「つまり、今度はハドラーの手下がミストに憑かれて乗っ盗られたと言う訳か?」
「そう言う事だ。
バーンの肉体をバーンに返却したミストが次に選んだのは、戦略的に1番厄介と思われる者、フレイザード2号であった。
が、
「……だから何だ?」
バランは意に介さず、淡々とかつ冷酷に剣を振り下ろした。
「おっとぉ。危ない危ない。貴様、フレイザードごとこの俺を斬る心算だったか?」
「もし、ハドラーがバーンを失ってもなお地上界征服の野望を捨てぬのであれば、いずれその女も私の敵となる」
バランの正論に、マトリフも未来ヒュンケルも呆れた。
「おいおい」
「相変わらずなのだな?この男は」
対するミストは臆せず挑発を続ける。
「本当は、この俺とフレイザードを切り離す方法を知らぬだけではないのか?先代共が蓄積し続けてきた闘いの遺伝子も、案外―――」
「黙れ」
バランは聞く耳持たぬとばかりに紋章閃を放った。
「弱い犬程よく吠えるとは……よく言ったものだ。暗黒闘気の集合体、実体は持たず闇の塊よ」
バランのこの言葉に、ミストは不快感を露わにした。
「貴様……人が1番気にしている事を……言ったなぁーーーーー!」
ミストがメラゾーマを放つが、
「今更
楽々とメラゾーマを微塵切りにするバランであった。
「この真魔剛竜剣は
だが、ミストは不敵で邪な笑みを浮かべた。
「なら……生半端を超えた攻撃でなら、砕けるのだな?」
その直後、ミストの指先に5つ火の玉が灯る。
「本当の小手調べは……ここからよ!
メラゾーマを5発同時に放つミストを観て、ミストの意地悪さに怒るマトリフ。
「ふざけるなお前!その呪文がどれだけ体に負担を掛けるか、解ってて使ってんのか!?」
だが、それに対するミストの答えを冷酷そのモノであった。
「生憎だが、この俺がどんなにこの肉体に負担を掛けようと、ダメージを負うのはフレイザードのみ。この俺にはなんの影響も無い」
その言葉に、アバンは激怒した。
「だとしたら、この様な卑劣な方法で手下を失ったハドラーが不憫でならない」
「ハドラーが不憫?ハドラーの野望からこの地上を守ろうとしている勇者が、何故その台詞を―――」
「この際敵味方は関係無い!ハドラーの部下達は皆、自らの誇りを賭けて、全身全霊で戦う者ばかりだったぞ」
その言葉に、ミストは少しだけドキッとする。
「彼らの必死の戦いを蔑むなど……邪悪な魔物としての器すら疑わしい!それがお前の本心だと言うなら……ミスト!既に敗れたり!」
アバンの怒りの言葉に完全に動揺したミストは、半ばヤケクソになった。
「黙れ黙れ黙れ!俺は自らの肉体を持たぬ故に、自らを鍛えて強くなる性質とは無縁だった。お前らの言う通りの只の寄生虫だよ……だからこそ俺は、肉体が欲しかったんだよ!故に、そんな俺に肉体を与え、任務を与え、生きる意味を与えて下さったバーン様には、永遠に返しきれぬ恩を貰ったのだあぁーーーーー!」
その途端、ミストの全ての指に炎と冷気が宿る。
「滅べ!
ミストは、メラゾーマ5発同時発射とマヒャド5発同時発射を同時に行った。
「お気の毒に……フレイザードの野郎、もう死んだんじゃねえのか?」
だが、ミストの猛攻もマトリフの皮肉もものともせず、堂々と前へ進むバラン。
「能書きはそれだけか?ならば……今度はこっちの番だ!」
「まだまだ!
いくらフレイザード2号が敵にすぎないからって、フレイザード2号の体調度外視で戦い続けるミストとバランに怒りが収まらないアバン。
「なんてふざけた戦いだ……敵の身体なら何やっても良いと言うのか?これなら、ハドラーの方がよっぽど紳士的だったぞ!」
意を決してミストとバランの戦いに飛び込もうとするが、ミストがメラゾーマとマヒャドを出鱈目に連発するミストに嫌な予感がしたマトリフがそれを止める。
「待て!あの野郎は、ただ何の脈略も無くあんなふざけた呪文を使ってるわけじゃねえぇ!」
そう、ミストが
「な!?何だ!?この光は!?」
「フレイザードがよく言う『炎と氷の黄金比』!炎と氷の熱エネルギーを操作する魔法力を融合しスパークさせる事で、全ての物質を消滅させるエネルギーに変える!」
「うおおぉーーーーー!?」
「消し飛べえぇーーーーー!現代の
前の時間軸でマトリフが
「あの光は……確か……」
「……
ミストが
「どうだ!?やったかぁー!?」
幸いな事にバランは死亡を免れた。だが……
「……ボロボロじゃねぇか……戦えるのか?こんな状態で?」
バランは確かに即死を免れたが重傷であった……平然と立って歩くが奇跡と言える程の……
「これでまだ生きているか……だが……」
が、バランはまだ戦う事を辞めない。
それどころか、
「貴様ら……ここから離れろ。死にたくなければな」
ここにきて、バランは最後の切り札を使う決意をしたのだ。
「まさか!?アレを使うのか!?」
「そうだ。アレだ」
マトリフは、バランのハチャメチャな決意にドン引きした。
「……マジかよ?」
対するミストは、待ってましたと言わんばかりに挑発する。
「やれるものなら、やってみろ……竜魔人を!」
バランが左目に付けていた「竜の牙」を握り締めて天に掲げ、雷をその身に受ける事により、竜・魔族・人の3つの力を持つ竜魔人に姿を変える。この変身により、血の色が人の赤から魔族の青へと変化し、容貌も背中に竜の翼を持つ人型の魔獣のような姿と化す。
対するミストは……何もせずに仁王立ちであった。
ここで漸くミストの目論見を見抜くアバン。
「しまった!これは罠だ!」
「……罠?」
「ミストがフレイザードを始末しつつバランの肉体を奪う為に!」
マトリフの背に、すうっと冷たい波が揺らめき走った。
「つまり……
そうとは気付かず、竜魔人となったバランがミストの思惑通りにフレイザード2号を殴り殺そうとした。
が、
「う!?」
ミストの計算通りは、ここまでだった。
ミストに操られていた筈のフレイザード2号が、突然
しかも、
「躱せ!バラン!」
バランは
「これが……本物の『炎と氷の黄金比』……
想定外の展開に、ミストが少し焦る。
(馬鹿な!?フレイザードが俺の言う事を聞かない!?どうなっている!?)
