ハドラーちゃんの強くてニューゲーム   作:モッチー7

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第50話

ガッルールは元々、ハドラー配下のアニマルゾンビの1匹に過ぎなかった……

そんな彼女の最初の転機は、毒味役としてフレイザード2号に捕まった事。

2つ目の転機は、その毒味が食した者に200万年分の進化を齎す『進化の実』だった事。

その結果、ガッルールは狼の耳と尻尾を生やした魔族の少女へと生まれ変わったのである。

その後は、異元扉を使って異世界から使える技を探す日々を過ごし、ガッルールは遂にお気に入りの技を見つけ、それを真似る事に心血を注いだ。

その中でも特にお気に入りなのが、超魔生物の如き圧倒的な再生力を有する『鬼』を討伐する為に編み出された『全集中の呼吸』と呼ばれる剣術であり、その中で連続斬りや敵を翻弄する高速移動が特徴の『霞の呼吸』への興味は異常とも言えた。

そして、そんな霞の呼吸を暗黒闘気で形成された爪を両手に纏う戦い方で再現する為の見真似稽古に没頭した。

最初の内は似ても似つかない粗悪品であり、実戦で使用出来るかすら怪しいものだったが、それでもガッルールは諦めなかった。

異元扉に霞の呼吸を何度も視せて貰い、その都度間違っている部分を修正し、そして遂に、霞の呼吸の完全再現に成功した。

そんなガッルール版霞の呼吸の初披露の場は、前にもお伝えした通り、ハドラーちゃんが1年間ほったらかしにしたら世界がどうなったかを確かめる為の偵察旅で出遭った、猛禽人連盟軍(ダークエンジェルギルド)の主神を名乗る天空神ゼウス。

ガッルールの霞の呼吸は天空神ゼウスを文字通り圧倒。ゼウスが大魔王バーンに泣きつく有様だった。

 

その結果を今、大魔王バーンにぶつける時!

「で、貴様はどうやって余を倒すと言うのだ?」

ガッルールはバーンの質問には答えず、ただゆっくりとバーンの許に向かって歩くだけだった。

当然、ロカにはガッルールの意図が理解出来なかった。

「何だあいつ……あんな鈍い動きで本当に大丈夫か?」

その点はレイラも同感だった。

寧ろ、

「まさか……裏切り!?」

そんなレイラの嫌な予感をアバンは否定する。

「いいえ……彼女の攻撃は、もう、始まっています」

当然ロカは首を傾げた。

「始まった?あいつ、ただゆっくり歩ているだけなのにか?」

だが、アバンはそうには見えない。

バーンもまた然り。

「その歩行……ただの歩行ではないな?……爆裂呪文(イオラ)

バーンが様子見で爆裂呪文(イオラ)を放つも、その威力にマトリフが驚愕した。

「何だ!?爆裂呪文(イオラ)だけであの爆発かよ!?……バケモノなのか?大魔王バーンは……」

確かに、バーンの爆裂呪文(イオラ)は一般的な極大爆裂呪文(イオナズン)に匹敵する威力だった。

しかも、連発可能と言う代物。

並みの者なら、これだけで簡単に死んでしまうだろう。

しかし、ガッルールは違った。

バーンが連発する極大爆裂呪文(イオナズン)に匹敵する爆裂呪文(イオラ)を、ガッルールは鈍足状態のまま全部避けたのだ。

これにはロカも驚きを隠せない。

「鈍い動きなのに、爆裂呪文(イオラ)に少しも触れずに避けてやがる!」

「違う!彼女は……速過ぎるんだ!」

アバンの驚愕の仕方に、レイラはおろかロカですら首を傾げた。

「アレが、速い?」

「あまりに速過ぎる上に緩急の差が大き過ぎるから、彼女の動きが遅く見えるんです」

アバンの説明を聴き、マトリフは背中が冷たくなった。

(アバンの言う事が本当なら、どっちが勝ってもこっちはとんでもない一苦労だぜ?)

