幻想楽園郷   作:凜の華

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第二章 領土戦姫 輝針城

 

異形の妖怪達に呑まれた幻想郷での異変を解決した俺達は暫く隙間の中を浮遊した後に、奥から差し込む光に飲み込まれ、地面に強く尻餅を付く。

 

堂「いでっ……!」

 

フラ公「うぎゃっ!!」

 

紫「あらあら、お帰りなさい…?思ったより元気そうで安心したわぁ?」

 

体中擦り傷やら炭だらけではあったものの、確かに初めての異変に立ち会った身としては大きな怪我無く無事に生還できていた…いや、それでも生きた心地がしない…だが紫は俺達へ着替えの服を隙間から出すと続けて口を開く。

 

紫「貴方達が戻ってくる少し前に新たな異変を感知しましたわ。早速替えの服に着替えたら行ってもらえるかしら?」

 

フラ公「待て待てごりゃぁ!!わっしら汗水たらしてボロッボロになりながらお前の依頼をこなして来たんだからもっと重宝してくれてもええじゃろがい!」

 

紫の言葉へ猛反発するフラ公。まぁ、気持ちは分かるが…急を要する事態なのだろう…まだ動ける自信のあった俺は特に反発心は無かったが、前の異変で色々手伝ってもらった借りがある、俺は紫へ提案を口にする。

 

堂「俺も少し腹が減った所だし、少し飯を食うだけの猶予をくれないか?その間にフラ公も水浴びするなりすれば文句無いだろ?」

 

フラ公「いや私の飯食う時間にぇじゃろがい!」

 

堂「サッパリする時間があるだけマシだろ…」

 

不服そうに唸るも俺の言葉に反論する気力も無かったのか軽く舌打ち決めるとフラ公は元気の無い足取りで神社内へ入って行った。

 

紫「あの子、もっとグダると思ったけど…意外と素直なのね…?」

 

堂「……疲れてるだけなんじゃないか?」

 

紫「さっきの異変、あのフランが協力的で無ければ貴方も"あのコダマ"ちゃんも鍵まで辿り着くのに時間を要したと思うわよ…?」

 

堂「なんだ、覗いてたのかよ…趣味悪ぃな…。」

 

紫の言葉にムスッとした様子で答える、実際覗いてたのなら何らかの支援が欲しかったからな。

……それとも、"覗くだけしか出来ない"のか…?色々考えつつも紫が隙間から出したおむすびを頬張りながら、英気を養う。少し塩っぱい…塩おにぎりだろうか。疲れてる時の塩っけはいいものだ。

 

ちょうどおにぎりを食べ終わる頃に小綺麗になったフラ公が玄関から顔を出す。

 

フラ公「終わったじぇ!!仕事終わりの風呂はサイコーだなーー!!」

 

そんなにサッパリしたのか…?上機嫌になったフラ公は陽気にゲラゲラと笑いながら俺達の方へ歩み寄る。

……言いづらいがこれからまた仕事だぞ。

 

俺とフラ公を交互に見て様子を伺った紫は目の前の空間を歪ませて隙間を作る。

 

紫「ここから先が新たな異変の入口よ、呉々も再起不能にならない程度に頑張る事ね?」

 

堂「心配してるのかそれ…」

 

フラ公「ヘン!わっしはそこのクソ雑魚ナメクジとは違うから大丈夫だじぇ!」

 

此奴ほんと、いっぺんバチ当たらないかな!?

昂る怒りをグッと堪え、見送りながら「行ってらっしゃい」と一言呟く紫を背に俺とフラ公は隙間へ飛び込む。無数に目玉が此方を凝視する洞窟の様な空間、その先から光が漏れだし……。

 

第二章 来訪者

 

気が付くとそこは見慣れない城下町…跡の廃墟だろうか、辺りは焦げっぽい匂いと炎上する炎の熱でとても穏やかとは言えない空間になっていた。

 

堂「……何だよここ…」

 

あまりにも異様な上、状況が呑み込めない。

オマケにフラ公の姿が無い事から、またはぐれたのだと呆れそうにもなるが、直ぐにその余裕が消える……。

 

不気味なマネキン『ガシャ……ガシャ…』

 

堂「なっ……何だコイツら…!?」

 

突如半壊した建物の中から所々破損しているマネキン達が俺の周囲を囲う…気味が悪い上にソイツらはナイフや斧等の刃物を手にしていた。

……マズイ、このままじゃ殺られる…。

来て早々ピンチに陥り、冷や汗と共に強い焦りを覚えた俺は何か応戦出来ないかと必死に周囲を見渡すも何もあるのは黒ずみになった木や石の破片位なもので、即席で罠や武器を作るなんて不可能だ。

……完全に詰んだ…強い絶望感を感じながらも俺は落ちてた石を拾い上げ、マネキン目掛けて思いっきり投げ付ける……。

 

『カーーン』

避ける、排除するといった仕草無く、だからと言ってダメージをくらった訳でも無い様子でただマネキンの頭に当たった石は甲高い音を立てて砕け、それを合図にする様にマネキン達が一斉に襲いかかってくる。

 

堂「うわっ……っ……助からねぇ……!」

 

咄嗟に顔の前に腕を添えてはグッと目を瞑り最後を覚悟しようとしたその時だ…

 

??「───邪魔。」

 

何処と無く冷たい物言いと共に『ガシャーーン!』と何かが壊れる音が耳に入り、直ぐに目を開ける…先程迄頭スレスレまで迫っていた刃物はバラバラに砕け、マネキンは四肢が砕けて地面に崩れて行く…瞬間的な出来事だったが、何が起こったかを理解するのに時間は掛からなかった。

目の前には全体的に赤と白を纏った巫女服、大きなリボンと栗色の長い髪をなびかせる少女が立っていた。幻想郷の住民でこの人物を知らない人は居ないだろう…咄嗟に俺は口を開く。

 

堂「あ、あんた…博麗レイッ……っ…!?」

 

尋ねるように名を呼ぼうとすると少女が腕を振り下ろし、目に見えない"何か"が喉元を突き立てる。

 

霊夢「初対面な上で礼もなしに呼び捨てなんていい度胸してるわね?」

 

言われて見りゃ機嫌も壊すだろう…困惑していたとは言え、助けられて礼の一言も無かったんだ。

慌てて弁解をしようとするが、相手の殺気が鋭くて声が出ない…以前の幼獣達も強力な圧力があったが、"この霊夢"は別格だった。圧に潰されて声が出せない…少しでも動けば殺られる…緊迫した空気に押し殺されそうになっていたその時だった。

 

???「こらーー!敵意の無い人間攻撃してどうするの!」

 

堂「……なっ…」

 

緊迫した空気が軽くなり、もう一人の少女が霊夢に対して注意を投げ掛ける。俺はただ困惑していた…俺を助けてくれたその少女も知識としては知っていたが、食い違いがあったからだ。

 

霊夢「…アンタこそ、命狙われてんだから無駄に出回るんじゃないわよ。針妙丸。」

 

少名針妙丸、原点の幻想郷では打出の小槌の力を用いて付喪神や妖怪達が暴走すると言う異変を起こした張本人。天邪鬼と言う小物妖怪の野望の為に良い様に利用された小人である。

しかし、目の前にいる針妙丸の身長は人間と同じ程の背丈で、髪も原点より長く、やはり違和感を感じる所が多々存在した。

 

針妙丸「えぇっと…私の用心棒がごめんなさい…。根はいい子なんだよ?口調がキツイだけで…」

 

霊夢「……何?私悪者にされてすっごく気分悪いんだけど…」

 

成程。扱いづらい性格の持ち主だということをは分かった。そして訳あってこの霊夢は針妙丸の護衛をしている立ち位置なのも理解できる…。ようやくこの幻想郷へ来て、ピースが1つハマった感じだった。此処でこの2人と敵対すれば確実に詰むだろう。元より喧嘩上等な訳でも無く、ましてや弱い妖精にも勝てない俺が生き残るにはこの2人の協力が必要不可欠だ。

 

堂「さっきは危ない所を助けて貰った、ありがとう。先に言っておくが俺は敵じゃない、この世界に来たばかりの右も左も分からない放浪者だ。」

 

霊夢「…………。」

 

