夢追いかけるウマ娘に魅せられて…   作:清涼みかん

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最悪な再会とはこのこと

トレセン学園とは優秀なウマ娘達が通うことの出来る学園だ。トレセンは主に“地方”と“中央”のふたつに分かれていて、地方ではローカル・シリーズと呼ばれるレースに出る事ができ、中央ではトゥインクル・シリーズに出ることが出来る。

 

ただ、圧倒的に人気がある方となるとやはり『トゥインクル・シリーズ』の方だろう。熾烈なレースが毎度行われるトゥインクル・シリーズの1着を取る事はウマ娘にとってまさに栄誉である。

 

そんな彼女らが通う学園こそ『日本ウマ娘トレーニングセンター学園』通称“トレセン”である。

 

そんな学園を訪れるウマ娘が今日も一人……はい、私『レイゴウノルン』です。

 

昨日、父さん学園呼び出しを受けて母さんと一緒に行ったところまではいい。だがどうゆう話になれば私がここに来る話になるんだ!?しかも、私をスカウトしたいだなんて!

 

「……ほんと夢であって欲しい」

 

「あら?そんなに嬉しかったのかしら?」

 

お母さん…ここまで話が噛み合わなかったのは“たこ焼きVSお好み焼き大戦争(家庭内)”以来だね。こんな憂鬱そうにしてる私を見て、なんでそんな言葉が出てくるのかな?

 

はぁ…まぁなるようになれだ。まだスカウトしたいって言うだけで、詳しい話は聞いてないのだから入学するとは決まった訳では無い。焦りすぎは良くないな。

 

「懐かしいわね…。現役の頃を思い出しそうだわ…」

 

「お母さんはトレセンのOGだもんね」

 

トレセンへ向かう道を歩きながら、母は昔の思い出の場所を見てうっとりとしている。今はお母さんと私の2人でトレセンに向かっている途中だ。ちなみにお父さんは留守番である。

 

そうこうしているうちにトレセン学園の校門が見えてきた。……ここから少し離れてはいるけど、私の心臓が緊張でバックバクだ。何せ一日だけとはいえトレセンに来ているのだから…。

 

校門まで着くとトレセンの中の様子を見えた。すっごぉ…これがトレセン学園なのか。でも、休日だからやっぱり人が少ないな…。

 

「ノルンちゃん、ちょっとここで待ってましょうか。もう少しで来るみたいだし」

 

「来るって…何が?」

 

お母さんの言葉に戸惑っていると、校舎の方から一人の女性が走ってきた。緑の帽子に緑の服、もう全体的に緑が特徴的なファッションである。

 

「すみません、お待たせしました!」

 

「いえいえ、私達も今来たところですよ。たづなさん」

 

走ってきた緑服の女性はたづなさんっていう名前らしい。しっかし綺麗な人だなぁ……まるでウマ娘レベルで綺麗な人だよこの人。見た目的にお母さんとほぼ同年代かな?

 

「休日の中来ていただきありがとうこざいます。それでその子が…」

 

「えぇ、私の子『レイゴウノルン』ちゃんよ」

 

「そうですか!初めましてレイゴウノルンさん。トレセン学園理事長補佐をしている駿川たづなと言います。よろしくお願いしますね」

 

「こ、こんにちは、レイゴウノルンです。今日はよ、よろしくお願いします」

 

我ながら酷く緊張した挨拶だ。そんな様子を見ながら母は「ふふふ…」と密かに笑っていた。私の挨拶がそんなに面白かったかい?お母さん…今日帰ったら戦争だ。

 

「早速ですが、私について来てください。詳細に関しましてはあちらで行うつもりなので」

 

「分かりました。行こうノルンちゃん」

 

「う、うん」

 

若干の緊張を残しながらも私はお母さんとたづなさんの後ろを歩く。

 

学園内の目的地へ行くだけとはいえどかなり歩いた。それもそうか、トレセンの敷地面積はかなりあるし、全体を見て回ろうものなら恐らく数時間はいる。一つの場所に行くだけでも時間はかかるだろう。

 

だが、今歩いているのは外だ。しかも、たづなさんは校舎に入る気がないように離れた場所を選んで歩いている。ということは…

 

「今向かってるのはトレセンのレース会場ですか?たづなさん」

 

「そうですよ。休日と言えどトレーニングしたい子もいますからね。ざっくり言うと時間があんまり無いんです」

 

会話をしながらも足の速さをゆるめることの無いたづなさん。淡々と答えながらも穏やかな笑みを崩さないあたり、流石は理事長秘書としか言いようがない。

 

その会話から数分するとトレセンの芝コースが見えてきた。やはり日本最大級のウマ娘育成機関であれば、芝とダートはもちろんのこと、短距離、マイル、中距離、遠距離の各距離も完備である。

 

