ハドラーちゃん達は遂に鬼岩城の玉座の間に到着した。
そこでハドラーちゃんを待つのは、大魔王バーンの側近中の側近ミストバーン。そして……
クレオが玉座に座る少女の姿を見て辛そうな表情を浮かべた。
「ホーモン」
数奇過ぎる人生を送ったクレオの中で、特に無念と言える存在であるホーモンと再び対峙するクレオの表情は本当に辛そうだった。
一方、仇敵であるクレオが生きて眼前にやって来た事に苦虫を噛む思いだった。
「禁呪法……まるで使えんな!」
その言葉を不快に思ったのはアバンであった。
「……どういう意味だ?」
「文字通りの意味だ」
ホーモンとアバンのやり取りに、ハドラーちゃんはかつての自分を思い出してある者を探した。
そして、ハドラーちゃんの予想通りであった。
「そこでくたばってる悪魔の目玉……貴様が潰したのか?」
その質問に答えたのは、ホーモンの方であった。
「途中で観るのを止めたわ。あまりの不甲斐無さに」
「グランナードの事か?自分で作っておきながら、よく言うわ」
「だからよ」
「ん?」
「禁呪法生命体の性格は、製作者の性格に似る……と聞かされた筈だった。なのに……」
苦虫を嚙み潰した様な顔で悔しそうにクレオを見るホーモン。
「あそこのゴミ腐女子がここに来た時、心の底から失望したよ私は……」
ホーモンのこの言葉は、アバンの怒りの炎に油を注いだ。
「だからか……この城がこんなにも空っぽなのは」
それに反応したのはミストバーンであった。
「空っぽ!?この鬼岩城を侮辱するか!?」
が、アバンはそんなミストバーンを無視してホーモンへの恨み節を続ける。
「ハドラーの配下として私達の前に立ちふさがった魔物達は皆、自らの誇りを賭けて全身全霊で戦う者ばかりだったぞ。お前が急場しのぎに壁を削ってこしらえた岩の化け物だけはそうは見えなかったがな」
「だからこそだろ。あそこにいるゴミ腐女子を生かしておくと言う悪行を犯したのは」
「だからこそお前は空っぽなんだホーモン!ガンガディアやフレイザードの様な必死に戦う事を厭わぬ者に恵まれぬなど……邪悪の魔王としての器すら疑わしい!それがお前の限界だと言うなら……ホーモン!既に敗れたり!」
アバンの啖呵に別に意味で不快感を感じるホーモン。
「……嫌な臭いだ。そんなにロカと言う男がそんなに大事か?」
「嫉妬か?親友に恵まれ、師匠に恵まれ、幾多との繋がりに恵まれた、この力に」
「嫉妬……だと?兜合わせ(男性同士の性行為)と言う愚かなる愚行が産み出したこの私が、兜合わせを喜んで鑑賞する腐女子に嫉妬していると言うのか?……兜合わせと言う呪われた両親を背負ったこの私が腐女子に憧れていると言うのか?……なめんなよ……クソがあぁーーーーー!」
そんなホーモンの怒りが、アバンの殺意を更に強くした。
「自分の意見に反する異見を毛嫌い徹底的に排除する。そのお前の考え方が根本から理解出来ない!私も今、この場で理解したぞ。お前とは決して相容れない!」
アバンの啖呵を聴いて漸く迷いを捨てたクレオが、アバンの肩を叩きながらアバンの前に出る。
「ありがとう。貴方のおかげで、私も漸く勇者らしくなってきたわ。でもね、ホーモンは大魔王バーンの力で復活する前から私の宿敵なの。だから……」
戦意を持ってホーモンを睨むクレオ。
「ホーモンを懲らしめる権利は、誰にも譲らない!」
クレオの意志を尊重するかの様にホーモンとの戦いをクレオに任せ、残るミストバーンへと歩みだすハドラーちゃん。
「残ったのは……お前だけだな?ミストバーン」
とは言え、ハドラーちゃんはミストバーンと戦う事に多少の躊躇があった。
前の時間軸のミストバーンは……
本来なら自分が魔王軍のNo2の地位であるにもかかわらず、魔軍司令であるハドラーの命令には忠実に従っており、2人きりの折にはハドラーを呼び捨てにする事はあったが、皆の前ではしておらず上司の面目を潰すようなことはしなかった(内心では見下していたのかもしれないが)。
そんなハドラーにミストバーンが一目置くようになったのは、雲隠れしていたハドラーを探すべくザボエラの秘密基地に乗り込んで来た時。ハドラーは超魔生物に改造されている途中であり、
「ヤツらアバンの使徒に勝てるのならそれでも構わぬ……いや、そうするだけの価値がある敵なのだと……オレは今更ながら気付いたのだ!……地位も、名誉も、生命すらオレにはもはや不要!たとえこの身を失おうともヤツらに一矢を報いなければ、死んでも死にきれぬ!」
