それはリツカがティアマト達と共に、彼女達のホーム《てぃあまとほーむ》へと向かっていた時だった。
道中で《豊穣の女主人》の近くを通りががった際に、ヘスティアをおんぶしているベルを見かけたリツカは、途端に顔色が悪くなったのだ。
遠目からだが、どうやらヘスティアは気を失っているらしく、リツカはティアマト達に「ちょっと行ってくる」とだけ伝えて、ヘスティア達の元へ駆け出したのだった。
「ちょっとベル、一体何があったの!?」
「よかった、リツカも無事だったんだ……実はさ──」
すぐ様に駆け寄ったリツカに対し、ベルは安堵した表情を見せる。そしてその隣には、
ベルの話によると、シルを見つける前にたまたまヘスティアと出くわし、そのまま一緒にシルを探すという名目でデートをしていたらしい。ついでにリツカの事も探していたらしいが──私はついでなのかとリツカは少々ベルに冷ややかな視線を送っていたりもしていたが──結局見つからないまま、二人で出店を回っていたのだという。
そしてシルとリツカの捜索が難航していた時、ベル達もモンスターに遭遇したとの事。そのモンスターとは、銀色の体毛に包まれた巨大な人型のモンスター、つまりオリオンが意味不明な倒し方をしていたあのシルバーバックにベルも遭遇していたのである。
「──どうしたのリツカ?なんか顔色が悪いよ?」
「いや、うん。大丈夫。ゴリラよりもゴリラだったなって考えてただけだから。それでどうしたの?」
「え?ゴリラ?う、うん。それでね──」
リツカの挙動不審な態度に不思議そうな表情をするベルだったが、しかしそのまま話を続ける。
遭遇してしまったそのモンスター、シルバーバックは
それは当然の事だと、リツカは疑問を抱く事はなかった。確かに良いゴリラ──オリオンはシルバーバックを玩具の様に扱っていたが、しかし本来シルバーバックというモンスターは、Lv.1の駆け出し冒険者が一人で相手取る様なモンスターではないのだ。
出現する階層こそLv.1でも行っているパーティはあるが、しかしあくまでパーティ。つまりは複数人であり、Lv.2の冒険者も混成したパーティが普通なのである。確かにベルの成長は早い、
しかしその考えはすぐに壊される事となった。
なんとベルは、そのシルバーバックに一人で立ち向かったのだという。
「はぁ!?何考えてんの!?」
「ごめん……でも神様を守るためにはそうするしかなかったんだ」
厳しい表情で声を荒らげるリツカに、ベルは申し訳なさそうな顔をしながらも、しかし真剣な眼差しでリツカを見つめる。そんなベルのどこか異様な迫力の前に、リツカはそれ以上何も言えなくなってしまったのだった。
「なんかでけぇ声が聞こえたけど大丈夫か……ってなんだ、坊主じゃねぇか」
「オリオンさん!あ……えっと、改めてこの前はありがとうございます。後、ご迷惑をおかけしてすみませんでした!」
リツカのかなり大きめの声に心配したのか、人混みをかき分けながらリツカ達の元にやってきたオリオン。上半身が裸になっている彼の姿を見たベルは、背負っているヘスティアが起きない様にそっと頭を下げながら、感謝の言葉を口にするのだった。
「わははは。まぁ気にすんな、助け合いが大事ってやつよ。あん時は俺もちょいとばかし急いでて詳しく聞けなかったけどよ、そんで?ミアちゃんには雷落とされたの?」
「ミアちゃん……?あ、あぁ!店主のミアさんですね!雷というか、背中を押してもらいました。オリオンさんとシルさんのおかげです!」
「ほー。そりゃあ珍しい事もあるもんだ。随分と気に入られたんだな?ん?」
ニヤニヤとしながら肘で小突くオリオンに、ベルは頭を掻きながら照れた様子を見せる。ベルの隣にいたシルは、そんな二人を微笑みながら見ていた。
リツカはというと、いつの間にベルはオリオンと仲良くなったんだ?と疑問に思っていたが──しかし今はそれよりも、ベルがシルバーバックと戦った、という事にのみ関心が向いていたのだった。
「ベル、それで──」
「はいはい皆さん。とりあえず一旦落ち着きましょう。こんな所で話し込んでると邪魔になっちゃいます。ミアお母さんには私から説明しますから、とりあえずベルさん達を二階のお部屋に案内しますね」
