シンボリルドルフと壊れたトレーナー   作:宮秋

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ルドルフに構いすぎじゃない?

トレーニング終わりの午後6時、みんなが疲れているところにひとつの疑問が飛ぶ。

 

 

「トレーナーってルドルフに構いすぎじゃない?」

 

「なっ!?」

 

「そうか?」

 

「「うんうん」」

 

 

シービーの声に反応してしまうルドルフと俺とそれに賛同するテイオーとシリウス。

 

 

「別にトレーニングの様子は見てやってるだろ?」

 

「そりゃまぁ、それはね?けどさ……」

 

「じゃあ、なんでそんなこと聞くんだ?」

 

「だってさ……」

 

 

少し声を小さくした。シービーはそのまま言葉をつづける。周りも少しだけ静かになったような気がして、俺はシービーの言葉を待つ。シービーは言いづらそうな顔をしながら続けた。

 

 

「……トレーナーが生徒会の仕事を全部片付けたり、カイチョーが仕事しているときに手伝ってくれたりさ。トレーナーがやってくれてるから……その……」

 

 

そこでシービーは黙った。俺にはわかっていたことだ。だがそれをあえて言葉にして言うことでもないと思った。だから言わせたままにしていたのだ。そして、ここで言っておくべきか。

 

 

「実はあれ俺も仕事しているように見えて、実はルドルフが1人で片付けているだけなんだ」

 

「……えぇっ!?マジですか!会長!!」

 

 

驚くテイオーとシリウス、それに同意するかのようにウンウンとうなずくルドルフ。

 

 

「なんならテイオーとシリウスも生徒会に入らないか?」

 

 

突然勧誘された2人は目を点にしている。そりゃあそうだ、なんの脈絡もなくいきなり誘われたら困惑するわな……。しかしこれはチャンスでもあるはずだ。彼女たちを誘うという事は必然的に生徒会室に入り浸るという事にもなるわけだ。

 

 

「まあ別にトレーナーに会えるなら……」

 

「ただボクたちまで入っていいのかなぁ~……」

 

「いいぞ、入りたければ入ればいいし、入りたくなくても別にいいし。でもまあ生徒会室に来るだけでも来てくれよ、そうしたら構ってやれる、どうせ仕事なんてルドルフが一瞬で終わらせてしまうし」

 

「おい!」

 

 

こうして俺の提案通りテイオーたちが生徒会員になった。正直ここまで簡単にいくとは思っていなかったのでありがたい限りだ。これからはより生徒会室に人が増えるかもしれないと思いながら俺は寮へと帰ることにしたのであった。

 

 

 

翌日、生徒会室にて

 

 

「もう私達、止められない!邪魔しないでね!よろしーくーねー♪おっ、早速だな」ガチャ

 

「ノックをせずに歌を歌いながら入って来るってのは本当だったんだね!ちなみにそれってなんの歌?」

 

「花咲く☆最強レジェンドDAYSってやつさ、生徒会に因んだアニソンだ、アニメの内容はおすすめしないがな」

 

 

生徒会室に集まっていたシリウスとテイオーにそう言ったシービーが指差したのは、大量の紙資料である。そこには今までやってきた模擬レースの成績などがまとめられていた。これをシービー1人が行っていたのだが……、今となってはその必要はない。テイオーたちが来たことで作業量が大幅に減ったのだ。

 

 

「で、トレーナーは何しに来たんだい?」

 

「俺か?俺はまあ、基本的には差し入れ役さ、ほれ」

 

 

俺は持ってきた袋を3人に渡していく。中身を見てみるとお菓子ばかりであることがわかるだろう。

 

 

「今日はこれを持ってきました~、みんな仲良く分け合って食べるように!んじゃ俺は帰るぜ~またな!」

 

 

俺は手を振って部屋から出ていこうとすると扉の前に立っていたエアグルーヴとナリタブライアンに捕まった。

 

 

「全く、生徒会の役員を増やすとはどういう事だ!これでは私たちが座るところが無いではないか!」

 

「後でソファーを追加で発注しとくよ」

 

 

俺は怒られたが、別に問題ないと返事をした。ただでさえ仕事の量が少ないという事をわかっていたからだ。

 

 

「ふむ……ところで貴様はいつまでここに居るつもりだ?まだ居たいのであれば別に止めはしないが……あまり長すぎるようならば帰れ」

 

「はいよ、んじゃあ俺は戻ってトレーニングの計画を煮詰めて……oh……」

 

 

俺が生徒会室を出ようとすると、そこには生徒会室に入ろうとしていたルドルフが大量の資料を抱えながら仁王立ちしていた。

 

 

「どうしたトレーナー君、まだ仕事はたんまりあるぞ?」

 

「は?俺が仕事するわけねーだろ!」

 

「それは残念だ、トレーナー君の命は儚かったという事にしておこう」

 

「おいちょっと待て!なんだ命がけのデスマーチでもさせるつもりなのか!?」

 

 

ルドルフは俺の言葉を無視し、俺の腕を掴みそのまま引きずり始めた。俺はまだやりたい事が残っているので生徒会室の中にいる5人に叫ぶ。

 

