深淵卿……?いいえエルデの王です   作:gnovel

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閲覧ありがとうございます!

リアルが少し忙しくなってきたので投稿頻度が落ちるかもしれません……申し訳ございません……

合間を縫って執筆しておりますのでどうか気長にお待ちください

それではどうぞ


シリアルと義手

「今から君たちには殺し合いを始めてもらいます」

「「「?????」」」

「褪せ人、せめて過程とそれに至った経緯を説明しろ」

「あっ、ごめん」

 

現在のハウリア族は俺の庇護下にあることにはなっているが、俺がいない間に血の気が多い亜人族や魔物が襲ってきたらひとたまりも無い為、訓練をすることにした。という経緯を伝えた。

 

「さ、最初からそう言ってくださいよぉ! いきなり殺し合いとか言われてもビックリするじゃないですか!」

「殺し合いというのはあながち間違いではないんだけどね」

「え」

「……おいまさか()()を……」

「ま、それはさておいて……ハウリア族の皆はこのままで良いのか? このままただただ蹂躙されるだけの弱者のままで、せっかく助かったその命を散らされるだけの存在のまま終わることを良しとするか?」

 

俺がそういうと、多くのハウリア族はうつむいた。そしてハウリア族の中から声が上がる

 

「そんなものいいわけがない」

 

その言葉に触発されたようにハウリア族が顔を上げ始める。シアは既に決然とした表情だ。

 

「そうだ。それでいい。ただただ蹂躙されるような命で終わっていい筈がない。ならば戦うのみ」

「……ですが、私達は兎人族です。虎人族や熊人族のような強靭な肉体も翼人族や土人族のように特殊な技能も持っていません……とても、そのような……」

 

兎人族は弱いという常識が俺の言葉に否定的な気持ちを生む。自分達は弱い、戦うことなどできない。どんなに足掻いても自分たちを助けた俺のように強くなれない、と。

 

「……こう言ってはなんですが、浩介殿のように最初から強かったわけじゃあ……」

「いや俺も最初はクソザコだったぞ? それこそ裸にこん棒だけ持たされてのスタートだったしな」

「え」「え?」

 

シアとユエが固まったかと思うと、やがて顔をにやけさせ、頬を赤らめさせた。……何で?

 

「……そう言えばラニが半裸の褪せ人に遭遇したとか言ってたな……あれはお前の事だったのか」

「え、俺そんな風に伝わってたの?」

「「は?」」

「……すまん失言だった」

「さてはブライヴ俺に恨みでもあるな?」

 

「「話は後で聞こうか?」」

「ま、ま、まぁ、それは後で、取り敢えず今はハウリア族を鍛える旨を話そうと思うんだけど、それまで勘弁してくれませんかねぇ!?」

 

 

この後《言いくるめ(後回し)》に成功して何とかやり過ごすことが出来ました。

 

 

◆◆◆

 

 

あれからハウリア族に()()()()()()()を伝授したところで、俺はブライヴとボックを呼び出した。

 

「さて、一先ずブライヴとボックは円卓に向かうか」

「そうだな」

「承知致しました。わが王」

 

俺はフェアベルゲンの近くにある祝福に触れ、円卓……ひいてはそこにいるであろうラニ様の気配を辿った。

 

「……ここか。良し、二人とも捕まって目を瞑ってくれ」

 

凡その座標を掴んだ俺はそういって二人に俺の身体に触れさせ、目を瞑らせた。そして俺はラニ様のいる場所に向けて入り込むようなイメージで、円卓に向かって行った。

 

俺たちの身体を祝福の光が包み込むとたちまち視界が真っ暗になり、やがて……大祝福がおかれている円卓が視界に映った。

 

「着いたぞ、目を開けてもいいよ」

「……ここが、円卓……初めてだなここに来るのは…………ここにラニがいるのか……」

「これは……何とも……」

 

ブライヴとボックは初めて訪れる円卓に興味津々の様子で辺りを見渡していた。

 

すると円卓の脇の扉――元々は二本指がいた部屋からゆっくりとラニ様が出てきた。

 

「……ッ! ラニ!」

「おぉ……ブライヴか、久しいな。息災で何よりだ」

 

ブライヴはラニ様を見つけると、すぐさまラニ様の傍に行き跪いた。心なしかラニ様の表情や声は穏やかなように思えた。

 

