ハドラーちゃんの強くてニューゲーム   作:モッチー7

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お詫び

本日は、恥ずかしながら他事を考えていたせいで掲載がこんなに遅延してしまいました。
申し訳ございません!


第38話

ハドラーちゃんを庇ったフレイザード2号は、キルバーンが所有するジャッジが生み出した異次元空間に閉じ込められてしまった。

だが、フレイザード2号にとってはこの方が好都合だった。

「これもハドラーちゃんには内緒にして欲しいけど、大魔王バーン討伐の切り札(・・・)は……貴様だよキルバーン」

一方、そんなフレイザード2号の不敵な余裕が気に入らないキルバーン。

「君……色々と余計な事を知っている様だね?」

「そう……私は全てを知っている。お前に炎は厳禁だって事もなぁー!」

すると、フレイザード2号の姿がみるみる変わり、先程のグランナードの様な氷の怪人へと変異した。

「む?それは?」

「色々とあって200万年分進化しちゃってね、普段は人間と変わらない姿だったけど、こうやって私の体の炎と氷の割合を変更出来る様に成ったんだよねぇ」

「だから……なんだってんだい!」

キルバーンは細身のサーベルでいきなりフレイザード2号を突いた。

対するフレイザード2号は慌てる事無く、左腕を氷の剣に変形させた。

「へえぇー。君、意外と接近戦も出来るんだ」

「なめられたものだねぇー……まるで僕の全てを知っているかの様だ」

そう、フレイザード2号は異元扉を使って全てを知ったのだ。

 

ハドラーちゃんが意図せず強くてニューゲームをやらされている事。

前の時間軸のハドラーは大魔王バーンに騙され、体内に黒の核晶(コア)を移植されてしまった事。

キルバーンの正体とピロロの正体。

キルバーンのせいでダイが行方不明になってしまった事。

勿論、ピロロの本当の目的とその為の切り札(・・・)の隠し場所も。

 

「確か……ここだったよな!?」

フレイザード2号はキルバーンの顔面を鷲掴みにすると、駄目もとで氷系呪文(マヒャド)をキルバーンの顔面に浴びせるが、

「……やっぱ……効かねぇか」

「お生憎様。その程度でこの僕を凍結させる心算だったのかい?」

「……だろうな」

「僕の血は魔界のマグマと同じ成分でね。お陰で僕はどんな状況でも凍死しないんだ」

「それでよく自爆(・・)せずに済んだよなぁ」

フレイザード2号の『自爆』と言う単語に嫌な予感がするキルバーン。

「自爆……ね。本当に嫌な奴だよ君は」

只の氷系呪文(マヒャド)では駄目だと知ったフレイザード2号は、前の時間軸のフレイザードが使用した技のアレンジ版を放つ事にした。

五指氷殺弾(フィンガー・ブリザード・ボムズ)!」

氷系呪文(マヒャド)を指1本から1発ずつ、合計5発を同時に放つ技だが、開発したは良いが負担が大き過ぎる為、ほぼ使い道が無かった技でもある。

しかも……

「……魔界の強酸性を持つ高温のマグマ……こんなにもしぶといとはねぇー」

自分の体調度外視で放った五指氷殺弾(フィンガー・ブリザード・ボムズ)も、キルバーンには全く通用しなかった。

「言ったろ?僕の血は特殊なんだ」

「ならば!?」

フレイザード2号は莫逆の同性愛仲間であるクレオと初めて出逢った異世界から学んだ最強の氷系呪文(マヒャド)を解き放った。

「右手に氷系呪文(マヒャド)、左手に氷系呪文(マヒャド)、合体!」

「ん?」

「喰らえぇーーーーー!極大氷系呪文(マヒャデドス)!」

だが……五指氷殺弾(フィンガー・ブリザード・ボムズ)をも上回る吹雪をもってしても……

「今のはかなりヤバかったけど、でも僕はまだ、動けるよ?」

動けるどころか、キルバーンの前面に霜を付けただけに終わってしまった。

極大氷系呪文(マヒャデドス)ですら……駄目かよ……こりゃ、プランBだな」

 

氷系呪文(マヒャド)が全く通用しない事を知ったフレイザード2号は、無駄な努力を諦めて戦術を変えた。

「やっぱり……こっちか?」

フレイザード2号は両腕を氷の剣に変え、二刀流で挑んだ。

それに対し、キルバーンも手にしたサーベルで応戦する。

「意外と短気だねぇー。これもハドラーの影響かい?」

その言葉に、フレイザード2号は少しムッとする。

「短気?違うぜ」

「違う?何の考えも無しに特攻する君のどこがだい?」

その時、フレイザード2号の右肩に激痛が走った。

「ぐ!?」

「漸くアレが効果を発揮し始めた様だねぇー」

「アレ……ねぇー」

フレイザード2号は先程の激痛の原因を探そうと周囲を見回すが、目視でそれを確認する事は出来なかった。

「ファントムレイザーさ。下手に動くと……微塵斬りだよ」

(これがファントムレイザーか……確かに普通の生き物(・・・・・・)にとっては、凄く嫌らしくて厄介だな)

