ハドラーちゃんの強くてニューゲーム   作:モッチー7

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第45話

キルバーンの姿でミストバーンが闇の衣を脱ぐ事態を防ごうとしていたフレイザード2号は、大魔王バーンとの戦いを一旦(・・)終えたハドラーちゃんの許に、ミストバーンと共に到着したタイミングで正体を明かした。

「……お前が、あのキルバーンを倒したと言うのか?」

「はい。信じられないかもしれませんが」

それより、ハドラーちゃんの前にいる筈の大魔王バーンの姿が無い事が気になった。

「最早、あんな役立たずはどうでも良い!そんな事より、バーン様はどうした!?」

「ああ、それなら―――」

ハドラーちゃんが返答しかけたが、フレイザード2号がそれを阻む。

「それは違うよ。ハドラーちゃん」

「違う!?どういう意味だフレイザード!?」

フレイザード2号はミストバーンを睨みながら言い放った。

「そろそろ……そのおとぼけを辞めたらどうだい?……ミストバーン。いや、ミスト」

その言葉に、ミストバーンはドキッとした。

よくよく考えれば、変身呪文(モシャス)でキルバーンに化けてミストバーンに近付いた時、フレイザード2号はやたらとミストバーンが闇の衣を脱ぐのを嫌がっていた。

それはつまり、

「貴様……この私がこの闇の衣を脱いだらどうなるか、最初から知っていたな?」

「御名答。そして、貴様の本当の役目もね」

フレイザード2号とミストバーンのやり取りを観て不安になるハドラーちゃん。

「本当の……役目……いや、ミストバーンが大魔王バーンの最側近だろ?」

ハドラーちゃんの言葉に首を横に振るフレイザード2号。

「いいえ」

「……いいえぇー!?」

「バーンがミストに与えた役目は、最側近などの様な軽い物じゃな―――」

「黙れぇー!」

ミストバーンの伸縮自在な指がフレイザード2号に襲い掛かるが、フレイザード2号は軽々と回避した。

これがかえってハドラーちゃんにある確信を抱かせてしまった。

「フレイザード!お前もしかして知っているのか!?ミストバーンの―――」

「黙れと言っているぅー!」

(あのミストバーンがここまで焦っている?それってつまり、フレイザード2号はミストバーンの正体を知っている!?)

前の時間軸では、ミストバーンが闇の衣を脱いだ姿を見た事が有るが、その時の姿が何を意味するのかまでは知る由も無かった……

そうなって来ると、ますます気になってしまうミストバーンの正体。

が、ミストバーンのフレイザード2号への苛烈過ぎる連続攻撃を視ると、そう簡単に正解を言ってくれるとは思えなかった。

「……異元扉の仕業だな?あのバカドア、フレイザード2号に何を教えた?」

 

「ここまで来てまだ白を切る気か?」

殺してでもフレイザード2号の口を塞ごうとするミストバーンの姿を視て、フレイザード2号は言い方を変えようと判断した。

「なら、質問を変えよう!ハドラーちゃん!」

「そんな事より、俺は加勢しなくても良いのか!?」

が、フレイザード2号はハドラーちゃんの加勢をきっぱり断った。

「ハドラーちゃんは、さっき大魔王バーン討伐の第1段階を終えたばかりでしょ?もう少し休んでない、と!?」

「黙れ黙れ黙れぇー!」

「……第一段階?」

ハドラーちゃんが首を傾げ続ける中、フレイザード2号が一見場違いな質問をした。

「それよりハドラーちゃん、不老不死になる方法って、知ってる?」

「……は?」

「大魔王バーンは知ってるよ!不老不死になる方法をー!」

フレイザード2号のこの言葉に、ハドラーちゃんは驚きを隠せなかった。

「大魔王バーンが不老不死だと!?それじゃあ―――」

が、フレイザード2号はハドラーちゃんを安心させるべくこう言い放った。

「でも大丈夫!大魔王バーンを殺す方法はある!」

「いい加減、その軽い口を閉じろぉー!」

ミストバーンが必死にフレイザード2号を殺そうとするが、真実を語ろうとするフレイザード2号の口は止まらない。

「大魔王バーンは、生きながら肉体と魂を別ける事に成功したんだ!あまり肉体を使うと老いぼれてしまうからねぇー」

「肉体と魂の分離……それって死んだって意味ではないのか?」

「ところがどっこいそうじゃないんだなぁー」

「黙れ!」

ハドラーちゃんはやはり理解に苦しんだ。

肉体が魂を失ってしまうと不老不死が全く繋がらないからだ。

ただ、ミストバーンのあの焦りからフレイザード2号が大魔王バーンに関するとんでもない真実を知っている事だけは確かである。

「ただ」

「……ん?!」

「魂を失った肉体を常温で保存したら腐敗してしまうし、かといって氷系呪文(マヒャド)を使って冷凍保存したら、肉体が重度の凍傷になって使い物にならなくなる。そこ―――」

「死ねぇー!」

やはりフレイザード2号が知る真実が気になったハドラーちゃんは、フレイザード2号の制止を振り切って加勢する。

「フレイザード……もっと解り易く言え!それまで、ミストバーンは俺が抑える!」

「でも―――」

「これは命令だ!フレイザード2号!」

「やめろ!」

「……ああ」

「やめろぉーーーーー!よせぇーーーーー!」

 

「えーとぉー……確かぁー……おお!そうだ!大魔王バーンが幽体離脱を利用した不老不死を会得したまで話しましたっけ?」

「黙れぇーーーーー!どけ!ハドラー!」

「どけぬなぁー。俺も、フレイザード2号が語る奇妙な話の続きが気に、なる!」

ハドラーちゃんはミストバーンの手刀を弾きながら蹴り飛ばすが、その時の感触に違和感を感じた。

(なんだ?この感覚は?どう形容したら良いんだ?)

