ハドラーちゃんの強くてニューゲーム   作:モッチー7

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アニメ版のハドラーの月命日が16日と決まった様なので(涙)……
その月命日にうぼのあん氏(https://www.pixiv.net/users/159931)の16年前に戻ってやり直すハドラー(https://www.pixiv.net/artworks/86959749)を参考に(パクった)、ハドラー様が魔法騎士レイアースの獅堂光の様な姿になるお話を作ってみました。

pixiv版→https://www.pixiv.net/novel/series/8799426

暁版→https://www.akatsuki-novels.com/stories/index/novel_id~28358

星空文庫版→https://slib.net/116880


第5話

ロン・ベルクへの挑発を終えたハドラーちゃんは、図らずもキルバーンと対峙していた。

だが、一見するとハドラーちゃんの方が追い詰められている様にしか見えず、後は綱引きの要領で巨大な鎌を引っ張るだけでハドラーちゃんの頸を斬り落とせそうである。

しかし……

「ボクが君を殺す前に1つだけ訊きたい」

「……なんだ?」

「君がさっき言った『また』ってどう言う意味だい?」

それを聞いたハドラーちゃんは、何も答えるクスッと笑うだけだった。

そう、あのキルバーンですら俗に言う『強くてニューゲーム』の妙に引っ掛かったのだ。

「答えは無しか?よほどの自信がある様だが、高くつくよそういう態度は。いくらすごい呪文を持っていても、この状況をどうにか出来るとは思えないけどねェ」

対して、ハドラーちゃんは自信満々だった。

「試して視るか?」

「あ、そう。それ……あれ?鎌が……死神の笛が動かない!?」

キルバーンは驚いているがなんて事は無い。

ハドラーちゃんがただ鎌の柄を握っているだけである。

「おいおい(笑)、こんな小娘の細腕1本如きに何が出来る(笑)?」

「ほほう。見た目に反して腕力にはかなりの自信が有る様だね!?だが、敵に背を向けているのは君の方である事には変わりはないよ」

ハドラーちゃんが再びクスッと笑った。

「ほう。そんなに俺の逃げる背中が見飽きた言うのであれば―――」

(まただ!こいつ、初対面のボクに向かってまた『また』を使った!?)

体をクルッと回転させてキルバーンの方を向くハドラーちゃん。

「だったら、俺の欲の皮が突っ張た顔を……」

ここで一旦自分の台詞を止めるハドラーちゃん。俗に言う『強くてニューゲーム』の妙を利用する為に言い方を変える為だ。

「またまた拝ませてやる!1周目(あのころ)の様にな!」

「!?」

が、ここでハドラーちゃんに少しだけ迷いが生まれた。

(とは言ったモノの……バランの証言が全て正しいと仮定するなら、キルバーンに対して覇者の剣を使用するのは禁忌の筈。何で攻撃したら良い?)

2人共、何だかんだで固まってしまったが、先に動いたのはハドラーちゃんの方だった。

(多分牽制にすらならんが……取り敢えずこれで!)

キルバーンに地獄の爪(ヘルズクロー)を打ち込んで仰向けに倒した。

「ウ……ガァッ!オ……アアアッ……」

だが、ハドラーちゃんは勝ち名乗りをあげない。それどころか、

「猿芝居は辞めろ死神……立て!」

その途端、キルバーンがすくっと起き上がった。

「本当につまらない女の子だね君は。ボクの渾身の死んだフリをこうも早く見抜くなんて」

「ほんとだよねー。もうちょっと驚いたって良いのに」

それを見てニヤリと笑うハドラーちゃん。

「フッ。生憎、貴様の復活を見たのは、これが初めてではないのでな」

 

1周目(かつて)キルバーンから受けた仕打ちを思い出しながらキルバーンに向かって歩くハドラーちゃん。

死の大地でのダイやバランとの戦いの時は、バランがキルバーンの予測不可能な嫌がらせに引っ掛かったせいで真魔剛竜剣の切れ味が悪化。更に、バーンがハドラーの胸元に埋め込んだ黒の核晶(コア)の存在もあってか、最悪な意味でバランを本気を出せない状態にまで追い詰めてしまい、ハドラーにとっても罪悪感を伴う不完全燃焼で不本意な結果になってしまった。

この事が、ハドラーがバーンを裏切る決意を固める切っ掛けとなった。

大魔宮(バーンパレス)でのダイとの最期の戦いの時も、もうこのままダイのギガストラッシュに敗れたで良いじゃんと思った矢先にキルバーンが◇の9(ダイヤ・ナイン)を発動させてダイをハドラーごと焼き殺そうとし、そんなダイを救出しようとしたポップが換わりに死の淵を彷徨う羽目になった。

もしあの時にアバンが乱入してくれなかったら、ポップを巻き添えにしながら死ぬと言うこれまた不本意な結果で終わっていたのかもしれない。そう言う意味では、ある意味人間の神の粋に救われたと言えるのかもしれない。