 

ファントムレイザー。

頭部の飾りに仕込まれた13本の見えない刃。

重力の影響を受けずに浮遊する完全不可視の刃を設置する事で相手の突進を防ぎ、相手を死の檻に閉じ込める。

罠にはまって狼狽する相手を観賞するのが趣味のキルバーンらしい、正に悪魔の技である。

 

既にファントムレイザーに包囲されていると判断したフレイザード2号は、両腕をだらんと下げて起立の状態となった。

「おや?もう諦めたのかい?」

フレイザード2号は動じずに動かない。

「どうやら、君はハドラーよりは冷静な様だね?」

だが、フレイザード2号は突然嘲笑うかの様に笑った。

「……くっくっくっくっ」

「ん?」

「ハドラーが短気?この俺がハドラーより冷静?」

フレイザード2号の口調変化に戸惑いながらも冷静を装うキルバーン。

「実際にそうだろ?もしこれがハドラーだったら、今頃無駄な突進をして微塵斬りにされているんじゃないのかな?」

そんなキルバーンの予想を嘲笑うフレイザード2号。

「だーはははははは!」

予想外の高笑いに軽く焦るキルバーン。

「何!?何が可笑しい!?」

「何が可笑しい?お前さん、こんなこ汚ねぇ罠を作るのに夢中になり過ぎて、観察力と言う大事な物を完全に失った様だな?」

「何ぃ!?」

「ハドラーのアレは短気でも馬鹿でもねぇー!アレは、『自信』って言うんだ!」

「自信?もしかして、君も勇気と無謀の違いが判らない質かい?」

そんなキルバーンを鼻で笑うフレイザード2号

「ふん!馬鹿かてめぇは?物凄く強い強者が、いちいちめんどくせぇ罠をせこせこ作るか!」

「やはりその考えは無謀だよ。何の策も無い只の突進に何が出来る?」

「だからてめぇはハドラーの事を何も解ってないんだよ!圧倒的な強さ!不動の使命感!誇り高き矜持!その全てを兼ね備えているのが、今のハドラーなんだよ!」

そして、フレイザード2号はキルバーンに侮蔑の言葉を投げかける。

「ま、いちいち大層な罠がないとまともに戦えない、正々堂々とは程遠い雑魚には一生解らない極地だろうがな」

 

フレイザード2号は、意を決して突進を開始した。

「何!?貴様はファントムレイザーの本当の恐ろしさを知らんのか!?」

だが、フレイザード2号は何度ファントムレイザーに切り刻まれ様とも、気にせず突進する。

「忘れたか!?俺は禁呪法生命体!コアさえ無事なら、後はどうとでもなる!」

フレイザード2号の命知らず故の気迫に、キルバーンの焦りはピークに達した。

(なんだこいつは!?死が怖くないのか!?)

キルバーンはサーベルで応戦するも、圧倒的な気迫の差がキルバーンの斬撃を鈍らせる。

「すり抜けて魅せる!」

「なんなんだ貴様は!?」

何かをチラチラ見ながら徐々に後退するキルバーンに対し、好機と見たフレイザード2号が迫る。

貰った(・・・)!」

だが、フレイザード2号がキルバーンの頸を斬る直前、何者かの鎌がフレイザード2号の体を引っ張った。

「何!?」

それを視て冷静さを取り戻すキルバーン。

「ふふ。どうやら僕の言い分の方が正しかった様だね?」

フレイザード2号の足を引っ張ったのは、この異次元空間を作ったジャッジであった。

ジャッジは本来、魔界の者が決闘で完全決着をつけるために用いたマシーン。

決闘の終了時には敗者の頸を斬り、勝者のみを元の世界に送り返す。それがジャッジの役目である。

だが、キルバーンはこれを自分の味方として改造していたのだ。

「君は、罠を臆病者の戯言だと馬鹿にしてたけど、やはり戦闘は頭でやるもんだよ。頭で」

そして、ジャッジの最期の台詞を聞いたフレイザード2号が悪態を吐いた。

自己犠牲呪文(メガンテ)

「ふざけるなぁーーーーー!」

ジャッジの自爆に巻き込まれたフレイザード2号を置き去りに異次元空間を去ったキルバーンは、色々と知り過ぎた厄介者の内の1人が消えた事を確信した。

「抹殺、完了。と……言ったところかな?」

そして、キルバーンが次に狙いを定めたのは、もう1人の厄介者。

「そろそろ……君にも消えて貰うよ……ハドラー君」

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