だが、そんなミストの焦りを無視して、戦いはミストの想定外の方向へと進んだ。
「先程の一撃を視ても解る通り、
そう言うと、フレイザード2号は再び
「私の
フレイザード2号の挑発に乗ったバランが、
「貴様はどの道ハドラーの手下……消える定めよ!
だが、対するフレイザード2号は
「何!?」
「血迷ったか!?」
「ミストを道連れにする気か!?」
ここにきて、ミストはフレイザード2号の体から出る事を決意する。
(本当はもっとバランに近付いて欲しかったが、ま、バランは既に竜魔人と化して冷静さを失っている状態……バランの体を乗っ取るチャンスはまだまだある)
しかし!
(何!?出られない!?何故!?……まさか!?)
「気付くのが遅かったなミスト……アバンのアホが余計な事を言い過ぎて、バランが
「貴様!?最初から俺に憑かれて乗っ盗られる事を想定して……いや、そう仕向けたのか!?」
「そのまさかさ!お前に憑かれた状態で
そう言うと、フレイザード2号は本当に
「あーーーーー!?やめろおぉーーーーー!そんな事をすれば、貴様も
絶体絶命故に焦るミストに対し、フレイザード2号は飄々とギャグを言う様にミストの言い分を否定する。
「あれれぇー?大魔王バーンの手下らしくない事を言ってるぅー?それとも、私ってそこまで驚異じゃないって事ぉー?ショックぅー」
「止せ!考え直せ!貴様とバラン!どっちが消えた方がハドラーにとって得か!これ程の狡賢さを持つ貴様なら解るだろ!」
「そんなバランを倒して、ハドラーちゃんが最強に成る。そんな感じなんだよ、最近のハドラーちゃんって」
「やめろおおぉーーーーーーーーーー!」
フレイザード2号はミストの命乞いに耳を貸す事は無く、ミストは為す術無く
「……どっちだ?」
アバン達はそう思うが、バランはそれ以前の事が気になっていた。
「何!?
対するフレイザード2号は、高らかと勝利宣言をする。
「いや……
そんな勝利宣言にマトリフは心底呆れた。
「マジかよ……まさか、
しかし、フレイザード2号はアバンを見ながら首を横に振った。
「いや、この作戦には1つだけ不安要素が有った……アバン、アンタだ」
「私?」
フレイザード2号の予想外の指摘にキョトンとするアバン。
「貴女が計画したミストバーン討伐において、私のどこが邪魔だったのです?」
「それは、『私がアンタより賢い』とミストに勘違いさせるのに苦労した。と言う事だよ。特に、あの時の『彼らの必死の戦いを蔑むなど』の部分。アレのせいで予定より早くミストに私の意図がバレそうになったんだからね!」
その言葉に、アバンは漸く納得する。
「……なるほど。つまり、ミストが貴女に乗り移りたいと思わせないと意味が無いと」
「そう言う事。もし、あの時ミストが私ではなくアバンを選んでいたら、
「だが、結局はそうはならなかった。ミストバーンはフレイザードに騙され続け、乗り移る相手を間違えちまった。ミストバーンもバランも、見事にあんたの手の平かよ」
漸く通常に戻ったバランが居心地悪そうにしていた。
「お前ら……遠回しに私の事を馬鹿にしていないか?」
「遠回しどころかド直球だろ。まんまとフレイザードに利用されたんだしな」
バランは改めて異元扉を使ってバーンの肉体を追う事にしたが、
「どうやら……あんたはここで一休みの様だな?」
「ハドラーちゃんがバーンの野郎と戦ってるって時にか?」
「無茶言うな。そんな体で往ってもハドラーの足を引っ張るだけだぜ」
マトリフの薦めを受け、体調が回復するまでしばし待つ事にしたフレイザード2号。
「ま、どの道、こいつをバーンの許に届けなきゃいけないけどね」
フレイザード2号が隠し持っていた物、それは、キルバーンの生首だった……
本作は、大魔王バーンを倒す為の力を得る為と称して、色々な道草・寄り道・回り道を続けてきましたが……
次回からは、いよいよ(漸く)ハドラーちゃん達VS大魔王バーンが開幕します。
今日まで、筆者の駄作にお付き合いいただき、真に有難う御座います!
そして、この後も最終回までのお付き合いを、よろしくお願い申し上げます!