(ん?……俺はトラックに引かれたはず)
何も見えない。暗闇の中にいた。暗所恐怖症ではないのだが、流石に怖い。耳を澄ます。
トクン トクン トクン
一定のリズムで何かが聞こえてくる。これは……
(……心臓の鼓動?)
確かに聞こえてくる。その鼓動を聞くととても安心する。
(この景色が終わってるといいな)
まだ、何も見えない。しかし心臓の音以外にも別の音が聞こえる。
「頑張れ、頑張れ」
「もう少しです。奥さん頑張ってください」
「ッッ!!」
詳しくは聞こえない……でも、確かに人の声だ。すると暗闇の中に光が見えてくる。思わず手を伸ばそうとする。しかし手を伸ばすことは出来なかった。体が思うように動かないのだ。そんなときだった。光から何かが迫ってくる。その何かは俺を掴むと光の方へと連れて行く。その眩しさに目を瞑る。そして次に目をに開けたとき、そこは病室であった。
見えたのは、自分を持っている看護婦、そして涙を流しながらこちらを見ている男と女。女はベッドで寝ていた。多分、あの女の人が俺の母親なのであろう。というか……
(……サイレンススズカに似てるな)
そっくりである。ウマ娘のサイレンススズカに。もしかしてだが……
(……俺の願い叶ってる?)
サイレンススズカになってるのだろうか?
「奥さん、旦那さん。元気で可愛い男の子ですよ」
「良かった、本当に良かった。良く頑張ったな」
「えぇ、本当によかった」
耳が完全には機能していないのだろう、はっきりとは聞こえない。それでも次の言葉ははっきりと聞こえた。
「「生まれてきてくれてありがとう」」
その言葉をきっと一生……俺は忘れることは無いだろう。
この日、【
(静浦涼風って……サイレンススズカだよな?)
しばらくして、成長して一人でトイレに行けるようになったとき気づいた。
(あれ?無いけど、ある?)
鏡を見たとき、自分の容姿がウマ娘のサイレンススズカにそっくりだも気づく。しかし、俺には
「嘘でしょ」
はて?何故男なのだろう?
(……
(
どうやら、思ったより正確に願いは叶っていたそうだ。
「まぁ……男で困ることは無いだろう」
(俺はこの世界でサイレンススズカのように走る!!)
「頑張る!!」
「ねぇあなた、涼翔ったらまた独り言をしかもトイレで……」
「ふむ、どうするべきか?医者に連れていった方がいいのか?」
「………」
その前にこの親からの誤解をなんとかしなければ……
最近になって読み書きができるような年になった。俺は別に無双系主人公を目指してるわけではない。ただ、何にも縛られることなく走りたいだけなのだ。だからこそ、変なことをして医者にでも連れていかれたらたまったもんじゃない。なので年相応の対応をとっている。そうして何気なく親の見てるテレビを見ているととある異変に気づいた。
(ん?四国の情報しか流れてない)
これまでの人生でここが前いた(現代?)日本に近い事が分かっている。だからサイレンススズカにはまた会えなさそうである。まぁその話は置いといて、普通テレビであれば四国以外の情報も出るだろう。しかし、全くもって四国以外の情報を耳にしたことがない。それ以外にも可笑しい点がある。
(神樹様?神世紀?)
この世界では度々耳にする言葉であった。しかし、その言葉は俺には聞き馴染みがない。聞いたことがあるとすれば前世の知り合いのA君がテストを受けとる前に言っていたような気がする。
『頼みます、神様、仏様、神樹様!!』
その後のA君は絶望した顔をしていた。もしかしたらAくんは神世紀?と呼ばれる時代から来たのかもしれない。もしくは……A君は極度の鬱魔法少女オタクだったから、もしかしてここは……
「……鬱魔法少女世界?」
ヤバい、一般人には厳しい世界ランキングのわりと上位に組み込む鬱魔法少女世界なんて!!
