今回は珍しく理事長からの呼び出しだ、また担当を増やせとか言うんでしょ……まあ今回ばかりは受けるが。
「どもっす」ガチャ
「「ノックをしたまえ(して下さい)」」
「あっ、生徒会室のノリでつい…」
今回は秋川理事長にたずなさん付きか、なんか凄いメンツだな この人ら二人ともかなり強いウマ娘だし、俺の訳ありの事も知ってるし、なんならルドルフにも会った事あるらしいからな。
まあそんな事はどうでも良くて、俺は要件を聞く事にした。
「んで、何の用ですか?」
「通達!チームを組んで担当を4人は持つように!」
「理事長っていっつもそうですよね!トレーナーのことなんだと思ってるんですか!」
「おや、トレーナーの分際で口答えをするおつもりで?」
「いつもの事でしょ?」
俺は誰に対しても当たり障りなく接するようにしている、だってめんどくさいし。
だからこうやって煽られても特に何も思わないし、逆に煽り返すぐらいには余裕がある。
それにこの二人は俺の事をよく知っている、だからこそ俺は彼女達に対して何かを言うことはない、むしろその方が都合が良い。
「それで?俺に担当を増やして欲しい理由は何ですかね?」
「うむ!実は君と契約を結びたい子達がみんな私達の所へ来てな、担当契約について説明を求めてきたのだ!」
「ああ、なるほど!略してア「やめて下さい」ごめんて」
さてはシービーこの事言いふらしたな、彼女自体下手にライバルを増やす事はしなさそうだが。
「またトレーナーが寿退社でもしたんです?」
「ああ、今月は特にな、今は生徒会にも調査を出している」
「また物騒な話を…」
俺と理事長達はお互いに顔を見合わせながらため息をつく。
「はっきり言って今回は原因不明なんだ、寿退社したトレーナーを問いただしてもよく分からないらしくて」
「なんだそりゃ……トレセンは謎の婚活会場じゃないんだぞ?」
「謎どころか婚活会場ですらないんですけどね…」
またルドルフに負担が……だがまあ仕方ない、そもそも俺と彼女が契約する前から色々あったみたいだし。
まあとりあえずそれは置いといて、今は目の前の問題だ。
俺は少し考えて、そして結論を出した。
「まあチーム結成の件はお受けします」
「おや、私はまたあの事を盾にまた断られると思っていたのだが……」
「ところで理事長は独身らしいですってね」
「ッ!?」ビクゥッ!!
「どうです?俺で妥協しません?」
「何故か心にグッと来ないのだが…」
「あら残念、じゃあやめよっとぶ!?」
俺がソファーから立ち上がるとたずなさんから蹴りを食らった、ケツに。
まあ理事長も必死すぎてちょっと面白いな。
「理事長を虐めないでください、でないと蹴りますよ?」
「ほおお……もう蹴ってますよね…んじゃ、乙っした」
ケツが4つに割れそうな刺激を楽しみながら退室する。
〜生徒会室にて〜
「なあルドルフ、ちょっと相談があってだな、およ、シービーもいたのか。」ガチャ
「やっほートレーナー!」
「どうしたトレーナー君、君が歌を歌わないとは珍しいね、よっぽど真面目な話なのだろう」
俺が入っていくと二人はこちらを見て反応してくれる。
この二人本当にいい奴らだよなぁ、最近シービーと仲良いみたいだけどまさか付き合ってたりしないよね? なんか不安になってくるんだけど。
「そこのシービー関連でな」
「ふむ、その話は聞いている、担当を増やすそうだな」
「担当を増やすどころか4人集めろって言われちまったけどな」
「ふむ、だとするとスカウトに出向く必要があるな」
「いいのか?」
「何がだい?」
「ほら、場合によってはルドルフのトレーニングをちまちま見れなくなっちゃうかもしれないんだぞ?」
「別にそんな事を気にする程でもないさ、それに、君は私の事など気にも止めていないのではないかい?」
え?なんでそんな事言うの? 俺ちゃんとルドルフの事見てるし、ルドルフも俺の事よく見ているじゃん。
俺が首を傾げているとシービーが揶揄ってくる。
「トレーナーってば鈍感〜」
「なんでだよ!いやまあ確かにそうかもしれんけど!そういう事じゃなくて!」
「ふふ、冗談だ、私もトレーナー君の事が好きだからね」
「あっ、うん、ありがと……」
なんだこれ、恥ずかしいな!何この雰囲気、俺がおかしいの?これが普通なのか?
