フレイザード2号がミストに乗っ取られたフリをしながら
(これが……本物の大魔王バーン!?)
クレオは密かにバーンを鑑定した。
HP:2075
MP:∞
攻撃:1145
防御:741
速度:718
そして……鑑定した事を後悔した。
(何だ!?この出鱈目な能力値は!?リェータ帝国の連中全員ですら雑魚に見えてしまう!)
クレオがバーンの力に臆したが、バーンの真の実力を知らないホーモンが怒り気味にバーンに問う。
「バーンよ……何故だ?」
「何故……とは?」
「とぼけるな!貴様は地上界を跡形も無く消し去ると宣言した筈だろ!?」
「そうだ。地上と言う名の天蓋を穿ち、魔界に燦々たる陽光を齎す。それが、余の役目―――」
「では何故!?……この私の身体に黒の
「ん?それでは、太陽の光で照らされた魔界を見届ける事が出来ぬではないか」
それだけで十分だった。
ホーモンがバーンに騙された事実をホーモンに突き付けるのは。
「……ハドラー……お前の言う通りだったよ……私はバーンに利用された……捨て駒だったよ!」
ホーモンは躊躇無くはかいのてっきゅうを振り下ろした。
「あ!?バカ!」
クレオの制止を無視してバーンを攻撃するホーモンに対し、バーンは呑気に片方の腕を天に、もう片方の腕を地に向けた構えを取る。
「アレは!?」
(空手の……天地上下の構え。なんでバーンは相手の蹴りを防御しつつ反撃する場面に特化している防御重視の構えを、何故知っている!?)
「停まれホーモン!あの構えを攻撃するな!」
クレオの絶叫は……遅過ぎた!
ホーモンが振り下ろしたはかいのてっきゅうは跳ね飛ばされ、当のホーモンは袈裟斬りを受けながらカイザーフェニックスで吹き飛ばされた。
「ホーモォーン!?」
慌ててホーモンに駆け寄るクレオ。
「ホーモン!死んじゃ駄目だ!」
そんなクレオを見て怒鳴り散らすホーモン。
「何でお前が私を心配する?私は敵だぞ!」
でも、クレオは持論を曲げない。
「違う!貴女は世界にBLと言う希望の光を与える救世主なの!死なせる訳にはいかない!」
「何を言っている……私はそのBLが作り出してしまった生まれるべきではない忌み子……」
クレオと口喧嘩している最中にバーンの言葉を思い出すホーモン。
「地上と言う名の天蓋を穿ち、魔界に燦々たる陽光を齎す。それが、余の役目」
その途端、ホーモンは泣き崩れた。
「そうだった……バーンの奴は地上界を消滅させる事ばかり考え、魔界のBL事情には見向きもしていなかったんだな……ちょっと考えれば判る事だったのに……」
そんなホーモンの涙に、クレオは何も言えなくなった。
「……ホーモン……」
対するバーンは、先程ホーモンを吹き飛ばした技の解説を嬉々として行っていた。
「この構えを攻撃するなか……あんた、鋭いな」
これだけでバーンが大魔王の名に相応しい冷酷非情かつ自分本位な性格だと理解出来たクレオ。
「『天』すなわち攻撃。『地』すなわち防御。『魔』すなわち呪文。三拍子そろった鉄壁の構え……これぞ、『天地魔闘の構え』」
先に仕掛けたのはホーモンの方とは言え、そんなホーモンを躊躇せず切り捨てるバーンに対して静かに深く怒るクレオ。
「言いたい事はそれだけか?」
「それはどうかな?余は天地魔闘の構えが敗れた場面を1度も観ていない」
「ならば……今日がその記念日にしてやるよ!」
だが、ホーモンがクレオの手を握った。
「ホーモン!?何をする!?」
「どけ……邪魔だ……」
まだバーンと戦う心算のホーモンの姿に慌てるクレオ。
「ホーモン!?貴女のHPはもう―――」
だが、クレオの制止はまたしても無視された。
「理屈じゃないんだよ魔王は。矜持や信念、そして……野心で動く生物なんだよ魔王はぁーーーーー!」
制止しようとするクレオを突き飛ばすと、ホーモンは再びバーンを襲った。
「駄目だ!ホーモン!」
「マヒャデドス!」
ホーモンが放つ南極超えの極寒地獄は、無情にもフェニックスウイングで弾き飛ばされた。
「バギムーチョ!」
ホーモンが放つ竜巻のF5(風速117~142m/s)に匹敵する猛烈なかまいたちもまた、無情にもフェニックスウイングで弾き飛ばされた。
「ホーモォーーーーーン!」
クレオの悲痛な叫びに耳を傾けないホーモンは、再び白いスカイドラゴンとなってバーンを襲う。
「ギラグレイド!」
ホーモンが口から火山のマグマにも匹敵する熱線を吐くが、無情にもフェニックスウイングで弾き飛ばされた。
「メラガイアー!」
ホーモンが直径1㎞にも及ぶ超巨大火球を球速マッハ2で口から吐くが、無情にもフェニックスウイングで弾き飛ばされた。
ホーモンとバーンの彼我の差の冷酷な無情さに、クレオの歯茎と拳から血が垂れ出る。
(やはり駄目だ……最早通常攻撃だけで倒せる状態のホーモンじゃ、天地魔闘の構えは破れない!)
