シンボリルドルフと壊れたトレーナー   作:宮秋

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ルドルフの定期修理

「響けファンファーレ!届けゴールっまっで!輝く未来を!きみーとーってあれ?」ガチャガチャ

 

 

生徒会室の扉が開かない、出払ってるのかな?確かルドルフは休みではなかったはず……と思いながらふと見上げると、ドアにはの看板が裏になってぶらさがっていた、それをひっくり返すとそれには『本日定休日』の文字が書いてあった。

 

 

「裏向きねぇ……」

 

 

生徒会に定休日なんてあったっけとは思うが問題はそこではない。実は裏向きにするのには理由がある、実は俺に対するヘルプのメッセージという事だ。俺は仕方なく生徒会室の合鍵を使って中に入る、なんで一トレーナーが生徒会室の鍵を持っているかって?そんなこと気にすんな!

 

 

「よっ!」ガチャ

 

「トレーナー君……」

 

 

生徒会室に入るとやはりルドルフがいた、だがすごく憔悴している、いつもの覇気がなく、耳がすごいヘナってる。やる気はあるが体力がないってとこか……

俺は生徒会室の鍵を閉め、ルドルフに問答をする。

 

 

「ロイヤルビタージュースにする?健康祈願のお守りにする?それとも……わ・た・し?」

 

「無論、トレーナー君で……」

 

 

もちろん俺としても購買アーティファクトでこき使うつもりは無い。

ルドルフも限界なのか俺がこんなふざけて言った冗談もさらっと流した。うんさすがルドルフ様。

 

 

「ほら、おいで」

 

「……」ギュッ

 

 

ルドルフはまるで捨てられた仔犬の様に弱々しく俺を抱きしめ、そして小さく肩を振るわせていた。どうやら泣きたいのを我慢していたようだ。

これはまずいなと思った俺はとりあえず落ち着くまでルドルフの頭を撫でることにした。

ちなみにこのルドルフの惨状だがただの過労である、一日あたりの労働時間はそれほど長くはないが、それはルドルフの素質に拠るものだ、だからと言って精神的疲労が軽くなるというものでもない、全くの逆だ、集中すれば集中するほど消耗するのだ。

 

 

「俺は正直生徒会長なんか辞めた方がいいんじゃないかとは思っている」

 

「……なぜだね?」ピク

 

「生徒会長になったのは強制だろう?正直時間の無駄だ、こんなものでお前が得たものはなんだ?」

 

「こんなものだなんて言わないでくれ……」ポロポロ

 

 

そう言ってルドルフはさらに強く抱き着いてくる、まぁこういうのは嫌いじゃないけど、このままだと色々マズい気がするので適当な話を展開する。

 

 

「例え話をしてやる、携帯の電池の話だ、使っては充電し使っては充電しの繰り返しとして使う物だが、やはり電池は劣化していく」

 

「つまり私は有限であり永遠ではないということかい?」

 

「実は電池の寿命は時間だけではなく使用回数にすら影響される、唯一電池を長持ちさせる方法は40%を維持することだ」

 

「やはり頑張るのをやめろと言うのかい?」

 

「ん別に?パソコンのCPUは人間の脳に位置するとも言われているが実は使い続けても劣化しないそうだ」

 

「??何が言いたいのか分からないぞ」

 

「俺にも分からん、ま、頑張れってこった」

 

 

俺は適当にルドルフの調子を崩す、やはり俺は口下手なようだ。これでも励ましているつもりだ。

 

 

「やっぱお前は生徒会長続けろ、やはりお前以外に居ない」

 

「さっきまで生徒会長を辞めた方がいいって言っていたではないか……」

 

「純粋な日本人には『押すなよ理論』が効くと思っていたのだが」

 

「ネタばらしが早すぎるよ……」

 

 

俺達はお互いを見つめあい笑い合った。やはりウマ娘との触れ合いは何事においても重要なことだと思う、これがなかったせいで担当達とコミュニケーションをとることができなかったからね……! ルドルフは涙をぬぐいながらこちらを向いて微笑んだ。

 

 

「まあ生徒会長を辞められると困る、そんな事をしたらお前に何が残る?」

 