少し沈黙が続いた後、針妙丸が口を開き、その言葉に俺の血の気が冷める事となる。

 

針妙丸「…何だか、急に胡散臭くなって来たなぁ…」

 

ぼそりと呟くようなその言葉で俺は『しまった…』と深く後悔をする。そもそも信用されるなんて事期待はしてなかったが、疑いの無かった針妙丸が疑い始める…そりゃ初対面なのに訳の分からない素性を話せばこうもなるだろう。

…頭が回らなかった。そんな中、行き詰まっていた俺を救ったのは霊夢だった。

 

霊夢「……ふぅん。針妙丸、多分ソイツは少なからずアンタの警戒する人間じゃ無さそうよ。」

 

堂「……!」

 

針妙丸「うーん……霊夢がそう言うなら…」

 

よ、良かったぁ…何か助けられた…。

『ホッ』っと一息着きつつ、まだ何も分からない"この幻想郷"を少しでも知る為に霊夢と針妙丸の後に続くのであった。

先程の街を道なりに少し進んだ先には大きな城が佇んでおり、警備等は付いて居無い様子だが、何かしらの結界が張られて居るのか無防備の様に見受けられるその城にさっき見た"人形"が襲ってきたりする様子もなく、重い空気と冷たい風の吹く静寂な城の中へ俺は招かれたのだった。

 

針妙丸「ようこそ!此処は私が統治してる領域、私の根城!輝針城だよ!」

 

城の内部を少し歩いた所にある広い座敷の部屋に着くなり針妙丸はこの城の事を紹介し始める。

輝針城……逆さで空中に浮いてるイメージの城だが、どういう訳かこの城は地にしりを付けて逆さでも無い……本当に、まさに普通のお城なのだが、原点を知識として知ってる俺からするとこの城は違和感でしか無かった。

ふと城のことを聞居ていると気になるワードが飛んでくる。

 

針妙丸「用心棒の霊夢のお陰ですっごい結界を貼って貰ってるんだけど、この前変質者が結界を1度壊しちゃってまた張り巡らす羽目になったんだよね…ここも完全には安全とまではいかないみたい…」

 

堂「…へぇ…変質者か…」

 

霊夢「そ、色違いのフランドールって感じだったかしら。キュッとしてドカンが出来るんだから本物なんでしょうけど、あまりにも怪しいから地下牢へ無事混んでやったわ。」

 

霊夢の言葉に思わず「んん…!?」とパニクった。だって、もう該当する奴が1人しか居なかったからね?

いや、まぁ決めつけるのも良くない。フラ公もそこまで軽率な奴ではない筈だ、確認の為に俺は「その地下牢、ちょっと見せてくれないか?」と了承を得て俺達は地下へ下ったのだった…。

 

城の地下は薄暗く、ジメッとしているのに体が冷え込むようで、廊下の所々にロウソクが建てられている。

少し進めば鉄格子が見えて来る…。大丈夫、嫌な予感こそはするがフラ公はそんなに軽率な奴では──。

 

フラ公「んがぁぁぁあぁぁあ!!出せごりゃーーー!我アイドルぞ?この扱いおかしいじゃろがい!」

 

数秒前の俺を殴ったろうか。

檻の中には自称アイドルを語る猛獣の様に鉄格子に噛み付くフラ公が居たのだった。

 

堂「……何してんのお前?」

 

フラ公「あ"ぁ"!?見てわからんのかワレェ!妙な連中に捕まってこの仕打ち、ゆるしぇねぇ!とりあえず助けろください!」

 

相当気が立って居るのだろう。人に頼む態度とは思えない口振りで俺に助けを求めやがる…このままここで放置してた方が平和なのではないだろうか。

ため息混じりに『とりあえず釈放を求めるから待ってろ』と一言口にして針妙丸の方へ目をやる。

 

堂「……すまないが、この凶暴なの俺の仲間だから檻から出してやってくれないか?」

 

針妙丸「えぇ!?仲間なの!?私の領土に来るなりいきなり結界を破壊した危険人物だよ…?」

 

霊夢「このまま野放しにしたら城すら破壊しかねないんじゃ無いかしら。」

 

確かにやりそうだな…。霊夢の正確な言葉に一瞬固まるも続けて口にする。

 

堂「コイツはこう見えても味方への温情とか、そういうのは弁えてる奴なんだ、暴れだしても俺が何とかする、だから出してやって欲しい。」

 

深く頭を下げながら釈放を頼む…その姿勢を見て2人は1度見つめ合い、続けて口を開いた。

 

針妙丸「…分かったよ、貴方が嘘を言ってるようには思えないし私は信じる!……霊夢は不満?」

 

霊夢「………はぁ、仕方ないわね、まぁ暴れたらアンタ共々退治すれば良い話だし私は何も咎めないわよ。」

 

物騒だなこの霊夢。脅迫交じりな事を言われて一言『…それで良い。』と言うと針妙丸は牢の鍵を開ける。

 

フラ公「自由じゃーーーー!!ふっはは!良くもワシをこんな所に閉じ込めやがりましたなコノヤロウ!まずは制裁を───」

 

堂「まずは暴れた事を謝れ。」

 

危うい……2人の好意が台無しになる所だった。自由になるなり暴走しようとするフラ公へ冷静に上記を投げれば不服そうに黙り込むフラ公。

 

フラ公「……さっきはへなちょこバリアをぶち破ってすみませんでした。」

 

反省の意思なしかよこの野郎。その言葉を聞いて霊夢は笑顔で言葉を返す。

 

霊夢「別に構わないわ、こんなチンチクリンにそこまでの力があるなんて思わなかったし、次はもっと強度上げれば解決だものね。」

 

フラ公「ァン?」

 

霊夢「───あ?」

 

一気に険悪な空気になった2人を静止する様に針妙丸側って入る。

 

堂「…それで、何でいきなり結界を壊したんだ…?幾らやる事の荒いお前でも考え無しすぎじゃないか…?」

 

フラ公「わっかんね、ここに飛ばされるなり妙な犬っころに襲われたから気がたってたんじゃね?」

 

いや、自分がやった事なんだから他人事みたいに言うなよ…。俺は呆れた様子でまたため息をつくも、すぐに冷静になり気になった発言に気付く。

 

堂「……犬っころ…?人型の人形じゃなくてか…?」

 

フラ公「んぁ?なんじゃそりゃ…ワシを襲って来た連中は生身のイッヌだったじぇ?」

 

…どういう事だ、人形以外にも敵が居るのか…?俺の疑問が膨らむ中、針妙丸が思い当たる節がある様子で口を開いた時だった。

 

針妙丸「それはきっと───。」

 

霊夢「……っ待って、何者かが結界近くまで迫ってるわ。」

 

何かを感じた霊夢が口を開き、俺達は急いで城の外へ駆け出したのだった。

 

第二章 来訪者 END

 

第二章 戦姫

 

外へ出るや騒がしい風の音と共に、俺達は凄まじい殺気に気づく。

まるでこれから此方を襲いかかる獣の様な、獰猛で重々しい視線だった──。

その先へ目を向けると先に口を開いたのはフラ公だった。

 

フラ公「あぁ!?あの犬っころまた牙を向ける気だじぇ!」

 

針妙丸「───っ!あれは、"白狼の戦姫"だよ!」

 

堂「んん?何だって?」

 

霊夢「つまりアンタらの敵って事よ。」

 

城の周囲には大きな白毛の狼達…簡潔で分かりやすい説明を霊夢が口にした瞬間、狼の群れの中から一際大きい狼にまたがる1人の少女が姿を見せる…白髪ショートで獣耳が特徴的で、古代人が使ってるような石槍を片手に持ち、その少女は此方を睨みつけていた。

 

堂「───あれ…犬走椛…だよな…?どうなってるんだ…?」

 

霊夢「へぇ、アンタ"其方側"の椛を知ってるのね…?」

 

何か曰くのありそうな一言を霊夢が口にした瞬間、先頭の狼が結界に噛みつき、少し空いた空間から狼に股がった椛と数匹の狼達が攻め入ってくる。

 

針妙丸「……ッ!来るよ!戦闘に備えて!!」

 

堂「……ッ!」

 

フラ公「まっかしぇんしゃい!」

 