マトリフがそんな事を考えている間に、

「霞の呼吸、肆ノ型、移流斬り」

ガッルールがバーンの足元に滑る様に潜り込み、アッパーの要領で暗黒闘気で形成された爪を振り上げた。

更に、

「壱ノ型、垂天遠霞」

ガッルールの爪がバーンの下顎を襲う。

バーンはギリギリで致命傷を避けたが、その爪の切れ味を魅せつけるかの様に、ガッルールはバーンの鼻先に傷をつけた。

「速い!」

「アレを躱すか!?」

 

だが、ガッルールはここで追撃を避け、バックステップで距離を広げた。

「どうしたバーン様?アニマルゾンビ如きじゃ天地魔闘の構えを使うまでもないと?」

「アニマルゾンビ?」

ロカはガッルールの挑発を真に受けてキョロキョロとするが、それはつまり、ガッルールの正体を知らない事を意味していた。

だが、当のバーンの言葉により場の空気は一変した。

「そう言う貴様こそ、まだ本気を出しておらんだろう?」

マトリフは冷や水を浴びせ掛けられた様に、凍り付く。

(アレで本気じゃねえだと!?冗談だろ……)

「貴様の事だ、緩急の差をもっと広げられるのであろう?」

ガッルールは自分の顔の上から、表情が消えていくのが解った。

(まさか……ばれてる?私がしたい事全て……)

ガッルールの不安を助長するかの様に、バーンは無構状態のままで待ち構えていた。

(いや……迷うな!私の全てを、大魔王バーンにぶつける!それだけだ!)

途端、ガッルールが急速にバーンに接近し、

「霞の呼吸、伍ノ型、霞雲の海」

辺り一面を大量の霞で覆うかの様な高速の連撃を見舞うガッルールに対し、バーンはパンチ乱発で迎え撃つ。

「カラミティエンドすらかよ!?落ち込むぞ!本気で!」

でも、ガッルールは猛攻を辞めない。

「弐ノ型、八重霞。陸ノ型、月の霞消。参ノ型、霞散の飛沫」

並みの者なら既に微塵切りになっている筈のガッルールの連続斬撃。

だが、受けたバーンは未だに立っている。

そんな神々の闘いの如き激戦(マトリフ談)を繰り広げる2人を観て、ロカはあんぐりと口を開けて呆然とする。

(だろうな……完全に次元が違う!)

一方のハドラーちゃんは、不安そうに見つめながら怒りで震えていた。

「ガッルール……もういい……」

が、それを察したガッルールが「まだだ」と言いたげにハドラーちゃんの方をチラ見した。

「ここまでやって、それでもなお天地魔闘の構えを使わないなんて……ムカついた」

ガッルールの視線が更に鋭く冷たくなる。

「全力でお前を殺す。天地魔闘の構えを使わなかった事を後悔しながら死ね」

そして、ガッルールはあの摩訶不思議な鈍足モードに移行する。

「霞の呼吸、漆ノ型、朧」

「バーンの爆裂呪文(イオラ)を全部避けたあの技だ」

ロカが驚く中、アバンは最初の鈍足モードとは別物だと気付いていた。

「いや……違う」

 

バーンは亀の様に遅いガッルールに向け、超圧縮した暗黒闘気の弾を打ち出す。

が、瞬きする一瞬の間にガッルールが消え、気付はガッルールがバーンの背後に向かってゆっくりと歩いていた。

「速い!?」

ロカもレイラもマトリフも、その動きをまったく視認出来なかった。ロカは自分の背中から体温が消えていくのが解った。

しかし、当のバーンは臆する事無く冷静に掌から衝撃波を放った。

対するガッルールは、まるで瞬間移動の如く再びバーンの背後を横切った。

そんな……バーンの攻撃を消える様に避けてバーンの背後をゆっくりと横切るガッルールの姿を見ている内に、ロカはある錯覚に襲われていた。

「何か……まるで、バーンの野郎が霞に巻かれているみてえだ」

現れる際は亀のように遅く、消える際は瞬きする一瞬の間にと、緩急自在の足運びで相手を攪乱し、混乱に陥れるガッルールの戦い方に、マトリフは自分の背中から体温が消えていくのが解った。

(くっそ!この後、こいつと戦う事になったら、アバンの力を温存……だなんて贅沢は言ってられない!4人全員で包囲して総攻撃……じゃあねえと、対等に戦えねえ!)

