シンボリルドルフと壊れたトレーナー   作:宮秋

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ルドルフと惚れ薬

ここはタキオンの実験室、ゴールデンウィークにも関わらず研究に明け暮れる様は、もはやマッドサイエンティスト。

 

 

「よう!やってる?」ガラガラ

 

「やぁシンボリルドルフのトレーナー君、久しぶりだね」

 

 

彼女の研究成果には目を見張るものがある、そして俺は面白半分暇つぶし半分でその研究の実験体にでもなるという傍から見ると自殺志願者かのような行動をとっていたりする。

 

 

「さーてタキオンさん、今回の研究成果一体どんな感じなんだい?」

 

「よく聞いてくれたねぇ!今回の研究成果はこれさ!」

 

 

と言い一本の試験管を取り出す、中にはピンク色の液体が入っていた。

 

 

「印象操作薬、要するに惚れ薬というやつさ」

 

「タキオンが色恋沙汰とは世も末だな」

 

「トレーナーとその担当バが結ばれる所を見るいうのも悪くはないと思ってね」

 

「トレセン学園は婚活会場じゃねぇんだぞ」

 

「実際にトレーナーと担当バが結ばれる話は多々あるだろう?そういう事だよ」

 

「ふーん、仕組みはどんな感じなの?」

 

 

するとタキオンは得意げに説明を始める

 

 

「最近の実験でマウスの脳に電極を刺して印象を操作できることが判明した」

 

「それを薬で再現するのは不可能ではないか?」

 

「トレーナー君の言いたいことは分かる、だが実際に電極を刺すのも無理があるし、外側から電流を流したとしても脳の脂肪に防がれてしまう、なら薬学しか方法がないだろう?」

 

「何を入れたの」

 

「覚せ……いや、興奮剤だ」

 

「いやアウトだろ」

 

 

今絶対白い粉的な物混ぜたよコイツ。

アグネスタキオン、研究者としては一流かもしれないけどマッドでもあるのだ。

本来は法に触れることはしないはずなのだが俺の見込み違いだったか?

 

 

「この薬は脳に直接作用し快楽物質を放出させることで、その時一緒にいる相手の印象を良くするという算段だ」

 

「今さっき覚醒剤って言いかけたよね?」

 

「正直効果だけを客観的に見ると中毒性が無いこと以外あんまり変わらないといったところだ、分かりやすく伝えようとしたのが仇になったな……」

 

 

惚れ薬とか言ってるがやってる事はただの薬漬けである、依存性が無いのは信用できるが依存してしまうのは仕掛ける側ではないかと若干思う。

 

 

「で、味は?」

 

「無味無臭だ。そうだねぇ……その状態で混ぜるとしたらコーラなどはどうだろうか?」

 

「なあ、今更気づいたんだけどさ、これ、俺がルドルフに飲ますのか?」

 

「本来はウマ娘側がトレーナーの気を引くために飲ますというのが一般的だとは思うが、今回は効果の実証だけが目的だ、ウマ娘と人間の脳の構造はほぼ変わらないのでどちらが飲むかは君に任せるとするよ」

 

「じゃあルドルフに薬を盛ることが出来るのか、という名目で飲ませてみることにするよ」

 

「素直に彼女が好きってことにした方が良くないかい?」

 

「俺は欠陥品だ、たとえ告白してもどうせ上手くはいかないよ」

 

 

こうして俺は実験という名の犯罪計画を進めることになったのだが、果たして本当に上手くいくかどうか、この時の俺には不安感しかなかった。

 

 

「そうだ、人間用の痩せ薬はあるかい?」

 

「あるよ、前払いということであげよう」

 

 

俺は代謝が低い上に食欲は人並みにある、そのためタキオン製の痩せ薬を飲むことで、体にウマムスコンドリアを取り込み、体温を37.1度にまで上げているのだ。方法としてはかなり危険だが、俺が児童期だった頃は平熱ですらそこまで高かったので問題ないのでは?と思ってオり、実際に健康被害はない、ちなみに使用頻度を間違えると……まあ、死にはしないだろう。

