MUV-LUV 世界の自衛隊の奮闘 (リメイク予定) 作:島田愛里寿
1997年 五月のある日
山百合女子衛士訓練学校
「今日は自衛隊との交流会か~。なに話すんだろうね~?」
「さぁ?でも一応大陸に派遣されていた歴戦の連隊長らしいわよ?」
「お前ら静かにしろ!!」
自衛隊との交流会当日。篁唯依たちが普段教義を受けている教室において自衛隊の最精鋭部隊である熊本女子戦車連隊連隊長と沖田統合作戦本部長による講演が予定されていた。
「今回最初に講演していただくのは陸上自衛隊の西部方面隊熊本女子戦車連隊において連隊長を務めておられる西住まほ一等陸佐と同連隊において副連隊長を務めている逸見エリカ二等陸佐だ。これは武家社会という要塞において生活してきた貴様らが最初から平民主体で構成されてきた自衛隊との価値基準の差と双方の実情を知るよい機会となるのだ!今日の朝礼で校長が言っておられたようにくれぐれももめごとは起こさずにしっかりと聞くように!」
「「「「はい!!」」」」
そうして彼女たちが返事をしてから十分ほどのトイレ休憩ののちに講演が始まった。
「失礼する」「失礼するわ」
そういって入って来た二人に山百合女子衛士訓練学校の生徒たちは驚いた。なにせ二人は自分たちと同じ高校生くらいの年齢ようでしかも一人は銀髪という日本人に見えない容姿だったので当然だが…
「さて。自分が陸上自衛隊西部方面隊所属の熊本女子戦車連隊連隊長を務めている西住まほだよろしく頼む」
「同じく陸上自衛隊西部方面隊所属の熊本女子戦車連隊副連隊長を務めている逸見エリカよよろしく」
そうしてまほとエリカは自己紹介を終えてまほが講演を開始した。
「さて、諸君は自衛隊についてどういう印象を持っているのかを確認しておこうか…そこの生徒!言ってみろ」
「はっはい!」
そうしてまほに指名された生徒は言い始めたが…
「え、え~と。『落ちこぼれ』『寄せ集め』『予算の無駄使い』『無駄飯食らい』『金食い虫』あと…」
「あ、あ~。そこまで言わんでいい。まぁそんなところか」
「相変わらずひどいですね」
そう。本土におけるBETA戦が始まっていなかったこのころは自衛隊に対する印象は最悪の一言で、下手すれば近衛軍に入隊予定の武家子嬢への評価より悪かったのだ。
「まぁ諸君らが所属する近衛軍や帝国軍のように我が自衛隊は伝統のある組織ではないし、帝国本土防衛軍の格下のような立場や軍よりの他の組織に近い点からもそう言われても仕方がない部分もある。しかし、本来我々自衛隊は出動しないほうがよいのだ」
「と、いうと?」
「本来なら私たちは活躍してはいけないのよ」
まほとエリカの発言に生徒たちは困惑した。なにせ帝国軍や近衛軍が大活躍している上に国税を使っている組織のはずなのに活躍しなくていいとは?
「そもそも我々が活躍、もしくは全力出動したということはそれだけ国が切羽詰まっておらず、平和であるということだ。我々自衛隊のモットーは『平和を守る』だ。税金泥棒と言われていた方がいいのさ」
彼女の発言は自衛隊の本質を表していると言えよう。
帝国軍・近衛軍が鉾とするならば自衛隊は盾と言えるのだ。
本土防衛軍も本質的には盾であるが、鉾でもあるので自衛隊はまさに国土を守る大盾と言える。
「さて、私とエリカは大陸派遣部隊として大陸にてBETAと戦ったがひどいなんてものではなかった」
そうしてまほは対BETA戦について語りだしたがその内容は生徒らを恐怖させるものであった。
「我々自衛隊には戦術機なんて贅沢な物はないからな、戦車や機動力で戦術機に劣っているレイバーで交戦する羽目になったのだが、友軍部隊は次々にBETAの餌食になっていったぞ?我々の部隊は運よく損害なしで後退できたがそれはただ運がよかったに過ぎない」
そう。まほは大陸での撤退戦の功績から『自衛隊の中で英雄に最も近い連隊長』という評価を受けていたが本人としてはほかの部隊が犠牲になって自分たちが生き残ってしまったという思いが強かったのだ。
「近くで展開していたアトラスと機械化歩兵を主力にしていた部隊は最も悲惨だったぞ?アトラスのコックピットは戦闘機と同じ強化ガラスを使用したキャノピーだぞ?そこを戦車級に破壊されて食われるか自決を迫られた隊員もいたんだ。うちのレイバーは戦術機のような高機動戦闘を想定しておらんせいで一度接近されると逃げられんからな」
(このアトラスとは97式装甲戦闘レイバー『アトラス』のことだが正規に正式化されたのはこの講演会の数日前のことであり本当は77式撃震より前に試験的に大量生産されて試験運用されていたのを大陸派遣部隊の一部に配備していたのだ)
「そうでしたね。何度仲間の隊員を見捨てざる負えなかった事か‥‥」
エリカもその光景を思い出したのか遠い目をしていた。
「まぁとにかくだ。諸君はこの安全な後方にある学校で学んでいる間はいいだろうが、諸君らも後々に戦術機に乗って戦線に立つことが来るだろう。戦場ではいつBETAに食い殺される可能性があるということと油断は命取りということだ」
彼女の言葉は生徒たちに強く心に残った。
次回 沖田統合作戦本部長