シャーレの活動記録集   作:目多須でぃてくた

6 / 21
■あらすじ
 先生の配慮により堂々とワイン料理「コッコーヴァン(鶏のワイン煮)」を食べる事になった美食研究会。
 だがSNSでの生放送当日、事件が起きて……


#15 酒と美食と炎上騒ぎ

 

 ある日、美食研究会のSNSアカウントにこのような投稿がされた。

 

 『ご縁に恵まれましたので、明後日コッコーヴァンの会食配信を致しますわ』

 

 この発言はまたたく間に拡散され、キヴォトスじゅうの注目を浴びた。

 悪名高いが同時に人気配信者でもある美食研究会だからというのもあるが、もう一つの理由は料理にあった。

 

 『コッコーヴァン』は鶏肉などの具材を赤ワインで煮込んだフランス料理である。

 そう、調理に酒類を使うのだ。学生の身分では正規ルートで酒を手に入れることは出来ない。

 日ごろ様々な食材たりうるものを強奪して回っている美食研といえども、さすがに酒を手に入れるのは至難の業だった。

 ある日遂にブラックマーケットでの購入を目論んだが、これはあと一歩のところで風紀委員会に捕まり失敗している。

 美食研会長である黒舘ハルナは『ブドウジュースにアルコールを混ぜればワインの代用になるはずですわ!』と試した事があったが、アルコールの入れすぎでボヤ騒ぎを起こしてしまった。

 また、こういった料理を扱うのは基本的にかなりの高級レストランである事が多い。

 実家が裕福なハルナはともかく、これでは彼女以外の美食研メンバーが食べることがかなわない。

 

 そんなワインの煮込み料理を『あの』美食研究会が食する。

 注目を浴びない訳がないのだ。

 

 

 


 

 

 

 ゲヘナ学園中央区の正門前、日没後とあってゲヘナ風紀委員が何名か歩哨にあたっていた。

 そこへ一台のバンが近付いてきたので正面に割りこんで停車させた。

 この場の責任者を務める委員は運転席に近付き、窓を開けた運転手へと話しかけた。

 「身分証の提示と積み荷の確認をお願いします」

 「ああ? 俺たちは万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)宛の荷物を運んできたんだ。風紀委員に指図されるいわれはないね」

 イヤらしいにやけ面でそう言い放つ運転手に、風紀委員は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。

 「……どうぞお通りください」

 「はははは! ざまあないぜ」

 正面にいた風紀委員が避けると、運転手はゲラゲラ笑いながら車を学園の敷地内へと進ませた。

 

 「くそっ! あのアフロ女め!」

 風紀委員たちは口々に生徒会長への恨み節を口にした。

 

 このように防犯上問題がある措置をしなければならないのも、万魔殿議長である羽沼マコトによる風紀委員会へのパワハラの一環だ。

 人一倍自己顕示欲と愚かさが強い彼女は風紀委員長たる空崎ヒナを目の敵にしており、生徒会ぐるみで風紀委員会へと嫌がらせを働いているのだ。

 このような事が平然とまかり通るのも、ひとえに自由と無法を履き違えたゲヘナ学園だからだろうと人は言う。

 

 

 

……

 

 

 

 その頃、とある一室では……。

 「配信をご覧の皆様、ご機嫌いかがですか?

 美食研究会の会長を務めております、黒舘ハルナでございますわ」

 「鰐渕アカリです~☆」

 「獅子堂イズミだよ」

 「赤司ジュンコ……ねえハルナ、わざわざ名乗り入れる必要もうなくない?」

 「どれだけ配信しようと初見の方は必ず居ます。そういった方々の為にも挨拶は欠かせませんわ」

 四人の後ろに映るのはどこかの教室のようで、長机を二つ並べテーブルクロスをかけることで即席の食卓としていた。

 カメラのフレーム右側ギリギリのところに銀色のテールが見切れており、そこには監視役として風紀委員(イオリ)が立っている。

 

 「さて、今回のメニューはコッコーヴァン……鶏肉の赤ワイン煮ですが、私たち学生の身分では酒類を合法的に入手する事はできません」

 「合法的に。……そこを強調すると、なんだか私たちが罪を犯したようにも聞こえますね?」

 「いやいや、お前ら今までどれだけやらかしたと思ってるんだ」

 枠外から思わずイオリがツッコミを入れるが、二人は華麗にスルーした。

 「ここで告知に書いた『ご縁』というのが出てきます」

 「単刀直入に言えば、シャーレの先生がハルナの実験を覚えててワインを買ってくれたのよね」

 ジュンコはそう言いながら空のワインボトルを取り出し、テーブルに置いた。

 「ええ。発端は今から一週間前になります」

 ハルナは順を追って経緯を話し始めた。

 

