少し間が空きましたが私は元気です。
このペースで行くとえげつない話数になりますが頑張りたいと思います。
それではどうぞ!
「町が見え始めてきたわけなんだが……何か見覚えのある城が遠くに見えるんだよなぁ……」
「……平原に不釣り合い。だけどとても豪華」
トレントに乗っていた俺たちの視界に周囲を堀と柵で囲まれた小規模な町が見え始めた
街道に面した場所に木製の門があり、その傍には小屋もある。おそらく門番の詰所だろうが……その町のはずれの方にやたら見覚えのある巨大な城――『ストームヴィル城』が見えた。
「えぇ……しかも何か大樹? みたいなのが生えてるし……何なんだこれ……」
「浩介さんあの城に見覚えがあるのですか?」
「うん……出来れば思い出したくない奴でね……」
脳裏にかつての思い出が過る。
狭間の地で初めて戦ったデミゴット……【接ぎ木のゴドリック】がいた城で俺は何度も死んだ。いい意味でも悪い意味でも思い出深い場所なのだが、それがトータスに生えていることが何よりの不安要素でしか無かった。
「で……その首輪はきつくない?」
「いいえ、絶対外しません(鋼の意思)」
「アッハイ」
シアの首元には黒い首輪が嵌められており、これは亜人族且つ愛玩用としての人気の高い兎人族が愛玩用として知れ渡っていることが原因だ。おまけに異性を魅了するそのスタイルや美貌はそれこそ格好の良い奴隷として狙われるのは目に見えている為、俺が首輪を嵌めたのだ。
それをシアがひどく気に入り絶対外さないとハイライトを消しながら言ってたので今に至るという訳だ。また、露出度が高かった服はボックに依頼して露出を抑えた服に仕立ててもらった。肌の露出は抑えながらも体の動きを阻害しない程度に調整してもらったので、本人も気に入っている様子だった。
「それで……浩介、あの城はどうする?」
「取り敢えず後回しで……今は一先ずあの町に行くとしよう」
それから門の近くに来た俺たちを待ち受けていたのは……
「お前達は……!」
「おぉ! 君か! 久しぶりじゃないか!」
「……」
門の前に番人のように佇んでいたのは、ユーノ、ディアロス兄弟だった。ディアロスの方は相も変わらずと言った様子で俺に手を振っていた。ユーノの方は無言ではあるもののどこか俺を歓迎しているようにも見えた。
「また浩介の知り合い?」
「む? そちらのお嬢さん方は?」
「あぁ、こっちはユエ「浩介の正妻」……旅の付き添い」
「そ……そうか。では、そちらの少女は?」
「こっちはシア「浩介さんの奴隷」……従者」
「……そ、そうか! うむ……そうか、英雄色を好むと言うしな。はっはっはっはっは……」
ディアロスが思考停止気味になりながらも無理やり納得した様子で俺たちを村の中に向かい入れた。ユーノもディアロスに続いた。
「あれ良いのか? こういうのって身分証明するもんじゃないのか?」
「君が連れてきた従者だろう? ならそれで大丈夫さ。それに……今はそんなことを気にしている余裕がないんだ……」
「……あのストームヴィル城のことか?」
「ッ! そうだ……」
俺がストームヴィル城の事を告げると、ディアロスの表情は陰りを見せ、やがて憤怒の表情に染まった。
「……あの城にいるのはあのゴドリックで間違いない……」
「この町の人たちは大丈夫なのか?」
「あぁ……それに関しては兄上のお蔭で今のところは犠牲者は出ていない……」
「そうなのか? ユーノ」
「……」
ユーノはコクッと頷き、鞭を見せた。どうやらほぼ一人でこの町を守り抜いていたらしい。しかしディアロスは心底悔しげな表情を見せ、
「だが……あの城に壺たちが……人質として連れ去られてしまったのだ!」
「壺たちが!?」
