自分の人生は走ることと一緒にあった。芝の上を駆け抜け、どんな距離も他の奴らより早くゴールする。
自分は周りよりも賢い部類に入るらしい。そういう会話を周りの人間たちがしていたからそうなのだろう。
体が大きくなってある程度の速さで走れるようになれば、人を背に乗せて走るようになった。坂道を走ったり、芝とは打って変わって土の上を走ったり…とにかく走ることが好きだった。
「こいつはGIも取れます!出走させるべきです!」とよく背に乗っけていた人がはしゃいでいた。こうして、めでたく自分はレース…“競馬”の舞台へ向かうことになった。
走る競走馬としてのキャリアは長かった。現役でいられたのは体が頑丈だったからだと思う。背中に乗せていた人も牧場の人も非常に驚いていたが、本当はもっと走れるんだけど…
こうして、現役を終えて過去を振り返ってみれば全戦全勝…周りの奴らからは『お前、バケモンすぎるだろ…』と驚かれた。
自分はレースを走っていただけだから、どのレースがどんな風に重要なのかはまるで分からなかった。ただただ競い合った奴らに勝ってきただけだ。
走らなくなってからは実にのほほんとした生活だった。時々色んな人が自分の元を訪れることもあった。……あとは子孫を残したりもしたな。
そうやって毎日を過ごしていき、そして静かに息を引き取った。最後は関わってきた人達に見守られながら眠るように幕を閉じることが出来て、案外悪い気がしなかった。
多くの人の記憶に自分がいたという証を残せた…それだけで十分だ。
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こうして、私は馬としての生涯を終えた…
「行ってきまーす!」
お気に入りのスポーツシューズを履いて元気よく玄関から飛び出していくのは、芦毛のウマ娘。肩にかけてるのはボックス型の大きいカバン、愛用の帽子を被って一気に走り出す。
グッと踏み込む力強い走りで街を駆け抜ける。通り過ぎる彼女に一瞬気を逸らしながらも「あぁ、なんだまたあの子か」ともう慣れてしまっている近隣の人達。これが
生まれた時に自分が馬だった前世の記憶を持っているのは何となく分かった。ただ、それが普通のウマ娘ではありえないことを知ったのは、1歳半くらいのときだ。ウマ娘の皆が記憶を持っていると思っていたが、今世では私が異質の部類に入るようだ。
最初は今まで四本足で走っていたから、二本足で走り始めた頃は違和感を感じたがすぐに慣れた。3歳になる頃には走るのが楽しくて街中を駆け回ることもあった。
「おはようノルンちゃん。またレース場かい?」
「はい!今日のレースは見逃せませんからね!」
小さい頃から駆け回っていたおかげで、近隣に限ってだがかなり顔が広くなったと思う。今話しかけてきたのは夫婦経営の定食屋さんで働いてるおばちゃんだ。
今の名前は『レイゴウノルン』略して『ノルン』と呼ばれやすい。偶然か必然かは分からないが、前世で呼ばれてた私の名前と同じなのは嬉しかった。理由は特にないが、やはり呼ばれるのならばこの名前でないとしっくり来ない。
こうして今度はウマ娘として生を受けた私だが、今は前世で出来なかったことを満喫していると言っても過言ではない。
それは“レースの観戦”だ。前に走っていた側だったからこそ、見る側の方にどっぷり浸かってしまっている。現に親に頼み込んで買ってもらった一眼レフには大量の写真が入っている。それもほとんど全て『走っている姿のウマ娘』をだ。
「おーい!ノルンちゃん!こっちこっち!」
「すみません!お待たせいたしました!」
レース会場前でこちらに手を振るのは栗毛の女性。この人は『月刊トゥインクル』を出版している所で働いている記者の松島さんだ。彼女との出会いは少し変だったけど、今ではこうして予定を合わせてレースを見に来る仲間みたいな存在になった。
松島さんが言うには『夢を追いかけるキラキラしたウマ娘達に魅了されて記者になった』という。レースのことになれば暴走気味になる彼女だが、一応はプロの記者なのだ。ウマ娘やトレーナーを見抜く力は本物である。
聞いたところによると『月刊トゥインクル』の部署には彼女以上に変人な記者がいるらしい。是非ともお会いしたいものだ。
過去に『何故その先輩はレースを見に来れないんですか?』と聞いてみた所、『先輩は結構名前が売れてますからね。暇な時の方が少ないんですよ』と言われては納得するしか無かった。
「いや〜今日は良バ場になってよかったですね!」
「えぇ!特に今日は有望株揃いですから!特に…」
レースへの期待をそれぞれ話し合いながら会場へと入っていく。下調べバッチリだが、私の予想が全てではない。時に思いがけない出来事が起こるのだからレースに絶対はない。……そう