襲いかかる狼をレーヴァテインで軽々と薙ぎ払うフラ公、そして目視のできないエモノで次々に狼を真っ二つにして行く霊夢。針妙丸も竹槍で応戦しつつ此方へ声を掛ける。

 

針妙丸「……ッこれなら凌げそうだね!」

 

堂「いや、しんどいっす」

 

針妙丸「あれ!?貴方って非戦闘員!?」

 

狼に噛まれないよう落ちてた木の板で防ぎ込むので手一杯だった俺に目を丸くしながら針妙丸は上記を述べる。

……そりゃ普通の人間が狼なんかに勝てるかよ。

2、3体ほど群がって来た所でフラ公が俺共々吹き飛ばす勢いでレーヴァテインを振り上げる。

 

フラ公「うぉぉぉおぉぉりゃぁぁあぁぁ!」

 

堂「危なっ!?」

 

フラ公「およ?居たのかよ。そんな所で突っ立ってると犬っころ共々ミラクルドッカンするじぇ!」

 

堂「区別する気無しかよ…」

 

乱闘戦状態で興奮しているのだろう、目を輝かせたフラ公はめちゃめちゃな事を言いながらも狼達を吹き飛ばして行く。まぁ、此方としては心強いからいいのだが。

そう思っていた最中、また俺の前に1匹の狼が覆いかぶさ郎としてくる。咄嗟に木の板でガードしようとするもそれはあっという間にバラバラに砕けてそいつと対面する形となった。この時、俺は実感した。この狼がボス格なのだと…。

咄嗟に反応しようとするも、急に霊夢が此方へ掛けてきたかと思えば俺の片足を蹴り倒し後方へ転倒する。その瞬間、一本の槍が俺の目の前を横凪に掠れる。

 

堂「あっぶね…」

 

霊夢「弱いんならせめて危機管理くらい持ってなさい」

 

霊夢の強めの言葉も今回ばかりはありがたい助言に聞こえたのだった。咄嗟に槍の方を辿るとボス格の狼の背中に乗ってる椛を確認する。

 

椛「……邪魔をするなら容赦しない…」

 

殺気立った口調、鋭い視線をこちらへ向けて上記を口にする椛、何か尋常ならぬ事情があるのだと推測できる。それに対し霊夢が口を開く。

 

霊夢「やってみなさい。別にアンタに容赦されるつもりは無いし、どこまでその自信が本物なのか見定めてあけるから」

 

椛をギロりと睨み付ける霊夢はエモノを構えて相手の出方を伺う…狼が牙を向けて噛み付こうと突進、それと同時に椛は槍を相手目掛けて上から思いっきり振り下ろす…恐ろしいほど息のあったコンビ技だ…俺はその様子を見ながらせめて少しでも抗おうとしろ全体を見渡し、"ある物"を見つけては其方へ走り出す。

 

針妙丸「なっ…!あの人霊夢を置き去りに逃げた!?」

 

その様子を見てた針妙丸が堂に対して上記を口にし、チラリと確認したフラ公は針妙丸へ投げかける

 

フラ公「ほっといていいじぇ、それよりアイツの言う事を"これから"真に受ける準備でもしてクレメンス!」

 

針妙丸は不服そうな表情を浮かべる、突然仲間をほっぽり出して走り出す様なやつそりゃ警戒するからな、無理もない。

そんな痛い視線を背に俺はせめて早く何とかしよう…必死に"準備"に取り掛かりながら置いてきたことが気がかりだった霊夢の方へ目を送る…心配の必要も、その余地もなかった。

そこには狼と椛のコンビ技を軽い運動感覚で避けつつ、一瞬手が動いたかと思えば狼の爪や牙、所々の部位に傷が入る異様な光景が広がっていた。

 

椛「………ッ私だけでなく、ホロウの攻撃までこんなに軽々と……」

 

ホロウ「グルルル……」

 

どうやらあの狼はホロウと言うらしい、霊夢の圧倒的な身体能力に驚く椛は焦りの表情を浮かべ、少し引き越しになり掛けていた。

其れを俺は見逃さなかった。

 

堂「伏せろーーーーッ!」

 

敵も含めた一同が堂の方へ視線を集める、その先には小型ではあるが岩を積み上げた投石機が敵方向へと向いとおり、それを見た霊夢は針妙丸を担いで離脱、フラ公も咄嗟に範囲外へ移動する…それを確認すれば直ぐに手に持っていた紐を引っ張り、狼の群れの範囲中に岩が散乱、直撃して倒れる者も居れば錯乱する者も居り、椛は悔しげにこちらを睨みつけながら撤退を決断するのであった。

 

堂「……ふぅ……何とか巻いたな」

 

フラ公「すっげ!なんじゃそりゃ!そんなとんでもアイテムあるなら最初から出さんかい!」

 

堂「いや、さっき即席で作ったんだよ」

 

針妙丸「今の短時間で!?凄い才能ね…」

 

霊夢「役立たずから少し昇任したわね?」

 

凄く驚かれているな…まぁ飽くまで猛獣とかを退けたり小型幼獣を仕留める為の小道具だが、それでも効果てきめんで助かったと俺自身思ったのだった。

便利な器具ではあったが、即席で作ったものでもあり、衝撃に耐えられなかった投石機は先の方がへし折れてしまっていた。相手側も今後対策してくるだろうし、もう使えないだろう。

一難去った所で俺達は城の中に場を移したのであった。

 

針妙丸「改めて自己紹介するね!私は少名針妙丸、この地一体を統括してる"領土の戦姫"だよ!」

 

霊夢「私は博麗霊夢、アンタらの知ってる私と大差ないから説明は省かせてもらうわ」

 

堂「俺は祇華堂。隣の凶暴吸血鬼と世界を渡り歩いてる一般人だ」

 

フラ公「だぁれが凶暴吸血鬼じゃい!わっしは超絶プリティアイドルのフランだじぇ!コイツにはフラ公って呼ばれてるけどな!」

 

針妙丸「堂君にフラ公ちゃんだね!よろしく!」

 

霊夢「ん。」

 

友好的に笑みを向けてくれる針妙丸と表情を変えずに素っ気ない返事をしてくる霊夢……一通り俺達の自己紹介を終えた所で話が進む。

 

堂「…領土の戦姫…それがアンタらが狙われる理由って認識でいいのか?」

 

率直な意見を述べる俺に針妙丸は目を丸くして口を開く。

 

針妙丸「さっき罠作った時も思ったけど堂君って頭脳派だよね?」

 

フラ公「臆病者なだけじゃね?」

 

堂「おい……。」

 

まぁ間違えてはない、罠を張り、生き物を狩る者としては情報を獲て尚且つ素早く"使えそうな物"を罠として活用する必要があるからな、それをするのにはある程度チキンプレイをする必要もある。そう頭の中で納得しながらも話がさらに進む。

 

針妙丸「そう!私もさっき襲って来た戦姫達と同じ立場の存在だよ!」

 

堂「……お前達は何が目的でこんな争いを続けてるんだ?俺にはそれが掴めない…」

 

針妙丸「……3人の戦姫の内生き残った1人のみ元の幻想郷へ戻れるだろう────。」

 

フラ公「なんじゃそりゃ??」

 

霊夢「……まるで誰かに言われたような口振りね?」

 

ん?待てよ、霊夢は針妙丸の用心棒をしているのにそんな大事そうな話を聞いて無かったのか?いかにも初耳の様な口ぶりの霊夢へ不信感を覚える。

 

針妙丸「──そう言えば霊夢に話してなかったね?何で話さなかったんだろう…まるで今思い出したかの様…。」

 

フラ公「ボケてるんじゃね?」

 

自分でも不思議そうに語る針妙丸へ容赦ない一言を浴びせるフラ公。

 

霊夢「まぁ今から話して困る事でも無いし、私は別に構わないわよ。」

 

針妙丸「ありがとう、霊夢!……戦姫達はね、私も含めて元々別の幻想郷の住民を模して作られた存在なの。」

 

堂「………。」

 

フラ公「んぁ?お前達が偽物なら帰っても意味ないんじゃね?」

 

霊夢「……コダマは原点に近付くほどその身を保てなくなる」

 

堂「保てなくなるだと…?」

 

霊夢「……アンタらを送り込んだヤツだったら知ってると思うわよ?」

 