「あぁ……私も尽力したのだが……ッ! 奴らは人質と言わんばかりに壺たちを連れ去ってしまった! なんと情けないことか! 私の力不足によってまたしても彼らを守れなかったのだから!!」
ディアロスの拳は固く閉ざされ、震えていた。
「あ、あのー……壺って、あの置物の壺のことですか……?」
「あぁ……そうか、この世界には生きた壺がいないんだったな」
「生きた……壺……?」
シアとユエが頭に宇宙を背負い始めた所でギルドに案内された。そこは割と綺麗な場所で俺たちが入ってくるのをみると大勢の冒険者が視線を向けてきた。
そして恰幅の良い女主人がユーノに話しかけてきた。
「ユーノさん! ディアロスさん! いつもありがとうね! それで、彼らは一体……?」
「あぁ、彼らは兄上の客人だ」
「あら、これは失礼」
どうやら血の気がありそうな冒険者の間でも彼らは慕われているようだ。ユーノ達に尊敬の視線が向けられていることからそのことが伺い知れる。
一部ユエやシアに向けて好色の視線を向けていた奴らもいたが、ユーノの客人であることを知るや否やその視線も直ぐに消えた。
「それで、美少女たちを侍らせている男は何者だい? ただの冒険者じゃないね?」
「彼こそ……以前語った、唯一兄上を打ち倒した戦士だ」
「あ、あんたがかい!?」
ディアロスがそう言い放つと、ギルドのあちこちがざわざわとし始めた。
「おい……マジかよ……あの男が、ユーノさんを打ち倒した奴だって!?」
「おいおいおい……あんな極上の美少女と奴隷を侍らせているのがか……」
「クッソ……俺あの奴隷狙っていたのに……」
「お前どうすんだよ……俺たち全員を相手取って無傷だったあのユーノさんを倒せる奴だぞ……? 勝てる訳ねぇだろ……」
聞き取れた内容からはやはりユーノが一度冒険者全員を相手取って打ち勝ったことが伝わってくる。狭間の地でも散々苦戦させられた相手が賞賛されているのは何か嬉しいものだ。
「随分と騒がしくしてしまったな……場所を変え……兄上!?」
ディアロスが俺たちを別の場所に案内しようとした矢先、ユーノが俺に向けて鞭を構えた。――『ホスローの誓い』である。
「まさか、兄上!?」
「……褪せ人よ、俺と闘ってくれ」
兜の下から男の声で俺に挑戦を申し込んだユーノ・ホスロー。どうやら俺の存在を感知してからずっと戦いたかったらしい。俺に向けて凄まじい闘気が向けられ、周りの連中は静まり返っていた。
その様子を見たユエとシアが戦闘態勢に移行するが俺は手で二人を制してた。
「浩介さん! 私m「待て」で、でも!?」
「……ユーノ・ホスロー。お前はあの日の雪辱を果たしたい。そう言いたいのだな?」
「……そうだ。俺はあの日、お前に敗れた。そして今再び相まみえることが出来た……どうか俺ともう一度闘ってくれ」
「これが……人間の出せる闘気なのですか!?」
「こんな人間……浩介以外に見たことがない……!」
ユーノは隠す気がない己の闘志をむき出しにして俺に威圧を掛けた。俺の傍にいるシアは目を見開き緊張していた。ユエも尋常ではない力を持つユーノに警戒心を高めていた。
周りの連中も
「お、おい……まじかよ……」
「あのユーノさんが声を出す所なんて初めて見たぞ……?」
「それにこの闘気……俺たちに見せた時よりも格段に濃いぞ……!」
「……ディアロス。あの広場に案内を」
「あ、兄上。分かりました……では、褪せ人よ。健闘を祈る……」
そうして俺らはブルックの町にある大広場に案内されることになった。
「ほーん……あのユーノ・ホスローと旦那が戦うのか……これはビジネスチャンス!」
――どこかの禿げ頭が儲け話を見出したとか
◆◆◆
三人称side
広場に案内された褪せ人……遠藤浩介と血潮の騎士、ユーノ・ホスローが向かい合っていた。