故に、ハドラーちゃんはバーンやザボエラと同じくらいキルバーンの事が大嫌いであった。

「そう言えば、先程の質問の答えがまだだったな?」

「!?」

「質問の内容は確か……何で俺が貴様に向かって『何度も』を使ったのか?だったか?」

「!?」

キルバーンもピロロも完全に俗に言う『強くてニューゲーム』の妙に完全に振り回されていた。

「質問に質問で返すのは無礼の極みだがあえて訊こう。何故、その様な人違いの様な台詞にいちいち反応する?何か……隠し事でもあるのか?」

「黙れ!」

ハドラーがキルバーンを翻弄すると言う1周目(むかし)だったら絶対に有り得ない光景に苦笑するハドラーちゃん。

(あの死神が、俺如きの台詞に完全に動揺している……これでますます、あの頃の俺が何故魔王を名乗れたのかが、更に解らなくなったな……)

「例えば……俺が何故覇者の剣を使わなかったのか?」

「!?」

「それは……貴様の体に流れている血液は魔界のマグマと同じ成分で、温度は超高熱そして強い酸を含んでいる……だったか?」

「何故それを!?何時知った!?」

(おいおい。とうとう不要な深読みまで始めちゃったよキルバーンの奴……)

(何なんだこいつ!?どこまでボクの事を知ってるんだ!?)

無論、憎きキルバーンが泥沼から這い上がるのを待つ義理は無い。

ハドラーちゃんは、意を決して両腕から地獄の爪(ヘルズクロー)を生やした。

「キルバーン、貴様相手に呪文は禁忌……なのだろ?なら、こいつだけで相手をしてやる」

呪文を使用しないと豪語したハドラーちゃんに驚くキルバーンとピロロ。

「何!?」

ハドラーちゃんが地獄の爪(ヘルズクロー)だけでキルバーンと戦うと宣言したのは、確かにキルバーンの血で覇者の剣を汚したくないのとキルバーンがはまっている泥沼を利用したいと言う卑劣な下心も有るが、1番の理由は最後までバランの前で正々堂々をしてやる事が出来なかった事への罪悪感である。例え意図的であろうと不本意な物であろうと。

バランがバーンの誘いに乗ってハドラーの部下になった時はダイの正体が竜の騎士(ドラゴンのきし)である事を保身的な理由でひた隠しにし、バランがバーンを裏切ってダイと共に死の大地に乗り込んで来た時は、先程述べた通りのバランが理不尽な程不利過ぎる戦いに知らず知らずの内に陥れてしまった。

結局、バランはハドラーに対して1度も呪文を浴びせた事は無かった。ならば、ハドラーちゃんが呪文を一切使わずに地獄の爪(ヘルズクロー)だけでキルバーンを倒してもバチが当たらない筈だと。

対するキルバーンとピロロは、更に『強くてニューゲーム』の妙に完全に振り回されて不要な深読みに溺れた。

とある理由から、キルバーン相手に派手な呪文を使用するのは本当に禁忌だったのだ。

実際はその事をハドラーちゃんは知らない。だが、ハドラーちゃんが言い放った憶測のブラフがまさかの的中だった為、キルバーンとピロロは更に混乱してしまったのだ。

(そこまで知っているのか!?何て奴なんだ!?)

 

バランに対して正々堂々をしてやれなかった報いと言う清い罰とキルバーンが陥ってる混乱を悪用する邪な策、両極端な2つの理由によって地獄の爪(ヘルズクロー)のみでキルバーンと戦うハドラーちゃん。

「来い!キルバーン!」

一方のキルバーンとピロロも、これ以上ハドラーちゃんの口を開ける訳にはいかないと言う焦りからか、ファントムレイザーで早々にハドラーちゃんの頸を斬ろうとする。

「遠慮無く」

だが、そんな2人の戦いは、2人にとっては意外過ぎる声色によって阻まれた。

「お待ちください。ハドラー様」

この声色は、正にミストバーン。

まさかこの場で聞こうとは。そう思いハドラーちゃんもキルバーンも声のした方向を向く。特にハドラーちゃんは、1周目での魔族を辞めて超魔生物に成る途中からミストバーンに奇妙な思い入れがあった。

だがそれも、バーンが仕組んだ黒の核晶(コア)によって無効となったが。

で、実際にいたのはさまようヨロイであった。

ハドラーちゃんは、一呼吸おいて冷静になってから冷ややかに苦言を呈した。

「一介の下っ端が魔王の決闘に水を差すとは、事と次第によってはタダでは済まんぞ?」

それに対し、さまようヨロイが即座に反論する。

「その様な場所で道草を食ってる場合ではございません」

それを聞いたハドラーちゃんが少しだけ青くなった。

(しまったぁー!バーンの目論みとそれに伴う地上側の被害ばかり気にして、キルバーンの危険性まで伝えておらんかったわ!)

