夢追いかけるウマ娘に魅せられて…   作:清涼みかん

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私に初の“同士”が! 後編

皆さんこんにちは、私は"平凡"なウマ娘のアグネスデジタルです。

 

私はウマ娘オタクで、大好きなウマ娘にお近づきになり、御姿を愛で、幸せな日々を送るためにトレセン学園に入り、毎日推しを推す素晴らしい日常を過ごしています。

 

今日と今日とて、将来有望なウマ娘を拝むためにトレセンから最寄り駅のレース施設にまで足を運んで、物陰からひっそりと推し活を嗜んでいました。

 

友と語り合い切磋琢磨しながら走る姿は本当に眼福ものでした。だからこそ、周りへの不注意となって私がハンカチを落としてウマ娘ちゃんに拾わせるなどという最大の過ちを犯していることに気づきませんでした。

 

そのウマ娘、レイゴウノルンちゃんが声をかけてきた時、私はあまりの衝撃に冷静さを保つ事が出来ませんでした。私の頭が混乱してしまったのは自分の私物を拾わせてしまったことへの罪悪感などではなく…

 

ただ単純にノルンちゃんがあまりにも“美しかった”のです。

 

まるで絹糸のような芦毛に、月を移したかのような金眼をしており、普通のウマ娘とは違う。と私が思えるほど綺麗でした。“可愛い”と言うよりかはシリウスシンボリやオグリキャップさんのような“格好いい“と言えそうな顔立ちでしょうか?背は…タマモクロスさんとあまり変わらないくらいでしたね。

 

そんなノルンちゃんですが、何故か私と同じ雰囲気が感じられました。近くにいるだけいて少し話しただけでも“普通に”接することが出来ました。

 

本来の私なら初めて話すウマ娘とは少しだけぎこちなく会話をしてしまいがちでした。ですが、ノルンちゃんと話す時はかなり心が軽くなったように感じるのです!まぁ、初対面で少々やらかしましたが…

 

やはり、ノルンちゃんは私と何が通づるところがありますね。これから少しづつでも彼女との良好な関係を築いていきたいものです。それはもちろん“友達”としてですけどね。

 

さて、確認もできた事だしそろそろ現実に向き合いましょうか…

 

 

 

 

一体……何が起きている…!?

 

 

 

 

私と話している時にノルンちゃんが急に手に指を添えて、おそらく顔の汚れを取ってくれたのだろう。その時だ、その時に私は『ウマ娘が頬を触ってくれた』&『ノルンちゃんの顔が良すぎる』の2つの衝撃に耐えられずに意識を落とした。

 

が、意識が戻って目を覚ましてみるとなんですかこれは!?

 

私の頭に伝わる柔らかい感触と上を見上げれば興味深そうに遠くを見るノルンちゃんの顔……これは完全に“膝枕”ですよね!?し、しかも“頭なでなで”まで追加セットでついてきているッ!?

 

い、意識を強く持つんですアグネスデジタルっ!ここでまた気絶なんてしてしまったらノルンちゃんの迷惑になってしまいます!そんな事は絶対にノーです!あってはならないんです!

 

さ、さぁ!立ち上がるのですアグネスデジタル!今こそオタク魂を見せる時ッ!

 

「あっ、おはよう。デジたん!」

 

「ヒュッ、アッ…オハヨウゴザイマシュ…」

 

見下ろす満面の笑みを見て、私の覚悟は簡単に崩れ去った。

 

______

___

_

 

「どう?落ち着いた?」

 

「はい、だいぶ…。ご迷惑をお掛けしました」

 

近くのベンチに座り、ぐいっと飲み物を飲むデジたん。一回気絶してから連続で気を失いそうになったにも関わらず元気そうだ。しかしなんでデジたんは気絶したんだろうか…?色々と疑問が尽きない。

 

「しかし、あなたも私と同じだったんですね」

 

「ん?これの事?」

 

デジたんの疑問に私は手元でいじっていた一眼レフを持ち上げる。その一眼レフの画面にはウマ娘のレースの様子が映っていた。他の写真を確認してもほとんど同じような内容の写真だ。