 

 

「サンキュー!じゃあの!」ガラガラ

 

「また来たまえ」

 

 

俺は薬を盛る飲み物を買いに購買へ向かった。そういえば効果時間を聞いていなかったな……ま、いいか。

 

 

 

 

 

生徒会室、ゴールデンウィーク中くらい休んどけと言ってもルドルフは止まらない、まるでオルガみたいだなとは思っても言うまい。

 

 

「勝ち取りたい!物もない!無力な馬鹿にはなれない!それで君はいいんだーよ♪」ガチャ

 

 

言わないとは言ったが、歌わないとは言っていない。

 

 

「やあトレーナー君、長期休暇に関わらずここに寄るのは君くらいなものだよ」

 

「よおルドルフ、コーラ飲む?」

 

「うむ、頂こう!」

 

「ほれ」ぽいっ

 

「おっと!」

 

 

ルドルフにコーラを投げて渡す、本来俺はこういう事はしない、前にルドルフからコーラ貰った時に振った俺が言うことではないが。

ちなみにそのコーラは1度も開けずに注射器で中身を少し減らしてから薬を足したものだ。

 

 

プシュッ……

 

「む……」

 

 

ルドルフは1口飲むかといったところで、動きを止める。そして俺に向き直る。やばいバレたか?

 

 

「これ、何かおかしくないか?」

 

「ん?どこが?」

 

「炭酸が少ない……」

 

「気のせいじゃないの?」

 

「匂いが薄い……」

 

「そんな馬鹿な……」

 

「さらにトレーナー君の手が震えている」

 

「えっ!?」ばっ

 

「やはり確信犯のようだな」

 

「!?」ビクゥ

 

 

くそっなんで気がついた、もしかしたら今のはカマかけだったのか?と思い自身の無策さを呪う。ルドルフは椅子から立ち上がり俺の方へ向かってくる。そしてそのまま胸ぐらを掴み壁に勢いよく押し当てられた。

 

 

「なぜこのような事をした」

 

「ごめんなさい、悪ふざけなんです……」

 

「ふざけないで答えろ」

 

 

ヤバい、マジで怒ってらっしゃる。どうしようこれ……

 

 

「タキオンの実験室に行ってたんです……」

 

 

俺は正直に全てを話すことにした、ここで嘘をついた所で状況が悪くなるだけだと思ったからだ。それにタキオンの名前を出すことによって、多少の怒りを抑えてくれるのではないかと期待したのだ。

するとルドルフはため息混じりに再び質問する。今度は怒気を感じなかったのでホッとする。

 

 

「何の為に」

 

「それはその……ルドルフに薬が盛れるかの実験をですね……」

 

「ふむ、ではこれは?」スッ

 

 

俺はルドルフにウマホを見せられる、ルドルフが再生ボタンを押すと俺とタキオンのやり取りの音声が流れた。

 

 

『素直に彼女が好きってことにした方が良くないかい?』

 

『俺は欠陥品だ、たとえ告白してもどうせ上手くはいかないよ』

 

「何故ここで否定しなかったんだろうね?」ニヤニヤ……

 

「おまっ!?その音声どこで……」

 

「私が知らないとでも思っていたのかな?これで言い逃れはできないだろう?」

 

 

くっ……いつの間に盗聴されていたなんて……迂闊すぎた、最初からこれを狙っていたのか。

 

 

「いーや、俺は言い逃れするね!ルドルフが好き?そんな馬鹿な!」

 

「なら、何故私に惚れ薬なんてものを飲ませる?」

 

「そりゃあお前……ルドルフの反応を見る為に決まっているじゃないか」

 

「なら私が同じ理由で君に飲ませたとしても文句は言えないな?」すっ

 

 

ルドルフは不敵な笑みを浮かべながら俺が薬を注入したコーラを飲ませようとしてくる。

 

 

「ひっ!?や…やめ……んぐっ!?」

 

「ほらほら、溢すと生徒会室が汚れてしまうだろう?」

 

ゴク……ゴク……

 

 

