それぞれの五線譜を   作:めるびー

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とりあえずここまでで原作1話です。
いろいろ手探りでやっていますがよろしくお願いします。


シンガーソングライターと家庭教師と

先生に学校案内を任された俺は中野さんと二人、図書室まで来ていた。

 

「で、ここが図書室ね。授業で来ることはあんまりないけど意外といっぱい本も置いてあるから便利だよ。」

「へぇ」

 

しかしだ

 

(すっげぇ気まずい!!え?学食ではあんなに怒ってたのに数時間でこんな何も考えてないみたいになることあるの!?)

 

さっきからどこを案内してもこの反応である。正直に言って、あまり居心地のいい空気ではなかったので、俺はついに直接聞くことにした。

 

「あの、中野さんって結構キャラ変わるタイプなの?学食では結構しゃべってたのに。」

「多分それは私じゃない。私の姉妹のだれか」

「姉妹のだれか?一緒に転校してきたの?」

「うん、私たちは五つ子なんだ。」

「五つ子?すごいね、俺なんて三つ子も見たことないよ」

「私たちは昔からだからあんまり考えたことはないけど、誰にあったの?」

「えっと、五月さんって言ってたかな」

「ならその子は末っ子、私たちは生まれた順番に名前に数字がついてる」

 

なるほど、つまり三玖なら三女、ということになるのだろう。

俺は少し驚きながらも案内を続けた。

 

「ここは音楽室。中は今軽音楽部が使ってるから入れないけどそもそも音楽の必修は1年生だからもう来ることはないと思うよ」

 

すると突然、ドアが開いて中から人が出てきた。

 

「おっ、奏!ようやく入ってくれる気になったか?」

 

出てきたのは軽音楽部の部長だ。俺もことあるごとに誘われているが断り続けているためあまり長く話したくはなかった。

 

「ただの案内ですよ、転校生です。ごめんね中野さん、次いこっか。」

「三玖」

「ん?」

「中野だとだれかわからないから…三玖」

「えっと、流石に女の子の名前を急に下で呼ぶのは…」

「なんだぁ、転校生っていう割には割と仲良さげじゃないか。もうモテてるならそりゃ軽音楽部は断るわな」

「ち、ちがっ」

 

中野───三玖さんが顔から湯気が出そうなほど赤くなっていたので部長の追及を止め、俺たちは屋上へ向かった。

 

「ここが最後、屋上だよ。最近では屋上が空いてるのも珍しいのにあんまり人もいないから穴場だよ。」

「へぇ、そういえばなんでカナデは軽音楽部に誘われてたの?」

「あぁ、俺は一人で音楽やってるんだけど、結構前に屋上で歌ってたら部長に見つかってね。それ以来誘われてるんだ。」

「入らないの?」

「俺は俺で作りたい音楽があるから」

「すごい、音楽とか作れるんだ…聞いてみたい」

「えっ」

「…ダメ?」

 

そう聞かれるとさすがの俺も健全な男子高校生。異性の近距離上目遣いに耐えられるはずもなかった。

 

「…ギター持ってくるから待ってて」

 

それだけ言い残し俺は教室にギターを取りに行った。

 

──────────────────────

 

「じゃあ、とりあえず一曲」

「うん」

 

わくわく、といった様子で待っている三玖さん。よく見れば首からはヘッドフォンがかかっている、もしかしたら音楽が好きなのかもしれない。

 

「───♪」

「─っ!」

 

そうしてきっちり一曲分歌い終わった俺は三玖のほうに改めて向き直る。

 

「えっと、どうだった?」

「す、すごかった。なんか、すごい悲しくて、けど優しかった。」

「それはありがとう。もしよかったらたまに路上で弾いてるから聞きに来てよ。それじゃ、今日はもういい時間だし帰ろうか。」

「う、うん。また、きかせてね」

 

こうして俺たちは帰路についた。

 

翌日、いつものように風太郎と昼食を食べていると珍しく風太郎から勉強以外の相談を受けた。

 