「貴様は気付かんのか?俺の目の前にいる死神がどれ程危険なのかを」

しかし、さまようヨロイは意にかえさずに近況報告を行うのみであった。

「それどころではありません。オトギリ姫が、何者かに殺害されました」

「は?」

ハドラーちゃんにとっては別段驚く事ではなかった。寧ろ、目の前のキルバーンとピロロの方が何百倍も危険だとしか思えなかった。

「あー、おとぎりひめね。たしかぁー……んー……誰だっけ?」

さまようヨロイがコケそうになりながら説明する。

「地上の海に拠点を置いて独自の勢力を築こうとしている!」

そう説明されても、やはりピーンとこないハドラーちゃん。

「独自の勢力?後から来て俺の上前はねる気か?いい度胸じゃないか」

とは言ってみたものの、やはりハドラーちゃんはピーンとこない。

やはり1周目で超魔生物や親衛騎団ですら苦戦する程の強敵を沢山見てきた影響なのか、ハドラーちゃんはこの段階で既に脱落する侵略未遂者の怖さが判らなくなってきている様だ。

だが、さまようヨロイの次の言葉がこの場の空気を変えた。

「そんな暢気な事を言ってる場合ではありません!容疑者は、勇者アバンです!」

「何!?あのアバンがか?」

その途端、ピロロが悔しそうに舌打ちし、ハドラーちゃんがそれを聞き逃さなかった。

(ん?キルバーン達のあの舌打ちは……つまり、独断でこの俺を殺そうとしたのか?この俺の悪口が、本当はバーンの耳に届いていないと言うのか!?)

でも、バーンに黙殺されているかもしれないと言う不安をひた隠しにしながら気丈に振る舞うハドラーちゃん。

「ハハハハハ!あのひよっこ勇者がなぁ……」

ここで一旦、キルバーンとピロロを見るハドラーちゃん。

そして、自分が本当に黙殺されているのかを確認する意味を込めて言い放つ。

「これはこれは、俺は近々、サババに赴いてひと暴れする予定だから……そこでアバンに逢えるかが楽しみな所よ。アーハハハハハハ!」

ここでキルバーンの混乱を利用する為の駄目押しの一言が、

「そう言う訳だキルバーン。もう少し貴様の仮面の裏に溜まったおできの治療を手伝ってやりたいが」

「あーーーーー!?」

「残念ながら先客に急かされている様だ」

ピロロがハドラーちゃんの言い分を遮る様に叫ぶが、ハドラーちゃんは意に関せずに高笑いしながら地底魔城へと帰って往った。

 

ハドラーちゃんが去り、キルバーンがさまようヨロイ……を裏で操る者に訊ねた。

「良いのかい?このままハドラーを見逃して?」

「怖いのか?」

質問に質問で返されたキルバーンであったが、気にせず質問を続ける。

「あー怖いね。ハドラーは、せっかく手に入れたオリハルコン製の剣を、あのロン・ベルクに預けたんだ。怒られるの承知の挑発と言うダメ押し付きでね」

「ロン・ベルクの奴、今頃、ハドラーを見返そうと必死に例の剣を研いでたりしてぇー?」

が、さまようヨロイを操る者は意に返さない。

「貴様の事だ、この私がロン・ベルクの腕を忘れたなどと言うボケをかますと思ったか?」

「思いたくないね。それに、ハドラーは色々と何かを知り過ぎた感じがあるんだよねぇ」

「良いのかなぁー?アイツがバーン様にとって都合の悪い事実を言いふらしても?」

ピロロのその言葉で、さまようヨロイを操る者はキルバーンとピロロが、何故ハドラーちゃんをわざと見逃すと言う命令にそこまで嫌がるのかの本当の理由に触れた気がした。

(なるほど……バーン様の意に反してハドラーを葬ろうとしたのは、ただの口封じか?)

「それは確かに困るな。だがキルバーンよ、それほど付き合いの長い仲間ならば、こういう時に私が何と答えるのかも、十分に承知している筈だが?」

それを言われ、溜息をするキルバーン。

「はいはい。『大魔王様のお言葉は』」

「『全てにおいて優先される』」

少し呆れるキルバーンとピロロ。

「本当にバーン様が好きだねぇ君は?」

「恋でもしてるのかなぁー?」

だが、さまようヨロイを操る者は意に返さない。

「これでまた、当分はだんまりかい?必要が無いと100年でも200年でもだんまりなんだからなぁ」

それを最後に会話は打ち切られ、3人もまた姿を消した。




原作ではありそうでなかった、ハドラー対キルバーンです。

『強くてニューゲーム』の最大の武器は、ストーリーを知り尽くしている事。しかも、敵であるキルバーン(とピロロ)はダイの大冒険シリーズ屈指の嘘吐き!
これはかなり効果的だと思いますが、如何せん、ハドラーはアバン再登場以降のストーリーを知らないときている。
つまり……ブラフです(汗)。

後、原作ではバラン相手に1度も正々堂々をしてやれなかったハドラーですが、本作では真っ当な決闘を最低でも1回はさせてやる予定です。
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