今回執筆していて気が付けば7000文字突破しておりました……自分でも驚いています
少しシリアス要素と独自解釈要素が強いですが、ご注意ください
それではどうぞ
「……なるほど。試練に神代魔法、それに神の盤上か……」
現在、俺たちはアルフレリックと向かい合って話をしていた。内容は、オスカー・オルクスに聞いた〝解放者〟のことや神代魔法のこと、自分が異世界の人間であり七大迷宮を攻略すれば故郷へ帰るための神代魔法が手に入るかもしれないこと等だ。
アルフレリックは、この世界の神の話を聞いても顔色を変えたりはしなかった。不思議に思って尋ねると、「この世界は亜人族に優しくはない、今更だ」という答えが返ってきた。
神が狂っていようがいまいが、亜人族の現状は変わらないということらしい。聖教教会の権威もないこの場所では信仰心もないようだ。あるとすれば自然への感謝の念だという。
「どこの世界も……そう教会というのは腐敗を招くもんだな」
「全く以てその通り……」
その後アルフレリックはフェアベルゲンの長老の座に就いた者に伝えられる掟を話した。それは、この樹海の地に七大迷宮を示す紋章を持つ者が現れたらそれがどのような者であれ敵対しないこと、そして、その者を気に入ったのなら望む場所に連れて行くことという何とも抽象的な口伝だった。
「随分と抽象的というか、曖昧と言うべきか……」
「……変に曲解して伝わらなかっただけマシだな」
ブライブがそう返す。いわば伝言ゲームのような物である口伝であるなと思いつつアルフレリックの話の続きを聞いた。
【ハルツィナ樹海】の大迷宮の創始者リューティリス・ハルツィナが、自分が〝解放者〟という存在である事(解放者が何者かは伝えなかった)と、仲間の名前と共に伝えたものなのだという。フェアベルゲンという国ができる前からこの地に住んでいた一族が延々と伝えてきたのだとか。最初の敵対せずというのは、大迷宮の試練を越えた者の実力が途轍もないことを知っているからこその忠告だ。
そして、オルクスの指輪の紋章にアルフレリックが反応したのは、大樹の根元に七つの紋章が刻まれた石碑があり、その内の一つと同じだったからだそうだ。
「なるほどねぇ……それで俺は資格を持っていると」
『おい! やめろ馬鹿! 落ち着けぇ! やめろぉ!!』
『俺はまだ死にたくねぇ! クソッこんなところに居られるか! 俺は自室に戻る!』
「……なんだ?」
話を詰めようとしたその時、何やら階下が騒がしくなった。俺達のいる場所は、最上階にあたり、階下にはシア達ハウリア族が待機している。どうやら、彼女達が誰かと争っているようだ。
「そういえばこの事情を他の亜人族にも話したのか?」
「……話す暇が無かったので」
「とにかく行くぞ」
俺たちは顔を見合わせ、同時に立ち上がった。
階下では、大柄な熊の亜人族や虎の亜人族、狐の亜人族、背中から羽を生やした亜人族、小さく毛むくじゃらのドワーフらしき亜人族が剣呑な眼差しで、ハウリア族を睨みつけていた。しかしどうにもハウリア族を睨みつけているようだが、どこか怯えが見えるような……?
……まぁその原因は今にも血祭りにしてやらんと言わんばかりに拳を振りかぶろうとしているシアだろう。現にシアに対峙している亜人族の多くは怯え切った表情をしている……俺からは表情が見えないが恐らくそこには『鬼』がいるんだろう
そして俺が階段を下りたことに気づくと一斉に俺目掛けて鋭い視線と助けを求める視線を送ってきた。一部の目には敵意が込められており、今にも襲い掛かってきそうだ
「アルフレリック……貴様、どういうつもりだ。なぜ人間を招き入れた? こいつら兎人族もだ。忌み子にこの地を踏ませるなど……返答によっては、長老会議にて貴様に処分を下すことになるぞ……それにブライブ殿も何故その人間を殺さないのですか……!」
必死に激情を抑えているのだろう。拳を握りわなわなと震えている。やはり、亜人族にとって人間族は不倶戴天の敵なのだ。しかも、忌み子と彼女を匿った罪があるハウリア族まで招き入れた。熊の亜人だけでなく他の亜人達もアルフレリックを睨んでおり、俺の隣にいるブライブに何故人間を殺さないのかを問い詰めていた。
しかし、アルフレリックはどこ吹く風といった様子だ。
「なに、口伝に従ったまでだ。お前達も各種族の長老の座にあるのだ。事情は理解できるはずだが?」
「何が口伝だ! そんなもの眉唾物ではないか! フェアベルゲン建国以来一度も実行されたことなどないではないか!」
「だから、今回が最初になるのだろう。それだけのことだ。お前達も長老なら口伝には従え。それが掟だ。我ら長老の座にあるものが掟を軽視してどうする」
「なら、こんな人間族の小僧が資格者だとでも言うのか! 敵対してはならない強者だと!」