謎めいた発言に俺は頭を傾げる。それと帰れるというのに何か関係があるのだろうか?俺の隣で話を聞いてたフラ公も何言ってんだ?と言わんばかりに微妙な表情をしていた。

 

針妙丸「とにかく!私達は"その人"が言った通り今日まで陣地を選定して互いに崩し合う争いを続けてきたの!……私は3人の中で1番弱くて、もうダメだって時に"たまたま"通りかかった霊夢に助けられたの!」

 

霊夢「針妙丸の用心棒をしてるのはまぁ流れね?見捨てても目覚めが悪いし。」

 

何だかんだ物言いがきつくて対応が冷たいがこの霊夢は良心的なのだろう。会話の中で色々な情報が入ってくる。

どうやらこの異変に巻き込まれた者は他の幻想郷からやって来た者達の様だ。はた迷惑な事に、主犯と思われる"何者"かが争いを針妙丸達へ促し、今の惨状になる迄争いを続けてきたのだろう。大体のピースは揃い、やる事も見えて来た。

所々まだ謎を残した部分もあるが、できる事は理解したつもりだ。

 

針妙丸「このメンバーだったらきっと他の戦姫達にも勝てる!そう思ってるの!これからは守りに徹するんじゃなくて、私達サイドからも攻撃に出るよーー!」

 

霊夢「……その戦姫とやら?私一人でも適う相手だと思うけどねぇ。」

 

フラ公「はぁーーん!あんなヘナチョコバリアしか貼れない紅白がなにか言ってるじぇ?」

 

霊夢「……だったらアンタらがどれだけ無力か試してみる?」

 

凄まじい殺気と鋭い睨みをきかせてくる霊夢。こうなると毎回一般人の俺は生命的な危機だろうか、本能的にヤバい、と鼓動が早くなるのがわかる…。フラ公も見た事か…煽るだけ煽るが霊夢の圧に押されかけて冷や汗をかいて小刻みに振るえていた…それでも謝らないのは負けず嫌いなコイツらしい…。

 

堂「悪かった、俺もコイツもアンタの力を信じてない訳じゃない…できる限り邪魔にならないようサポートする体勢を取るから、気を鎮めてくれないか…?」

 

霊夢を宥めるように上記を口にし、様子を伺う。

少しだけ間が空くが、落ち着いたのか軽いため息を付いて「分かれば良いわ。」と一言述べる霊夢。そんな重い空気を一転させる様子で針妙丸が話を振る。

 

針妙丸「ま、先ずは初めに落とす戦姫の候補を絞ろう!!」

 

堂「それもそうだな。」

 

フラ公「だったらさっきも襲ってきた犬っ頃女がいいじぇ!」

 

霊夢「それ、さっき倒せなかったのが悔しかっただけでしょ。」

 

フラ公「うるしぇ」

 

もうフラ公の性格を理解し始めやがった…この霊夢、脳筋派かと思ったが頭もかなりキレるんだな…それ強すぎじゃないか…?

 

針妙丸「其れも手だけど、最初に厄介な方から倒そう!操りの戦姫なんてどうかな?」

 

フラ公「何じゃそりゃ?」

 

堂「もしかして最初に襲ってきたあの人形と関係あるのか?」

 

針妙丸「うん、操りの戦姫は人形達を操って各地の魔力や触媒を補給しながら戦力を高めてる厄介な戦姫なの!しかも彼女の拠点は移動出来るからどこにいるか特定ができないし奇襲されるリスクもあって領土の外を迂闊に出れないんだ…」

 

聞くからにヤバい奴だと言うことは理解できた。また、"人形"に"操る"というワードから、俺の知識が正しければそれが原点での魔法使い、マリス・マーガトロイドと言う少女だという推定も出来た。これまで操ってきたマネキン型の人形を見る限り原点とはまた違った異形な者と成り果てて居るのだろう。狼を指揮するリーダー格の椛。マネキン型の人形を操るアリス。そして人間サイズの針妙丸…何から何まで奇妙な現状だが、針妙丸の"言われた帰れる条件"とやらが何かのキーになるのだろうか?疑問を残しつつ、俺達は操りの戦姫討伐に向かうのだった。

 

第二章 戦姫 END

 

第二章 狂った人形師

 

堂「……しっかし、こうしてお前さんと行動を共にする事って初めて何じゃないか?」

 

輝針城から少し離れた小高い丘を目指して俺とフラ公はとぼとぼ歩く。何となく思った事を口にすると気だるげに考えながらフラ公は口を開く。

 

フラ公「あー…そういやそうかもしれにぇ、あの紅白と姫ちゃまはお城でガクブルじゃから仕方ないんじゃね?」

 

堂「表現悪すぎだろ。」

 

一応説明しておくが、別に針妙丸と霊夢は怯えて城に立てこもってる訳では無い。"戦姫"にはそれぞれの個性が付与されており、針妙丸の場合輝針城と言う領地を持つ事であらゆる加護を付与されるというもの…らしい。だからその城を落とされたらヤバいのだとか。霊夢は針妙丸の用心棒という役職を全うしているらしい。

 

フラ公「ってかこの坂いつまで上りゃいいんだじぇ…」

 

少し疲れたのか腰を曲げながら怠そうに歩くフラ公。何となく気持ち的に伝染しそうだが、ここは気を強く持った方がいいだろう。相手は動く根城を持っているらしい…奇襲されるかもしれない…。

 

堂「……しっかし、何処かで火の手でもあがってるのか…?火の粉が邪魔で前が見えづらいな……」

 

『ガシャン!ガシャン!』

 

フラ公「うがーーー!まぁぁた髪とか服が汚れるじゃろうがい!ええ加減にせいよ!」

 

『ガシャン!ガシャン!』

 

元気だな本当に……。

なんか少し熱くなってきたし何時間も坂を上がってていい加減疲労が蓄積されてきた…ボーッとし始める中、急にフラ公が声を上げた。

 

フラ公「な、なんじゃこりゃーーーーー!?」

 

堂「うっさいなぁ…何騒いで……は?」

 

空いた口が塞がらない様子で"何か"を見上げるフラ公を見て上記を述べた後、ふと同じほうを見上げた時だ───。

 

『ガシャン!ガシャン!ガシャン!プシューーー…」

 

『こんな物見た事がない…』『何だこれ、デカすぎやしないか…?』頭の中に色々な情報が入って来て整理出来ない…。咄嗟に俺はこのデカブツの横側へ走り、フラ公は逆側へ身を躱す…。

 

フラ公「まさかアイツが言ってた根城ってコレか!?最先端じゃね?」

 

堂「……いや、そうでも無いみたいだぞ…?」

 

良く見れば脚の部分はマネキン人形の腕を何本も組み合わせた物だろう。胴体も胸部、下腹部、首等のあらゆるパーツを嵌め込んで生き物の様な見た目になっているだけのようだ…。

 

堂「……まるでガラクタの城だな…。」

 

???「失礼ねぇ?」

 

俺の一言に敏感に反応してくる声…女性ではあるが、声は落ち着きを失ったかのような物で、聞いただけで狂人だと察した。

声の方を見上げれば、そこには背丈や身なりこそ原点同様のアリス・マーガトロイドだが、胸には鍵穴の様な物がぽっかり空いており、両手を広げてグネグネと気持ちの悪い動きをしている姿があった。……まぁ、間違いなく"操りの戦姫"はコイツだろう。

 

アリス「私からすれば、魔理沙以外の人類なんて全てガラクタ。生きてる価値すら乏しい害児に過ぎないわぁ!」

 

フラ公「この変人めっちゃ言うじゃん!?ゆるしゃね!」

 

アリス「アナタ達に私が倒せるかしら?あぁ……もっと派手にアピールしなきゃ…魔理沙…魔理沙ァァァ!!」

 

話が噛み合わないどころか、とんでもなく狂ってやがる…。気持ち悪さをも覚える狂人っぷりを見せるアリスは、急に荒らげた声で大声を上げたかと思うと、巨大な根城の口から大量のマネキン型の人形を投入してくる……。

 

フラ公「っひゃぁ~…気持ちわりぃじぇ!」

 

