名を聴く度に、どうしても『魔動王グランゾート』を思い出してしまいます。
私……病気でしょうか?