オリオンとベルがいちゃいちゃし始め話が前に進まず、我慢の限界を迎えたリツカが口を開いたのだが、シルが自身に注意を向ける様にに手を叩き、リツカの言葉を遮った。
そうして一先ずシルの案内の元、リツカ達は《豊穣の女主人》の二階部分へと向かうのだった。
「──そっか。凄いな、ベルは」
《豊穣の女主人》の二階へと向かおうとしたリツカとベル。そこにティアマトも現れ、リツカが事情を説明した。
「そういう事だから、せっかく誘ってもらったのに申し訳ないけど、お茶はまた今度でもいいですか?」とリツカが申し訳なさそうに口にすると、ティアマトは微笑みながら「気にしないでいいの。私達も子供達も喜ぶから、いつでもおいで」と微笑むのだった。
そうしてティアマト一行と別れたリツカは、シルの案内の元、《豊穣の女主人》の二階にある、現在は空き部屋となっている場所に通され、眠っているヘスティアを起こさない様に、静かにベッドに移したのだった。
そしてリツカとベルは部屋から退出し、部屋の目の前──邪魔にならない様に通路の端に座り込んだ。本来であれば同性のリツカは部屋にいても問題なかったのだが、しかしリツカはベルから先程の話を聞きたかったのである。
落ち着いた所で改めてベルから聞かされたシルバーバックとの戦いの話は──衝撃的なものだった。
ベルはヘスティアを逃がすために無理やり別れ、彼女の逃走経路を確保するためにたった一人きりで、あのシルバーバックに挑んだのだという。あのオリオンよりも更に大きな体躯のモンスターを相手に。自身が肉塊となるだろうと
そして更に驚く事に、ベルはそんなシルバーバックを相手に立ち回れたのだという。
リツカはその話に驚きの色を隠せなかった。もし自分がベルの立場であったのならどうだったのか、その事を考えると全身に嫌な汗が滴る。
リツカもベルと同様に、ヘスティアを逃がそうとしただろう。それは間違いない。しかしあのモンスターを相手に、ベルの様に立ち回る事が自分に出来ただろうか?そしてリツカが導き出した答えは、否、であった。
自分ならばおそらく、あっけなくあの鎖の餌食となり、そして物言わぬ肉の塊となってしまっていただろう、とリツカはベルに悟られない様に、静かに落ち込んだのだった。
そうして立ち回れていたベルだったのだが、しかし先に武器──ベルが愛用していたナイフの限界がきてしまったのだという。刀身が粉々に砕けてしまったナイフを握り締め、いよいよ絶体絶命かとベルが喉を鳴らしたその時──出来るだけ遠くへと逃げている筈のヘスティアが、ベルに向かって声をあげていたのだ。
ベルはヘスティアの姿を見て、何故戻ってきたのかと絶望したと言っていたが、しかしリツカはヘスティアらしいな、と呆れながらも笑みを零した。
かの女神は、
そしてシルバーバックは、先程まで戦っていた相手が丸腰になったにも関わらず、その相手を無視してヘスティアに襲いかかる。
しかしすんでの所でベルがヘスティアを抱き抱えて回避し、そのまままた二人で逃亡したのだという。
その息もつかせぬ展開に、リツカは喉を鳴らしながら真剣な表情で聞き入っていた。
ベルも興奮してきたのか、話に熱が入る。その二人の様子はまるで、とある老夫と幼子の、いつかあった語らいの様であった。
そうして逃げ回っていたヘスティアとベルだったが、しかし途中で丁度いい隠れ場所を見つけた二人。ヘスティアがそこに隠れようとベルに提案し、それを良しとしたベルはヘスティアを連れ、その場所に身を潜めた。
そしてそこでヘスティアは、ベルにとある武器──とあるナイフを渡したのだという。
「──凄いね、綺麗……」
「えへへ。新しい僕の相棒なんだ」
ベルがリツカに手渡したもの、それは全身が漆黒に染まり、刃の部分のみが妖しく黒銀に光る美しい短刀──ナイフだった。
刃毀れ一つなく、そして曇りなきその刀身は、まるで闇夜を写す水面の様。その美しい輝きに、リツカは見惚れてしまうのだった。
「『
「ふふっ。らしいって感じする。こんなに愛が籠ったナイフを恥ずかしいなんて言ったら、ヘスティア泣いちゃうぞ?」
リツカはベルに向かって顔を綻ばせていたが、しかし内心では少し寂しくも感じていた。