 

 

……

 

 

 

 一週間前。

 ハルナはその日の当番生徒としてシャーレを訪れた。

 「おはようございます」

 「おはよう。ああ、ちょうどハルナに見てもらいたいものがあるんだけど」

 「何かございましたか?」

 先生はハルナがまっすぐ近づいてくるを確認すると、執務机の陰から大きめの木箱を引っ張り出した。

 「これは?」

 「君が欲してやまない子供の禁制品、かな」

 「……まさか!?」

 木箱の蓋を取り、液体で充たされた色付きガラスの瓶を取り出して見せた。

 「うん。ワインの詰め合わせだよ」

 

 材料がどこの土地で栽培され中身がどこの工場で作られたものなのか、酒の知識に欠けるハルナは判断ができない。

 ただブドウとワイングラスの絵にアルコール度数と思われる数字がラベルには書かれているので、それがブドウ酒である事は理解できた。

 「先生はお酒を飲まれるのですか?」

 「んー、付き合いがある時に軽く飲むぐらいかな。

 ここに来てからはそういった人もいないし、飲む機会はないよ」

 では何故? とハルナは疑問符を浮かべたが、すぐに先生のその行動の理由に気づいた。

 「……もしかして、コッコーヴァンの事を覚えていらっしゃったのでしょうか?」

 「まぁ過ちはあったけど、あれだけ熱意を持って挑んてるのを見るとね」

 ハルナたちが美食を追求するあまり、度々よその学校を襲撃したり珍しい生物を強奪する事件を起こしている以上、購入を禁じられている酒類に手を出そうとするのも時間の問題だと先生は考えていた。

 そこで先手を取り、大人である自分が酒を手に入れるという当たり前の行動に至った。

 「これは前*1にフウカと一緒に頑張った、君たち美食研究会へのお礼の品だよ」

 

 美食研究会は生徒が口にできない酒料理を合法的に食べれる、ヒナたちゲヘナ風紀委員会はこれから美食研が起きかねない問題をひとつは回避できる。Win-Winである。

 

 「では早速他の皆様とフウカさんを集めて料理を……」

 「はいストップ! お酒の入手方法が合法でも生徒が調理に使っていいか私も知らないって!」

 「先生、キヴォトスの外では未成年が料理をするのにお酒を使ってもよい事ぐらいは私も知っておりますわ」

 「キヴォトスじゃもしかしたら犯罪かもしれないって話……」

 問答の末、ハルナは『貴重な機会なのだから、段取りが整うまでじっくり待つのも美食の道』という先生の説得に応じた。

 

 「それと一つ、フウカはみりん風調味料で酔うぐらいアルコールに弱いから今回は無理だよ」

 「え。それほどまでに!?」

 先生はフウカたんの『絡み酒』を思い出しながら、いたずらを思いついた子供のように笑った。

 「……せっかく合法なんだし、ここは大々的にいこうじゃないか?」

 

 

 

 先生はそのあと手早くヒナとイロハにコンタクトを取り、協議のすえ今回の美食研の会食に以下の取り決めを行った。

 

 ●会場はゲヘナ学園敷地内とする

  ただし美食研究会を厨房に立ち入らせないため、食堂以外の場所でなければならない

 ●美食研究会には監視役として最低一名の風紀委員幹部と風紀委員一個分隊をつけること

 ●ワイン料理に使う食材は美食研究会が用意すること

 ●美食研究会を含む生徒は、飲酒防止のため開封後の取り扱いを禁ずる

 ●従って、ワイン料理の準備・調理はシャーレの先生が行うものとする(副菜などはその限りではない)

 ●検食のため、万魔殿、風紀委員会、給食部による試食会を事前に行うものとする

 ●学園側の負担軽減のため、会食の開催は土曜日または日曜日とする

 

 

 

……

 

 

 

 「コッコーヴァンを最初に口にしたのが私たちではないのは業腹ですが、今回ばかりは我慢しましょう」

 「先生のご厚意に免じて、こ・ん・か・い・はですけどね☆」

 「お前らなぁ……」

 苦虫を噛み潰したような顔で呆れるイオリを尻目に、イズミは瓶の口をクンクンと嗅いでいた。

 「ねえねえ、この瓶ぜんぜんニオイがしないよ〜?」

 「取り決めに『お酒を飲ませないし扱わせない』ってあったじゃない。洗ったに決まってるでしょ?」

 「えーもったいない!」

 