そうこうしている内に、バーンの背後を取ったガッルールの爪が遂にバーンの頸を襲う。

(終わりだね。これ、本当は―――)

「余が呑気に天地魔闘の構えを行っている間に行う予定だった。では、ないのか?」

「!?」

バーンが口にした予想にドキッとしてしまい、バーンの頸を襲う筈の斬撃に歪みが生じてしまう。

それがガッルールの致命的な失態となってしまった……

カイザーフェニックスが突然ガッルールを襲った。

(カイザーフェニックス!?まさか、これを予想して弾道を曲げたと言うのか!?)

なんとか防御するガッルールであったが、バーンがガッルールの背後へと回り込んだ。

気付いて立ち上がりかけたところに、

「カラミティエンド!」

バーンの渾身のチョップがヒットする。防御もままならず思いっきり吹っ飛ばされるガッルール。

我慢の限界に達したハドラーちゃんが右腕から覇者の剣を生やした。

「ここからは……本気で行かせて貰う」

だが、それを遮る様にガッルールが立った。

「お待ちください!ハドラー様!」

「もう良いガッルール!無理などせずに横になれ!これは命令だ!」

確かに、今のガッルールは立つのがやっとの重傷……戦える状態とは程遠い。

それでも、ガッルールは戦う事を辞めない。

「私はアニマルゾンビですよ。左眼球が腐り落ちて垂れ下がるくらい、日常茶飯事ですよ」

対するバーンも、ガッルールのこのセリフは予想していた。

「ハドラーよ、飼い主の癖にこの女の事を何も解っていないな?この者が、言葉如きで止められると思ったか?」

その瞬間、バーンの鬼眼が発光し、ガッルールを『瞳』に変えてしまった。

「大魔王バーン……お前は本当に……嫌な奴だ」

これが、ガッルールがバーンに掛けた最後の台詞であった。

 

さっきまでガッルールの霞の呼吸に完全に翻弄されていたロカであったが、今は殺されるすらさせて貰えないガッルールの不憫さに涙していた。

「確かにこいつはとんでもねえ強敵だったけどよ……ハドラーの為に必死になって戦ったんだぜ……それを……お前よぉー」

だが、バーンの心を微動すらさせる事は出来なかった。

「だが、奴は余に負けた。霞の呼吸と天地魔闘の構えの相性の悪さを余が知らぬと思ったか?」

ロカが我慢出来ずにバーンに斬りかかろうとするが、ハドラーちゃんのドスの効いた言葉がそれを遮る。

「邪魔をするな。バーンは俺が殺す」

しかし、ハドラーちゃんの眼前にフレイザード2号の背中が立ち塞がった。

「つっ!?……フレイザード?」

「待ちなよハドラーちゃん!私の番がまだでしょ!」

バーンは呆れる様に溜息を吐いた。

「意外と手駒が多い様だな?ハドラー」

対するフレイザード2号は余裕をもって宣言する。

「そして!ハドラーちゃんが大魔王バーンを処刑する為に使う手駒は、私で最後だ」

自信満々なフレイザード2号を睨むバーン。

果たして、その秘策とは……




後書き

『天地魔闘の構え』攻略法を試す展開第3弾。

質もダメ。
量もダメ。

そこでガッルールが考えたのは、天空神ゼウスとの戦いでも使用した『霞の呼吸』。
『鬼滅の刃』における『時透無一郎』が『玉壺』を背後から斬るシーンを再現する形で、天地魔闘の構えを発動前に斬ってしまおうと考えました……
が、大魔王バーンの洞察力の方が一枚上手だったのが災いし、ガッルールは肝心の天地魔闘の構えと戦う事すら出来ずに敗北しました。

次はフレイザード2号の番となりますが……彼女が考えた攻略法は、彼女が今まで行っていた戦闘そのものがネタバレとなっており、筋金入りのダイの大冒険ファンならおおよその察しが付くと思います。
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