ヘスティアはベルの事を大切に思っている。もちろんリツカの事もそう思っている──いや、思いたいが、しかしベルにはまた違う感情を向けているのだという事を、リツカは知っている。
ヘスティアはベルの事を異性として好んでいるのだ。もちろん
故に贈り物をするのは必然なのだろう、とリツカは理解していた。しかし、どこか一人置いてきぼりにされた様な感覚に陥り、気持ちが沈んでしまうのだった。
もちろんヘスティアはそういうつもりではないのだろう。だがリツカは──この少女もヘスティアの事を深く深く好んでいるのだ。故に、複雑な心境になるのは仕方のない事だろう。
しかしリツカはそういった感情を表に出す事はしなかった。その様な態度を取ってしまったら、せっかくベルが喜んでいるのに水を差す事となってしまう。そして、ヘスティアは悲しむだろうと思ったのだ。
故にリツカは、そんな感情をおくびにも出さず、ただただベルに笑顔を向けるのだった。
「──すごっ!それでそのナイフで倒したんだ」
「うん!凄いんだこのナイフ。なんていうか、まるで身体の一部みたいでさ」
鼻息荒く興奮するベルに、リツカは驚愕とも感嘆ともいえる表情を向ける。
ベルの話では女神の愛が込められた武器、『
しかし、新しい相棒を手に入れたベルは──ヘスティアからの激励も受け取り──再度シルバーバックに挑んだのだ。
だが武器を新しくしたからといって、自分自身が進化するわけではない。あくまで自身の実力ありきなのだ。故に苦戦は必須だったのだが──しかしその激闘の最中、シルバーバックが突然、まるで
その隙を見逃さなかったベルは、渾身の一刺しをシルバーバックの胸元へと食らわせ──かの巨大なモンスターは、紫紺の結晶へと変貌したとの事だった。
「……なんか、凄い遠くなっちゃったな」
「ねぇリツカ。やっぱり何かあったよね?」
視線を床へと移しながら、俯いたまま消え入る様に呟くリツカ。それは本当に微かなものであったため、ベルに届く事はなかった。
しかしその表情からリツカの異変を感じ取ったベルは、彼女に真剣な表情を向ける。しかしその優しさを向けられたリツカは、「ベルのばーか」と、力ない微笑みで返したのだった。
いつもと同じ様に見えるが、しかしどこか違和感を感じるリツカの様子に、やはり何かがあったのだと確信したベルが口を開こうとした、その時だった。
「リツカくぅん、ベルくぅん……」
ドアを挟んだ場所──リツカとベルにとって心から大切な女神が寝ている部屋から、どこか甘えた様な、そしてどこか安心してしまう声がし、二人は堰を切ったようにその声が聞こえてきた部屋のドアを開ける。
そこには少々疲れの色が表情に出ていたが、しかしリツカとベルの姿を見て安心した様に微笑む、ヘスティアの姿があったのだった。
「ヘスティア……よかった……」
「神様!よかった、目が覚めたんですね!」
「えへへ。心配かけてごめんよ、二人共」
上半身だけを起こすヘスティアの元に駆け寄り、そのまま両膝をついて優しく抱き締めるリツカ。ヘスティアもまた、優しく微笑みながら抱き締め返す。
ベルも同じ様に微笑みながら、そんな二人を見守っていた。
「あれ?ベルは何してんの?」
「そうだよベル君。ここは三人で抱き締め合う所だろ?」
「えっ!?いや僕はあの、その、なんていうか恥ずかしいというか、心は同じというか」
抱き締め合っていたリツカとヘスティアがベルに視線を送ると、ベルは相も変わらず顔を赤くしながらあたふたとしていた。そしてそんな彼に、リツカとヘスティアは呆れた様な溜息を小さく吐きながらも、しかしその表情はにこやかなものだった。日常が戻ってきたのだな、と再確認出来たのである。
「──そうだ!神様、このナイフ本当に凄かったです!なんていうか、生きてるって感じがするんですよ!」
「ふっふーん。そうだろそうだろ?ちょーっと頑張っちゃったからね!」
「……これさ、ヘファイストスって刻印があった様な気がしたんだけど、ヘスティアってばこれどうしたの?」
「え"っ」
盛り上がっていたヘスティアとベルだったが、リツカが思い出した様に口にした言葉で、先程までは喜びに満ちていた様子だったベルが凍りついた様に固まる。彼は目を見開いたまま、滝の様に汗が流れていた。
話は変わるが、リツカは聞いたり喋ったりする事に関しては全く問題がない。しかし、