 

「助けろぉぉおお!!殺されるぅうう!!!誰かァ!!」

 

「頑張るんだトレーナー君、私たちは生徒会室で見守らせてもらうよ」

 

「会長、頑張ってね!!」

 

「カイチョーがんばれー!!」

 

「ファイトです会長!!」

 

「会長ならイけるだろう?」

 

「私は会長の事を信じているぞ?」

 

「俺は会長じゃねええぇぇぇ!!」

 

 

シービー達は応援の声を上げるだけで誰も動こうとはしなかった……。このやろう、絶対に逃げて仕返ししてやるからな!覚悟しとけ!…………しかし、ルドルフには勝てませんでした。

なんでこんな時に限って仕事がマシマシになってるんだ?てなわけで俺は死ぬ気で仕事をすることになったのである。

 

 

 

 

「そう言えばテイオーとシリウスはどの役職になったの?」

 

俺はデスマーチを適当にこなしながら2人に問う。

 

「ボクは会計!」

 

「私は庶務だ」

 

「会長1人に副会長が3人で雑務2人ね、まあ妥当なところか」

 

「ついでに奴隷が1人ってね!」

 

「なんだと?」

 

「トレーナー君……」

 

 

俺はテイオーの言葉に反応したがルドルフに睨まれてしまったので、とりあえず黙った。が今度はルドルフが煽ってくる。

 

 

「本当の事に一々激怒するな」

 

「『急募、300キロの肉を処理する方法』ってスレ立てとこ……」

 

「早々に私たちを殺そうとするんじゃない……」

 

「それでも人間がウマ娘に勝てるわけが無いだろう」

 

 

俺の言葉を聞いてシービーとシリウスは苦笑いしながら言う。テイオーもそれに同意するかのように笑っている。俺はため息をつくしかなかった。

 

 

「まあいい、とりあえず俺はもうトレーナー業務に戻るよ、奴隷がデスクワークする訳ねーだろ?」

 

「ダメだ」

 

「……ルドルフは鬼だ」

 

「何を言う、私はテイオーとシリウスの面倒を見なければいけないし、他にも仕事は沢山あるのだ、君だけに時間を使っている場合ではない、そもそも私の事だけを見ていろ」

 

「お前はどーしてそういう言い方しかできねーんだよ!少しは空気を読めや!!」

 

 

こうやって喧嘩をしているとシービーが横槍を刺してくる。

 

 

「そう言えばトレーナーから濃いルドルフの匂いがするのは何故なのかな?」

 

 

その言葉を聞いたシリウスが反応し、

 

 

「私もそれ思う!なんかいつもよりもトレーナーさんが臭かった気がする!」

 

 

と声を上げた。そして俺はシービーに向かって指を差す。

 

 

「シービーが言った通り、俺は臭い。これはルドルフに抱かれたからだ!」

 

「えっ……」

 

 

今一瞬致命的な間違いを犯したような気がするが、すかさずルドルフがそれを擁護する。

 

 

「違う、私に抱かれてなどいない、あれは抱きついただけだ」

 

 

シービーは何かを考えるようにして口を開く。

 

 

「へぇ~ルドルフがそんな事を……意外と肉食系だったんだね、てっきり草食系かと思っていたけど……」

 

「ルドルフは肉食系だぞ?ついこないだ肉を食べすぎたらしくて先週に比べて体重が5キロ増しに゛っ!?」

 

 

俺は途中で殴られたので最後まで喋ることは出来なかった。そして俺は頬を抑えながらルドルフを見るが、ルドルフの目からはこれ以上余計なことを言うと殺すという意思を感じられたのですぐに口を閉じた。

だが俺にだって考えはある。この生徒会で1番権力を持っているのが誰かということをだ。だから俺はルドルフに向かって言ってやった。

 

 

「おいおいおい!俺はさっきなんていった?体重が増えちゃうぞって!それはつまりお前は太りやすい体質なんじゃあないか?どうなんだ?ん?言ってみ?ん?言わないとわからんなあ!!」

 

(※このトレーナーは女性に対してかなり失礼な事を言っていることに気が付いていません)

 

 

俺は勝ち誇った顔をしながらそう言うと、ルドルフの顔がみるみると赤くなる。あ、こいつ絶対怒ってるな……と俺が感じているとルドルフは特に何をする訳でもなくそのまま退室していった。

 

 

「トレーナー、会長は拷問器具を取りに行ったと思うよ?」

 

「えっ?そんなんあるの?どこにあるの?」

 

「確か、資料室に」

 

「トレセン学園に何てものを……」

 

「ふふふ……」ガチャ

 

「あ、やべ」

 

資料室に行ったのであろう目が笑っていないルドルフのその手には拘束用のロープと算盤板と石版が握られていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ね〜会長?あの無惨なオブジェクトは何?」

 

「あれは石抱といって、自白を強要する時に使う拷問器具だよ」

 

「トレーナーってそんなに悪いこと言ったかな?」

 

「あれは私を怒らせた、懲らしめないと気が済まない」

 

「もう『あれ』呼ばわりされてる、相当怒ってるんだろうね……」

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