「残るものか……全てを失うことになるだろう」

 

 

俺はルドルフが今更後悔し始めたのかと思い説教をした。

 

 

「馬鹿野郎!まだ胸と尻が残っているだろう!」

 

「真面目に考える事がいかに損であることかよく分かったよ……」

 

「こいつはまだ遊べる」

 

 

呆れていたルドルフがふと顔を赤く染めながらこちらを向いた。

 

 

「君はやっぱり、大きい方が好きなのか?」

 

「いやそういう訳じゃないが」

 

「じゃあどういう子が好みなんだい?」

 

「強いて言うなら金」

 

 

適当に答えたつもりだが、ルドルフは深く考え込み始める。

 

 

「確かに、お金があるだけで大体の物事を解決できてしまうかもしれないな……」

 

 

そして結論に至ったのかこちらを見た、顔が少し赤い。

 

 

「わ、私ではどうだろうか!?」

 

「年収一億からなら考えてやるっす!」

 

「では一考の余地はあるという事だな?」

 

「は?愛は金で買えないんだぞ?そんなたかが一億や二億ではどうにも……」

 

「では三億ならどうだ?」

 

「誠心誠意お仕えさせていただきます!」

 

 

即答してしまった、だが俺だって年頃の男である、仕方がないよね? 俺はふと思いつき質問をしてみた。

 

 

「冗談はこれくらいにして、逆にお前の好む容姿とか教えてくれないか?今後の参考のためにな」

 

「それは……私が君の顔が好きだと言ったら付き合ってくれるってことかな?」ニヤリ

 

 

ん?なんか墓穴を掘ってしまったような気がする。

 

 

「いやまぁ……うん、俺の顔が嫌って奴は少ないんじゃないでしょうか?」(震え声)

 

 

俺は焦っている、まさかここまで話が発展してしまうとは、このままだとまず間違いなくルドルフと恋人同士になることになってしまう……。ルドルフが本気かどうかわからないがもし本気で俺のことを狙っているとするのならばこの場を切り抜ける方法を何か考えるしかない、俺はルドルフが俺の事を嫌ってくれればいいとばかりにわざと不細工になるように努力をする、無茶振りなのは承知の上で頼む、俺にできることはこれしか思いつかないんだ!

 

 

「(´A`)」

 

「なぜ変顔をするんだい?」

 

「ルドルフ除け(´A`)」(※違います)

 

「ははは、全く君は面白い男だな……」クス

 

 

駄目だったみたいです。俺の努力は全く意味が無かったようだ、しかし俺は諦めるつもりは無い。ここで引き下がっては漢じゃない!それにルドルフの態度も俺の想定内だ。むしろこれで良かった。俺がこの後どんな行動をしようとルドルフは必ず困惑するはずだ。その隙になんとか逃げる!これがベストプランだ!

 

 

「ところで君の好む女性についてだが……」

 

 

ルドルフは話題を変えて、再び会話を続けた。これはもう俺の話をまともに聞く様子が無いので適当に受け流しておくことにした。ルドルフに背を向け窓の外を見つつ適当に対応する。ちなみに俺はルドルフの方を向かないのは彼女の反応を見るためだ、ルドルフは意外にこういう手の話は苦手なようでいつも顔を真っ赤にしている。それが見たいからだ。さぁ来いルドルフ!いつでもウェルカムだぜ!

 

 

「家事が得意な女性とかはどうだろうか」

 

「なんだその放火魔的発想は」

 

「そっちの火事の方ではない、主婦としてだ」

 

「いやその例えはよく分からん、というかなんの役に立つんだよ」

 

 

俺の疑問は至極全うなものだと思う、何故そんな事を気にしたのだろう? ルドルフはその疑問に対して答える。

 

 

「将来君が結婚することになった場合を考えてだよ」

 

 

あーなるほど、そう言う事ね。納得。俺は少しだけ考えた後、返事をした。

 

 

「俺は結婚なんぞするつもりは無い、何故なら俺の遺伝子を後世に継ぐつもりは更更ないからだ」

 

 

ルドルフに向き直り俺は答えた。すると彼女は驚いた表情を見せた、その後なぜか残念そうな顔になった。

 

 

「え……?」

 

「だから俺と結婚するなんて考えは止めたほうがいい、まあ俺は家事は苦手なんだけどね!」キリッ

 

 

ドヤァ!と効果音が付きそうなくらい良い笑みを浮かべたつもりだった。ルドルフを見ると呆然としていた。俺なんかおかしなこといったかな?