そんなハドラーちゃんが感じた違和感の正体も、フレイザード2号は既に知っていた。

「で、幽体を失った肉体を保存する最も都合の良い方法……それが」

フレイザード2号に飛び掛かろうとするミストバーンであったが、ハドラーちゃんがそれを阻む!

「さっさと答えを言え!フレイザード2号!」

「凍れる時間(とき)の秘法」

ハドラーちゃんは、ここでやっと合点が入った。

「つまり、大魔王バーンの肉体から魂を抜き取り、その上で何者かが大魔王バーンの肉体を凍れる時間(とき)の秘法を用いて封印した……」

フレイザード2号はカッコつけるかの様に指を鳴らした。

「そう。で、大魔王バーンの肉体に凍れる時間(とき)の秘法を掛けたのが、大魔王バーンの幽体……それが大魔王バーンが永遠に死なない理由なのです」

「と言う事は?」

「ハドラーちゃんがさっきまで戦っていたのは、大魔王バーンの幽体なんです」

「そうだったのか……幽体だけであれだけの強さ……相変わらず空恐ろしいな?大魔王バーンは」

が、フレイザード2号の真実語りはこれで終わりではなかった。

「でも、大魔王バーンが現在進行形で行っている絶対に死なない方法には、1つだけ欠点があります……」

ミストバーンは遂に闇の衣を脱ぐ事を決断した。

「お許し下さい!バーン様!私はもう、フレイザード2号の余計な言葉を聴く気にはなれません!」

「このタイミングで例のフードを脱ぐのかよ!?」

「フレイザード……お前の推理は、ほぼ正解だった様だぞ?」

そして……ハドラーちゃんが前の時間軸で1度だけ見たあの姿を、ミストバーンは遂に晒した。

「へぇー。例のフードの中って、意外と柔和で美形だったんだね?そっちの方が格好良いよ」

が、闇の衣を脱いだミストバーンの容姿を褒めるフレイザード2号に対し、ミストバーンはドスが効いた低音で答えた。

「……私のこの姿を視てしまったが何を意味するのか……知らぬとは言わせぬぞ……フレイザードぉーーーーー!」

 

一方、一向にピロロからの連絡が届かない事にイライラするヴェルザー。

「クソ!何がどうなっている!?ピロロはどうした!?」

そう言われた配下の者達も、状況が全く把握出来ていないので答え様が無い。

「何らかの緊急事態により、我々に念話を送れない状態にあるとしか……」

無論、ヴェルザーはその様な中途半端な答えで納得する訳が無い。

「それくらい言われんでも判るわ!」

「すいましぇん!」

「ん!」

そして、ヴェルザーは不満そうに悪魔の目玉を観る。

ちょうどミストバーンがハドラーちゃん達の前で闇の衣を脱ぐ姿が映っていた。

「ぬ!?この姿は!?」

ヴェルザーと違って大魔王バーンの姿を直接見た訳じゃない配下の者達は、主君であるヴェルザーが何故困惑しながら首を傾げたのかが理解出来なかった。

「ヴェルザー様?何をそんなに難しい顔を―――」

だが、ミストバーンの姿に思うところが有るヴェルザーの耳には届かない。

(何故!?……闇の衣からあの男が出て来た!?……まさか……)

そして、ヴェルザーはハドラーちゃんがミストバーンに敗北する事を予見する。

「オレの予想が正しければ……ハドラーはもう直ぐ死ぬ……」

「ミストバーンが……ハドラーを殺すと?」

ヴェルザーは苦虫を嚙み潰したような顔をしながら答えた。

「そうだ。まさか奴があんな所に居たとは……」

 

ヴェルザーは元々、魔界の実力者同士として大魔王バーンと対立していたが、魔族や竜族を魔界に押し込めた神々を憎む気持ちは一致するところであった為、数百年前に『各々に神になるための戦略を進め、成功した方に従う』という協定をバーンと交わした。

しかし、バーンが地上の消滅を最終目的としていたのに対し、ヴェルザーは地上を手に入れ支配する事を目論んでおり、両者の思惑には違いがあった。そこで、監視役兼暗殺の目的でピロロを友好の証と称して、バーンの元に送り付けたのである。

だが……

 

「ピロロめぇー!いったいどこで道草を食っている!?今こそキルバーンの本当の目的を果たす時だろ!」

が、ヴェルザーの念話は、何時まで経ってもピロロには届かない。

「くそぉー!」

「まさかとは思いますが……ピロロは既に……」

配下の口から出た予想に、ヴェルザーは嫌な予感がした。

「既にピロロがバーン一味の誰かに討たれたと言うのか!?」

(だとすると……こうなったらハドラーがバーンを倒してくれる事を願う以外に無い。何兆、いや何京分の一の確率に過ぎぬが!)

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