見たままの感想を述べるフラ公はレーヴァテインを出現させると同時に"こっち来るな!"と威嚇する感じで炎の剣を振り回す。

しかし、マネキン達には効果が無い様子で、日が体に着いても両手を伸ばして扇風機のように回転する事で消火していた。

……相性が悪すぎる。原点では指から糸を張り、人形を操ると言った手を使って居たが、このマネキン達はどう考えても糸で操られてる訳では無い様子…。何か秘密があるのだろう、どの道コイツらに炎は効かない様だ。

 

堂「……どうする…?炎は効かない…投石しても多分固くて無理だよな……そう言えば、"あの霊夢"はどうやってコイツらを壊したんだっけ……」

 

此処へ来た時に襲われた事を思い出す、霊夢に助けられ、粉々に壊れたマネキン…損傷箇所を良く良く思い出すと、ある共通点が絞り出される。

 

堂「……っ!フラ公!そのステッキで奴らの繋ぎ目を狙え!!何処でもいい!」

 

フラ公「んぁ?そんなので通るんか?まぁ、いいじぇ!!」

 

フラ公は言われるがままに襲いかかるマネキンの勢いを利用して繋ぎ目目掛けてレーヴァテインを振り上げる…。

狙った通り、『ガシャン!』と音を立ててマネキンはバラバラになり、動かなくなる…。そして、さっきは気づかなかったが、俺は奇妙なものに気が付いた。

 

堂「……何だ…今の…」

 

マネキンの中は空洞になっており、切断された胸部の中から小さな青白い光が溢れて直ぐに消える…見間違えと思ったが、フラ公の壊したマネキンは次々と光が漏れて消えた。

 

フラ公「キリがないじぇ…!」

 

これが何かの鍵になるのは間違えないが、どんどんデカブツの口からマネキンが生成されては放り出され、フラ公も対応に疲れてきたのかイライラした様子で攻撃も雑になってきた。

 

堂「……あそこに何かあるのか…?」

 

無限にマネキンを生成するそれが気になり、俺は落ちてたマネキンの腕を持ちデカブツの方へ走り出す…。

 

アリス「こ、こないでぇぇぇぇ!!」

 

俺が其方へ直進した途端、気味悪くにやけていたアリスが急に血相変えて俺へ目掛けて弾幕を放つ…何とか転がり避ける俺。成程、やはりそこに"何か"あるんだな…?

確信を得た俺は弾幕の中を駆け抜けて走り、デカブツの後方へ辿り着く。粗末な作りなのか、単純なのか、後方には入口らしきドアが着いており、俺は気付くやすぐにドアを開けてデカブツ内へ侵入した。

 

アリス「さ、さ…させないわよぉぉぉぉ!?」

 

顔を青ざめさせて追い掛けてこようとするアリス…その瞬間。

 

『ガキンッ……』

 

アリスは咄嗟に忍ばせておいたナイフでガードし、睨みをきかせる…その先には、霊夢が立ち塞がっていた。

 

霊夢「悪いけど、アンタをこのまま行かせる訳には行かないのよね。」

 

目に見えない"何か"をアリスへ向けて上記を呟き、アリスは落ち着かない様子で「い、いいわよ…それなら、貴女から始末してあげるわぁぁ!」と言葉を投げた。

妨害のない今、最高のチャンスだ…デカブツの中はマネキン達の部品が散乱した洞窟のようになっており、所々家具が置かれてるゴミ屋敷の様な内装になっていた。足を進めているととんでもない物にたどり着く。

 

『ドクンッ…ドクンッ…』

 

位置的には口のすぐ近くだろう、暖炉が置いてあり、そこで燃えている炎は青く光っていて、その中から鼓動の音が鳴っている…間違いない、これがアリスの"魔素"であり、触媒なのだろう。

俺を阻止するかのように後ろから数体の獲物を持ったマネキンが歩み寄ってきた。

 

堂「……お前の負けだ、操りの戦姫……。」

 

殺意の具体性がこのマネキンに付与されていた事が幸をそうした。心臓を一突きしようと獲物を突き立てて突進してきたマネキンを寸前で横に躱すとその先には青い炎…燃えても問題ないマネキンは炎を一突きすると動きを止める。同時に鼓動の音が弱くなり始める。

 

アリス「………っ!ぐふっ……ゲホッ……」

 

霊夢「さっきまでの威勢はどこ行ったのかしら…?それとも、もうバテたの?」

 

急に吐血し、苦しそうに胸を抑え出すアリス。

そんなアリスの様子の変容に気付く霊夢は煽り混じりで上記を述べ、それにキツい睨みを効かせるアリス。体からは黄色い光が盛れ出して足元から薄くなり始める。

 

アリス「ふ…ふふ……勝ち誇ったつもりかしら…?」

 

霊夢「……あ?」

 

アリス「貴女達は…私を、ゲホッ…私達を消した事に必ず後悔する……ふふ……アハハ……!『スパッ』…ぁ……」

 

胸を抑えながら息が荒くなり、吐血を繰り返しながらも意味ありげな言葉を投げ掛けるアリス。

最後にはイラつきの限界値を超えた霊夢が手を振り、同時にアリスの首が飛んで地面へ落ちたのだった…。

 

霊夢「…ご忠告どうも。まぁ、どの道もうアンタには何も出来ないんだから、大人しく寝てなさいよ。」

 

冷たい視線を向ける霊夢を不気味にニヤつきながらアリスは光に包まれ、消滅するのであった。

 

第二章 狂った人形師 END

 

第二章 白狼戦士

 

アリスとの戦いの後、輝針城へ帰る最中の事だ。

 

堂「……確か針妙丸の身の安全を守ってたんじゃなかったか?」

 

フラ公「遂に愛想尽かしたってやつじゃね?それなら超プリティアイドルことわっしの用心棒になってくれてもi…」

 

霊夢「寝言は兎も角、私はその針妙丸に"もう心配要らないからアンタらを助けて欲しい"って頼まれたのよ。」

 

フラ公「んがぁぁ!流しやがったなワレェ!」

 

堂「そっか…さっきは本当に助かったよ、ありがとう。」

 

霊夢「ん。良いのよ片手間だし。」

 

さっき助けに来てくれた時も全く苦戦する様子がなかった様で、服の汚れ1つ付けてない霊夢はお使いの寄り道感覚な物言いで上記を答える。…実際そうなのだろう。

 

そんな会話をしながら丘をおりている最中、急にフラ公と霊夢が足を止める。

 

フラ公「……囲まれちまったじぇ…」

 

霊夢「……ほんっと、近付くまで気配を悟らせないのは得意のよね、"コイツら"…。」

 

堂「……何かいるのか…?」

 

2人の警戒する様子に此方も警戒の姿勢をとりつつ周囲を気にかける…。すると辺りの岩場から白狼達が次々に姿を表し、俺達の目の前に先程対峙した一際大きな白狼とその背中に乗った仮面をつけた少女、椛が現れる。

 

椛「………まさか操りの戦姫が殺られるとは……あなた達を見くびっていた様だ。」

 

堂「……戦姫の1人が殺られて狙うはあと一人だから俺らへ奇襲……って訳でもなさそうだな…?」

 

登場の仕方があまりにもわざとらし過ぎる…まるで協定の場でも設けようとしているかのように…。そんな俺の勘が当たった様だ、上記を考えている最中、椛がある事を提案して来た。

 

椛「……"このままでは"皆倒れる、そうなる前に私に着く気は無いか…?」

 

フラ公「いきなり何言い出してるんだじぇ?」

 

霊夢「見るからに怪しい持ち掛けね?」

 

堂「……何が目的だ…?」

 

警戒心剥き出しな俺たち一同へ椛は言葉を続ける。

 

椛「簡単な話だ、お前達は領土の戦姫を救いたい、その為に操りの戦姫を葬った。だがその行動は危ない橋を渡る事になる。あの少女を救う為にも私へ着け!」

 

フラ公「黙れ小娘!!」

 

堂「お前に針妙丸が救えるか?」

 

霊夢「アンタら巫山戯てるでしょ…」

 

含みのある言葉を投げるだけ投げかけられ、虫の良すぎる話を振られた俺達の返す言葉は決まっていた。俺とフラ公は声を震わせながら上記を口にしてあくまでも丁寧に断る。そして的確にツッコミを入れられた。

 

椛「……そうか…。残念だ、次に会う時は、お前達を容赦無く喰いちぎる事になるだろう……覚悟しておけ。」

 

上記を言い残して椛と白狼達は丘の先へ姿を消して行った…。何が引っかかるな…そう思いながら輝針城へ着くと、"変化"に気付く。

 

堂「これは……」

 

霊夢「…私を向かわせた訳ねぇ…」

 

輝針城からは俺でも分かるくらい霊力を帯びており、霊夢のものとはまた違う結界が張り巡らされていた。

 

針妙丸「あ!皆おかえりなさーーい!」

 

陽気手を振る針妙丸。姿が最初より幼くなっており、背丈も縮んで居る…どういう事だ?

