ハドラーちゃんの強くてニューゲーム   作:モッチー7

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第43話

覇者の剣に生命の剣を上乗せしたハドラーちゃんと光魔の杖を手にしたバーンの激闘が始まろうとしている中、竜の騎士(ドラゴンのきし)バランとミストバーンとの異元扉争奪戦は熾烈を極めた。

「どけい!もはや、これ以上大魔王バーンを生かしておく理由はもはや無し!」

「断じて断る!これ以上バーン様を傷付けんとするなら、貴様もハドラーも死んで貰う!」

ここでバランの戦い方が未来ヒュンケルを焦らせる。

(まさか!バランはミストバーンの重大な秘密に気付いていないのか!?)

問題は、未来ヒュンケルがバランにどうやってミストバーンの正体を伝えるかだ。

1番手っ取り早いのは、アバンの空裂斬か自身の虚空閃でミストとバーンを切り離す事だが、その方法の問題はミストバーンが着ている闇の衣の強度だ。

ミストバーンが着ている闇の衣は、本来大魔王バーンの肉体を隠し護る隠れ蓑の様なモノで、それ故かヒムの闘気拳(オーラナックル)やラーハルトのハーケンディストールをもってしても完全破壊は叶わずと言う代物だった。

それに、闇の衣を脱いだ後のミストバーンが大人しく同じ場所に留まる愚行をするとは到底思えない。ミストバーンが空裂斬や虚空閃を躱しながら突っ込んで来る可能性も捨てきれない。それだけバーンがミストに貸し与えた闇の衣とバーンの肉体は非常に厄介なのだ。

だからこそ、未来ヒュンケルはフレイザード2号にミストバーンが闇の衣を脱ぐ前に極大消滅呪文(メドローア)で消し飛ばして欲しかったのだ。

もしもミストバーンの言い分が全て正しいと仮定するなら、ポップの極大消滅呪文(メドローア)すら弾き返したフェニックスウイングをミストバーンが使用するのは、ミストバーンが闇の衣を脱いだ時のみ。闇の衣を着ている状態では出来ない筈。そこに賭ける心算だった。

が……

(くっ!……フレイザードは……まだ戻ってこないのか!?)

肝心のフレイザード2号がキルバーンに持っていかれた。未来ヒュンケルにとっては想定外だった。

その間にも、ミストバーンについてまだ何も解っていないバランが、闇の衣を着ている状態のミストバーンを追い詰めてしまっている。

これでは、ミストバーンが何時激昂して大魔王バーンの許可無く闇の衣を脱いでしまってもおかしくはない。

不幸中の幸いだったのは、アバンが未来ヒュンケルの態度を視て疑念を抱いてくれている事だが、今のアバンがバランをどこまで止められるか……である。

 

そして……

未来ヒュンケルが恐れていたタイムリミットが、遂に訪れてしまった。

「貴様はそこで寝ていろ。異元扉!俺をバーンとハドラーの許へ連れて往け!」

(不味い!駄目だ!ミストバーンの前でその台詞は!)

 

1度はバランに叩きのめされたミストバーンが再び立ち上がる。

(最悪のシナリオだ!ミスト諸共バーンの肉体を消し去る事が出来れば、この後のバーンとの戦いがかなり楽になったものを!)

「誰が通すか……最早是非も無し!例え後にバーン様に死刑を言い渡され様とも、全力全壊で貴様を滅ぼす!」

「……愚かだな。ここで立てば、バーンに殺される前にこの俺に殺される事になると言うのに」

ここで遂に我慢が出来なくなった未来ヒュンケルが割って入る。

「止せバラン!」

が、アバンと違って未来ヒュンケルの行動に疑念を抱けなかったバランは、割って入って来た理由を理解出来ずに首を傾げた。

「何だ!?何故邪魔をする!?」

「フレイザード2号が戻って来る前にミストバーンを追い詰め過ぎるのは止めろ!バーンとの今後の戦いに多くの悪影響を齎す」

だが、今のミストバーンには、この言葉すらバーンとの間で結んだ機密を無許可で破る程の刺激でしかなかった。

「バーン様の今後、だと?それはつまり……」

ミストバーンが遂に闇の衣に手を掛けた。

「この闇の衣の中に何があるのか……全てを知っていると視た」

未来ヒュンケルは焦った。

このままでは、ミストバーンはフレイザード2号が戻って来る前に闇の衣を脱いでしまう。

「やめろ……」

「最早……貴様は無傷(タダ)では帰せぬ。全てを知った事を後悔しながら、貴様自身を終わらせてしまえ」

「やめろぉーーーーー!」

だが、意外な人物がミストバーンが闇の衣を脱ぐ事を妨害した。

「本当に良いのかなぁー。バーン様の許可無くそのフードを脱いでも」

「なあぁーーーーー!」

未来ヒュンケルは、ミストバーンが闇の衣を脱ぐのを妨害した者の姿を見て、気絶しかける程愕然とした。

フレイザード2号には、さっさとキルバーンとの戦いを終わらせてミストバーンが闇の衣を脱ぐ前に此処に戻って来て欲しかったのに、実際に戻って来たのは、そのフレイザード2号と戦っている筈の……キルバーンだった。

「何時如何なる時も、バーン様の許可無くそのフードを脱ぐ事は許されない。の、筈だよねぇー?ミスト?」

キルバーンの指摘を受け、ミストバーンが少しだけ冷静になった。

「……確かに……お前とて正体に迫れば命は無い。正体を他者に知らせる様な真似をすれば、この私ですらただでは済まない」

「なら、脱がない方が賢明じゃないのかな?」

「だが、あそこにいる竜の騎士(ドラゴンのきし)がバーン様を殺そうとしているのだ。止める必要がある」

「おいおい」

 