「……最後のことは、悔やんでも悔やみきれん……正直俺はどの面を下げてここに来れば分からなかった……!」

「ブライヴ。お前が気にする必要はない。むしろよくあそこまで私に仕えてくれた。二本指の支配下にあったお前が狂っても尚、最後の最後まで私のいた塔にいたこと我が王から聞いている。――良くぞ最後まで忠義を尽くした」

「あ……あぁ……!」

 

ブライヴが感極まって頭を上げた。

 

「そして……どうする? 再び私ひいては私達に仕えるか? 今のお前は自由だ。どちらを選んでも構わん」

「……既に決まっている。俺をもう一度仕えさせてくれ」

「良いだろう。では、今一度忠義を尽くすが良い……」

 

ブライヴの決意の籠った言葉を聞いてラニ様は微笑みながらブライヴを認めた。イイハナシダナ-

 

「でだ、我が王」

「はい?」

「少し、この先に行こうか」

 

そう言ってラニ様が指さしたのは、戦闘禁止区域から外れる場所に通じる廊下だった。

 

「え……? ラニ様……え……?」

「話をしようか」

「え」

「良いな?」

「……ハイ」

 

 

 

 

ギィヤァアアアアアア

 

「なんだ? やけに聞きおぼえのある悲鳴だな……」

「ヒューグ様! この声はあの御方ですよ!」

「ほう、やけにつんざくこの悲鳴はあ奴か。まぁいい、儂は武器を打つだけだ」

 

 

◆◆◆

 

 

「わかったか? 我が王。確かに我が王は、狭間の地でも変な輩との縁を手あたり次第結んでた……それはまだいい。だが、人間に転生してから少し羽目を外し過ぎではないか?」

「(止まるんじゃねぇぞポーズで串刺しにされている褪せ人)」

「……ラニ、褪せ人は串刺しになっているから答えられてないぞ……?」

「む、仕方ない。祝福で回復させるか」

 

 

「ぷはぁ!?」

「お目覚めか我が王」

「ハッ!? 俺は一体何を……!?」

「……思い出さない方が吉だな」

 

俺は先の光景を思い出そうとするがなぜか本能が警鐘を鳴らしており、思い出すのは良くないことを悟ったため、振り返らないことにした。

 

「今ので記憶が吹き飛んだか……まぁいい、我が王に悪い知らせと悪い知らせがある。どっちを先に聞きたい?」

「どっちも悪い知らせなんですけど!?」

 

 

絶対碌なことじゃねぇと思いつつ、一先ず一つ目の悪い知らせを聞くことにした。

 

「まず、『モーグウィン』の連中が動き始めた」

「遂にか……」

「そしてこれに付随して更に悪い知らせがある」

「……何があったんです?」

 

 

「『翁』があの小娘共の下に現れた」

 

俺はその名を聞いて絶句した。

 

『翁』……俺の使っている屍山血河の本来の所有者である老人を象った面を被った異国の地の侍であり、一度は共闘したこともある奴だった。

しかしその本性は血狂いそのものであり、奴はモーグウィンの傘下に下り、遂には俺の前に立ちふさがってきた。

 

「奴は手練れの剣士……はじめ達は大丈夫なのか!?」

 

ラニ様が言いよどむことに俺は最悪の未来を想像してしまった。そんな……まさか……

 

「……幸いにも死者はいなかったが、小娘の内、はじめの左腕と雫の右腕が切り落とされた」

「なんだと……ッ!?」

「……済まぬ。私も奴を相手取ろうとしたが、奴が連れてきた無数の白面に結界のような物を張られていたその間に翁は小娘たちの腕を切り落としていた……」

「……マジかよ」

(嘘だろ……? まさかここであいつらが介入してきただと?)