「それで、トレーナー君に頼みたい事があるのだが」
「ああ、そうだったな、んで何をすれば?」
「ちょっとした進言でね、シービーと一緒にこの子もチームに入れてあげて欲しい」
この子?この部屋にはルドルフとシービーくらいしか居ないような……と思っているとルドルフの机の後ろからひょこっと顔が出てきた。
うわ可愛い、髪の流星がルドルフみたいで綺麗だ。
「トウカイテイオーだよー!よろしくね!」
「おう、俺はこの学園でシンボリルドルフのトレーナーをしている、これからよろしくな」
「へぇ、君が噂の!ボク、君に興味があったんだ!君みたいな強い人と走ってみたかったんだよ!ねえ、今度模擬レースしようよ!」
「はは、そんなに期待されても困るんだがな……」
俺とトウカイテイオーは握手をする。
しかし彼女は俺の手を握った瞬間、目を細めて何かを考える様な表情をした。
「ねえ、君ってさ……」
「どうかしたか?」
「……なんでもないよ、ただ……」
「ただ?」
「…………ううん、やっぱりいいや、それよりさ、早く模擬レースしようよ!」
「ああ、そうだな」
「……ふん、まあいいか、ボクは諦めないからね……」
「おい、何か言ったか?」
「何も言ってないよ、それよりもほら、早く行こうよ」
「はいはい」
俺は彼女の後を追って部屋を出る。
一体何を言いかけたんだろう、気になるな……。
〜数分後練習場にて〜
芝の練習場、1周2000mの大きなグラウンド、改めて思うが広すぎるだろ……これあと7箇所はあるんだぜ?
今回は計測が楽になるようにスタートとゴールを同じ所にする、つまりコースは2000m芝だ。
そして何処からその情報を聞いたのかウマ娘が20人位集まってきてた、どうやらたずなさんがシンボリルドルフが選抜レースを開催するらしいとリークしていたのだ。
「ほう、選抜レースか私も参加しようかな?」
「ん?君はシンボリシリウス?」
「シリウスシンボリだ!名前くらい覚えろ!」
「ごめんわざと!ちゃんと名前くらい覚えているよ?」
「なら何故間違えた!?」
「はっはっは、まあまあ落ち着け、で、君も参加するのか?」
「そうだな、私もちょうど君が欲しいと思っていたところだ」
「ふーん…」
俺は隣にいるシンボリルドルフをチラッと見る。
すると彼女はニコッと笑って話を始める。
「ルールは簡単だ、参加要件はなし、採用条件は私に勝つこと。なに、そんなに怖がることは無い、ハンデをやろう、3秒だ、スタートから3秒だけスタートを待ってやる、これくらいなら勝ち目はあるだろう?」
やりやがった、その条件はルドルフのスキルが発動しやすく、かつ相手のスキルが発動しにくい状況になっている。これは流石に不味いんじゃないのか? 俺は不安になりながらトウカイテイオーとシービーの方を見る。
すると彼女は自信満々といった様子で答えた 。
まあ確かにこの程度負けるのならばまさに世話はない。
そして24人フルゲート風のレースが開催される。
『あのシンボリルドルフのトレーナーって人、秋川理事長を口説いてたらしいよ』
呑気にスタート兼ゴール役をやろうとしていると野次ウマからコソコソと流れてくる。
「誰だよそんな根も葉もある噂流してくる奴…」
「……」
隣に居たルドルフが急に俺の方に振り向き、俺の手をぎゅっと握ってきた。
え?何事?と思っていると、俺の耳元で囁くように話しかけてきた。
その言葉は、俺にしか聞こえないようにしてあった 。
【君ってやつは】……と、彼女はそう言っていた 。
俺は埋められた。
今回の敗因:このレースは『トレーナーの首だけ杯』という伝説として語られることになる。