トレセンの食堂に就職した結果   作:アシスト

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VS マックEーン

 

 

 強くなろう。

 

 胃にブラックホールを飼い慣らす葦毛の怪物(オグリキャップ)と出会い、胃に星の戦士を宿す日本総大将(スぺシャルウィーク)と出会い、最愛の実妹(ライスシャワー)と運命的再会を果たしたこの一ヶ月、俺は一つの結論を導き出した。

 

 誰かに助けを求めなくてもいいぐらい俺が強くなればいい。

 

 トレセン学園の厨房は戦場だ。気を抜けば大食い三銃士からの流れ弾(おかわり)を喰らって生死を彷徨うこの戦場において、他人の心配をできる余裕を持っているのは歴戦の戦士たる主任のおばちゃんぐらい。他の者は俺を含めて生き残るのに精一杯なのが現状だ。

 

 ならば強くなるしかあるまい。

 決して死にたくないから強くなるんじゃない。生き残ってウマ娘ちゃんたちに美味しい料理を作ってあげるために強くなるのだ。

 

 手っ取り早く強くなるためには、やはり普段から身体を鍛えることが重要だろう。

 売店で買った4種類のパワーアンクル。日常的に身体へ負荷をかけるにはうってつけのアイテムだ。今日はこの水色のを足首に、橙色のを手首に付けて生活している。アンクルだけど腕に付けたって問題はないだろう。

  

 とはいえ、無理をして身体を壊したら本末転倒。お守りを肌身離さず持っているとはいえ、マジのガチで忙しい時は遠慮なく外そう。まぁこの状態でも朝昼乗り越えられたから夕食前までは問題なく業務をこなせると思うけど。

 

 

 トレセン食堂の午後3時。

 生徒たちはアスリートといえど年頃の女子中高生。あまーいスイーツには当然目がない。注文したスイーツをパクパク食べながら友達との談義に花を咲かせている娘も少なくない。

 

 本日の目玉スイーツは低糖質メロンパフェ。美味しさそのまま糖分50%オフと体重が気になる年頃の娘にもやさしいパフェとなっている。

 

 今日の俺は"一番若くて体力がある"って理由でひたすらに生クリームをかき混ぜてホイップクリームを作る係。もちろん機械を駆使して作っている分もあるが、それだけでは三銃士の食べる消費量に生産量が追い付かないため、人力でも作らなければならな「おかわり」って思ってる傍からこれだ。

 

 俺は特用の巨大パフェグラス×5にコーンフレーク、ジャム、ホイップクリーム、アイス、カットメロン、その他諸々の食材を綺麗に盛り、口元にクリームを付けたオグリキャップに差し出す。

 

 ルンルンステップで戻って行くオグリキャップの後姿を見ながら、一息入れる。やはりアンクルを付けている分疲れるな。今のうちに体力回復しておこう。青汁は高価だから今はバイタル20で我慢しよう。

 

「ごめんくださいまし」

 

 バイタル20を飲み干すと同時に、1人の少女がやってきた。

 

 サングラスとマスクをかけ、頭に阪神の帽子をかぶるそのウマ娘は、周りに誰もないことを確認するようにキョロキョロしている。制服を着てるからトレセン学生なのは間違いないのだろうが、なんだかとても怪しい。

 

「……よし、見知った顔はいませんわね。こほん、低糖質メロンパフェを2つお願いしますわ」

 

「ゴルシちゃんには1つな」

 

「きゃああアアア!? ご、ごごゴールドシップさん何故ここに!?」

 

 そんな怪しげな彼女の背後からぬるりと現れたのは、今度は不思議な帽子をかぶったウマ娘。

 いや彼女には見覚えがある。よく汚い叫び声を上げながら左目を押さえて床をのたうち回っているちょっと変わったウマ娘ちゃんだ。

 

「いやいやマックちゃんよぉ、そんな面白さ334点満点の格好をゴルシちゃんアイが見逃すわけねーだろ! こっそりついて来てみればウマそーなもん頼んでるじゃねーかこのこのォ!」

 

