ハドラーちゃんの強くてニューゲーム   作:モッチー7

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アニメ版のハドラーの月命日が16日と決まった様なので(涙)……
その月命日にうぼのあん氏(https://www.pixiv.net/users/159931)の16年前に戻ってやり直すハドラー(https://www.pixiv.net/artworks/86959749)を参考に(パクった)、ハドラー様が魔法騎士レイアースの獅堂光の様な姿になるお話を作ってみました。

pixiv版→https://www.pixiv.net/novel/series/8799426


第9話

破邪の洞窟地下3階での出来事。

 

人食い箱は困り果てていた。

人食い箱は本来、欲深な盗掘者を懲らしめる為に生み出されたモンスターである。遺跡の由来などお構いなしに無礼な財宝狩りを行う罪人を襲撃する事で、遺跡などを訪れる者達に礼儀を教えてやるのが、人食い箱の使命である。

だが、この目の前にいる少女(ハドラーちゃん)には自分を開けて欲しくないと言う懇願が、人食い箱の頭を支配する願いである。

が、ハドラーちゃんの足音は間違いなく人食い箱の方へと近づいていた。

人食い箱の脳裏に浮かぶ人食い箱の頭部(宝箱で言えば上半分)が鷲掴みにされて握り潰される光景が。

来るな。

来るな。

来るな。

来るな。

人食い箱の懇願を無視する様にハドラーちゃんがどんどん近づいて来る。

そして……ハドラーちゃんが人食い箱の前に立った時、人食い箱は自分がもう死んでいる事を確信した。

終わった……

だが、ハドラーちゃんは目の前の宝箱(人食い箱)を開ける事無く、残念そうに言い放った。

「せこいな」

せこい!?

解っていた事とは言え、そこまでハッキリ言うか!?

「そうやって自分の殻に閉じこもって強欲な弱者としか戦わん人生……つまらんとは思わんか?」

恐らく、歯に衣着せぬとはこう言う事を言うのだろう。

開ける前から目の前の宝箱(人食い箱)の正体を知っているが故の言い分なのだろうが、騙された愚者の見苦しい言い訳の様な悪口とは違う冷静で冷淡な一言に、当の人食い箱は目の前のハドラーちゃんとの覆し難い実力差を無視して飛び掛かりたくなる程の怒りが……

「どうした?こないのか?さあ、来いよ」

湧かなかった。ハドラーちゃんが言い放つ人食い箱への冷静で否定的な言い分が、更に人食い箱に覆し難い実力差を自覚させてしまった様だ。

もし宝箱に擬態する能力が無かったら、人食い箱は滝の様な冷汗をかいて大きな水溜りを形成していた事だろう。

「情けない。お世辞にも強者の戦いとは言えないな」

なかなか襲ってこない人食い箱にしびれを切らせたハドラーちゃんは、淡々と今まで経験に基づく強者の定義を語った。

「俺が今まで戦ってきた強者は、どんな逆境にも屈さず、与えられた名誉に甘えず、常に先の事を考え、馬鹿デカい慈悲を持ち、皆を惹き付けて魅了し、最期まで絶望しない者。だが、お前は違う。自らは動かず、相手の準備が整うのを待たず、騙されて落ち込む者の怒りを観て楽しむ」

そして、堂々とした態度で人食い箱にトドメの一言を言い放つ。

「卑劣で他力で無粋で孤独で弱々しい……つまらぬ者だ」

まるで期待外れと言いたげに人食い箱に背を向けるハドラーちゃん。

そんなハドラーちゃんの背中が異様に巨大に見える人食い箱。

(何だ……あの小娘は!?……惚れて……しまう……)

その時点で人食い箱は既に、ハドラーちゃんの貫禄に酔っていた。

 

一方、破邪の洞窟の出入り口では、

「へー、入らないんだぁー」

「見た目に反して、意外と冷静でクールだね」

ピロロやキルバーンの皮肉が飛ぶが、デスカールは気にしない。

「我が主ガルヴァスが取り付けた密約は、反逆者ハドラーが死亡した証拠の品を大魔王バーン様の許へ持ち帰る事……だと聞いておりますが?」

その言い方に、キルバーンが珍しくムカッときた。

「とことんクールだねぇ。僕は、そう言う冷静に全てを見通す輩を最も危険視するんだよ」

そんなキルバーンの遠回しな警告をデスカールは痛烈な一文で返してしまう。

「そうか、これが本で読んだ“同族嫌悪”というものか」

「ぬ!?貴様!?」

が、キルバーンは飛び掛かれなかった。

ピロロとキルバーンは、とある事情によりこれ以上大魔王バーンからの信頼を失う訳にはいかないのだ。

「なるほど……ガルヴァスは目的の為ならどんな卑怯もやってのける度胸を備えていると言う訳か……豪魔軍師を騙っていたのは伊達でも酔狂でもなかったと言う事か?」

「うわぁ。怖い怖い」

それでも動じないデスカール。

「それより、バーン様の許にお帰りにならなくても大丈夫ですかな?それとも、ここで行われる反逆者ハドラーの処刑を観戦……または協力して頂けるのですかな?」

「本当にムカつくよ君達は……だが、大魔王バーン様のお許しが無い以上、悲しかなこれ以上の手出しが出来ないのが残念だよ」

渋々去るキルバーン達であったが、

(ま、君達がここに何を仕込んだかは既に見抜いたがね。そして……その仕込みの弱点もね)