 

 

「あの、私は別にそんな事を言っている訳ではなくて……」

 

 

ルドルフは何だか言い辛そうに口籠っていた。どうやら俺の考え過ぎだったらしい、それじゃあどういう意味だっていうんだ?ルドルフの言い分を聞いてみるとしよう。

 

 

「まあ、君が結婚したくなければそれでもいい、しかし私はできれば……」

 

 

もじもじと指を絡ませている、まるで乙女の様だ、可愛いなこいつ、じゃなくて、俺が聞きたかったのはそういう事ではない。ルドルフは何を考えているのか知りたくて俺は質問をすることにした。

 

 

「どういうことか聞かせてもらえないか?」

 

「私と結婚して欲しい」

 

「断る」

 

 

即答、俺はルドルフの提案を断った。だって普通に考えても無理でしょ。確かにルドルフは魅力的かもしれない、だがルドルフだって自分が俺より圧倒的に優れているとは理解できているはずだ、なのに俺との結婚を所望するだと?正気とは思えない。

 

 

「理由を教えてくれないか?どうしてダメなんだ?」

 

 

ルドルフはこちらを見つめ真剣な眼差しをしている。その顔は先ほどの恋する女の子という雰囲気からはかけ離れたものとなっていた。そこには強い意志が感じられる。

 

 

「いやー、俺さ!三大欲求が強すぎて自分でも困ってるくらいなんだ!ルドルフだって嫌いになるだろう?」

 

「そんな事は絶対に無い!」

 

「だからダメなんだ……」

 

 

やはりルドルフはあの事を知らない、いつかは知ってもらう日が来るかもしれないがその時のルドルフの反応は想像出来ない。

 

 

「それは君の自己満足じゃないか、私が嫌だと言っているわけではない」

 

 

俺は頭を抱え込む。この子何言ってるの?本当に大丈夫?俺のどこがそんなに気に入ったのかさっぱりわからない。俺はルドルフの顔を見ながら話す。

 

 

「ていうか俺たちそもそも付き合ってないじゃん……」

 

「そ、それはこれから付き合うという話では……」

 

「まずはお友達からってことで」

 

「逆に疎遠になってないか?」

 

 

俺としては精一杯譲歩したつもりだった、俺にはもうこれ以上何もできない。ルドルフはしばらく考える素振りを見せていた。だがやがて諦めたような溜息をつくと俺を見て話し出した。

 

 

「仕方が無い、今回は諦めよう」

 

「おぅ、それが懸命だぞ」

 

 

良かったこれで一件落着か……。と思ったのだが、どうにもおかしい、なにやら俺の手を取ってきたのだ。そして顔を真っ赤にさせ、瞳を潤ませた状態で俺の目を見つめながら言った。

 

 

「ただし君を振り向かせるためなら私はなんでもする覚悟がある」

 

「ん?今、何でもするって言った?」

 

「えっ?あ、ああ……」

 

 

俺は懐から購買アーティファクトのロイヤルビタージュースを取り出したのを見たルドルフは少し取り乱した様子だった。 実はこれ、めっちゃ不味い、体力が全快する代わりに精神が死ぬ。トレーナー界隈では人気ナンバーワン、ウマ娘界隈では人気ワーストトップの代物だ。

 

 

「どうした?何でもしてくれるんだろう?覚悟があるんだろう?」

 

「そ、それとこれとは話が別で……」

 

「ほほう?そもそもこんな話になった原因はルドルフにあるんだ、責任取れよ?」

 

 

俺は満面の笑みでルドルフに飲み物を差し出す。その笑みとは裏腹に目だけは獲物を狙う蛇のそれであったと、後のルドルフは語ったと言う。ちなみにルドルフは逃げ切った。

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