 

 「それにしては、先生が料理もできたなんて初耳ですね?」

 「まぁ先生ってインスタント食品とかコンビニ弁当とかのイメージがあるよね」

 寿司を奢ってもらったアカリとインスタントラーメンを食べさせてもらったジュンコ、二人がそう思うのも無理はない。

 事実、先生は忙しい時に自炊をする余裕がなく、シャーレ居住区にあるエンジェル24(コンビニ)の弁当や外食で済ませる事が多い。

 生徒たちはそんな時期に当番についたりシャーレを訪れたりしているので、自然とそのような印象がついてしまったのだ。

 「私も聞いたときには驚きましたが、先生のご趣味は料理だそうです」

 「前に手作りの酢豚食べさせてもらったけど美味しかったよ?」

 酢豚の味を思い出して溢れたよだれをじゅるりとすするイズミ。

 「何さらっと抜け駆けしてるのよ!?」

 「シャーレに行ったらたまたま晩ごはん作るとこだったの。見てたら先生が私のぶんも作ってくれたんだ〜」

 イズミの襟元をつかんでゆさゆさと揺さぶるジュンコ。ハルナはすまし顔でカメラへ視線を戻す。

 「いずれにせよ、フウカさんや難癖つけの方々が試食をした上で企画を通してますので、私たちを残念がらせる結果にはならないでしょう」

 「誰が難癖つけだ誰が」

 この会長、イオリの面白おかしい反応を配信に映すためにわざと煽っている。

 

 

 「では厨房の方にカメラを切り替えましょう。フェイス先生ー?」

 アカリは無線機で先生を呼びながらカメラ映像のチャンネルを切り替えたが、厨房の様子が映るはずの主画面が暗転したままだった。

 「あれ〜? 壊れたのかな?」

 「何言ってんのよ。この間買ったばかりじゃない」

 配信のチャット欄にも動揺が拡がるなか、ハルナはイオリに視線を向けた。

 「……イオリさん。厨房に風紀委員は配置しておられますか?」

 「お前たちじゃあるまいし、食堂を襲う奴なんて──」

 そうは言いつつも風紀委員会本部へと回線を繋ぐと

 『イオリ! 緊急事態です! 第25学生食堂が襲撃されたとの通報が入りました!』

 「……マジで言ってんのアコちゃん?」

 『冗談だと思いたいのはこっちもです……!』

 

 そんなイオリの様子を見てハルナは即断する。

 「皆様、どうやら取り決めがどうとか言っている状況ではないようです。すぐに食堂へ向かいましょう」

 美食研究会は配信を中断して会場を飛び出した。

 「あ! おい!?」

 イオリと風紀委員たちは急いで四人の後を追った。

 

 

 


 

 

 

 第25学生食堂、いまは使われていないそこの厨房で先生はコッコーヴァンを作っていた。

 とは言っても下ごしらえは事前に済ませており、加熱と副菜の調理が中心であった。

 

 その食堂と厨房が、一行が駆けつけた時には爆弾テロが起きたかのように破壊し尽くされていた。

 「私たちが爆破した時よりも酷い状況ですね」

 「それは否定できないな……」

 現場で調理を行っていた先生も、コッコーヴァンを煮ていた鍋も見当たらない。

 鍋はともかく、先生が賊に拉致されたのは明白だった。

 空きっ腹を鳴らしながらジュンコは苛立ちを隠さない。

 ハルナの表情も険しくなり、アカリは無言のまま怒りのオーラを放ち始めた。

 ただ一人、イズミは付け合せとして用意されていたバケットなどを探していたが、火災で炭化するか賊に踏みにじられており、流石に食べれる状態ではない。

 「食べ物を粗末にした上に先生まで攫うなんて……許せない!」

 普通逆だろと言うべきであろうが、イズミはいつでもマイペースだった。

 