「そうだ」
どうやらフェアベルゲンは、種族的に能力の高い幾つかの各種族を代表する者が長老となり、長老会議という合議制の集会で国の方針などを決めるらしい。裁判的な判断も長老衆が行う。今、この場に集まっている亜人達が、どうやら当代の長老達らしい。だが、口伝に対する認識には差があるようだ。
アルフレリックは、口伝を含む掟を重要視するタイプのようだが、他の長老達は少し違うのだろう。アルフレリックは森人族であり、亜人族の中でも特に長命種だ。二百年くらいが平均寿命だったとハジメは記憶している。だとすると、眼前の長老達とアルフレリックでは年齢が大分異なり、その分、価値観にも差があるのかもしれない。ちなみに、亜人族の平均寿命は百年くらいだ。
そんなわけで、アルフレリック以外の長老衆は、この場に人間族や罪人がいることに我慢ならないようだ。
「……ならば、今、この場で試してやろう!」
「浩介さん!」
いきり立った熊の亜人が突如、俺に向かって突進した。あまりに突然のことで周囲は反応できていない。
アルフレリックも、まさかいきなり襲いかかるとは思っていなかったのか、驚愕に目を見開いている。
一瞬で間合いを詰めた男は、身長二メートル半はある脂肪と筋肉の塊の様な豪腕が、俺に振り下ろされる。
このまま何もしないでいれば俺に恵まれた体格から繰り出される拳が直撃するだろう。
――最も、まともに受けてやるつもりなどないがな
パァン!
「な……ッ!?」
拳が当たる寸前、俺はパリィを繰り出した。熊の亜人は体勢を崩し、無防備な胴体を晒した。
「……言い忘れていたが、その人間は俺の数倍は強い……そしてそれにお前たちは牙を向いた訳だ。この意味が分かるな?」
「「「!?」」」
ブライブの口から飛び出した一言は亜人族に衝撃をもたらすのには十分すぎた。まさか亜人族の中でもトップクラスに強いブライブの数倍強い人間がいるとは思いもしなかっただろう。彼らの表情は驚きに満ちていた。
「――ッならば!」
そして体勢を立て直した熊の亜人が今度は俺を掴みにかかった。
「良い判断だ、合理的だな」
「うぉおおおお!!」
チリン
「だが無意味だ」
「グッ!? な、なんだお前は!?」
『グルルルルルルル……!』
熊の亜人の喉元に刃を押し当てうなり声をあげる四足歩行の騎士鎧を着た霊体……『猟犬騎士フロー』がうなり声と共に鋭いかぎ爪を見せつけ熊の亜人諸共他の亜人族を威圧した。
そしてフローが今にも飛び掛かりそうな勢いだったためフローを制止させる。目的はあくまで事の沈静化だからな
「待て。フロー」
『グルル』
……当初はマジで手が付けられない狂犬ぶりを発揮していたが、王になってからは俺を主と認めたのかある程度いうことを聞くようになった。
「し……信じられん……ブライヴ殿より強いだと……!?」
「なら、ここで俺が褪せ人と戦って、ただの肉塊になってやろうか?」
「止めろブライヴ、流石に俺も
その後アルフレリックが何とか執り成し、話を続けられるようになったので俺の意思を伝えることにした。
「でだ、俺たちは一先ず大樹の下に行きたいんだ。別にここで俺を殺しにきても構わないが、重要なのは大樹の下にたどり着くことだ。だが、忘れるな。別に俺はどうだっていいが、邪魔立てをするなら……」
「……時点で?」
俺は
「ここら一帯を全て更地にする。無論皆殺しだ。男も、女も、老人も、子供も、赤子も全て残らず皆殺しだ」
「「「!?」」」
『グルルルルル……!』
そう言い放つと背後に控えていたフローが同調するかのようにうなり声をあげた。
「――とはいえだ。俺もこんな手荒な真似はしたくないし、そもそもこれは本当の最終手段だがな」
「……ブライヴ殿、あの人間の言うことは……」
「すべて事実だ。褪せ人の言うことに嘘偽りはない。それに言っただろう、俺が立ち向かったところでいとも容易く殺されるだけだ」
亜人族の間に緊張が走っているのが目に見えた。
しかしそこに変な意地を見せたのか虎人族のゼルが口を挟んだ。
「だ、だがお前が幾ら言おうともハウリア族は罪人。フェアベルゲンの掟に基づいて裁きを与える。何があって同道していたのか知らんが、ここでお別れだ。忌まわしき魔物の性質を持つ子とそれを匿った罪。フェアベルゲンを危険に晒したも同然なのだ。既に長老会議で処刑処分が下っている!」
ゼルの言葉に、流石のシアも泣きそうな表情で震え、カム達は一様に諦めたような表情をしている。この期に及んで、誰もシアを責めないのだから情の深さは折紙付きだ。
「長老様方! どうか、どうか一族だけはご寛恕を! どうか!」
「シア! 止めなさい! 皆、覚悟は出来ている。お前には何の落ち度もないのだ。そんな家族を見捨ててまで生きたいとは思わない。ハウリア族の皆で何度も何度も話し合って決めたことなのだ。お前が気に病む必要はない」