なので、《ギルド》ではそういったもの達を対象にした読み書きの講習が行われている。
故にヘスティアやリツカの担当アドバイザーであるエイナ、そして最近ではベルにも教えてもらっている事でかなり読み書きが出来る様になり、その甲斐もあってか、たまたまその文字を読めたのである。
そしてその文字は間違いなく、「ヘファイストス」と書かれていたものだったのだ。
「ヘファっ、ヘファイストスって、あの《ヘファイストス・ファミリア》ですよね!?こっ、ここここのナイフって、もしかしないでも──」
「だっ、大丈夫だよベル君!何も心配は要らない!ボクがしっかりと話を付けてきたからね。それはボクからのプレゼントだ。だからボクが自分でどれだけかかっても返済するし、
「うぅっ。神様ぁ……」
身体を異様に震わせていたベルだったが、しかしその反応も仕方がない事だろう。《ヘファイストス・ファミリア》が造る武器といえば、世界最高と呼ばれる品質の武具。故に超高額なのは当然であり、ウン千万という値段など当たり前なのだ。
しかしヘスティアはそんなベルの心配を他所に、その大きな胸を張りながら大丈夫、と答えた。ベルはそんな女神に動揺しながらも感動していたのだが、リツカは「いやこれ本当に大丈夫なの?」と口には出さなかったものの、心の中で冷や汗が濁流の様に流れていたのだった。
「
「神様……はい。ありがとうございます!僕、頑張ります!」
「うん。ありがとう、ベル君」
そんな二人の様子を、少し寂しげな表情で見つめていたリツカ。そんな態度は出すまいとしていた彼女だったのだが、しかし二人への想いが強いからなのか、その感情がほんの少し漏れ出してしまっていた。
そしてリツカに視線を移したヘスティアは、何かを察した様に微笑んだ。
「リツカ君。君にも渡すものがあるんだ」
「へっ?」
そんな事になるとは露程も思わなかったのか、素っ頓狂な声をあげるリツカ。ヘスティアはそんな様子のリツカを笑うでもなく、ただただ微笑んでいたのだった。
「これを、君に」
「ちょっといいかい」と言ってリツカから離れたヘスティアが、自身の体に括りつけていた布からごそごそと取り出したのは──深淵なる闇の様な色を輝かせる、棒状のものだった。
長さはベルの『
「名を『
微笑みながらそのステッキ──『
リツカがゆっくりとそのステッキに触れると、まるで
「実はね、リツカ君のはどうしようかかなり迷ってさ……でもなんていうのかな、これが一番しっくりくるというか、これじゃなきゃダメだって感じたんだ。気に入ってくれたら、嬉しいな」
頬を掻きながら少々困った様に笑うヘスティアに、リツカはそのステッキを強く握り締めながら、再度ヘスティアを抱き締める。ヘスティアは突然抱き着かれた事に少々驚いていたが、しかし彼女の小さな泣き声を耳にし、優しくその頭を撫でた。
「うっ……ありが、どぉ、ヘズ、ディア……わだじ、わだし、置いてぎぼりにざれでると……」
「そんなわけないだろ。君はボクにとって初めての
「う"ぅっ……」
まるで赤子の様に泣いてしまうリツカ。ヘスティアはそんな彼女を、まるで赤子をあやす母の様に彼女を抱き締めながら頭を撫でていた。
ベルはそんなリツカの様子に、先程落ち込んでいたのはそういう事だったのかな、と答えを見出す。そしてよかったと微笑みながらリツカを見つめていたのだが、ヘスティアに小さく手招きされ、ベルも優しくリツカの背中を抱き締めたのだった。
「──えっと、お恥ずかしい所をお見せしました」
「そんな事ないよ!むしろボクはとっても嬉しかったとも」
「僕もそう思う。恥ずかしい事なんて何もないでしょ」
抱き合っていた三人は、リツカが泣き止み落ち着いた所で各々座り直していた。そしてリツカは照れ臭そうに顔を若干赤らめていたのだった。
ヘスティアはそんな彼女に嬉しそうな表情を向け、何故かベルも顔を赤くしながら、しかしその言葉は断言するものだった。
そうしてリツカも落ち着いた所で、談笑していた三人だったのだが──リツカが重大な事に気付く。気付いてしまった。
「──ねぇヘスティア。嬉し過ぎて忘れてたんだけど……これも《ヘファイストス・ファミリア》の、だよね……?」
「う"っ」