俺は息をする暇も与えられず全て飲まされた。

 

 

「ゲホッ!オーマイガーッシュ……ぅ……ぁ……What i do!ヴォエエエエエ!!がっ!?」ゴッ……

 

「トレーナー君!?」

 

 

俺はルドルフにコーラを全て飲まされ解放されるが、ふらつきながら盛大なゲップをし、壁に激突してそのまま気絶した。

 

 

 

〜5分後〜

 

 

 

目が覚める。辺りを見回すとここは保健室のようで、ルドルフが椅子に座りながら見守っており、白衣を着たタキオンが話しかけてきた。

 

 

「いいかい?落ち着いて聞きたまえ」

 

「MGSみたいな流れやめろ!」

 

「頭に異常は見られないし、ただの事故のようだね、多分そろそろ惚れ薬の効き目が出てくるだろうから私はお暇するよ。2人とも仲良くするんだよ?」

 

 

ガラララッ……バタン 扉が閉まり足音が遠ざかり、俺の耳が痛くなるような静寂に包まれる。そんな中ルドルフから声がかけられた。

 

 

「それで、私の事が好きだと、そう言っていたな」

 

「は?お前何言ってんだ?俺はそんな事一言も言ってないしそもそもそんなつもりは……」

 

 

……あれ?なんだ?急に胸が締め付けられる……?呼吸もしづらい、なんでこんなことに……。ルドルフを見ると少し悲しげな表情をしている、だがそれもすぐに消え、普段のような優しい笑顔を見せた。

 

 

「大丈夫さ、この程度の事で契約解除なんてするつもりは無いよ、だから心配しないで欲しい」

 

 

そういう訳にもいかないと言いたかったのだが、俺にはそれが出来なかった、身体は熱くなり視界までぼやけてきて呂律すらまともに回らないほど意識は混濁していく。そこで俺は完全に気を失ってしまった。

 

 

〜1時間後〜

 

 

目を開けて起き上がる。頭がボーッとする中時計を見ると、針は昼過ぎを指していた。俺は一体どうしていたんだっけ……?そうだ、記憶があるのはルドルフの顔を見た時だけだ。その時俺はどんな顔をしたのだろうか、そして何を言ったのだろう、それだけが気がかりだった。しかしそんな疑問を解決するよりも前に俺に近づいてくる者がいた。それはなんとルドルフだった。

 

 

「トレーナー君……」ぎゅっ……

 

「へ?ちょっ!?何やってるの!?」

 

「ずっとこうさせて欲しかった……」スリスリ……

 

 

ルドルフは俺を力強く抱きしめたあと、首元で匂いを確かめるように頬擦りをする。俺は驚きながらもそれを受け入れてしまっていた。何故だ、体が言うことを聞かない、まさかこれも惚れ薬の効果なのか……!?

 

 

「ねぇルドルフ……」

 

「何だい?」

 

 

俺は今のうちに確かめなければならないことがあると思いルドルフを引き剥がそうとするが、びくともしなかった。そしてルドルフが顔を上げ見つめてくる。あ、可愛い……

 

 

「どうしたのかな?」ニヤニヤ

 

 

ルドルフはこちらの気持ちを知っているのかニヤニヤしている、クソ、俺が本心を言わない事に気がついているな、やはり惚れ薬を飲まされたのはまずかったか……?俺は焦って口を開く。

 

 

「そのだな、とりあえず放してくれないか?」ドキドキ

 

「嫌だと言ったら君は怒るかな?」ニマニマ

 

「なっ!?こっちの気も知らないで!とにかく一旦離れろ!」ぐいっ

 

「ひゃう……」ぽすっ

 

 

ルドルフに強引に引っ張ってなんとか距離を取ることに成功できた。

俺はため息混じりに話す。

 

 

「まったく……惚れ薬なんてものを使うからだぞ?」

 

「私に恋をしてもいいじゃないか」

 

「なるほど、これが俗に言う開き直りというやつか……」

 

「ところで先程私が質問した答えがまだ聞いていないんだが?」

 

 