そんなコースから少し外れた場所にある観覧場所には、こちらを見ながら待っている一団がいた。その一団に近づくにつれてはっきりと見えてくる姿を捉えると、私は体が強ばっていくのを感じた。

 

「お待たせしました、理事長」

 

「うむ!出迎えご苦労だったな、たづな!確認ッ!それで君が件のレイゴウノルンか!」

 

「は、はい!私がレイゴウノルンです!」

 

じっとこちらを見つめてくる理事長と呼ばれる少女。見た目だけでいえば私とほとんど大差ない。しかし、それでもトレセンの理事長なのだからそれ相応の立場を貫く人なのだ。

 

にしても、かなり豪快な喋り方するな…この人…。ビシッと扇子を向けてくる動作も相まってかなり圧がある。

 

「歓迎ッ!よくぞトレセンへ来てくれた!君をここに呼び出したのは私だが、要件があるのは私ではない!詳しい話はこの者たちから聞くといい!」

 

理事長の言葉を聞いて、一人のウマ娘が前に出てきた。鹿毛のロングヘアー、前髪は焦げ茶色で、三日月のような白い一房の前髪を垂らしているウマ娘。その姿を見ただけで私の緊張感はさらに深まる。

 

「初めまして私の名前はシンボリルドルフ、この学園で生徒会長している者さ」

 

まさにレジェンド、その絶対的な走りから“皇帝”という名の2つ名を持つウマ娘『シンボリルドルフ』。レースでは多くのファンで会場を埋めつくし、連日テレビや雑誌などでも取り上げられるほどのトップスターだ。

 

そんな彼女の後ろに控える2人のウマ娘達もデビューから活躍を果たしている有名なウマ娘だった。“女帝”エアグルーヴ、“怪物”ナリタブライアン…見ているだけで立ちくらみしそうなほどの名前だ。

 

「率直に言わせてもらうが君をスカウトしたのは、あるウマ娘からの推薦があったからだ」

 

「推薦…ですか…」

 

「しかも、個人的な要望としての推薦だ。彼女は余程君のことを気に入ったのだろうな」

 

はて…?身に覚えが無さすぎる。私の事を知っていて、なおかつ生徒会長に個人的な要望を通せるウマ娘。そう考えると人数は自ずと少なくなるが、私にそんな知り合いがいるわけない。

 

困惑した私を見て一度間を置いてくれたシンボリルドルフだったが、少し暗い表情に一変する。

 

「だが、トレセン側がスカウトするのはそれに見合った実力があるウマ娘に限る。……非常に言い難いが、今のままでは実力不明の君を学園にスカウトすることは出来ない」

 

私もトレセン側だったら同じ決断を下すだろうな。トゥインクル・シリーズのレースはウマ娘達にとっては夢みたいなものだ。それが近くにあるトレセンへスカウトされるのだから、それ相応の実力というものが必要だ。

 

だからこそ、今回のような呼び出しじゃなくて電話での口頭説明だけでも良かったと思う。わざわざここに呼び出した所をみるに、この話だけで終わるわけでは無さそうだ。

 

「だから君を推薦した彼女から提案があってそれを採用した。レイゴウノルン、君にはその彼女と今から“レース”をしてもらう」

 

「レースを今ここで!?どうして…」

 

「君の実力を図るためだ。レースの結果次第で君をスカウトするか否かを私と理事長で行う。もちろん遠慮は無用だ。君の相手はなんせGIウマ娘だからね」

 

「やぁやぁ!遅くなってすまないね!」

 

シンボリルドルフ達の後ろからやってきたのは一人の黒鹿毛のウマ娘。快活そうな「ハッハッハッ!」と笑いながら来た彼女を見てシンボリルドルフは頭が痛くなりそうな表情になる。

 

「今日は君の提案だったのだがな……遅刻とはどういう了見だい?“アステルリーチ”」

 

「いや〜楽しみすぎて夜更かししちゃいました…」

 

バツが悪そうに謝る“アステルリーチ”と呼ばれるウマ娘。こういうことがしょっちゅうあるのか後ろで控えてるエアグルーヴは頭を押えながらため息をつき、ナリタブライアンは「なんだ、またか」と呟いていた。

 

「彼女が君の相手になるアステルリーチだ」

 

「え、えぇ…もちろん知ってますよ。何度も見てますから」

 

声が震えた。有名なGIウマ娘に会えたから緊張で声が震えてしまった……と、いつもの私なら言っていただろう。だが、今は違う。明らかな動揺での震えだった。

 

そこで私の隣に立っていた母が私の変化に気づいた。

 

「大丈夫…?ノルンちゃん?」

 

「う、うん…大丈夫。それで私はどこで着替えたらいいんですか?」

 

「あぁ、それなら向こうに更衣室があるからそこで着替えるといい」

 