その手にはそれぞれ同じ剣や鞭が握られていた。
浩介の手には毎度おなじみの『失地騎士の大剣』が、
対するユーノ・ホスローの手には『ホスローの花弁』が、
彼らは広場の中心で勝負の時を今か今かと待っていた。彼らの放つ威圧感と闘気に観客も固唾を飲んでいた。
そして浩介の(自称)正妻ユエは浩介の勝利を、そして浩介の(自称)奴隷シアも己の主の勝利を願っていた。
「――ではこれより、褪せ人……遠藤浩介と血潮の騎士、ユーノ・ホスローの決闘を開始する」
そう仕切るのはディアロス・ホスローであった。
「……始めぇ!」
先手を切ったのはユーノであった。
「――シッ!」
浩介よりも洗練された鞭裁きから繰り出される不可避の一撃が浩介に襲い掛かった。
浩介はその場から体をよじって鞭を回避した。しかし完全には回避しきれず、鎧に切り傷が着いた。
続けざまに両手から放たれる鞭が再び襲い掛かった。片方は浩介の胴体へ、もう片方は頭部へと不規則な軌道を描きながら襲い掛かった。
逃げ場がないと判断した浩介は両手に持った大剣をそれぞれの軌道の先に向けて振り払った。
「――ッ!」
だが鞭の刃先が浩介の両腕を切り裂き、腕からは鮮血が流れ出した。浩介の顔に僅かな苦痛の表情を見せた。
鞭を捌いた浩介はユーノを射程圏内に収めようと走り出した。――真っ直ぐにだ
「おい! あれじゃあ!」
観客の一人が言ったとおりにまだ円状に走っていれば鞭を回避することは出来たであろうが、浩介はそんなことお構いなしに真っ正面からユーノに突っ切った。
両腕を顔の前に組み、多少の被弾どころか被弾を気にしない無謀な戦い方だった。
しかしそれを見たユーノは僅かに動揺した。
ここで攻撃を加えれば確かにダメージは与えられる。しかし
「ふん!」
ユーノが鞭を振るうたびに浩介は大剣で鞭を叩き落としていく、胴体に向かう刃を時には跳びあがって回避し、両脇から同時に迫る音速の鞭はスライディングの要領で回避して行く。
そして一撃を与えようと跳びあがって両手を振り下ろすが、ユーノはその場から瞬時にステップで回避した――『猟犬のステップ』である。浩介の大剣が地面に亀裂を走らせる。地面が抉れ、土が飛び散ることからもその威力は計り知れないことが知れた。
そしてその隙を逃さず鞭が振るわれる。それに対し浩介は……
「シィッ!」
「――ッ!」
大剣をユーノに向けて投擲した。回転しながら飛来するその剣は浩介の怪力によって途轍もない回転力を生み出した。当たればただでは済まないそれに、ユーノは上半身を反らして回避した。しかし浩介の身体には鞭の傷がつけられ、左肩と首もとに切り傷を残した。
浩介は残り一本の剣を握りしめてユーノに向かって跳びあがり、上空から斬り下ろした。
ユーノは咄嗟に体を反らしたまま両手を地に着き、体を後方に回避し、更に鞭の連撃を浴びせた。
「『二連切り』!」
浩介の前方に×を描くように放たれた二連撃が縦横無尽に飛び掛かってくる鞭を切り払った。再び突き進む浩介。ユーノも一定の距離を保ちつつ鞭の連撃を浴びせてくる。
空を切る音と肉を切り裂く音が響く中、浩介はユーノに食らい付きにいった。その間も後退しながら鞭のの応酬を繰り出していく
しかしユーノは壁際にまで追い詰められそうになることを悟り、壁と離れようと『猟犬のステップ』を行使しようとした。
だが、その進路に向けて浩介は剣を勢いよく投擲した。剣はユーノの進路上に向かって一直線に突き進んでいった。
このまま猟犬のステップを行使すれば、剣が直撃することを直感したユーノは浩介に向き直る。今の浩介には武器は無い……筈だった。
「――フッ!」
何と浩介は最初に投擲した剣を地面から引き抜き、そのまま横一線に剣を振りかかったのだ。