 

キルバーン達が去ったのを確認したデスカールは、一旦後退させておいたブレーガンとメネロを呼び戻した。

「何なんだいあの男は!人をおちょくり倒して!」

「だからこそ、お前達には一旦引いて貰ったのだ。さすれば、今回の待ち伏せ作戦は始まる前から終わっていたからな」

デスカールのこの言葉に悔しさをにじませるブレーガン。

「では何か?あのままあの男と戦ったら、作戦続行不可能な程のダメージを負うとでも!?」

その質問の答えは冷淡そのものだった。

「そうだ。少なくとも、こっちが無傷で済む内に終わるとは思えない」

それを聞いたブレーガンはあからさまに舌打ちをしたが、メネロは逆に安堵した。

「そう言う事なら、アンタのアドバイスに従って正解だった事にしてやるよ」

「メネロ!?お前までそんな事を言うのか!?」

「だって、私達の敵はアイツじゃなくてハドラーでしょ?なら」

「チッ!」

そして、疲れたかの様に溜息を吐くデスカール。

(これでは先が思いやられるな)

 

そして、アバン達はマトリフの導きにより、伝説の大賢者バルゴートが築き上げた修業の都ギュータで鍛錬を積んでいた。

が、バルゴートの娘であるカノンは、アバンからとある2冊の本を分捕る。

「嫌だね。これだから頭の良い子は……こんなに山ほどある中から、別格に危険な物ばかり選ぶもんだよ」

「すみませんカノンさん。でも、可能性の1つとしてはアリだと思います。もし、魔王が本当に倒せない相手だった場合―――」

「だから凍れる時間の秘法かい?まず成功するまい。しくじれば、アンタの命も危ういよ」

だが、アバンの意思は固かった。

「御言葉ですが、私の命だけで済むなら、賭ける価値はある……とも言えます」

アバンの意志の固さに父バルゴートの事を思い出すカノン。

「解ったよ。そっちの本は持っておいき。半端にかじって実践されるよりはマシだよ。だが……」

もう1冊の黒い本は没収となった。

「こっちの本は読むのをお止め」

が、マトリフと過去を語り合った結果、やはりさっきの黒い本を―――

「アバンがそれを?マジかよ!選びに選んで、よりによってそいつだと!?」

マトリフにとっては、例の黒い本に書かれている修業をするくらいなら、ハドラーちゃんやガンガディアと戦った方がマシであった。

「珍しく気が合ったね。あんた、さっきのアタシと同じ顔したよ」

 

カノンは意を決して、アバンをギュータ最下層に連れて往く。

「こいつがギュータ最深部に続く禁断の場所……逢魔窟だ!」

カノンが逢魔窟の入口を開けた途端、ロカもレイラもその危険性にドン引きする。

「ううっ!」

「なんなの……この、心の底から震える感じ……」

「この洞窟に充満している邪悪な瘴気……みてぇなもんのせいだ」

「父様がこのギュータを修行の地に選んだのは、武力・魔力が向上し易いこの地の性質を見込んだからだった。その根源はこの洞窟に有った。この山は、天地魔界全てからの負のエネルギーが流れ込み、隆起して生まれた物だったのさ」

これだけでも逢魔窟の恐ろしさが十分伝わるのだが、カノンの説明はここからが本番だった。

「中は一見普通の洞窟だが、渦巻く邪気が入った者の心の闇を増幅し、様々な幻覚を見る事になる。しかも、それは形が無いとは言えエネルギー体の影響、故に侵入者は攻撃を受ける!」

恐ろしく気が滅入る話であり、同時に空恐ろしい場所でもある……が、

「私が極めるべき第三の必殺剣をこう名付けました……空裂斬!」

アバン流刀殺法の剣技。心眼で敵の本体を捕らえ、光の闘気を用いて対象を切り裂く「空の技」。物理的な力技で斬る事でも形なきモノを打ち消すでもなく、目で追えず見えない邪悪なエネルギーを斬り裂く第三の必殺剣。