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『逃げる!逃げる!脅威のスタミナだレイゴウノルン!誰も追いつけない!そのまま駆け抜ける!勝ったのは1番人気レイゴウノルン!8馬身差の圧勝でGI2連勝を勝ち取った!』
『序盤からの大逃げでしたが、最後までペースが落ちませんでしたね!前回のGIでも圧倒的な勝利を収めてるところを見るに、今の世代を代表する馬になるでしょう!』
2連続でのGI勝利、その時点で大きく注目された。
『さぁ!第4コーナーを回って先頭での勝負が……ッ!?おっとここで!?レイゴウノルンが伸びてきた!?外から8番レイゴウノルンが外から追い上げてきた!速い速い!完全に先頭を捉えて…抜き去った!?脅威のスピードを見せるレイゴウノルン!後続も追いかけるが、速いすぎるレイゴウノルン!クラシック三冠のひとつ、『皐月賞』の冠を今ッ!掴み取った!レイゴウノルン堂々の1着!予想を裏切らない結末!レイゴウノルン1着です!』
『前回のレースでは
負けることなく一冠を取れば“無敗の絶対王者”の二つ名を貰っていた。
『ありえない速さだレイゴウノルン!初めて
『2着の“オリオトメ”にクビ差で勝利した『日本ダービー』の後、不調で三冠を危ぶまれるところはありましたが!他から群を抜いた見事な勝利でした!』
クラシック三冠を手にすれば、『時代のトップスター』になった。
『さぁ!最終コーナーを曲がって!来た!ここで来たレイゴウノルン!虎視眈々と好機を狙った位置取りから外へと飛び出し、先頭を差し切ってきた!伸びる伸びる!凄まじいスピードとスタミナで『有馬記念』1着を手にしたのは!『日本の絶対王者』レイゴウノルンだ!無敗クラシック三冠に加え、有馬記念制覇を達成ッ!誰にも止められないレイゴウノルン圧勝です!』
『デビューから全戦全勝!近頃は『レイゴウノルンが勝利することこそが必然』とも言われているようですね!この調子で行けば初の凱旋門賞制覇も夢ではありませんよ!』
数年経つ頃には世界への挑戦が期待されるようになった。
『逃げる!逃げる!逃げる!どんどん差が開いていくぞレイゴウノルン!その凄まじいスピードとスタミナが遺憾なく発揮されてる!夢の凱旋門賞制覇を目指し日本から海を渡ったレイゴウノルン!開く開く!後続を完全に置き去っていく!日本馬初!凱旋門賞を制したのは!日本の絶対王者レイゴウノルンだ!今、1着でゴールイン!レイゴウノルン悲願の凱旋門賞制覇達成!』
『レイゴウノルンはデビューから数年経っても変わらないどころか年々実力をあげてきました!掴み取ってきた名声実力共に『伝説』と呼ぶべき素晴らしい馬です!』
遂には日本を超え、世界の“伝説”となった。
その後、日本に帰国後は8戦を行い全て1着のまま引退を迎えた。引退後に残した子孫はどれもGI、GIIのレースで多くの記録を残した。その後、子孫たちの活躍を見送りながら28歳で死去。
レイゴウノルンの死去は日本だけに収まらず海外の競馬ファンにも衝撃を与えた。こうして、伝説となった『日本の絶対王者』は死後になってから新たな二つ名を貰うことになる。
『純白の英雄馬』と…
『レイゴウノルン』 性別:雄
生年月日 ◻️◻️◻️◻️年5月10日
没年 ◻️◻️◻️◻️年8月24日
戦歴:87戦 87勝 0敗
勝ち鞍:『皐月賞』『日本ダービー』『菊花賞』『有馬記念』『凱旋門賞』
芝:S ダート:C
適正距離:短距離『B』マイル『A』中距離『A』長距離『A』
脚質:追い込み『A』 差し『A』 先行『S』 逃げ『A』
逸話:こだわりが強く、ゴールドシップ並みに人間味があった。なので背に乗せる人は本当に気に入った人だけだという。ちなみに本当に気を許していたのは馬主、牧場主、騎手、調教師の4人はかなり気を許してる。
食べ物に関して好き嫌いはなく、食べ分だけ走っていたとの事。そのおかげかは分からないが、引退後の検査で『無事之名馬』と判定。
二つ名:『日本の絶対王者』『純白の英雄馬』『???』『???』
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読んでいただきありがとうございます!
ウマ娘の小説を出すのは初めてですが、満足できるような作品が作れるよう尽力していくつもりです。至らない点などが多くありと思いますが、初めてなのでそういう感じだと思って割り切ってください。
小説の更新に関しては調べながらやっていくつもりなのでかなりゆったりです。不定期更新にはなるので、気長に待っていただけるとありがたいです。
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