「なぁ、奏。お前って友達多いよな?」

「お前に比べたらだれだって多いだろ。それにしても改まってなんだ、気になる人でもできたか?」

「いや、そうじゃないんだが…」

 

風太郎から話を聞くとどうやら昨日学食で話した五月さんの家庭教師のバイトをすることになったらしい。

 

「それで、俺に仲を取り持てと?」

「一生の頼みだ!!」

「そもそも俺もあの人とそんなに仲いいわけじゃないぞ。っと、噂をすれば五月さんだ。」

「どうにかして機嫌を取らなきゃ家庭教師の話がなくなっちまう」

 

おもむろに立ち上がった風太郎は五月さんのほうに歩いていき──

 

「友達と食べてる!!」

 

早速撃沈していた。

 

「すみません、席は埋まっていますよ」

 

昨日の仕返しか五月さんは風太郎に意地の悪そうな笑みを浮かべる。

流石にフォローくらいはしておこうと席を立つと、今度は別の人に絡まれていた。

 

「行っちゃうの?」

 

制服を着崩した女生徒が何やら風太郎と話していた。

 

「余計なお世話だ、自分のことは自分で何とかする。」

「お前、さっき俺に頼んでたよな…」

「なーんだ、ガリ勉くんちゃんと友達いるじゃん!でも、困ったらこの一花お姉さんに相談するんだぞ。なんか面白そうだし。」

 

そう言い残して一花さんは行ってしまった。

 

「お姉さんって…同学年だろ、多分…」

「いや、多分お姉さんだぞ」

「は?どういうことだ?」

 

その後風太郎から詳しい話を聞くと、どうやら家庭教師の給料は相場の5倍。かなりの破格で支払われるらしい。

それに加えて俺の持っている情報を合わせると、おそらく五つ子全員の家庭教師になるということだろう。

そのことを含め、風太郎に話してやると

 

「ってことは、五月だけじゃないってことか…それはまた厄介な」

「まぁ、勉強じゃ俺は力になれないけど何かあったら言えよ。じゃあ俺は次の移動早いから先行くわ」

 

──────────────────

 

放課後、風太郎に付き合えと言われどこに行くのかと思っていると──

 

「なぁ風太郎」

「どうした?」

「何故俺は平日の真昼間に女子高生のストーキングをさせられている。」

 

帰り道の五月を思いっきりつけていた。

しかも横には姉妹二人のおまけつきだ。後ろから見ていると振り返った三玖さんと目が合った。

 

「カナデ、予備軍?」

「誤解だよ。昨日五月さんと会ったって話したでしょ?その時こいつ──風太郎が喧嘩しちゃってさ、謝るのに付き添ってるんだ。風太郎、こっちは三玖さん。中野家五つ子の三女…でいいんだよね?」

 

コクリ、とうなずくと三玖さんはとりあえず信じてはくれたようだ。

 

「なら五月、よんでこようか?」

「いや、その必要はない。しかしどうするか」

 

ボーっとしているともう中野家についていたらしい、見るからに高そうなタワーマンションに入っていくのが見えた。

 

「あ、入っていくね。とりあえず追いかけなよ。」

「あぁ、そうする」

 

風太郎はそう言って走っていき、残された俺はどう入ったものかと頭を悩ませていると

 

「なに君、ストーカー?」

 

頭に蝶のリボンを付けた女子が横に立っていた。

 

「いや、俺は付き添い。」

「二乃、カナデは私の友達。」

「なに三玖、あんたもう友達出来たの?っていうか家に呼ぶなら先言いなさいよ、絶対嫌だけど今日は家庭教師の人来るんでしょ?」

「あー、それなんだけど」

 

かるく事情を説明して二人にマンションの中に入れてもらった俺はエレベーターで上にあがるとそこには汗だくの風太郎と絶望した顔をする五月さんがいた。

 

「あー、これはひどい」

 

こうして風太郎の家庭教師としての挑戦は始まった。




二話目、読んでいただきありがとうございます。
ここで原作一話分は終了ですがある程度文字化すると思ったよりヘビーですごいなと思いました。
また読みにくい場所あったらご指摘ください。
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