だが、落ち着け俺、自分はまだ幼稚園にも通っていないような子供だ。こんな幼子が戦うだろうか?いや戦うわけがない。それにあれだ、俺は男だ。魔法
そう思っていた時期が俺にもありました。あれから俺はこの世界の常識などを学んだり、走っていたりしていた。また、自分の足で走れることに感動した。初めて走ったときには涙を流し、両親に心配されたぐらいだ。それぐらい走れる事が俺には嬉しかった。今では毎日走っており、親に心配されている。
小6になる前の春休み、俺はいつものように走っていた。家の前にくると1台の車が止まっていた。黒塗りの高級車であった。
(なんだろう?)
そんなことを考えて家に入るとそこには仮面を着けた数人の大人が玄関にいた。そうして俺は両親に連れられて仮面の人の話を聞くことになった。
「神樹様より神託がくだりました。お二人の息子である涼翔様に【勇者】としての適正があると」
(戦うなんて聞いてないよ~!?)*1
声には流石に出さなかったがそれぐらい驚いた。そうですよね、ナイナイの岡○さんもプリ○ュアになれるんだったらそりゃあサイレンススズカ(男)だって魔法少女みたいなのになれますよね。ところで【勇者】ってなんぞや?俺は別に剣を抜いたりはしてないけど?なに?抜けるの?そんなくだらないことを考えながら、ふと親の顔をみると涙を流していた。
「……そんな……どうして涼翔はこんな見た目や名前でも男の子何ですよ!?」
こんな名前って……自覚あったんかい!!
そうだよね、俺も生きてて【すずか】っていう男の人にあったこと無いもん。お薬手帳みたいなのが女の子っぽい奴だし、病院でもちゃん付けで呼ばれるもん。*2
「それは我々も分かりません。ですが、お役目に選ばれたからには涼翔様に勇者として世界の為に戦って貰わなければなりません。それに当たりまして、涼翔様には【有坂家】へと養子に来てもらうことになっています。」
「勝手に決めないでください!!」
初めてだ、初めてここまで本気で怒っている母や父を見た。その母親と父親は今、俺を強く抱き締めている。決して離さないように。……それほど俺のことを大切に思ってくれているだろう。
「……元とはいえ、大赦に所属していた奥様や今も所属している旦那様なら分かるでしょう。お役目の重大さを」
「「ッッ!!」」
しかし仮面の方は無感情で言い放つ。ロボットのようだとそう感じてしまう。
「……私は構いません」
「「涼翔!?」」
俺の発言に驚く両親。
今さらだが話すときの一人称は【私】である。サイレンススズカの見た目で【俺】はちょっと違和感あるもんね。
「こんな私でも世界の為に役立てるのならば、私は勇者になります」
「勇気ある決断に感謝を致します」
「待て涼翔!!分かっているのか!?死ぬかもしれないんだぞ!?」
「そうよ!!今からでも考え直して!!」
「ごめん……でもさ、断ったら二人が大変なことになるんでしょ」
「「ッッ!?」」
「これまで何も出来なかったからさ、これくらいはさせてよ」
この気持ちは本当である。俺は前世同様両親に何もできていなかった。ならばせめて今世ぐらいでは前世の分も合わせて親の役に立ちたかった。
「……バカ者が、親の心配を無視して」
「……」
「……本当にね、バカ涼翔」
「それでも……バカなお前を誇りに思うよ、涼翔」
「それはお母さんも一緒。それにね涼翔、貴方が生きてくれて育っているだけでも私達はとても幸せなのよ」
「……お父さん……お母さん」
次の日、俺は静浦の家を去って、有坂の家へと向かった。そのとき俺の要望により名前は変わらないまま、俺は【有坂涼翔】となった。これも養子先の母親である【
こうして色々と手続きなどをしている間にいつの間にか春休みは終わっており、新学期になった。クラスわけで決まったようだがどうやら俺だけ他の勇者とクラスが違うらしい。一緒にしてくれよ……そんな仲良くない人と一緒に戦うのかよ。そんな俺でも友達はできた。
「…どうしたの?そんなにこっちを凝視して」
「いや、何でもない」
リアル目隠れである【
筈だった。
ボケようとしたけどそこまでおもしくないですね。ここまで見ていただいてありがとうございました。次回は戦闘に入ります。(【有坂優斗は勇者となる】でも同じような終わり方をしたような気が……) ←PSすいませんいきませんでした。