それでもホーモンはバーンへの攻撃を止めない。
同性性交のみで子孫を残せる技術根絶への執着。
それを容認してしまったBL根絶への執着。
2頭の雄の間に生まれたホーモン完全否定への執着。
それらの執着がホーモンから歩みを停めると言う選択を奪う。
が、他者の情愛を理解はしても尊重や共感はしないバーンに、ホーモンを楽にする意思は無かった。
「もう良い。お前は、失格だ」
バーンの額から放たれる閃光がホーモンを包んだ。
「ホーモォーーーーーン!」
そして……さっきまでホーモンがいた場所には、ビー玉の様な物が無造作に置かれていただけだった……
「ホーモン……どこ?……」
「ここにおるではないか」
バーンが指差したのは、無造作に置かれたビー玉。
答えになっている様でなっていない返答に困惑するガンガディア。
「……どう言う事だ?」
ガンガディアの質問に対し、バーンは平然と答えた。
「ホーモンは、瞳となったのだ」
ハドラーちゃんはビー玉を拾い上げると、
「瞳とは……これの事か?」
「そうだ。瞳となった者が出来る事は3つのみだ。見る、聞く、考える。以上」
つまり、ホーモンはもう、バーンに刃向かうどころかバーンに殺される事すら出来ないのである。
勝者に殺して貰えない。
ハドラーちゃんはこれを『屈辱』と解釈した。
「生き恥を晒せと……無慈悲だな……」
ハドラーちゃんは、改めて前の時間軸の魔軍司令時代の自分を恥じた。
この様な武人の心を理解しない強者の恥を魔界の神と崇めていた頃の自分を。
ハドラーちゃんは手にした瞳を介錯の心算で握り潰そうかと思ったが、それでは、ホーモンは憎きバーンの破滅を見届ける事が出来ないと解釈し、ガンガディアに瞳を投げ渡す。
「壊すなよ。中に居るホーモンが可哀想な事になる」
そして、倒すべき敵であるバーンを睨むハドラーちゃん。
「この俺にしては……長々とぼさっとしていた様だ、な!?」
ハドラーちゃんは、背後から漂う膨大な殺気を察して足を停める。
「どいて。私は、バーンを倒す」
クレオの表情と抑揚が急に消えた事に驚くハドラーちゃん達。
「クレオ!?お前まさか、今まで本気を出していなかったのか!?」
「そう。私は、BLを壊さない様にする為に、人を辞めてロボットになった……筈なのに……」
根絶すべき怨敵であるバーンを睨むクレオ。
「ダメ……この屑を見ていると……私の発音に……抑揚が……抑揚が……発生してしまう……」
クレオは、バーンと本気で戦う為にモシャスによる偽装を辞め、異世界転移の影響による美化がBLに悪影響を及ぼさない様に表情と抑揚を完全に排除した最強形態に戻った。
にも拘らず、バーンを睨むクレオの目と口には無表情・無抑揚とは思えぬ膨大な殺意が宿っていた。
「大魔王バーン。貴方は、私が、排除する!」
やっと大魔王バーンとの最終決戦が始まった訳ですが……
今回からは、しばらく三者三様な『天地魔闘の構え』攻略法を試す展開が続きます。
まず始めは、漸く自分がバーンに騙されていた事に気付いたホーモン。
とは言っても、ホーモンがやってる事はただ自身が出来る強大な攻撃を繰り返すだけの単純なモノ。
当然、バーンの天地魔闘の構えに敵う筈もなく、あっけなく『瞳』と言うビー玉型生き恥を晒す結果になりました。
続いてはホーモンの宿敵である合尾クレオパトラ(通称『クレオ』)が天地魔闘の構え攻略に挑む訳ですが、果たして結果は……