 

特に重賞レースの前線で競い合っているウマ娘に関しては全て綺麗に収めている。その写真の良さに松島さんから『ウチに来ませんか?』と言われたほどだ。

 

「じ、実は私も好きなんですよねぇ…ウマ娘」

 

「あっ、知ってます」

 

「ふぁッ!?」

 

まぁあれだけしっぽブンブン耳ピコピコしながらレース風景を覗き見してたらなぁ。他の人が見たら不審者だと思われそうだけど、私的には同志の感覚がビビっ!と来たんだよね。

 

あっ、デジたんが真っ赤になってフリーズした。まぁさっきみたいに気絶したわけでもなさそうだし、頭が冷えるまでちょっと待ちますか。

 

「おっ!あの子いいフォームで走るね!スピード、パワー共に良し!」

 

「アッ、ソウデスネ〜……じゃなくて!?」

 

今回は結構早く戻ってきた。しかもタマモクロス並のツッコミを添えて。

 

「い、いつから気づいてたんですか?」

 

「『ひょおおおぉぉ!いいですね!まさに眼・福です!』の所くらいからかな?」

 

「…ソウナンデスカ」

 

無駄にハイクオリティなデジたんの真似をする私に、今にも消えてしまいそうなほどの生気が失せているデジたん。オタ活を覗かれるのは同志として、分からない訳でもない。その点に関しては、彼女よりまだ私の方が強メンタルだと思う。

 

…と言うよりもデジたんが弱すぎるんだと思う。

 

「まぁまぁ、見たのが私でよかったじゃないですか。やっぱりそっちの方に理解はある方だし」

 

「えぇ…そうなんですけど。やっぱり、()()()()()()()っていうのが違うので…」

 

「根本的な推し方?」

 

「はい…ノルンちゃんって基本的に“レースで走ってるウマ娘”が好きなんですよね?私の方は平たく言えば“ウマ娘達の尊いやり取り”が好きなんです。だから、ノルンちゃんから見ても少し気味が悪いんじゃないかと…」

 

そんな言葉を口にしながらデジたんのウマミミが垂れる。顔に不安を募らせながら、私の次の言葉を待つようにグッと両手を握っていた。デジたん的には相当勇気のいる言葉だったのだろう。だから…

 

「そんなことは無いよ」

 

私は君の推し方を否定する気は微塵もない。

 

「君は君、私は私だからね。自分が好きなようにすればいいんだよ!要するに『ウマ娘好きに悪いやつはいない』ってこと!」

 

随分とありきたりな言葉だと自分でも思うけど、これが一番相手に伝わる言葉だ。難しく考えて伝えるよりもストレートに自分の思いが相手に届く。母さんから教えてもらったことだ。

 

私の言ったことにデジたんはきょとんとした表情を浮かべる。うむ、100点満点のめちゃくちゃ可愛いデジたんをフィルムに収めたいけどそんな雰囲気じゃないよね。

 

「そうですか……いえ、そうですね!私は私です!私が愛するウマ娘のためにクヨクヨするなんてらしくありませんでした!」

 

そう言いながらデジたんは勢いよく立ち上がる。どうやら元気を取り戻したようだ。

 

「ありがとうこざいます!ノルンちゃん!あなたのおかげでモヤモヤと悩んでたのが取れました!」

 

「こっちもデジたんの力になれて良かったよ」

 

グッと握手を交わす私とデジたん。彼女も彼女なりに少し悩んでいたようだ。自分の接し方が他人にどう思われてるのかを気にしていたようだが、私が見るにデジたんはかなり親しみやすいと思うんだけどなぁ。

 

自己評価が低いというかなんと言うか…。確かに気絶しているところを見ていたら気にするのも無理ないとは思う。

 

普通に接せるようになれば直接お話出来る筈なんだけど、やっぱりデジたんの耐性値が低いのが原因だろう。

 

ならば、同じ同士である私の出番である!