俺の言葉を遮りルドルフが問いかけてくる。

確かに俺はルドルフの事が好きで間違いはない、しかし俺が惚れ薬を使ったことで本当にその想いを伝えることができるのかどうか、という疑問があった。なので俺はこう返答する。

 

 

「……ごめん、言えない」

 

「どうしても……かい?」

 

「うん、それでも、だよ」

 

「なら、もう遠慮はしない、これからも君の担当で居続けるために私は努力しよう。それで君を惚れさせることができればいいだけの話だろう?」ギュゥ

 

 

再びルドルフが抱きついてくる、今度は少し強く抱かれてしまい抵抗できない、というより俺自身もそれを望んでいたのだ。ルドルフと触れ合えば触れるほど自分の心はどんどん彼女を求めていき、好きになるほど胸が強く締め付けられるような感覚が襲ってくる。俺も彼女を抱きしめたい、だがここで折れてはいけないと理性が働く、だが体は言うことを聞いてくれない、そんな俺をルドルフが優しく頭を撫でてくれる。

 

 

「トレーナー君が苦しんでいることはわかるよ、だからこそこうして少しでも力になりたいんだ」ナデナデ……

 

「……ルドルフ、お前にここまでされると、お前に甘えたくなる、けど俺達はトレーナーとウマ娘でいなくちゃいけない、だから」

 

「ならば私の恋人になってしまえばいい」スリスリィ……

 

「……」ピクッ

 

 

ルドルフが恋人にして欲しいとお願いしてきた事で俺は思わず固まる。これで何度目のルドルフからの告白だろうか?今までは全て断ってきたが、流石の今回も断れる自信がなかった。そして俺は恐る恐る口を開いた。

 

 

「ルドルフは俺のことが好きなの……?」

 

「ああ、大好きだ」ぎゅぅ……

 

「じゃあさ、なんでさっき惚れ薬使ったの?」

 

 

俺はふと思った事を尋ねる。すると、彼女は顔を真っ赤にして目を泳がせながら小さな声で呟いた。

 

 

「だってトレーナー君は私の事を意識してくれないし、それにいつも他の女の子の所に行っているからちょっと嫉妬したんだ……」ボソッ

 

 

……ルドルフの言葉を聞きながら思う。なんで俺はさっきから惚けた事しか言ってないんだ?これではどっちが惚れてるんだかわからなくなる。だがルドルフも同じことを思っていたらしく俺の顔を見上げて言葉を続けた。

 

 

「なぁ、私はちゃんとアピールしたはずだぞ?なぜ応えてはくれなかったのかな?……やっぱり私の事はそういう目でしか見てくれないのか?」グスッ

 

 

ルドルフが悲しげにそう告げた瞬間、俺は我に返った。違うだろ?俺はただ自分に言い訳をしているだけだ、ルドルフが好きなのは事実だ。だが、どうしてもルドルフと付き合えない理由がある。

 

 

「そうじゃないんだよルドルフ、俺だってルドルフの事は好きさ、でもね、俺達には障害があるだろ?俺は狂ってるからルドルフは俺と付き合うと迷惑をかけてしまうんじゃないかと思って、だから、」

 

「君には私がいる、そんな理由で振られるのは納得がいかんな」ムスッ

 

「ルドルフは気にしてないだろうけど世間体もあるだろ?俺はルドルフの夢を壊したくないんだ……」ポロポロッ……

 

 

俺は泣き出してしまった、ルドルフを困らせまいと我慢していた涙が溢れ出した。俺が泣く度にルドルフは心配してくれる、それが嬉しくもあり辛くもあった。俺を慰めるために抱きしめようと腕を広げてくるルドルフ、しかしその手が俺に触れる前に彼女の動きが止まった。その視線は俺の後ろに注がれていた。何を見て固まっているのか、それはすぐに理解することができた。

そこにはいつの間にやら俺の背後に立っている駿川たづなさんの姿があったからだ。

 

 

 

今回の敗因︰俺とルドルフは一緒にたづなさんの説教を二時間食らう事になった。

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