俺達は場内へ戻り、情報共有に取り掛かる。

時を遡ること小一時間ほど前に急にこの姿になり、それと同時に保有していた霊力が増したらしい。その時は丁度俺達がアリスを打倒していた時間帯だ。

…どうやら、戦姫が1人減るとその分生き残ってる戦姫が力を増すシステムの様だ。

…そういう認識だが、何か引っかかる。

 

針妙丸「…操りの戦姫が倒れて、白狼の戦姫が凄く取り乱してるみたいだね…」

 

堂「だな、俺達を引き抜こうとまでしてたくらいだからな。」

 

霊夢「………。」

 

フラ公「んぁ?なーに黙りこくってんだ?お前さんらしくも無いじぇ?」

 

霊夢「……何でもないわ。疲れたし、風呂でも入って寝ようかしら。」

 

針妙丸「はーーい!明日は白狼の戦姫と戦闘になると思うから、しっかり英気を養ってね!」

 

やけに好戦的だな…。それだけ元の幻想郷に戻りたいのだろう、俺達も最大限の準備をしておかなきゃな、1度、俺たちは別々でそれぞれの準備に取り掛かる……。明日は早くなるだろう、備える様に一同で睡眠を取っていた時だった。

 

『ドタドタドタ…』

 

針妙丸「堂君!!起きて!」

 

堂「んん…?何だこんな夜中に…トイレならフラ公でも連れて…」

 

針妙丸「寝ぼけてる場合じゃないよ!白狼の戦姫が攻めてきた!!」

 

堂「………ッ!」

 

直ぐに俺は城の外へ駆け出し、外を見る。城下町の方は火の手が上がり、結界の周辺には白狼達が取り囲んでいた……夜襲だ。

事が上手く行きすぎてその可能性を考慮できていなかった。

白狼の群れの中から群れのボス、ホロウが姿を見せ、その傍らに椛の姿があった。

 

椛「──領土の戦姫、そして狂女を指揮している少年、出て来い!」

 

フラ公「だっはっは!狂女って言われてんじぇ?」

 

霊夢へ笑いながら上記を投げかけるフラ公へ躊躇ない現実的な一言が飛び込む。

 

霊夢「アイツが指揮してたのアンタだけよ?」

 

フラ公「………?………。だぁれが狂女じゃコリャーー!!ゆるしぇね!絶対裏切りヌルヌル!!」

 

少し間を置いて理解したフラ公が飛び出そうとするのを霊夢が押える。空気を読んでくれたのだろう、有難い。

 

堂「……どうやら用があるのは針妙丸と俺みたいだな。」

 

針妙丸「…ケホッ…うん、そうだね。」

 

椛の元へ歩み寄る俺と針妙丸。最中、隣を歩いてる彼女に何処と無く、顔色が悪そうに見えた俺は声をかける。

 

堂「……風邪か…?」

 

針妙丸「うーん…さっき起きた時から少し咳が止まらなくて…ケホッ…」

 

堂「……なるべく穏便に済ませたい所だな…。」

 

結界を抜けて椛の前に立つ俺達。仮面越しにでもこちらを睨みつけていることが何となく分かる。

 

椛「………決闘をしよう。このまま総戦力で攻めあってもキリがないだろう…?」

 

いきなり夜襲をかけてきた奴らとは思えない発言だな…まぁ霊夢の規格外な強さにフラ公のしぶとさ、針妙丸の強化された結界の事を考えれば妥当な判断なのかもしれない。此方としても、相手の出方を見ずにことが進む訳だから、願ったりだ。

 

堂「……一応聞くが、裏切る可能性があるんじゃないか…?」

 

椛「……私は白狼を統べる者である前に、戦士だ。誓おう。決闘中、誰か一人でもそちらに危害がある様なことをした者がいればその子には自刃してもらう。」

 

……どうやら本気の様だ、話を聞く限りでも裏で手を引く様なタイプではなく、それこそ真っ直ぐな戦士だと分かる。だからこそ、針妙丸とアイコンタクトを取り、了承を得た俺はその条件を飲む。

 

直ぐに俺達、そして椛とホロウの周りを白狼達が囲った。合図は円で俺と椛の間に居る白狼が取るようで、少しの間、静寂が続けば、白狼は天を見上げて遠吠えを鳴らす。

合図だ。針妙丸は元々使ってた武器だろうか、黄金の小槌を取り出して椛目掛けて振り上げる…椛はすぐさま槍で小槌を抑え、針妙丸へ反撃をしようとしたその時だ…。

 

針妙丸「……ッケホッ……ケホッ……」

 

椛「………ッ!」

 

針妙丸の咳に気付くやすぐさま距離を開ける。その光景にとても違和感を覚えた。しかし、そちらに構える程の余裕もなく、木刀片手に持っただけの俺は巨大な白狼、ホロウの攻撃を紙一重に避ける事で精一杯だった。

 

ホロウ「グルルルル……ッ」

 

堂「ど…どうしろって言うんだよ…」

 

暫く引っ掻かれそうになったり噛みつかれそうになるのを必死に避けると言った状態が続く。

 

霊夢「……あれ、ヤバいんじゃないの?ヘマこいたら殺られるわよ…?」

 

フラ公「そうだなぁ……アイツはクソジャコナメクジだからなぁ……」

 

霊夢「……いいの?助けなくて。」

 

フラ公「へん、堂は完全に負ける状況であんな条件を飲む様な大バカじゃ無いじぇ?」

 

霊夢「……ふぅん。信頼してるのはいいけど、あれ、もうヤバいんじゃないかしら…?」

 

霊夢の指さした先には木刀がボロボロになり、尻もちを着いてホロウに追い詰められる俺の姿があった。

 

フラ公「おいこりゃぁ!易々と乗った話で無残に負けるとかかっこ悪すぎじゃろがい!せめて役立って散れメンス!!」

 

堂「…いや、酷過ぎだろ…」

 

フラ公の声が聞こえていた俺は、思った事を口にする。体力もかなり使って、行きもだいぶ切れた…そんな俺へホロウが衝撃的な行動をとる。

 

ホロウ「──フン、人の子よ…貴様では持った役目を果たせぬ……その穢れた性を持つ限り、決して求めるもの等手に入らぬ……」

 

堂「……お前、喋れるのかよ…声怖…」

 

ホロウ「まだそれだけの虚言を吐ける元気があるとはな……それもここまで……さらばだ……ッんん……!?」

 

ホロウの動きがピタリと止まる。何が起きてるか分からない…と言った様子で目を見開くホロウへニヤリと笑いながら俺はホロウへ木刀を振り下ろす。

 

ホロウ「───ッ!ガリッ…無駄だ…そんな木1つでワタシを倒そう等と数万年早いぞ……」

 

堂「そうだな…こんな物でいくらお前さんに殴りかかろうと、殴うと倒せる訳ないもんな…?だから、他者の力を少し借りなきゃいけねぇはめになるのさ。」

 

上記の後でホロウの足元へ指を指す。それを見たホロウがまた目を見開いた。ホロウの足元に、札が敷いてある。序盤で霊夢が解除した結界で使われた物と貼り直して結局使わなくなった分だ。密かにそれを回収して何かに使えないかと思惑した結果だった。

 

堂「俺自身で結界を張るなんてとてもできる芸当じゃないけどよ、"誰かが張ってた物"を少しでも最利用する事くらいなら出来るんだよ!」

 

ホロウ「小癪な!!貴様の様な小僧の張った結界モドキなど直ぐに壊してくれる!!」

 