そんな事より、ミストバーンは何故キルバーンがここにいるのかが気になった。

「それより、奴はどうした?ハドラーの身代わりとなったあの者は?」

「……灰になったよ」

未来ヒュンケルにとっては最悪のシナリオだった。

ミストバーンを確実に倒す方法は『闇の衣を纏っている内に光の闘気で衣の状態で行動するミストを滅ぼす』か、『バーンの肉体に憑依している状態で空裂斬等で憑依しているミストを倒す』か、『極大消滅呪文(メドローア)でバーンの肉体諸共消滅させる』の三択しかない。

にも関わらず、肝心の極大消滅呪文(メドローア)担当であるフレイザード2号がキルバーンと戦い……そして敗れてしまったのだ。

確かにまだマトリフが残ってはいるが、確実性と連射性はフレイザード2号より劣る。

つまり、3つともミストバーンを確実に倒す方法とは言い難い状態に陥ってしまったのである。

そんな未来ヒュンケルに対し、キルバーンは嬉々として左腕を失った理由を語り始めた。

「しかし驚いたよ。この僕にバーニングクリメイションまで使わせたんだからねぇ。でも、お陰で良い表情が観られたよ。炎や氷が通用しないと思い込んでるあいつが、『そんな馬鹿なあぁーーーーー!』って叫びながら灰になる負け姿……滑稽だったねぇー。ま、贅沢を言うと、バーニングクリメイションを使わずにファントムレイザーやジャッジのみでそこまでもって行きたかったよ」

未来ヒュンケルは頭を抱えたが、一方のミストバーンはそんな事に興味が無く、ただの邪魔者と化した竜の騎士(ドラゴンのきし)の動向の方が気になっていた。

「そんな事はどうでもいい」

「……冷たいねぇ」

「それより、バーン様を殺そうとしているこいつらをどうするかだ」

そんなミストバーンに対し、キルバーンは少し焦った。

「待て待て。本当にそれで良いのかい?君のフードの事、『死人に口無し』で済むと思っているのかな?だとしたら、甘いよ。何せ、この僕に縁も所縁もあるあの人に君のフードの重大な秘密がバレたら、流石の……僕が初めてバーン様に謁見した時に言ってしまった失言すら許してくれた寛大なバーン様でも……」

「ん?あの人?」

「あれれぇー?忘れちゃったの?僕が初めてバーン様に謁見した時、ミストもそこにいたじゃないか?憶えてないの?」

「……そうだったな。お前は魔王軍の中でも特別な存在」

これには、急ぎ大魔王バーンを殺したいバランも流石に耳を傾けた。

「そこの黒いの……貴様はまさか?」

 

ミストバーンが語るは、キルバーンとピロロが初めて大魔王バーンの許を訪れた時の事……

「どちら様が……バーン様で?」

「……余だ。そう言う貴様は?」

「あの方の命により馳せ参じた者です……キル……バーン……とでもお呼びください」

「……キルバーン……だと?まさか……あやつの!」

「左様で。貴方様もよく御存知のあの方の使者でございます」

「……ふっ……協力者か……」

すると突然、バーンが満足げに高笑いを始めた。

「ふははははっ!笑わせるわ。その協力者も、我が計画がしくじろうものなら、たちどころに余の暗殺者へと早変わりするのだろう?」

そして、バーンは全てを見透かしたかの様にこう推察する。

「つまり地上破滅計画の監視役。KILLVEARN……つまり『バーンを殺せ』という暗号名か……!」

対するキルバーンの動じる事無く質問する。

「だとしたら……いかがなさる御心算で?」

で、バーンが出した答えは……

「……面白い!そんな物騒な死神を飼っておくのもまた一興かもしれん!」

「流石は魔界の神!懐がデカい!」

 

キルバーンの言う『僕が初めてバーン様に謁見した時に言ってしまった失言』の意味を知ったバランは驚きを隠せなかった。

「キルバーン……貴様はまさか……」

「その……まさかだよ。私は理屈抜きにお前に感心した。いきなり大魔王を前にしても、1歩も引かぬその図抜けた態度は見事だった」

「それと、君がミストバーンと呼ばれる様になったのは、あの事が原因だったけか?」

そんなキルバーンとミストバーンのやり取りを視て、バランは愕然とした。

(馬鹿な!?竜の騎士(ドラゴンのきし)たるこの俺が、あいつらの手の上で踊っていただけだと!?)

その時、クレオにボコボコに殴られ続けたホーモンがミストバーン達がいる玉座の間に墜落した。

「今度は何だ!?」

ミストバーンが困惑する中、ミストバーンを発見したホーモンがある意味自殺行為的な懇願を始めた。

「ミストバーン!?ちょうど良い!頼む!アレを……あの―――」

「無駄だよ」

対するクレオは、再びモシャスを掛け直してハドラーちゃんがよく知る姿に戻りながらゆっくりと降下・着地した。

「ミストバーンが君の体の中にある黒の核晶(コア)を起爆させる事は無い。いや!出来ない」

「何故!?」

「何だと!?」

クレオの推測にホーモンだけでなく、ミストバーンも驚いた。

なにせ、前の時間軸でもハドラーの胸に内蔵された黒の核晶(コア)の事をミストバーンはまったく知らなかったのだから。

「実際に大魔王バーンに訊いてみたらどうだ。ミストバーンがホーモンの体内にある黒の核晶(コア)を起爆させる事が出来ない……本当の理由を!」

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