 消火活動が一通り済んだ現場を一瞥して、現場検証のためやってきたアコはため息をついた。

 大急ぎで現場を片付け戻ってきたヒナは、彼女へ説明を求めた。

 「アコ、状況の説明を」

 「犯行グループは先生の身柄および美食研究会の会食の品目を目標とし、万魔殿への配達業者を装って学園に侵入。

 ヒナ委員長が現場に出て不在のタイミングを狙い、美食研に注意が向いてて警備が回ってない厨房を襲撃した模様です……」

 会食に一枚噛んでいるため飛んできたイロハは、それを聞いて口をへの字にし面倒臭そうにぼやいた。

 「あー……まずいですね。

 どうせ警備をしていた風紀委員会の失点としてあれこれ追求してきますよ? 元はと言えばマコト先輩が諸悪の根源ですけど」

 「クソかよ」

 マコトは外遊中でいま学園にいないのが唯一の救いか。

 「イロハ」

 「わかってますよヒナ委員長。これのせいで先生が連れ去られたんです。

 マコト先輩がなんと言おうと、こんなバカバカしい決まりは取り下げさせます」

 溺愛するイブキに危害が及んだ時ほどではないが、イロハも内心腹わたが煮えくり返る思いだった。

 

 しばらく沈黙を続けていたアカリだったが、ふとSNSを覗くと顔色が変わった。

 「皆さん、私たちのアカウントに同じURLが複数人からリプされてるのですけど」

 「それがどうしたんだ?」

 「この事件の犯人の配信みたいですね」

 「は!?」

 

 

 

……

 

 

 

 「勝った! 勝った! 夕飯はチキン料理だ!」

 どこかの倉庫と思わしき建物の中で、ヘルメット団に似た格好のスケバンたちはカメラへ向けて喜びの声を上げた。

 「ヒャヒャヒャ! 見たか俺たちのあざやかな手口は?」

 「万魔殿のアホどもも風紀委員会も怖くねえ! アタシたちは無敵だ!」

 

 この集団はゲヘナ学園に最近できた不良グループで、今までは表面化するほどの騒ぎを起こしていなかったため、知名度は底辺を這っていた。

 だが、この手の人間は承認欲求が高くなりがちで、無名の現状を打破しようと様々な手段を考えていた。

 そんな中見つけたのが、ゲヘナでも有数の問題児集団である美食研究会の会食イベントの告知であった。

 シャーレが間を取り持ち、犬猿の仲たる万魔殿と風紀委員会が開催を認める異例のイベント。

 それを台無しにする様を生放送すれば知名度はうなぎのぼりなのは間違いない。

 そしてシャーレの先生を誘拐する事ができれば、もはや自分たちの裏社会での評価は揺るがぬものとなる。

 

 いくら無法者の集まりであるゲヘナ学園生徒といえども、これらをまとめて敵に回すとどうなるかぐらいは理解できるのが普通である。

 だが彼女たちはやってしまった。

 

 「さて、そろそろ襲撃班が戻ってくる頃だな」

 「視聴者ども見てろよ見てろよ〜? あの美食研究会から奪った料理を食い荒らしてやるからな〜?」

 「シャーレの先生が欲しけりゃ一億円で応じてやるぜ!」

 

 

 下品な言い回しで視聴者にアピールしていると、突然カメラから見て左側の壁が爆発した。

 「ワァァ!?」

 「なんだ一体!?」

 

 「半ばヤマ勘でしたが……読みが当たりましたね」

 煙の中から姿を現したのは美食研究会の四人。

 そして煙が晴れると、彼女らの背後にはイロハの重戦車(虎丸)がにらみを利かせていた。

 不良グループは意外にもすばやく混乱から立ち直り、各々の銃を手に戦闘態勢を整えた。

 「てめえら美食研究会!? どうしてここが分かった!?」

 「この地域は私たちも知ってる場所ですからね~」

 「あんたらの配信の後ろに映ってた折れた鉄塔! それでここが前に温泉開発部がふっ飛ばした地区だって分かったのよ!」

 

 確かに不良たちの背後には窓があり、そこから派手にへし折れた送電用の鉄塔が見えていた。

 それはかつてトリニティの桐藤ナギサが補習授業部(身内)を陥れるために流したニセ情報をもとに、温泉開発部が掘削のため地区を爆破した時に倒壊したものだった。

 キヴォトスのあちこちを縦横無尽に駆け回る美食研究会にとって、ゲヘナ自治区は家の庭先のようなものだ。

 『先生を手助けした』あの時の騒ぎと目的地は、現地にたどり着けなかったものの鮮明に覚えていた。

 

 「あー不良の皆さん。襲撃グループは風紀委員会が全員拘束して、先生と料理を無事取り戻したと報告が入りましたよ。

 ……王手ですね」

 虎丸のハッチから現場を見下ろしていたイロハは不敵な笑みを浮かべた。

 