「でも、父様!」
……はぁ、どいつもこいつも……
そんなに死にたいのか
「貴様らは所詮獣に過ぎなかったか」
「な、なんだお前! やはり敵だったnヒィッ!!」
「待て! 褪せ人!」
「浩介!」
「浩介さん!?」
ブライブやユエ、シアが声を掛けるが正直ここで痛い目に合わせておくのが得策と考えている俺には響かなかった。
俺は最大級の殺気と共に屍山血河を勢いよく抜刀し、刃先を突きつけた。
「ここで死n「お待ちを! わが王!!」」
そういって俺たちの間に割り込んできたのは、鼠のような亜人、そして狭間の地出身の小柄な亜人『ボック』だった。
「……ボックか。お前もここにいたとはな。会えてうれしいぞ」
「い、いえ……此方こそわが王がここにいらっしゃるとは……そ、それと、どうか彼らの粗相をお許しください!」
「なぜだ?」
「え……えっと、その……か、彼らは、これまで帝国に酷いことをされてきたことで、人間を信じられないだけなのです……!」
「……」
ボックの話を聞いて少し頭を冷やし、刀を収め殺気を消した。瞬間部屋の空気が少しだけ緩和された。
「……流石に感情に流され過ぎたな。すまなかった」
「い……いえ、こっちこそ……だが、どうする……ハウリア族は……」
「ならば、彼の奴隷ということにでもしておこう。フェアベルゲンの掟では、樹海の外に出て帰ってこなかった者、奴隷として捕まったことが確定した者は、死んだものとして扱う。樹海の深い霧の中なら我らにも勝機はあるが、外では魔法を扱う者に勝機はほぼない。故に、無闇に後を追って被害が拡大せぬように死亡と見なして後追いを禁じているのだ。……既に死亡と見なしたものを処刑はできまい」
「アルフレリック! それでは!」
完全に屁理屈である。当然、他の長老衆がギョッとした表情を向ける。ゼルに到っては思わず身を乗り出して抗議の声を上げた。
「ゼル。わかっているだろう。この男が引かないことも、その力の大きさも。ハウリア族を処刑すれば、確実に敵対することになる。その場合、どれだけの犠牲が出るか……長老の一人として、そのような危険は断じて犯せん」
「しかし、それでは示しがつかん! 力に屈して、化物の子やそれに与するものを野放しにしたと噂が広まれば、長老会議の威信は地に落ちるぞ!」
「だが……」
「……そもそもなんだが、ここを滅ぼせる俺とユエがいる時点で今更なのでは……」
「それでも危険だと言うなら、俺がこいつらの旅に監視と言う形でついて行くぞ」
ブライヴの後押しもあってか長老会議は進んだ。そしてアルフレリックが疲れたような感じで
「ハウリア族は忌み子シア・ハウリアを筆頭に、同じく忌み子である遠藤浩介の身内と見なす。そして、資格者遠藤浩介に対しては、敵対はしないが、フェアベルゲンや周辺の集落への立ち入りを禁ずる。以降、遠藤浩介の一族に手を出した場合は全て自己責任とする……以上だ。何かあるか?」
「特にないが……いや、ブライヴとボックには用がある」
「なんでしょう?」
「そろそろ【円卓】に向かおうと思ってな」
「――ッ! そうか!」
ブライヴとボックは驚愕した表情を見せた。そろそろ円卓に行って彼らと再会を果たしたかったのもあるし、いい加減ラニ様からクラスメイトの情報も欲しかったのもある。……皆無事かなぁ……
そうして俺はハウリア族の自由を勝ち取った。ここだけ見ると逆転裁判か何かだな……
(……やれやれ、久しぶりに感情的になっちまったな……人間に転生したことで肉体と精神年齢の乖離が起き始めているな……いや、今更か)
この後俺は自分の言動を反省した後、ハウリア族から心底感謝された
◆◆◆
――シアside
元々、〝未来視〟で浩介さん達が守ってくれる未来は見えていた。
しかし、それで見える未来は絶対ではない。自分の選択次第で、いくらでも変わるものなのだ。私は浩介さんに甘えつつも突然手の平を返されないかビクビクしていた。
でもそれは杞憂だった。
浩介さんは私のみならず一族の皆の自由を勝ち取ってくれた。
……まさか伴侶が既にいるなんて未来は予測できなかったけど……
フェアベルゲンで浩介さんに仕えていたであろう二人の亜人と出会ったことは衝撃でした。鼠の亜人……ボックさんは再会の場が緊張に包まれてはいたものの心の底から慕っているように見えました。
そしてあの半狼の亜人ブライヴさん。
確かに亜人の友がいると聞いていたのですが、軽口を叩きながら話すその姿は、正に友と言った感じでした。
正直あのブチ切れた浩介さんは、怖かったですが、ハウリア族の為に怒ってくれていたことは伝わってきて、とても嬉しかった……
だからあの未来は多分見間違いだったのでしょう!
