村人A「...ただいま〜って、誰も居るわけないよなぁ...。」
小さい家に、虚しく独り言だけが響く。
妻も彼女もおらず、一人寂しい生活。
毎日毎日農業に明け暮れる日々。
退屈の中に少しの刺激が現れては、またポツリと消えゆく。
そんな生活に、嫌気がしていた。
村人A「はぁぁ...っん?」
ふと、何気なく部屋を眺める。
退屈の権化のような部屋には、それを紛らわすようなものが1つあった。
【勇者との写真】
奇妙な魔道具...カメラとか言うもので描かれた紙。
幼い自分と映るのは、伝説の勇者とそのパーティーたち。
その光景は、今もありありと目に浮かぶ。
村人A「...!」
消えていたような希望が、再び点ったような気がした。
まるで、2日ぶりに飲んだ水のようにAの乾きを潤し、断食明けの食事のようにAに活力を与える。
村人A「よし、勇者になろう。」
少し思考する。
村人A「...となると、まずは装備を集めなきゃな。と、今日はもうねて明日また揃えるか...。」
〜翌日〜
==鍛冶屋==
中年鍛冶職人「…いらっしゃい、ってなんだおめぇか。また鍬でもガタついたかぁ?」
村人A「…おやっさん、剣を売ってくれ。」
中年鍛冶職人「無理だ。第一、普通んやつにゃ剣なんて無理だ。」
村人A「そこをなんとかぁ...。」
中年鍛冶職人「そもそも金はあるんか?」
村人A「農耕具を売ればそこそこまでは。」
中年鍛冶職人「...おめぇ、農家やめるんか...?」
村人A「あぁ。ちょっくら冒険にでも出ようかなって。」
中年鍛冶職人「おめぇ、地獄見るぞ?」
村人A「承知の上だ。」
中年鍛冶職人「綺麗事だけじゃすまねぇことも。」
村人A「無論だ。」
中年鍛冶職人「一人じゃ無謀だ。」
村人A「んー、まぁぼちぼち行くさ。」
中年鍛冶職人「...仕方ねぇ、売ってやる。ただし、打つのはショートソードだ。」
村人A「...恩に着るよ。」
〜数時間後〜
中年鍛冶職人「ほらよ、とっとと行っちまえ。」
ショートソードと、鉄の盾を投げて渡す。
村人A「おやっさん!?こんなにはちょっと...。」
中年鍛冶職人「金はいらねぇよ、おめぇと俺の仲だろう?」
村人A「おやっさん...!」
中年鍛冶職人「さ、とっとと行った行った、もうここに用はないだろ?」
村人A「...あぁ、ありがとう。」
鍛冶屋を出た村人Aは、その後旅に必要な食料と水と最低限の衣服、野営用のテントやら薬やらを揃えた。
その間に日は暮れていった。
〜夕暮れ〜
村人A「...よし、これであらかたの準備はできたな。」
荷物を詰めながら呟く。
村人A「今日はこのぐらいにして、床につくか...。」
そうして、準備の一日は終わったのであった。
村人A
一般的な村人。
超人的な能力なんてなく、まさに凡人。
彼も勇者に『救われた』一人であり、自分自身も勇者を目指す。
中年鍛冶職人
元は王国で鍛冶屋をしていた、評判は良かったそう。
なぜ辺境で鍛冶屋をしているのかは、いくら聞いてもはぐらかされるそう。
村人Aとは割と仲良くしており、時々飲みに行く仲だった。