 「あなた達は食事を、料理を……美食を、ただ目立ちたいがために踏みにじりあざ笑いました」

 まるで小さな子供を諭すような声色で、自分たちの怒りを言葉にするハルナ。

 ゆっくりと愛銃(アイディール)を構え、他の三人もそれに続く。

 「食べ物を粗末にする人は許さないんだから!」

 「先生にも危害を加えて……いま少しどころじゃなく怒ってますよ?」

 「こーのーヤロー……!」

 強烈な殺意に不良集団は足がすくんだ。だが逃げるという選択肢はすでに失われていた。

 

 「そんなに炎上したいのであれば、物理的に炎上させてあげましょう!」

 「ぎゃあああ! 撃て撃てぇ!!」

 

 

 

 数百メートル先の道路上。そこでは拘束された襲撃グループたちが風紀委員会によって連行されるところだった。

 不良たちのアジトの方角で爆発音と大きな炎が何度も噴き上がり、それを見た犯人一行は震え上がった。

 「ほら! キリキリ歩け!」

 イオリや一般風紀委員に銃を向けられた犯人たちは、己の幸運さを噛みしめ大人しく護送車へ乗りこんでゆく。

 

 「ハァ……。再開発予定もなく立ち入り禁止になってたとはいえ、壊していい訳ではないでしょうに」

 「今回はイロハが主導権を握ってるし、まぁどうにかするんじゃないかな?」

 大鍋を車に載せながらのんきに答える先生に、ヒナは軽くため息をつきながら袖を掴んだ。

 

 「……先生」

 「なんだい?」

 「今度の当番の時、先生に料理を作って欲しい」

 「いいよ。何が食べたいか決めといてね?」

 

 

 

……

 

 

 

 「皆様、不躾な方々のせいでお時間をいただき、大変失礼いたしました」

 不良グループを徹底的に打ちのめしたあと、美食研究会は学園に戻り配信を再開した。

 幸いなことにメインディッシュのコッコーヴァンは無事であり、付け合わせを欠いてはいるものの会食配信を続ける事にしたのだ。

 「リスナーの皆さんのおかげで犯人も捕まりました。この場を借りてお礼申し上げます☆」

 アカリの言葉に合わせて軽く頭を下げる四人。

 

 皿に盛り付けられたコッコーヴァンがハルナたちの前へ並べられ、全然中身が減っていない大鍋がカートに載せられたまま画面中央に停められた。

 「コッコーヴァンと組み合わせていいかは分からないけど、作り直してる時間がなくてこれしか……」

 先生は皮付きのフライドポテトが載った皿をメインディッシュと同じように食卓へ並べた。

 「ありがとうございます先生、お気持ちだけで十分ですわ」

 「でもビーフシチューとかでもポテト食べたりするし、これはこれでありじゃないの?」

 「ねぇねぇ、それよりもお腹すいたよー。早く食べよう?」

 イズミの腹の虫は先ほどからなりっぱなしで、このままではマイクが音を拾ってしまいそうな状態だった。

 「それでは皆様、今日という日に感謝しながら食べましょう……」

 

 「いただきます!」

 

 

*1
メインストーリー最終編




オマケ 〜謀るフロイライン〜

■試食会当日
 イロハ「という訳で、本当にマコト先輩は行かなくていいんですか?」
 マコト「くどいぞ! 誰が忌々しい風紀委員会などと一緒に食事をせねばならんのだ! 絶対に行かんぞ!」
 イロハ「確認はしましたからね。……イブキ、行きましょう」


 先生「あれ? 結局マコトは来なかったの?」
 イロハ「風紀委員会に難癖つけれそうな所を探してこいとは言ってましたよ」
 イブキ「マコト先輩どうしたんだろうねー? せっかく美味しいものが食べれるのに」
 アコ「まあ、来ないなら気楽でいいじゃないですか」
 チナツ「そうですね。今はシャーレの部員として普段の立場は忘れることにしませんか?」

 ヒナ「(……イロハ、どうやらマコトに一杯食わせたようね)」


■本編後
 マコト「おのれぇぇぇ! 謀ったなイロハぁ!?」
 イロハ「何の話ですか?」
 マコト「この間の試食会の事だ! 出すものがワイン料理だとなぜ言わなかった!?」
 イロハ「ちゃんと書類に『コック・オ・バン』と書いてあったじゃないですか。
 マコト先輩はそれを読んだ上、私が何度も確認を取ったのにも関わらず断られたのですよ?」
 マコト「ギギギ……(白目)」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。