言葉のとおり、ホロウが力を入れた足の札がもう破れかけてる…だがもう奴を動かす隙は作る気もない。

人差し指と中指を立てて霊力とやらの感覚に集中する。するとホロウが急にもがき始め、中から『パァン』と爆発音がなる。そして、ホロウは煙を吐きながら崩れ落ちたのだった。

 

フラ公「なぁ!?アイツ何したんだじぇ?」

 

霊夢「……さっき喰わせた木刀に私の札を貼ってたんでしょうね、内側から結界を押し出す様に展開すれば微弱な物でも破片が凄い勢いで飛び散るのよ。まんまと利用されたわ。」

 

不服そうにしながらも感心している様子の霊夢に驚いて居る様子のフラ公。まぁ、俺も単体では絶対勝てなかった相手だから本当に生きた心地がしない。勝負が終わり、一息付きつつも俺は針妙丸の方へ目をやる。

 

針妙丸「タァ!!」

 

椛「………っ!くっ…ホロウの加護が……ッ!」

 

急にパワーダウンした様子で椛の勢いが弱まり、逆に輝針城から光の粒子のような物が集まる針妙丸は勢いが増してる様子だった。勝敗は火を見るより明らかで、頭部に思い一撃を受けた椛は床へ叩きつけられ、体から光が飛び交い足元から透け始める。

 

椛「────この先に何があろうと、あなた方の勝ちは曲がらない……私の負けだ……。」

 

堂「……最後に、なぜ俺たちを味方にしようとした?…なぜ"最後のチャンス"まで与えた…?」

 

椛の前に立った俺はみんなにとって突拍子もなかった様な質問をした。

 

椛「……人の子よ、あなた達の旅路は…始まったばかりなのだろう…ならば…覚えておけ……真実とは……目に見えぬものが多く……これもまた……惑わされた世界なのだと……」

 

堂「それは一体……」

 

質問を返そうとしたが、既に椛は頭まで透け、消滅して行ったのだった。2人の戦姫に勝った…だが何だ?この釈然としない感じは…以前の異変との違和感は…モヤモヤしながらも、俺は針妙丸の方へ歩み寄る。

 

堂「……とりあえず、これで終わったな。お疲れ」

 

声を掛けるが、針妙丸は俯いたまま動かない。どうしたんだ…?時にかけたその時だ。

 

霊夢「───逃げなさい、堂!!」

 

堂「………なッ……」

 

輝針城から強い光が集まったかと思えば、俺に目掛けて強力な光線が放たれる…辺り一面が、強力な光に飲み込まれていったのだった。

 

第二章 白狼戦士 END

 

第二章 記憶再生

 

強力な光の光線が地面をえぐり、瞬く間に地形を変えて消えた先に俺の姿はなかった。それもそうだ、咄嗟に助太刀に入ったフラ公に担がれ、その場を回避したからだ。

 

 

堂「フラ公、すまない…!」

 

フラ公「ったっく…世話のかかる子分だじぇ…」

 

堂「……ッ!お前…その腕…」

 

光線から逃げる際に着いたものだろう、左腕全体が焼け焦げており、煙を立てながらフラ公自身も激痛に耐えている様子で脂汗をかいていた。

 

フラ公「へんっ…こんなの…唾つけてりゃ治るじぇ…」

 

強がり…だよな?フラ公がこうなったのも俺が油断したせいだ…。罪悪感を持ちつつ針妙丸を睨みつける。

 

堂「……どういう事だ。俺達を騙してた…って事で合ってるにしても、少し卑怯なんじゃないか…?」

 

針妙丸「……騙してた……?嗚呼…そうだね、ずっと、ずーーっと…ワタシはあなた達も…"ワタシ自身"も騙してたの……。」

 

不気味な笑みを零しながらミルミルと背丈が一寸程になる針妙丸……普通生き物が小さければそれだけこちらに余裕を感じられるものだが、針妙丸からはそれを感じない…寧ろおどろおどろしさと狂気を帯びた何かを感じ、また針妙丸は俺達の目の位置まで浮かび上がると赤黒く不気味な光を帯びながら此方へ笑みを見せる。

 

針妙丸「ずっとこの時を待っていた…"ワタシ"の力を個性として分離させ、ゲホ…戦姫として足掻いた2人はもう居ない……ゲホッ…ゲホッ…ならば、ゲホッ…もはやこの下克上を達するのを止める者は……ッ…もう居ない……ふふ…アッハハハ…!ゲホゲホッ……」

 

堂「……どういう……」

 

急な状況の変動に頭が追いつかない…だが、針妙丸のあの様子、何か覚えがある…何かを見落としている気がする……1度深呼吸する事で冷静に頭の中を整理する事にした───。

"これまで"引っかかった事。そして"これまで"起こった異変は繋がっている。

『惑わされた世界』…『戦姫』…『急な身体の縮小化と記憶の再生』…『さっきから妙に咳き込んでやがること』……。記憶を遡ってる内に、俺は隙間妖怪の一言を思い出す。『──鍵まで辿り着く』……。

その一言で、俺はある仮説を立てる事にした。

 

堂「……そうか、前の異変も、この異変も繋がっていたのか……。」

 

フラ公「んぁ??あの化け物ウヨウヨな世界とここは全然違うじゃろがい!」

 

堂「夫々の世界観じゃねぇ、この幻想郷ってのは1つの目的の為に用意された過程でしかないって事だ。」

 

フラ公「………いや、急にシリアス気取るなよ…ワシにも分かるように説明してクレメンス…」

 

霊夢「つまり、アンタ達が前に解決したって異変が終わりでは無かった。寧ろ一面ボスを突破下に過ぎないって事よ。」

 

フラ公「はぁ!??そんじゃあんだけ汗水血垂らして解決したあの異変も、クリアのカウントに入らねぇって事じゃんか!」

 

針妙丸「……フフ、正解…そこ迄恐ろしくものを観察できるのは堂君お得意の罠師の才能からかしら?」

 

堂「生憎相手の事をある程度見計らわねぇと喰われる生活送ってたものだからな…。」

 

針妙丸「──いいわ!それなら見せてあげる…!ワタシが"あの方"からさずかった力、1つの幻想郷を"毒"で満たす為の狂気を……!ゲホッ……ゲホゲホ……」

 

咳き込みが激しくなる一方で針妙丸はさらに中へ浮かぶと輝針城の壁へ飲み込まれるような形で一体化する…。次の瞬間、城からからくり人形のような音が鳴ったかと思えば大きな歯車が接続部から姿を見せながら瞬く間に姿が変わる…その姿はまるでドラゴンと言った所か…メカ仕掛けのドラゴン型の幼獣…しかも間違い無くこの感じは以前の空と同じ……"禁忌妖怪"だ。

俺は前に立ちはだかる竜の圧に、ただ腰を抜かさないよう身構える事しか出来なかった。

 

第二章 記憶再生 END

 

第二章 戦姫の行き着く先

 

巨大な図体に四足歩行、関節の節目からゼンマイが剥き出しており、メカドラゴンとも言えるその怪物は俺達を薙ぎ払うかのようにプレス、尻尾を振るなどの容赦のない攻撃を繰り出していた。

霊夢はそれを軽々と避け、フラ公も片腕抑えながらも高く飛び上がり避けている…俺も紙一重だが何とかメカの隙間をくぐりぬけながら攻撃を避けていた。

 

堂「くっそ……こんな化け物にどう太刀打ちすりゃいいんだよ…!」

 

霊夢「………ッ!」

 

上手く突っ込んできた腕部を掛け走り、胴体へ斬撃を入れる霊夢。そして下の方からレーヴァテインで如何にもと思えるような繋ぎ目を狙うフラ公…互いに威力は申し分ないようだが、破損した箇所は切断され、霊力という物だろう、青い光に包まれた瓦礫を浮かせて接続してやがる。

───手詰まりの様だ。

 

堂「……罠をはるにも、あんなにデカいとどう落とすか…『カランッ…』ん……?」

 

俺の方からも何か支援しなければと足を動かした時、ある物を見つける…。

 

堂「……こいつは…打ち出の小槌か…」

 

殆ど効力を針妙丸に吸われたのだろう、微量に黄金の光の粒が囲う小槌を手に取ろうとした時だった。

 