 

俺は目の前が崩れ落ちる感覚に襲われて、近くの椅子に腰を落とし、頭を抱えた。

 

そしてはじめ達の現状をラニ様に聞いた。

 

「だが、心配は要らぬ。あの小娘共は血は幾らか失いはしたものの一命はとりとめた」

「それは良かった……! だが……腕、か…………義手が必要か」

 

ふと俺は思い出した。

 

オルクス大迷宮で拾ったままにしていたあの義手の事を

 

「……ラニ様、ちょっと渡してもらいたい物があるんですが……良いですか?」

「あの二人の小娘にだな? 何を渡せば良い?」

「それなんですけど……ちょっと待っててもらっていいですか? 試したいことがあって……」

 

そう言って俺は彼がいるであろう部屋に向かった。

 

 

カーン カーン

 

槌が武器を打ち付ける鍛冶特有の音に懐かしさを覚えながら俺はその奥にいるであろう人物に挨拶をしにいった。

 

すると全身にフジツボのような何かと棘が生えた老人……鍛冶師 ヒューグがいつものように鍛冶仕事をしていた。

 

「やはりお前さんか」

「ヒューグ爺さん。お久しぶりです」

「あぁ! 貴方様!」

「ローデリカ!」

 

ヒューグの向かいに赤い頭巾を羽織った女性……調霊師 ローデリカがヒューグに続く形で俺に言葉を掛けてきた。

 

「二人とも大変お久しぶりです。ヒューグ爺、早速ですがやってもらい事がありまして……」

「ふん、鍛冶仕事か。ならさっさと出せ」

「こちらなんですけど……」

 

そう言って俺はオルクス大迷宮で拾った義手と……ミリセントの義手を取り出した。

 

「お前さん……これは……義手か」

「これを調整してもらえるか? 俺じゃなくて少女でも使えるように」

「……はぁ、久しぶりの鍛冶仕事かと思ったらそういうことか……まぁいい。ほらさっさと寄越せ調整ついでに強化してやる」

「マジか! ありがとうヒューグ爺!」

「調子の良い奴め……ホラ、鍛石を寄越せ」

 

俺はありったけの鍛石を出して鍛えてもらった。

 

暫くして最大強化し終わった二つの義手が台に並べられた。

 

「ほれ、こっちの銀の義手はお前さんの要望通りのサイズに調整して取り付けられていた武器もしっかり固定した。これでいざって時にすっぽ抜けることもない。そしてこっちの金色の義手も要望通りに調整して、刃を取り付けれるようにしたぞ」

「おぉ……すっげぇ……!」

「とはいえ、慣れるにはやはり時間が必要じゃが、時を見計らって調整しにこい」

「綺麗な義手ですね……」

 

ローデリカもその義手の出来栄えに見惚れていた。

 

「ふん、武器じゃなかったがいい仕事をしたぞ。今度はもっとマシな武器を持ってくるんだな」

「ありがとう! よし早速……ラニ様ー!」

 

タタタ

 

 

「……相変わらずせわしない奴じゃな」

「でも、とても人間らしいというか、生き生きとしていましたね」

「……果たしてそれが良いことだと言えるかの……」

「ヒューグ様?」

「……忘れろ。ただの老人の世迷言にすぎん」

 

 

◆◆◆

 

 

三人称side

 

 

「それで、それらを渡せば良いのだな?」

「はい、そうです……あと心配を掛けさせたこととか……それと……ラニ様?」

 

するとラニが褪せ人の肩に触れたかと思うと褪せ人は突然どこかに飛ばされた。

 

「おっと手が滑って我が王を転送させてしまった」

「ラニ!?」

「なに、少し小娘共が哀れに思えてきたのでな。あぁ、大丈夫だ事が済み次第すぐに回収しに行くし、そもそも教会の連中に感知されぬように魔術を掛けてたさ」

「……そうか」

 

ブライヴは褪せ人について考えることを放棄した。考えれば考えるほど深淵に近づいている感覚がしたからだ。

 

 

「こ……ここh「浩……介?」はじめ……?」

 

はじめの目の前に突然現れた褪せ人こと浩介。はじめは目を何度もぬぐい、目の前にいる浩介が自分の幻想でないことを知ると、泣き付いた。

 

「うわぁああああああん!! 浩介、浩介……!! 本物だぁ……本物の浩介だぁ!!」

「……ごめん今まで会えなくて、あとその腕も……」

「グスッ……僕……左腕を失って……浩介からの指輪を付けれないって思ったら……絶望しちゃって……何度も自殺を考えそうになって、皆に迷惑を……!」

「ごめん……ごめん……」

 

 

暫くの間泣きはらして幾分か落ち着いた頃を見計らって、浩介は訳有ってこの後すぐ戻らなきゃいけないことと本来の目的である銀の義手を取り出した。

 

