ハドラーちゃんの強くてニューゲーム   作:モッチー7

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第41話

前の時間軸。

超魔生物と成って初めて大魔王バーンに謁見するハドラーは、最初は死ぬ覚悟だった。

自身が超魔生物に改造されるまでの時間を稼ぎパプニカのサミットを襲撃してくれたミストバーンを救助する為にダイと戦い、そして勝利した。が、ダイに勝っただけで殺してはいない。

だからこそ、「約束が違う」と言われて死刑を言い渡されてもやむなしだと覚悟していた。

故に恐怖は無い。寧ろアバンの使徒に一矢報いた事を誇りに思いながら死ねる事が嬉しかった。

だが、そんなハドラーを待っていたのは、いつもはベールで隠されている大魔王バーンの素顔であった。

「余が、バーン……大魔王バーンだ」

その姿はまるで老人だった。

吹けば消し飛びそうな枯れ木の様な。

それを視たハドラーは幻滅し失望した……

だが!

「試してみるか?」

バーンの何気ない言葉が、ハドラーの疑心を粉砕し、ハドラーとバーンの差をまざまざと魅せつけた。

結果、この場でのハドラー対バーンの決戦は叶わず、激突は黒の核晶(コア)に関する忌まわしい真実が露見するまでお預けとなった。

 

「……試してみるか?……か……」

「……来るか……」

今のハドラーちゃんに躊躇する理由が無い!

目の前の大魔王バーンの頸を斬り、地上界消滅計画を阻止し、そして全てを終わらせる。

「それに……今回の『勝ちたい』は、俺だけの物じゃなさそうだしな」

支配するにしろ、守護するにしろ、どちらも地上界がなければ始まらない。

つまり、失敗は許されない。

そして……この2人にはもう会話はいらない。

火炎呪文(メラゾーマ)

火炎呪文(メラ)

バーンの火炎呪文(メラ)がハドラーちゃんの火炎呪文(メラゾーマ)と激突し、共に砕け散った。

「……嫌になるねぇー。解っていた事とは言え……あんたの火炎呪文(メラ)と俺の火炎呪文(メラゾーマ)が互角とはね」

ならばと、ハドラーちゃんが現在使用出来る最強の呪文を使うしかなかった。

「右手に極大閃熱呪文(ベギラゴン)、左手に極大閃熱呪文(ベギラゴン)、合体」

「ほう……閃熱呪文(ベギラマ)の威力を極大閃熱呪文(ベギラゴン)レベルにまで引き上げるその魔法力……まこと惜しい事よ……」

それを聞いて邪な笑みを浮かべるハドラーちゃん。

「誉め言葉として聞いといてやるよ……最大閃熱呪文(ギラグレイド)!」

「カイザーフェニックス!」

大魔王バーンの火炎呪文(メラゾーマ)は極めて出力が高過ぎるので炎の巨鳥の様に優美な姿となる。故に大魔王バーンの火炎呪文(メラゾーマ)は『カイザーフェニックス』と呼ばれ恐れられてきた。

だが、実際はただの火炎呪文(メラゾーマ)……ハドラーちゃんの最大閃熱呪文(ギラグレイド)にあっけなく打ち破られ、バーンのローブをほんの僅かだけ焦がした。

最大閃熱呪文(ギラグレイド)でこれか……なら!)

「呪文では決着が着きませんな……」

そう言いながら右手から覇者の剣を生やした。

(こっち)で決着を着けるしかありませんな」

それはつまり……大魔王バーンに『光魔の杖』を使えと命令している様なものであった……

 

一方、クレオは菩薩の棍と勇者の盾でホーモンを何度も殴っていた。

勿論ホーモンもメラガイアーやギラグレイドで反撃し、クレオに噛みついたり爪で引っ搔いたりするが、当のクレオは飛翔呪文(トベルーラ)で飛行するので非常に素早い。

しかも、漆黒のマントのお陰でクレオの回避能力も向上している。

また、クレオがホーモンの頭上をキープする事で、ホーモンが吐いたメラガイアーやギラグレイドが他の者に悪影響を及ぼす心配も無い。

「貴様ぁー……それで私の上に立った心算かぁー!?」

「勉強は何時の世も必要。ただそれだけ」

「では何故貴様はBLの不用性とBL絶滅の必要性を学べない!」

「それは、BLの必要性と偉大さを正しく学んだから」

未だに平行線のままのクレオとホーモンの会話にイライラするホーモン。

「ふざけるなぁー!」

ホーモンが怒りに任せてクレオに噛みつくが、当たらなければ意味が無い。

そして……ホーモンはクレオに一方的に殴られ続けるのである。

しかし、クレオが行っている戦術にも欠点がある。

それは、飛翔呪文(トベルーラ)の特性である。

飛翔呪文(トベルーラ)は魔法力を放出し続ける事によって空を自在に飛ぶ呪文……つまり、魔法力を失えば最悪の場合墜落する!