場所を聞くと私はそそくさに走り出した。私の様子にその場にいた全員が困惑していた。ただ、1人を除いて…

 

「緊張してるのかな?私が少しほぐしてくるからちょっと時間貰っても?」

 

「分かってるとは思うが時間が押している。あまり時間をかけないようにな」

 

「分かってますよ、エアグルーヴ先輩。んじゃ、行ってきますね」

 

そう言い残すとアステルリーチは後を追うように走り出した。2人が居なくなると同時にたづながノルンの母に近づく。

 

「大丈夫でしょうか彼女…」

 

「大丈夫よ。なんたって私の子供よ?そんなやわな子じゃないってことは私がわかってるわ」

 

「ほんと変わりませんね…()()は…」

 

「あら?少しは丸くなったつもりよ?たづなちゃん?」

 

昔を思い出しながら互いに笑い合う二人。過去同じ学園で競い合い、先輩後輩の関係だったとはいえ今は一人の大人同士だ。でも、その笑い合う面影は昔のままだと当時を知っている人物は口を揃えて言うだろう。

 

_________________________

 

「えっと〜、どこかなどこかな…おっ!」

 

更衣室に入り中を覗くアステルリーチ、目的の人物が見つかって意気揚々とそちらへ近づいていくが、白い芦毛をした金眼のウマ娘が彼女を睨みながら待ち構えていた。

 

「おぉ、怖い怖い。君に何か恨まれるようなことしたかな?」

 

「……別にしてはないさ」

 

不機嫌といった言葉がドンピシャに当てはまる口調で話すそのウマ娘に、アステルリーチは少し面白いものを見たかのような表情をするが、その態度のせいで不機嫌度がまたさらに深くなる。

 

「ふぅ〜ん、その反応を見るにあなたも()()()()()()()()()?」

 

「じゃなきゃ初対面の人に対してこんな態度を取らないでしょうが」

 

出会った時の私の動揺ぶりはこの“アステルリーチ”が原因だ。理由を深く言う訳では無いが、私はこいつが嫌いだ。テレビ越しでこいつを見るのもあまり好きじゃなかった。

 

それほどまで私がアステルリーチを毛嫌いする理由はと言うと…

 

「ハッハッハ!実の()()にこんな態度を取るなんて()()()だけだよ」

 

「私の名前はレイゴウノルンだ。父さんって呼ぶな()()()()

 

前世で私が残した子供の中で1番生意気だからだ。

 

私がこっちに転生してきてるんだから、私よりも早く逝った息子が私より年上でもあまり不思議ではない。実際、テレビ越しで初めてこいつを見た時には食事が喉を通らなかったほどだ。

 

アステルリーチがレースで走ってると知った時以来、私はこいつのレースを見に行った事は1度もない。だが、前にテレビで見た時は綺麗にファンへ笑顔を振りまいているところを見たから『前の時より少しは変わったのか?』と期待した私がバカだった。

 

こいつはこいつだ…何も変わってない。記憶が残ってることも当然考えて接触を控えるようにしていたのにどうやって見つけたんだ。

 

「まぁまぁ、互いに色々言いたいことはあるけどさ。今はレースに集中した方が良いと思わない?」

 

「それはそうだが、推薦したのがお前なら話は別だ。お前の提案で私がトレセンに入りたいと思うか?」

 

「冷たいなぁ。でもまぁ、父さんなら入りたくないだろうね。だからさ!私と勝負しようよ!」

 

「勝負…?」

 

突拍子のない提案に私は思わず聞き返してしまった。まさか自分のスカウトをかけているレースに重ねて勝負をかけられるとは思っていなかった。

 

「そう!このレースで勝った方が負けた方に“なんでも一つ言うことを聞く”っていう条件でやらない?」

 

「……」

 

普段ならこんな提案断ってるんだろうな…。でもね、そんなわざわざ火をつけるような条件を提示するってことは分かってるんだよね?

 

「…いいよ、やろっか」

 

「その言葉を待ってました!勝っても負けても恨みっこなしってことでよろしくね!」

 

そう言い残して私から離れたところで鼻歌を歌いながら着替え始めるアステルリーチ。あぁ…楽しみで楽しみで仕方なさそうな顔してるなぁ。勝つ気満々なんだろうなぁ。

 

だけど、彼女は一つだけ大きな過ちを見落としている。

 

今回の相手が今までのようなGI級のウマ娘でも、ましてやシンボリルドルフ達のような走りを知っているウマ娘でもない。

 

レースで共に走れば分かるだろう。自分がずる賢くて、誰よりも走ることに対して貪欲な正真正銘の“怪物”を相手にしてることに…

 

 

 




お読み下さりありがとうこざいます!

前回の後書きでレースを書くと言っていましたが、想像以上に長くなったので次に回させてもらいました。また、今回出たオリウマ娘についてのプロフィールも次の後書きに回らせてもらいます。

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