と頼まれる。
ハドラーが全てを捨てる覚悟で保身をやめたことを見抜き、その覚悟を買ってハドラーのパプニカ王国での人類首脳会議を潰して欲しい要望を快諾し、鬼岩城と魔影軍団を率いて侵攻している。
その信頼と尊敬の念は、パプニカ侵攻で敗北したミストバーンを超魔生物となったハドラーが律儀に救援に来た事、そして、バーンとの謁見の前にダイ達を斃す命令を果たしていない事から処刑も覚悟したハドラーから
「オレは当初、おまえを底の知れない奴として疎んでいたが、今では感謝している。六大団長の中でオレへの誠意を一番見せてくれたのは、あるいはお前だったのかも知れぬ。お陰で最後の格好がついた……有難う!」
と彼のコンプレックスを払拭するかの様な言葉をかけられたうえに感謝の言葉を受け、より友情に近い高いものとなっていた。
だからこそ、黒の
が、この時間軸にはその様なやり取りは当然無い。
故に前述の出来事もこの時間軸のミストバーンは知らない筈だ。
でも、やはりミストバーンとの戦いにそれなりに躊躇してしまうハドラーちゃん。
「……大魔王様のお言葉は全てに最優先する……それがお前の信念であり忠義だった筈だ……」
「!?」
「なら……」
ハドラーちゃんはミストバーンに関する迷いを捨てる為、自分の両頬を叩く。
「逃げるなよ。俺達にはまだ……これが有るからな?」
そう言いながら異元扉をノックするハドラーちゃん。
「え!?……自分、大魔王バーンとの戦いまで付き合えと、ほんまに言う気か?」
その途端、ミストバーンは吠えた。
「させぬ!この場で破壊する!」
伸縮自在の指を異元扉に突き刺そうとするミストバーン。
「ちょ!?待!?やめやぁーーーーー!」
が、その指をバランが払い除ける。
「逃げるなよ異元扉!お前は大魔王バーンを打倒すると言う大仕事があるのだ!」
バランの言葉に異元扉が蒼褪める。
「えーーーーー!?……もはや決定事項?」
ホーモンをクレオに任せ、ミストバーンをバランに任せ、異元扉を使って大魔王バーンに戦いを挑もうと考えていたハドラーちゃんだったが、
「な!?」
突然出現した穴から生えた鎌に捕まり、徐々に謎の穴に引き摺りこまれていくハドラーちゃん。
「チッ!空気を読む気が全く無い屑死神が!」
悔しそうに叫ぶハドラーちゃんを見て、フレイザード2号は決意する。
「ハドラーちゃん!キルバーンは私が抑えます!その隙に大魔王バーンの許へ!」
そう言うと、ハドラーちゃんを亜空間に引き摺り込もうとする鎌を切断し、ハドラーちゃんの代わりに謎の穴に飛び込むフレイザード2号。
「フレイザード!?」
「大丈夫!私も直ぐに追いつくよ。何せ私は、大魔王バーン討伐の
こうして、キルバーンが仕組んだ決闘と言う罠に嵌ったフレイザード2号。
「ほう……君が来たか?」
「やはり貴様か?キルバーン」
だが、この場にピロロがいない事に不満を感じるフレイザード2号。
「そんな事より……主はどうした?」
「……僕だけでは不満かい?」
フレイザード2号は既にピロロが主でキルバーンが操り人形である事を知っている。
故に、キルバーンだけでなくピロロも野放しに出来ないのだ。
が、今はどうでもいい不満だ。
「まあ……良いか。ハドラーちゃんには内緒だけど……ここまでは、予定通り」
キルバーンはその言葉を勝利宣言だと判断した。
「舐められたものだね?この僕がなんで死神と呼ばれているか、まったく知らないとでも言う気かい?」
投げつけられたカードをキャッチしたフレイザード2号は、恐る恐るカードを視た。
その絵は、ピロロがジョーカーの代わりに描かれていると言う、フレイザード2号にとっては悪趣味であった。
「ピロロがジョーカー……ね……」
「それじゃあ始めようか。決闘をね」
それに対し、フレイザード2号は鼻で笑った。
「ふん!何が『受けてくれるかね?』だ。相手の意思を無視してこんな悪趣味な空間に誘い込んでおいて……正々堂々とは笑わせる!それを『罠』だと言うんだ!ピロロ!それに」
「それに?」
「これもハドラーちゃんには内緒にして欲しいけど、大魔王バーン討伐の
その言葉に、キルバーンは少しだけ動揺する。
「
遂にクレオとホーモンの直接対決が始まり、バラン対ミストバーンの死闘が始まる!
……と、思うでしょ?
残念ですが、ここからしばらくはフレイザード2号とキルバーンの一騎打ちで話数を稼がせていただきます。