 

「ねぇ、デジたん?一ついいかな?」

 

「なんでしょう?」

 

「私と“友達”になってくれない?」

 

そう切り出した瞬間、デジたんは今日何度目になるか分からない思考停止に陥った。……えっと、腕を引いてもビクともしないのはどういうことなんだ?形状記憶ウマ娘かな?デジたん。

 

「友達…私とノルンちゃんが?」

 

「そうだけど…ダメだったかな?」

 

「い、いえいえ!こちらとしても願ってもないお願いです!ぜひ私友達になってください!」

 

歓喜の表情を浮かべながらデジたんは、両手で私の手を包み込むように握る。

 

今日この日、私はついに同じ推しを持つ同志と出会えることが出来た。実を言うと表には出てないが内心で私は狂喜乱舞していた。初めての同志友達ができたこともあるが、デジたんという超めちゃかわなウマ娘と出会って友達という仲になれたことに対しての感情の方が大きいようだ。

 

「それじゃ、これからよろしくね!デジたん!」

 

「はい!よろしくお願いします!ノルンちゃん!」

 

______________________

 

「ふふ〜ん♪ふんふん♪」

 

鼻歌を歌いながら機嫌よく帰路に着くのは私だ。あの後、デジたんとオタク話に花を咲かせたていると日が沈み始めたので帰ることになった。

 

せっかく友達になったのに連絡手段がひとつも無いのはまずいので、帰り際にデジたんのウマインの交換することに成功。その時のデジたんと言ったらまるで神を祀るような様子で『ありがたや…ありがたや…』と呟いていた。

 

そんなこんなで色々と情報量が多い1日だったが、かなり楽しめたと思う。街中でオグリキャップとタマモクロスと出会い、レース施設でデジたんとお友達になれた。

 

今ならなんでも許せてしまいそうである。たとえそれがどんな無茶ぶりであろうとも、笑って答えてあげましょうとも!

 

「あっ、帰ってきてる」

 

家の前まで来てみれば朝にはなかったお父さんの車がある。つまりはもう帰ってきたのか…お母さんは『遅くなるようなら家にあるものを使って自炊してね〜』って言ってたからそれなりにメニューは決めてたけど無駄になったな。

 

「ただい…」

 

「「おかえり!」」

 

「うぇ!?」

 

ガチャッと玄関を開けてみれば何やら興奮気味な両親が出迎えてくれた。えっ、なに何?なんでそんな喜んでるの?今日行ったところでなんかあったの?

 

「えっと…どうしたのお父さん、お母さん?良いことでもあった?」

 

「ああ!とてもいい知らせだよ、ノルン!」

 

「え?私にもいい知らせなの?」

 

「えぇ、そうよ?ほら、明日ここに行くから準備してね?必要なものは書いてあるから」

 

お母さんから1枚の紙を渡された。何の変哲もないただの紙でお父さん達がここまで喜ぶことってなんだ?と思いながら内容を読むと、私はその内容に絶句した。

 

「ねぇ、お母さん…見間違えじゃなかったらここって…」

 

「『トレセン学園』よ?なんでもノルンちゃんを“スカウト”したいみたい」

 

「!?」

 

言葉にならない驚きとはこのことだろう。What's?なんで私がトレセンからスカウト受けてるの?私は自主練が主で今日行ったレース施設なんかで走ったのなんか人の姿がない時ぐらいなのに…。

 

「今日の夕飯は張り切っちゃうわよ〜!」

 

「そうだな!なんなら俺も手伝うよ!」

 

心底嬉しそうに台所へと消えていく両親の背中を見送りながら私は玄関に突っ立って現実を受け止めきれずにいた。

 

「ほんと…どうしよう…」

 

楽しく過ぎていった一日だったのだが、私は最後の最後で手遅れになった現状を目の当たりにして、昼時のオグリキャップのように灰となって散った。




お読み下さりありがとうこざいます!

前回の投稿からだいぶ長くなってしまってすみません。不定期更新なので忙しくなった時は今回みたいに間が空いてしまいますがご了承ください。

次回の話でレースの様子を書く予定ではあるのですが、駄文覚悟の上です。上手くかけるかどうかは分かりませんが、面白い話にできるように頑張ります!

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