――浩介さんが
◆◆◆
「ふふふ……さて、ヒヤマ。君は何度殺しても蘇ってくる不死身の化け物にはどう対処すればよいでしょうか?」
トータスの元【神域】にてシャブリリがヒヤマこと檜山大介に質問を投げかけていた。それに対してヒヤマは
「……どうすればって……そいつに心があるなら心を壊す……とか?」
「正解です!」
乾いた拍手が空間に響き渡る。シャブリリは上機嫌な様子で話し始めた
「あの褪せ人は、確かに無敵です。それこそ何度死んでも蘇ってくるのですから」
しかし。と付け加える
「今の褪せ人は
「で……何が言いたい?」
ヒヤマが狂い火に侵食されたクレイモアを片手に答えを待った。
「まず大前提として……あの褪せ人は
「……というと」
シャブリリは声高らかに発言した
「あの褪せ人の心を壊し、我々の王に、狂い火の王にさせるのです!」
「……あいつの心を壊せるだけの材料があるとでも?」
「くくく。見つけてしまったのですよ……彼の心をへし折るほどのモノがですねぇ!!」
そういうとシャブリリは懐から一本の無垢金の針を取り出した。不思議なことに狂い火で満たされた空間だが、その針を中心に狂い火が避けていくのだ。
「狂い火が……ッ!?」
「これは……【ミケラの針】と言いましてね……これを見つけた時何故か、あの褪せ人の気配を感じ取ったのですよ……恐らくは彼がこの針を完成させるだけさせておいて放置しておいた針の」
「何……!?」
「これこそが、この事実こそが彼を追い詰める切り札になるのです!」
「そのミケラってのが、あの褪せ人だとでもいうのか!?」
ヒヤマがシャブリリに問い詰めるとシャブリリは抑揚のない声で
「いいえ? 全く関係しておりませんとも」
「は? それじゃあ、何故それが切り札に!?」
「まず……我々の勝利条件は
「疑念……?」
「えぇ、彼が心無い存在ならばこの策は通じませんでした……
「ほう……」
シャブリリは針を仕舞い、話を続けた。
「人間と言うのは……一度抱いた疑念というのをなかなか振り払えぬものなのです。ましてやそれが自分の根幹にかかわってくるとなると尚更です」
「で、どういう大嘘をつくんだ?」
「……話は変わりますが、この針の下になった存在、【ミケラ】は最も恐ろしき神人でした……何せ、〝愛することを強いることが出来る〟のですから……」
「――ッ!? なんだそれは……!」
ヒヤマがミケラのその恐ろしすぎる能力に体を震わせた。
そう、どんなに嫌いな相手でも、どんなに憎い相手でも愛することを強いらせることが出来るということは、洗脳よりも質が悪いそれにヒヤマは冷や汗を流す。そして気づくこのシャブリリの悪魔のような企みを……ただの詭弁が致命的な一撃になりうる恐ろしい策を
「……まさか!?」
「えぇ。そうです……褪せ人にこの針を見せびらかし、こう言うのです……」
――お前はミケラの生まれ変わりだ。お前が愛されるのはその力の恩恵に過ぎない。お前の人生は全て無意味なもの、ただのお人形遊びに過ぎない
とね?
シャブリリは悪魔のような笑みから繰り出された悍ましい狂笑が空間を響かせた。
狂い火の勝利条件:褪せ人の心を折る
今のヒヤマの防具は焼けただれた鎧と兜を纏い、右手に狂い火に冒されたクレイモアを持っています
ミケラの針を見せる→褪せ人それがミケラの針と気付く→そこでミケラとの関連性(大嘘)をぶちまける→褪せ人信じ込んでしまう
過剰なまでの愛を向けられてた奴が、それらを含めた全てが自分の力ではなく、他者から与えられた力に過ぎなかったと思い込んだ時……果たして正気でいられるでしょうかねぇ……
次回はシリアルになります
オリジナル侵入者(出るのはだいぶ後又は予定)を出しても良いですか?
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良いですよ
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うーん
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ここにラニ様の「神殿」を建てよう