つまり、この戦いはクレオのMPとホーモンのHPの我慢比べなのだ。

しかし……ホーモンには黒の核晶(コア)が埋め込まれている筈な上に、クレオも鑑定スキルでこの事を見抜いている筈である。

と言う訳で、クレオは高火力な攻撃呪文が使えないし、もし使えばホーモンの体内にある黒の核晶(コア)が誤爆してクレオまで死んでしまう。

つまり、今のクレオが使える呪文は飛翔呪文(トベルーラ)氷系呪文(マヒャド)のみ。クレオのMPの減りは遅い筈である。

(チッ!やはりこの勝負……私の方が不利か!?……大魔王バーンに持たされたBL絶滅の切り札が、こんな形で私の足を引っ張るとはな……)

だが、それでもホーモンは勝ちを諦めない!諦めきれない。

(だからと言って……それを理由に負けを認めろは……違う!ここで私が敗れたら、私の様な『BLのせいで先天的理由のみで実母を持たぬ子供』が増えてしまう……そうなる前に、BLは根絶やしにしなければ)

「ならんのだあぁーーーーー!」

ホーモンは再び口からギラグレイドを吐いた。

だが、それはクレオに躱され、また菩薩の棍で殴られてしまった。

 

対するクレオは一見すると無表情・無抑揚に見えるが、実際は焦っていた。

(何故そこまでしてBLの、もといLGBTの希望として産んでくれた2人の実父を、何故そこまで恨めるの?)

その(クレオにとっては見当違いな)恨みが、ホーモンを不要な戦いの中に無責任かつ無造作に放り出し続けてきた。

そして……ホーモンが抱える恨みが生み出した不要で不毛な戦いが、ホーモンの罪を増やしてホーモンを孤立させた……元ハイテンション腐女子であるクレオですら庇いきれない程に……

だからクレオはホーモンを殺すしかなかった。少を捨て多を護ると言う選択をクレオはさせられたのである。

だが、平行世界の住人である筈の大魔王バーンの出現によって、ホーモンの罪は復活と言う形で死してなお増すばかりと成り果ててしまった……

でも……今回のクレオ対ホーモンには、前回には無かった希望がいくつかあった。

その1つがホーモンを復活させる形でホーモンの戦いと罪を増やす手伝いをしてしまった大魔王バーンである。

そう……バーンはホーモンに邪悪で醜い嘘を吐いたのだ。

その嘘を使えば、この戦いは直ぐに終わらせる事が出来る!だが……

(問題はホーモンの精神状態……大魔王バーンが抱える嘘と真実にホーモンが耐えられるかどうか……)

当のホーモンは、大魔王バーンが目論んでいる地上界消滅計画を上手く利用すればBLを絶滅させる事が出来ると完全に信じている。何の為にバーンは地上界を消滅させようとしているのかも知らずに……

だからホーモンは自身の身体に黒の核晶(コア)を移植する事に何の恨みも無いのだ。

それがクレオの中で大魔王バーンへの憎しみとホーモンへの哀れみへと変換される。

(ごめんねホーモン。だからこうして貴女の心を削り採る戦いしか出来ない)

それが、クレオがホーモンとの戦いで斬撃ではなく打撃を選んだ理由だった。

先ずは打撃だけでホーモンの心を折り、その上で大魔王バーンが抱えている嘘と真実を暴露する事でホーモンの戦意を完全に消し去る。

クレオ的には残酷な方法であるが、大魔王バーンに騙され操られている状態のままでは、どんなに強大になろうと完全復活とは認められない。

そしてそれは、たぶんハドラーちゃんも同意見だろう。

(だから大魔王バーンは許さない。大魔王バーンを許しちゃダメなんだよ。ホーモンちゃん)

クレオの右手が無意識に菩薩の棍を力強く握りしめた。

 

ま……

BLにまったく興味が無い者にとってはどうでもいい事である。

特に大魔王バーンを殺す気満々なのに未だに異元扉をくぐれない竜の騎士(ドラゴンのきし)バランにとっては。

「貴様!そこをどけ!」

無論、バランが異元扉をどう使うかを知るミストバーンがバランの命令に従う筈も無く、

「黙れ!ハドラーがバーン様の眼前に到達する事態を阻止出来なかっただけでも許し難い大罪だと言うのに……こっから先は誰も通さん!」

 

今日鬼岩城が揺れたのはこれで何度目だろうか?

「どいつもこいつも派手に()ってるなぁー?」

何度も揺れる鬼岩城に呆れるのは、ハドラーちゃんの行く手を阻んだガルヴァスとザボエラの足止めをしていた筈のガッルールである。

「これじゃあ、こいつのアレ(・・)を守りながら鬼岩城内を探索するのも一苦労だよ」

そう言いながら失神しているガルヴァスを引っ張るガッルール。

「結局、あの毒ダニは取り逃がしちゃったけど、ま、こいつのアレ(・・)をご覧になれば、ハドラー様の機嫌も何とかなるだろう……多分……」

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