そういえばUAがもうすぐで4000件、お気に入りももうすぐ50件に行きそうでうれしい限りです。
稚拙な本作ですが、どうぞ引き続きお楽しみください。
「ごめんだけど、私はみんなと花火は見られない。」
いつの間にか手をほどいていた一花さんが人ごみの中を器用に通り抜けていく。五月さんの手を離すわけにもいかないため、その背を眺めることしかできなかった。
「一花さん!?なんでこんな時にかき乱すようなことを…!。」
「太田君?ってあれ?一花がいません!」
「一花さんなら花火が見れないってさ。」
「そんな…そんなのいけません!!」
突然の五月さんの剣幕はいつもの五月さんとは違いまるで…駄々をこねる子供のようだった。
「とはいってもな…」
「花火は…お母さんとの思い出なんです。母が花火が好きだったので、毎年みんなで見に行ってたんです。お母さんがいなくなってからも毎年…。私たちにとって、私にとって花火は…母の。」
そう言う五月さんは俺の手を引っ張って当てもないのに、一花さんを探して歩き始めた。俺はその後ろ姿にあの女の子を重ねてしまった。母を大事に思うあの子と五つ子の姉妹を大事にする五月さんがとても似ているように思えた。
「わかった。俺が一花さんを探すよ。申し訳ないけど五月さんは一人で二乃さんが予約したっていう店に行ってもらっていいかな?」
「あっ、どうしましょう。今年のお店の場所、二乃から聞いてません…!」
思わず、といった様子で五月さんが慌てる。恐らく五月さんが知らないならほかの4人も知らないだろう。
「ならほかの姉妹との合流が先だね。二乃さんはさっきはぐれる前に風太郎といたし、店の場所も知ってるから問題ないとして...三玖さんと四葉さん、あとらいはちゃんとは合流しないと。とりあえず四葉さんに電話して!」
「わ、分かりました!」
少し道からそれて四葉さんに電話する五月さんを横目に俺も三玖さんに電話をかける。
(でてくれ...!)
「もしもし、カナデ?」
「よかった。繋がったね!三玖さん、今どこかな?人混みもどんどん酷くなってるし早めに合流したいんだけど。」
「今...」
そこで少し音声は途切れ知らない男の声が電話口から聞こえた。
「やっと見つけた!"一花ちゃん"。」
「...!そっちに一花さんがいるの?」
「あの、私、一花じゃ...」
「言い訳は後で聞く、早く走って!」
どうやら一花さんと間違えてどこかに連れていかれそうになっているらしい。この人混みの中さらに掻き回されると合流自体が困難になるだろう。
その時、人混みの奥に三玖さんが見えた。
その瞬間、足が動き出していた。
「五月さん、ここで待ってて!」
「えっ、太田くん!?」
人混みの方へ走り出す。ほかの客とは逆方向に向かっているため時々肩がぶつかるが、そんなことどうでもいい。
三玖さんに近づいた時に、俺は思わず叫んでいた。
「三玖!俺だ!」
「カナデ...!」
「また別の子か、君はこの子の何なんだ!?」
俺は三玖さんにとって何なのか。そんなの考えたこともなかった。
風太郎のようにわかりやすい肩書きもなければ特別な関係な訳でもない。
けれど───
「俺だってそんなのわかんない、けど俺はこの子を──三玖を応援するって決めたから。」
5年前、京都であの女の子に誓った君のような頑張っている誰かを応援する曲を作る。そんな子供がした夢物語みたいな約束、向こうももう忘れているのかも知れない。
それでも俺は、あの女の子に確かに理由を貰ったんだ。
「な、何を訳の分からないことを...」
「それに見てくれ、この人は一花さんじゃない。」
「そうだ!そいつは一花じゃない。」
「さっきの君まで...うちの大切な若手女優を放しなさい!」
その瞬間、少し空気が冷えた気がした。
いつの間にか来ていた風太郎にも目をくれず、一花さんの方を見ると気まずそうに照れていた。
その冷えた空気を切り裂くように声を出したのは風太郎。誰が聞いても素っ頓狂な声を出していた。
「カメラで撮る仕事って...そっち?」
─────────────────
状況を理解できずに少し一花さんに説明してもらうとどうやらこの男の人は事務所の社長さんらしい。
今日大事なオーディションがあるということでわざわざ迎えに来たらしい。
「一花が女優だって?」
「人違いをしてしまったのは本当にすまなかったね。でも一花ちゃんはこれから大事なオーディションがあるんだ。」
「そんな急な話があるか。こっちの先約の方が先だ。一花、花火はいいのかよ。」
「みんなによろしくね。」
そういう一花さんの顔はなぜだか少し悲しそうだった。
「一花さん。本気なんだよね?」
「うん、本気だよ。」
「一花ちゃん、急ごう。会場は近い、車でなら間に合う。」
そういって一花さんと社長さんはさっさと行ってしまった。
「あいつ…」
「行けよ、風太郎。納得できないんだろ?」
「ああ、さっき聞かれた問題もようやく答えがわかったんだ。言ってやらないと気が済まない。」
そうして風太郎が二人を追いかけるのを見送って、俺と三玖さんは二人取り残されてしまった。
「カナデは一花を追いかけないの?」
「俺じゃ一花さんは止められないよ。本気って言ってたからね。」
そう、一花さんは女優という仕事に本気と言っていた。それこそ姉妹の約束を破るほどに。
それなら三玖さんのことを応援するといった俺は彼女のことを止められない。
「?」
「まぁ、フェアじゃないってだけだよ。さて、俺たちもみんなと合流しようか。さすがにもう花火も終わっちゃうけど…」
「どうやらお困りのようですね…」
今話も読んでいただきありがとうございます。
前書きにも書いた通り私自身これでよいのかと何度も書き直したのでもしかしたら変に思われる部分があると思います。何かいい表現などを思いついたら書き直すかもしれませんので、その時はぜひよろしくお願いします。
それでは次回もよろしくお願いします。
ご意見、ご感想ありましたら是非。
@merubi_toka