冷や汗を流しながら動揺しているリツカに対し、その量を遥かに上回る冷や汗を流しながら動揺するヘスティア。そして凄まじい勢いで目が泳ぎ始めたのだった。
「だ、大丈夫、大丈夫だよリツカ君。何も心配する事ないよ。ほら、ボクとヘファイストスは大神友だからさ!ちょっとね。ちょーっとね!ほら、色々融通がね!ちょっとね!」
嘘である。いや、ヘスティアとヘファイストスが無二の友であるという事は間違いないが、しかし決して大丈夫ではない。そして融通も──嘘、とまではいかないが、金額に関しては融通も何もない。お友達価格など存在しなかったのである。
「えっと、その、神様……その、どのぐらいしたんですか……?」
「へっ!?えっと、えっとね。それはアレだね。まぁその、ちょっとバイトを頑張っちゃえばなんとかなるぐらいだよ!だからホントに心配しなくて大丈夫さ!ははっ!」
大嘘である。いや、ヘスティアは不老たる神であるため、確かに
6億5千万ヴァリス。改めてもう一度。6億5千万ヴァリス。
『
ベルの『
そしてリツカの『
このリツカの『
故に本来ならば、値段が10倍以上してもおかしくなかったのだが──しかしこの七色に輝く石、《ヘファイストス・ファミリア》の団長ですら扱う事が出来なかった代物だった。それは主神であるヘファイストスにしか扱う事が出来ず、たまたま取得したのはいいものの、完全に倉庫の肥やしになってしまっていたのである。
そしてこの七色に輝く宝石の様なものを取得した本人である団長も、興味が失せていたのだという。
それ故に破格で──《ヘスティア・ファミリア》のお財布事情を考えれば致命的どころの騒ぎでは無いのだが、しかしその希少性から考えると格安で譲ってもらった、という事なのであった。
「──それにね。さっきも言ったけど、これはボクからのプレゼントなんだ。だから本当に気にしないでいいんだよ。力になれるなら、それだけでボクは嬉しいんだから」
「ヘスティア……うん、わかった。大切に使うね」
「僕も大事にします。本当にありがとうございます、神様」
女神とはこの様な存在なのか、と崇拝してしまう様な微笑みを放つヘスティアのその言葉、それは嘘偽りのない本心だった。
その言葉に思うところはあるが──しかしその好意を、そしてヘスティアの想いを無駄にしないために、二人は主神の愛が溢れんばかりに込められたステッキとナイフを握り締める。ステッキとナイフも、まるでヘスティアの言葉に呼応するかの様に輝きを放つのだった。
「そのステッキとナイフは
真剣な眼差しで力強く頷くリツカとベル。そんな二人の様子に、ヘスティアは満面の笑みで答える。
そして二人が握り締めているステッキとナイフも、二人に呼応するかの様に淡い輝きを放つのだった。
「あ!そうだそうだ、その武器はボクの
「それってつまり私もナイフが使えて、ベルもステッキが使えるって事?」
「そうそう。でもステッキに関しては完全に魔法特化だから、ベル君には……その内いつか、かな?」
「いいなぁ、魔法。僕も早く使いたいなぁ……」
そうして談笑をし始めるリツカ、ヘスティア、ベル。三人それぞれに笑顔が咲いていた。
もう日は既に落ち、下の酒場からは少しずつ喧騒も聞こえてくる。その声を聞いた三人は、いつまでも厄介になっているのは迷惑になるとして帰る準備をする。
こんなにもお世話になったのだし、今度は三人で食べに来ようと決め、リツカ達は部屋を後にするのだった。
作者です。
第十七話となりました。遂に新しい武器、ラブ・ステッキとラブ・ダガーを手に入れたリツカとベル。これから頑張っていただきたい。
ちなみにベルの対シルバーバック戦ですが、まぁ原作とほぼ変わりありません。ちょっとだけ違う所はありますが、しかしほぼ変わらないのでこんな感じとなりました。頑張ったね、ベル君。
そして例のステッキ。勘のいい方は「おいちょっとまてそいつは……」となってしまったかもしれませんね。違いますよ?これはラブ・ステッキ、もといヘスティア・ステッキです。どこぞの華麗なステッキとは関係ありません。関係ないですから(圧力)
五芒星?六芒星?知りませんよ、このステッキは八芒星ですから。全く何を言ってるのやら。やれやれ。
というわけで今回はこの辺りで。また次回にお会いしましょう!