『ピカ………ッ!!』

 

堂「なッ………!」

 

急に視界が真っ白になり、意識が揺らいで行く…。

 

??「────様……───様…!」

 

自分のものでは無い"誰か"の記憶…虚ろな意識でありながらしっかりとその光景を見聞きしていた。

 

??「……嗚呼…"あの怪しい連中"に結局唆されたのですね……。マトモな結末を迎えないと分かって居たはずなのに……!」

 

???「……ごめんね、それでもワタシは救いたかったの、どうしても打ち出の小槌以上の動力が…ゲホッ…もう…駄目なのかな…ワタシ…何も救えないまま…駄目になってしまうのかな…」

 

普段より高く見える天井を見上げていた視界が揺らぎ始める、視点の少女の足だろう、見下げた足元にポツリポツリと大粒の雫が落ちる…。

 

??「───もう貴女の救いたい者達の笑みを見る事は叶わないでしょう、決して貴女様はこの残酷な歯車から逃れる事は出来ないでしょう…。それでも、"貴女様自身"はまだ救える…柄でもねぇ…騙そうとしていた私だけど…それでも、この気紛れに、"下克上"には嘘はない……」

 

目の前で話している方の少女が黄金に輝く打ち出の小槌を手に持つと此方へ言葉を続けた。

 

??「良いですか…?これから教える"呪文"は、どうしようも無くなったその後で、貴女様を救う為の切り札…私からこの絶望への…最後の下克上です…….。」

 

???「──それって…ゲホ…ッ○○!何をするつもりなの…?ゲホゲホ……待って!行かないで……!」

 

打ち出の小槌が強く輝く中、対面していた少女は儚い表情と共にボロボロとその身が崩れて行く……これはきっと、この少女が小槌に残した記憶なのだろう…。

 

静かに瞼を開けば小槌を取ろうとしていた情景に戻っており、困惑しかけるが直ぐに迫ってくる命の危機に我を取り戻す。メカの腕がこちらに迫って来ていた為、俺は咄嗟に小槌を目の前に添えてガードの姿勢をとる。

 

フラ公「あんのバカ!危ないじぇ…!」

 

大声を上げるフラ公、その様子を黙って傍観している霊夢。何となく…この行動が"良い"気がしたのだ…。

小槌に気付くと咄嗟に攻撃の起動を右側へ大きく逸らして俺の体を狙う形で右から凪払おうとして来る。

 

堂「……これだ…!」

 

閃いた仕草を見せた途端、迫って来た腕部と俺の間に目にも映らぬ早さで割って入った霊夢が腕部をエモノを振り上げて上空へ飛ばす。

 

霊夢「……打開策でも思いついたの…?乗ってやるわよ。」

 

堂「……あぁ。アイツをどうにかするにはこれしかねぇ……。霊夢はアイツの腕の付け根を切り落として欲しい…!」

 

霊夢「任された。」

 

堂「フラ公!!ギュッとしてドカンは使えたよな?」

 

フラ公「んぁ??なんだじぇこんな時に!そりゃワシはフランなんだから使えるじゃろがい!」

 

堂「それなら、俺が言うタイミングで1発派手なのを頼む……!」

 

フラ公は俺の言葉に若干困惑気味に『お、おぉ…』と答える。その数秒後、有言実行とは上手くいったもので、霊夢は難無くメカドラゴンへ接近して右腕部をエモノ一振で切り落とす。

 

堂「───ここだ…!フラ公、腕から見える"中の者"目掛けて撃てーーーーッ!!」

 

フラ公「まっかせんしゃーーーーい!!渾身の力を振り絞ったギュッとしてぇぇ………ドカン……ッ!!」

 

───狙い通りだ…。俺の方角からは何があったかなど分からない、ただ小槌を通して"何者"かの存在を感知したから、そして飛び上がって手を向けるフラ公自身が"ソレ"を見たから行ったのだろう。そしてフラ公がキレ顔で放ったぎゅっとしてドカンの先、メカドラゴンの内部からガラスが砕けるようなとがしたと同時に悲鳴の様なうめき声が鳴り響く…。接続部から見えていた光が弱まり、所々がボロボロになっては心臓部らしき者が姿を現した───。

 

心臓部「キシェェエェェェ……!」

 

初めてフラ公と会う前に見たコダマに似ているが、黒色一色の眼球に牙やつののようなものが生えており、青白い糸の様なものを体に纏わせて化け物化した城に張り巡らせて居た…カラクリは全て解けたがまだ動きが止む気配がない。

俺は"ある光景と言葉"を思い出して小槌を振り上げる。

 

堂「……もうこれ以上苦しむ事はねぇ…。見たかった光景は叶わなくても、お前を救いたいって思ってくれた奴が、その想いが…ここにはあるんだ……ッ…!」

 

俺の言葉に反応するように打ち出の小槌が黄金色に輝く。

 

堂「────リバース……ッ…!」

 

一言放ち、振り下ろす小槌…黄金の光は振り下ろすと同時に心臓部目掛けて多いかぶさるように前方へ広がって行った…。

 

心臓部「キシャ……!?キシ…キシシ……ッ!」

 

フラ公「な、何だじぇ!?ありゃ!」

 

霊夢「……。」

 

大きな光に辺り一面が飲み込まれて行く、そこで俺の意識も1度途切れて行ったのであった───。

 

堂「ん……ん…?」

 

目が覚めると、辺り一面が黄色い光で覆われた空間になっており、そんな中後方から呼び掛けられる。

 

針妙丸「……倒してくれたのね…」

 

振り向くと、少し寂しげに笑みを向ける最初に出会った時の針妙丸の姿があった。

 

堂「あぁ…霊夢とフラ公が居なけりゃやられてたけどな…」

 

針妙丸「…普通の人間には出来る芸当では無く、これから貴方はきっと、様々な縁を紡いで行くのかな…」

 

堂「……そこまで分からねぇよ。俺は預言者でも無ければ賢者でもない…ただの人間なんだ。」

 

針妙丸「……クスッ…それでも、貴方達と過ごしたこの数日間はすっごく楽しかったよ!…いつかこの縁が、何らかの形で再現される事を願うばかりだよ。」

 

何か意味深な物言いをして針妙丸は背を向けてどこかへと歩き出す…その背中はどこかもの寂しげで、見ていると切なさを感じさせる…。俺はただそれを見ているだけで、何も出来なかった。

……針妙丸の背を見ていた瞳の瞼が次第に重くなり、暗くなっていく。

 

───。

 

フラ公「──!○!……堂!起きろよ!お前がこんな所でくたばるタマじゃなかろうがい!」

 

キレてるのか、心配してるのかよく分からない表情のフラ公が目の前で俺の体をゆさぶっていた。

 

堂「……痛い…。」

 

フラ公「………!おま、無事なら無事って言えよなーーー!」

 

いや、気絶してたんなら無理だろう。ツッコミたかったがそこそこ疲労が溜まってか口にする気力も無かった俺は、とりあえず辺りを見渡す。既に修正化が始まっているらしく、奥の方から光の壁が少しづつ迫って来ているのが見える…目の前には輝針城の残骸…気になるてんと言えば、霊夢の姿が無かった。

 

堂「……あれ、霊夢は…?」

 

フラ公「ん…アイツなら『一足先に此処を出るから縁があったらまた会いましょ』って言ってどっか行ったじぇ!仲間が倒れてるのに薄情なやつだじぇ!」

 

堂「いや、どんだけお前は仲間意識高ぇんだよ…。」

 

ついつい軽くツッコミを口にしてはようやく少し元気が戻り、立ち上がる。その瞬間にどうやら迎えも来たようだ。

 

紫『聞こえるかしらー?今回もお手柄だったわね…?幻想郷の修正化も始まってるみたいだし、早く戻っていらっしゃいな?』

 

声と共に空間が歪んで隙間が現れる。

 

フラ公「まぁた高みの見物かよ年増ァ!」

 

まぁ、大変だったしキレる気持ちも分かるが落ち着こうか…。1度俺とフラ公は輝針城だった物を1目振り返ると、直ぐに向き直って隙間へ飛び込む。

───消え行く幻想郷には、どこか虚しさが残されていたのだった。

 

第二章 戦姫の行き着く先 END

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