「これは……義手……?」

「……まだここでは言えないけど、手に入れたんだ。かなりの高性能に仕上がったけど……付けてもらえるか……?」

「……! うん!」

 

そこからは切り落とされた部位に接続するようにしてはじめに義手を取り付けた。すると赤い線が走ったかと思うとやがて義手が動き始めた。

 

「どう……?」

「少し……違和感があるけど……何とか扱えるようにしてみるよ! ありがとう! 浩介!」

「それは良かった……さて、後は……「待って」……?」

 

はじめは義手を駆使して浩介を抱きしめると、浩介の腹部に顔を埋めた。

 

「……知らない雌の匂い……だけど浩介の匂いがあるからいいや……落ち着く……もう少しだけこうしていても良い……?」

「……少しならね」

 

そして最後に大きく息を吸い込むとはじめは

 

「……また会えるよね?」

「あぁ、まだ先になるけど」

「じゃあ、その時にこの知らない雌の匂いについて説明してもらうカラネ?」

「……ウッス」

 

ハイライトの消えた瞳に見送られるまま浩介は不可視の魔術を掛け、部屋を後にした。

 

 

「……はぁ♡ 浩介からのプレゼント……スラッとしているデザインで良い……これなら結婚指輪を嵌めれるかも♡……あれ? これなんだろ?」

 

ジャキッ(斧が飛び出る音)

 

「……うえっ!?」

 

 

 

そうとは露知らず浩介は雫の部屋の前に立っていた。

 

「さて、雫の部屋はここだったか……」

 

コンコン

 

『誰?』

「……俺だk「入って」ハイ」

 

コンマ一秒でドアを開けた雫に思わずビビった浩介だが、雫は浩介を自室に即座に引き込んだ。驚きの吸引力である。

 

「し、雫?」

「……どこに行ってたの」

「……ごめん、今は言えないんだ」

「とても寂しかった。生きていると言われても会えないのがずっと嫌だった。ずうぅーっと我慢してた……それで、私は腕を斬られちゃって……それで、」

「……もういいんだ、散々辛い目に合わせちゃって、そしてそこに居なくてごめん」

 

そうして雫を軽く抱きしめ、雫は残された左腕で抱き着き、そして泣いた

 

 

それから暫くして、雫も落ち着いたところで浩介は本題の義手を取り出した。

 

「金の……義手……?」

「つけてみて」

「……! もちろんよ!」

 

こちらも同様にしっかり付け終わると雫は手を開いて閉じてを繰り返して義手の具合を確かめていた。つけ心地に満足しているとふと義手に取り付けられたパーツに目が行った。

 

「……あれ? 浩介君……これは一体……?」

「それなんだけど……雫、俺の渡した刀はある?」

「えぇ……ここに……」

 

そう言ってベッドの上に置かれたマレニアの義手刀を取り出した雫は頭に疑問符を思い浮かべながら浩介に手渡した。

 

「ちょっと失礼するよ。義手の方の手を皿にしてくれる?」

「う……うん」

 

手のひらが上を向くと、浩介は義手刀を取り出し……謎の部位に刀を嵌めた。

 

ガシャン!

 

「こ……これは!?」

「おぉ……! 上手く嵌った!」

「刀が……義手に!?」

 

金の義手に取り付けられた謎の部位に刀がかっちりと収まり固定された。雫はその光景に目を奪われ、軽く素振りをして感覚を確かめていた。

 

「良い義手をありがとう! 浩介君!」

「今はこれしか出来ないけど……またいつか会おうね」

「そうね! ……その際見知らぬ雌の匂いについても教えてもらうカラネ?」

「ミ゛」

 




ヒューグ爺は普通の剣以外にも『縋りつく手骨』だったり『指輪指』とか強化できるから義手も行けるよねということで強化されました。

尚この後浩介から義手を貰ったことを自慢された光輝ちゃんが辺り一面をひっくり返したり香織が雷を滾らせていたりしたけど清水の胃が犠牲になって事なきを得ました。

清水「死 に そ う」

オリジナル侵入者(出るのはだいぶ後又は予定)を出しても良いですか?

  • 良いですよ
  • うーん
  • ここにラニ様の「神殿」を建てよう
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