あまりにも接近までのタイムラグが早すぎる。
そう思ったユーノだが、浩介の剣に埋め込まれた戦灰が自分と同じ『猟犬のステップ』であることを見抜き回避しようとする。
しかし唯一の逃げ場であった場所には剣が突き刺さって妨害しており、その反対側からは迫りくる浩介の剣があり、どう考えても絶望的な状況であった。
だからこそユーノも浩介と同じ選択肢を選んだ。
「――ッ!?」
そう、ユーノは猟犬のステップを行使した。
そのまま浩介の懐に入ったユーノは浩介の足に向かって足払いを掛けた。これにはたまらず浩介も仰向けに倒れ込む。そしてユーノは両手の鞭を天高くから勢いよく振り下ろした。
ぎょっとしながらも浩介は咄嗟に体を起こして鞭の一撃を回避した。
地面には鞭によって抉られた二つの痕が見受けられ、あれを喰らえば鎧自体を両断されていたことは自明の理であった。浩介の額に冷や汗が流れる。
(これだから……鞭は厄介なんだよな……パリィも出来ねぇし、ましてやあの猟犬ステップ……隙が無ぇ)
(これを回避するか……先程の剣の投擲と言い、身のこなしといい、相変わらず厄介だな)
奇しくも同じような感想を抱いた二人だったが、再び己の得物を構え向き直った。
「――行くぞ」
今度は浩介がユーノに向かって突っ切った。ユーノは胴体を両断する勢いで鞭を振るった。
だが、
「グゥオオオオオ!!」
「な……ッ!?」
浩介は勢いよくその場で回転しだしたかと思うと……鞭を体に勢いよく巻き付け始めた。
「――ッ!!」
身体に巻き付けられていく刃に鎧が傷つき、やがて肉が切り裂かれ激痛が走るが、それに伴ってユーノが焦りを見せた。
(鞭を体に巻き付け……俺の攻撃を封じただとッ!?)
ユーノの鞭はいずれも浩介の身体に巻き取られ、びくともしなかったのである。不味いと考えていると、今度は浩介が鞭の刃先を握りしめ――勢いよく引っ張った。
「――しまっ」
「オラァアアアア!!」
次の瞬間ユーノの兜目掛けて強烈な拳の一撃が加わり、ユーノはその場で縦方向にきりもみ回転をしながら勢いよく地面に叩きつけられた。
ユーノは一瞬意識を持ってかれ、直ぐに立て直そうとしたとき
ザン!
……顔の真横に剣を突き立てられた。
「……なるほど俺の負けか」
「そうだ……俺の勝ちだ」
ユーノは降参し、再び浩介が勝ったのである。
そして観客からは、惜しみない拍手と賞賛の声があがった。
「「「うぉおおおおお!!」」」
「やっぱユーノさんすげぇや!」
「あぁ! それにあいつも中々いかれた戦い方をしやがるぜ……こっちまで冷や冷やさせられたぜ……」
「あの剣捌き……あの身のこなし……すげぇな……どんな鍛錬を積んだらあぁなるんだよ!」
「よかった……浩介が勝った……! あぁ……濃厚な血の匂いがプンプンと……♡」
「よ、良かった……! 流石は浩介さんだぁ……!」
負けはしたもののユーノの眼にはまたリベンジの機会を待つ決意がみなぎっていた。
この後滅茶苦茶吸血されたり、風呂場に突入された。
マジでこのペースで行くとはじめちゃん達との再会(修羅場)が当分先になるため、字数を増やしつつテンポを速めていきたいと思います。
オリジナル侵入者(出るのはだいぶ後又は予定)を出しても良いですか?
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良いですよ
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うーん
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ここにラニ様の「神殿」を建てよう