「ちょ、ちょっと! 肘で脇っ腹を突くのはやめてくださいまし! 嫌味ですの!?」

 

 とても仲が良い2人組だなぁ。 

 

 そう思いながらも俺はササっと3つのメロンパフェを作り上げ2人に渡し、再びホイップクリーム作りに励む。3度目のおかわりの為に涎を垂らしてこちらへ近づいてくるオグリキャップと、スペシャルウィーク率いる仲良し6人組がスイーツ目当てに食堂へ入ってきたのを横目に見ながら。

 

 おっ、ライスもお友達と一緒にやって来たな。お兄ちゃんのカッコいいところ見せねぇと。いっちょやったるでぇ!! ……あっ、主任? それはそれとしてヘルプお願いできます? 今の俺の強さじゃまだちょっと捌ききれないといいますか、ね? あーちょっと待って! ヘルプミーのハンドサイン無視しないで!

 

 

 

 

*————————*

 

 

 

 

 メジロ家のウマ娘たるもの、己を律する強き精神力を持たなければなりません。

 

 "己を律する"、とは決して自分自身を甘やかしてはいけないと言う意味ではありませんわ。自身の置かれた状況を的確に判断し、厳しくするときは徹底的に厳しく、甘やかすときは徹底的に甘やかす。今の自分に必要なモノは何かを見極め、己を正しくコントロールすることを意味するのです。

 

 今日の(わたくし)は早朝から厳しい練習に打ち込んでいました。故に、今の私に必要なモノは甘いご褒美。ムチ打って練習してきた私の身体に必要なのは、疲れを癒す甘美なアメなのですわ。

 

 最近ちょっと、少し、極僅か、体重が微増していることは認めましょう。しかし、それはご褒美(スイーツ)を我慢する理由になりません。我慢は身体にも心にも毒ですもの。それに以前、私は無理な食事制限をしたせいで貧血で倒れるという失態をおかしました。二度とあのような過ちは繰り返しません。

 

 だから、今、ここで。私がメロンパフェを食べることには何の問題もないのです。やましい気持ちなど一切ありません。

 

「んじゃ何であんな不審者よろしく怪しい格好してたんだよ」

 

「こんなところトレーナーさんに目撃されたら、はしたない女と思われかねないじゃありませんか!」

 

「乙女かよ。やましい気持ちありありじゃねーか」

 

 私が大の甘いもの好きであることはトレーナーさんも承知していますわ。しかしこんなパフェにがっつく姿を見られたら、ウマ娘としてはともかく女として幻滅されてしまうかもしれません。そんなのレースで負けるより嫌ですわ。

 

 だからこうして変装を試みました。しかしゴールドシップさんにすら見破られるようならば意味はありませんね。次回からは別の手段を考えましょう。

 

 それより今はこのメロンパフェですわ! ああ、なんて美味しいのでしょう。メジロ家専属のシェフが作るパフェにも引けを取らぬこの美味しさ。先ほどの寡黙な料理人、メジロに勧誘してみようかしら。検討しましょう。

 

 糖質50%オフに惹かれて2つも頼んでしまいましたが、それに見合うほどのハードトレーニングをこなしましたし、たまには羽を伸ばしてもいいですわよね! だって50%オフなんですもの!

 

「マックちゃんよぉ、糖質50%オフはカロリー50%オフって意味じゃねーぞ?」

 

「………えっ!?」

 

 

 

 

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ーーーー

 

 

 

 

「ライアン! ライアンはいるかしら!?」

 

「わっ、どうしたのマックイーン?」

 

「一緒に筋力トレーニングをしてくださいまし! 貴女との友情トレーニングなら、このお腹周りに付いた中性脂肪を根こそぎ燃やし尽くすなんて訳ありません! 後このことはトレーナーさんにはくれぐれも内密にお願い致しますわ!!」

 

「……ええーっと、もしかして、食べ過ぎて太っ」

 

「それ以上言わないでくださいましッ!!」

 

 

 

 

  コンディション獲得… 

     太り気味  

 

 

 

 





的な乙女マックちゃんとツッコミゴルシのコメディ小説が読みたいです。
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