新暦58年 9/3日 夜
約束したし、メイドをどうするか考えるか。だが、問題は信用が置けるかだな。ついでに同年代とは言わずとも、同じくらいの年齢がいい。いや、年齢……?エル、幽霊っているのか?
(います)
よしっ、それなら幽霊を生き返らせることで恩を売れるし、年齢も自由自在だ。ただ、子供っぽい子でないとダメだな。都合よくいるわけがないとは思うが、根気よく探すことにしよう。エル、幽霊を認識できるようにできるか?
(はい)
よし、こんな深夜に出歩くのはあれだが、護身用武器さえあればいいだろう。探しに行くか。
公園についたのはいいが……クソガキというか何というか……そもそも妹の世話も任せるんだから最低限女の子じゃないと。今後は睡眠せずに毎日出かけるか。できれば魔法が使えるタイプの人がいいんだが。……一応家の前に幽霊募集の看板を立てておくか。噂は見なかったことにしよう。
…………約半年後
今日も探しに出ようとしたんだが、家の前に幽霊がいる。見た目5歳の美幼女だ。
「あのー、噂を聞いてきたんですけど、何でも、生き返らせる代わりにここで働いてもらうとかなんとか」
「ああ、そうだ」
「あの、生き返らせてもらえませんか。お母さんを止めないと……!!あんなにボロボロになるまで生き返らせようとするなんて……!」
「条件がある。一つ、知り合いに会うと困るので、イメチェンをすることと名前を変えること。二つ、自分たちと同年代として過ごしてもらうし、普段はメイドの仕事があるから、そうそう歩き回れないこと」
「……わかりました。本当に生き返らせてもらえたならその条件を呑みます。ただ、名前はシアでお願いします」
「イメチェンはどうする?」
「口調や声は変えたくないです。あ、これは敬語なんですが、普段敬語を使うくらいではだめですか」
「流石にダメだな。ただ、普段使いを敬語にするなら、髪色と髪型くらいでいいぞ」
「か、髪色変えれるんですか?やったぁ!ちょっとやってみたかったことあったんだよね!」
「それが素の口調か」
「い、いや……はい」
「別に責めてはいない。で、どうしたいんだ」
「髪色は草色で、髪型はふわふわな感じで、模造花を頭に刺したいです!イメージはお花畑!」
「了解した。体を用意するので、しばらくはこの家に待機で頼む」
「は~い」
「あと、体を作るにあたって、データが欲しいんだが……その服って脱げるのか?」
「た、たぶん脱げるけど……ぬ、脱ぐの?」
「でないと体が作れないだろう」
「あ、あ~、バ、バッチこい!」
「脱いでないが」
「そ、それはちょっと……こ、こう、男の子の目の前で自分から脱ぐのは、乙女としてのプライドが許さないっていうか」
「相当量の情報がないと、遺伝子を特定できないんだが……」
「仕方ない。先に子供のころの体型を知るために記憶を見るか」
「よかった……じゃない!変な記憶見られないように、ついてくからね!」
「本気か?」
「本気だよ!」
「なら行くか。初めてだから調整ができないかもしれないが」
「え、初めてなの?ちょ──」
「……ねぇ、おなかの中からなの?」
「遺伝子特定にはめちゃくちゃ重要だろう」
「……これ、早送りは?」
「改善点発見だな」
「……まじかぁ」
「なんでこの親はこんなに忙しいんだ?」
「偉い人だったんだって」
「ていうかシアに聞く必要ないなこれ。シアが知ってることは全部見れるわけだから」
「だね」
「全部終わったけど、精神年齢二倍になった気分なんだけど」
「実質そうだろう。ドラマ見てただけだが」
「最初は頑張って隠してたけど、乙女のプライベート全部見られたし、もうこの体自由にしていいよ。はい脱いだ」
「んじゃ遠慮なく全身調べるか。遺伝子情報とかの重要な情報は魂の奥の奥にあって見れないし」
「どうぞー」
「もうお嫁にいけない……」
「許可は貰ってただろ」
「あそこまでするとは思わなかったの!夫ができてもここまでやらないと思うよ……」
「……。とりあえず、体用意するから数日待ってくれ」
「ラジャ」
遺伝子を変えた細胞を生産して、一気に人の体を成形するか……。ついにためてきた栄養をそのまま大量に摂取する日が来たか。
……そもそも幽霊は精神さえ成長しない。いつまでたってもその精神性は変わらない。知識が増えるだけだ。なぜなら考えているわけではない。過去の心を永遠に繰り返しているようなもので、魂にあるのはたとえ死のうが記録だけなのだから。
やはり幽霊は成仏させるべきだな。自分には取り込むことしかできないが。
数日経って、ついに地下研究室に体ができた。手はまだ離していないというか癒着したままだが、この手を離すと、この体の脳を魂に合わせるのに失敗してしまう。シアを呼んであるから、来るのを待とう。
「来たよ」
「では、この体に重なってくれ。あとはこちらで何とかする」
「うん」
魂に引っ張られている脳をそっちに持っていく感じで……できた。
確かここら辺に痛覚細胞がいっぱいあったはず。全部同時に刺激すれば……
「いったいっっ!!!」
「あー、智樹が起こしたんだ」
「あぁ、違和感はないか?」
「髪飾りで重心が……。あと、体が幼くて動きづらい」
「問題なしと。んじゃメイド服着てお仕事開始してくれ。とりあえず掃除から」
「……本気? でかすぎない?」
「じゃぁ頼んだよ」
「あー、はいはいわかりました」
後は妹が受け入れるかどうかだな。未だに距離があるから。