が、空裂斬は実体無き見えざるものを切るという抽象的な技から難解であった。

だかろこそ、アバンは空裂斬の開発に逢魔窟の力が必要だと判断したのだ。

意を決して逢魔窟に入るアバンは、ある意味予想通りの敵が目の前に現れた。

「そうか……私の心に潜む1番の恐怖はお前か?ハドラー!」

だが、ハドラーちゃんは襲ってこない。

「なに!?」

渦巻く邪気が攻撃力を持つ幻覚を生み出すと聞かされていたアバンにとっては意外な展開だった。

「ジニュアール1世」

ハドラーちゃんの口から意外な言葉が出た事に驚くアバン。

「恩知らずよのぉ……お前の祖父の予言がどれだけの命を救った事か……にも拘らず―――」

アバンは「やめろ!」と叫びたくなる衝動を必死に抑えながら無言で目の前のハドラーちゃんの形をした邪念の話を聴いた。

「お前の祖父は、強過ぎたが故に……孤独だった。そして、その孤独こそがお前の祖父を弱くした」

アバンの剣を握る手が無意識に強くなる。

「孤独は弱い。孤独は……つまらんぞ」

渦巻く邪気が次々と実体化してモンスター群を形成していく。

「数は力だ!数は孤独如きには絶対に届かん力の極致だ!」

改めて剣を構えるアバン。

 

ハドラーちゃんが破邪の洞窟地下27階へと続く階段を発見した……が、

「この階には……呪文を習得する場所が無かったな?1つ上の階ではあれだけ派手な場所が在ったと言うのに……」

流石に地下26階を隅から隅まで調べ尽くした訳ではないが、流石のハドラーちゃんだってあんなに派手な場所を見落とす程の馬鹿じゃない。

なら、考えられる事はたった1つ。

「破邪の洞窟が用意した新たなる呪文は、ここでネタ切れか?」

ここでハドラーちゃんは悩んだ。

このまま進むべきか?それとも、破邪の洞窟に見切りをつけて次の1手を探しに行くか?

「ぐるるぅ」

背後に迫る何かを感じてハドラーちゃんが振り返ると、2匹のベホマスライムを従えるスカイドラゴンである。

ハドラーちゃんは早速スカイドラゴンの頭頂部に肘打ちを見舞うが、ベホマスライムが回復呪文(ベホマ)を放つので、スカイドラゴンは直ぐに立ち上がる。

「……回復担当を敵に回すとこんなに厄介な物なのか?」

が、サババの再戦でのレイラの動きを思い出して視ると、

「いや、それも振る舞い次第だな。回復担当がちゃんと治療に徹すれば回復担当は脅威になるが、だとすると、アバン達はまだ未完成か?」

その時、ハドラーちゃんはウロド平原の戦いを思い出す。

長考するハドラーちゃんの背後から炎を吹きかけようとするスカイドラゴン。

が、ハドラーちゃんが1周目(ぜんかい)の時に見た皆既日食を思い出した途端、

「やめろアバァーーーーーン!」

ハドラーちゃんの右手に内蔵された覇者の剣が背後にいたドラゴンの頸を斬っていた。

「あ」

軽く驚くハドラーちゃんに反し、、2匹のベホマスライムは大慌て。

必死に回復呪文(ベホマ)を放つも、既に回復呪文(ベホマ)が許容するダメージを大幅に超えていたスカイドラゴンには通用せず、スカイドラゴンは為す術無く息を引き取った。

「すまん。考え事をしておった」

2匹のベホマスライムが負けを認める様に逃げ去る中、ハドラーちゃんの考えは変わった。

「今引き返しても……待っているのはアバンの時間を1年も無駄にしたウロド平原の戦いだけだ。なら」

ハドラーちゃんは迷わず破邪の洞窟地下27階へと続く階段を下りた。

「この先はおそらく、上の階で手に入れた呪文を試し撃ちする為の訓練所の様な物だろう……ならば丁度良い。只々玉座でふんぞり返った所で体がなまるだけだからな」

そんなハドラーちゃんの判断が、多くの者達の運命を大きく変え、ハドラーちゃんに様々な出逢いを与える事になるのだ。




破邪の洞窟の外で様々な動きが起こっている中、次回から我らがハドラーちゃんがいよいよミナカトール(大破邪呪文)習得階より更に下へと挑戦しますが、その前にハドラーちゃんが人食い箱に語った強者の定義は、一応アバンの使徒に当てはまる様に書いた心算であり、

どんな逆境にも屈さず = ヒュンケル
与えられた名誉に甘えず = マァム
常に先の事を考え = ポップ
馬鹿デカい慈悲を持ち = ダイ
皆を惹き付けて魅了 = レオナ
最期まで絶望しない = アバン

と言う構図にしたんのですが、もしこの構図が間違ってると思った方は、容赦無くコメントを下さい。
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