放課後の生徒会室にシンボリルドルフのトレーナーが来るのは最早テンプレ、シンボリルドルフいる所にトレーナーありとでも言われそうなくらい生徒会室にほかのウマ娘が訪問する頃には何故かシンボリルドルフのトレーナーが寛いでいるという光景も珍しくない。
「さあみんな一緒に〜!ス・ケ・ベが大好きー!!」ガチャ
「「えっ……」」
「あっ……」
絶賛相談中だったウマ娘、その話を聞いているルドルフ、そして変態トレーナー。なんとも奇妙な組み合わせだ。
「君、生徒会室は関係者以外立ち入り禁止だぞ?」
「だってよそこのウマ娘ちゃん、残念だがご退室願うよ……」
「えっ?」
「君に言ったんだ君に!!」
最早俺のことをトレーナーとすら認識しようとしないルドルフの言葉を躱そうとする俺。
「あっ…問題は解決したということで、会長さん、ありがとうございました!」
「えっ!?まだ途中…」
引き留めようとするルドルフを尻目にそう言ってそそくさと帰っていくウマ娘。
バタンッ!!
扉を閉める音がやけに大きく響いた気がした。
「どうしてくれるんだトレーナー君!?これで生徒会の評判が下がるじゃないか!!」
「今回ばかりは選曲が悪かったな……」
「君はいつもそうだ!私がどんな思いでこの場を設けたと思ってるんだ!?」
「お礼参りかと思ったわ!!」
その後なんとかその場を取り繕った俺はルドルフから説教を受けた後、相談が終わるまで部屋を追い出されたのだった……。
「さて、何を買おうか」
やる事がない俺はトレセン学園の購買で時間を潰していた。
トレセンの購買は面積で計算すれば小さめのスーパーくらいの面積がある、それが二階建てともなれば相当広いと言えるだろう。
そんな広大な敷地の中を歩くだけでも一苦労である。
「いらっしゃいませ〜」
店内に入るとまず目に入るのは大きなレジスター、それに並べられた沢山の商品達、そしてそれを品出ししている店員達。
「おっ!お久しぶりだね旦那!」
「どうもこんにちは」
話しかけてきたのはこの店の店長、名前なんて言うんだろうか?
「今日は何をお探しだい?」
「新入荷したもの」
「それならお守りとかがあるよ」
「お守り……そういうのもあるのか……」
お守りコーナーに行くと様々な種類があった。交通安全守、学業成就守、合格祈願守など多種多様にある。
その中で三つほど気になるものがあった。
1つ目は『恋愛成就』と書かれたお守り。
正直これを買う奴はバカだと決めつけていたのだが、よく見ると値段が高いだけで効果は抜群らしい。
「これルドルフに渡すか」
2つ目は『ミニ日本ダービー優勝レイ』というお守り。
この前タキオンが薬の材料にしていた日本ダービー優勝レイがストラップにされて売られているのだ。
こんなもん俺以外に誰が買うんだと思うが意外にも売れているらしく、在庫が少なくなっているらしい。
「これはタキオンに調理してもらおう」
「旦那、何の話だい?」
「いや、なんでもない」
そして3つ目『安産祈願』のお守り。
これは流石に無いと思うのだがなぜか売っている。……これは流石に買わないが何故か気持ち少ないような気がする、もしかして需要が無さそうだから敢えて少ししか置いてないのかもしれない。
「よし、じゃあこの2つで」
そうして買い物を終えた俺は生徒会室へ戻るのであった。
「戻ったぞ〜」
「遅いじゃないかトレーナー君!もうすぐ日が落ちてしまうよ!?」
「悪いなルドルフ、ちょっと用事があって……」
「それで、何を買ってきたんだい?見せてくれないか?」
「いいけど……別に面白くはないと思うぞ?」
そう言って先程購入した物を見せる俺。
「お守り……?それとレースのお守りかい?」
「レースのお守りの方はあげません!!」
「という事はこちらのお守りは貰ってもいいということかな?」
「ああ、そっちの方なら問題無いよ」
そう言ってルドルフに恋愛成就のお守りの方を渡す。するとルドルフが少し怪訝な顔をして俺に問いてきた。
「ところでなぜ今更恋愛成就のお守りを?普通に考えるならここは安産祈願だろうに……」
「ちょっと待て、お前まだ未成年だろうが!」
「私は気にしないよ?」
「もしかしてあの安産祈願のお守りって実は売れていた?」
あれ……ここって一応中高一貫校的な所だったよね?なのに何故成人指定もののお守りを堂々と置いているんだよ。もしかしてこのトレセン学園ってやばいんじゃないかな……。
「あとトレーナー君、質問に質問で返さないでくれ。なぜ私に恋愛成就のお守りを渡したんだ?何か理由があるんだろう?」
俺が渡した恋愛成就のお守りを見ながらルドルフが聞いてくる。
俺は徐ろにスマホを取り出しロック画面からカメラを起動する。
「はいチーズ!!」
「えっ!?」
カシャリという音と共に撮られた写真には驚きながら笑顔を向けるルドルフの姿が写っていた。
その写真をすぐさま保存した後待ち受けにする。
「この写真使って出会い系サイトに登録しまくってもいい?もちろんルドルフの名前も出して」
「そんなことされたら困る!!絶対にやめてくれたまえ!?」
「これでルドルフがいい男と出会って結婚出来れば御の字だな、そのためのお守りだし!」
「トレーナー君、私と君が恋人であることを理解した上で言っているのかい?あまり調子に乗ってると怒るよ?」
顔が笑っているように見えるが明らかにキレている、構わず俺は続ける。
「半分は本気さ、俺みたいな精神障害者なんかよりも良い人が必ず居るはずだ、だから頑張れよルドルフ!」
「つまり今現在半分も私の気持ちが伝わっているという解釈でいいのかな?」
「何でもプラスに考えようとするのやめない?」
「マイナス要素ではない、これはとある曲で言われているが壊れるほど愛したとしても3分の1も伝わらないそうじゃないか、それが半分も伝わっているだけ御の字さ」
「む…中々難しい言葉をご存知で」
「それより君はこのお守りを私にどうしろというんだい?」
「そうだなぁ、例えばルドルフがその相手と出会うために使ってくれても構わない、もしそれが叶ったのならばその時はお祝いさせてもらおう」
「なるほど……それなら私が君との婚約を結ぶ時にでも使いたいと思うのだがどうかな?」
「それは流石に重すぎないか?」
「ふぅン……君が言うと重みが違うねぇ……?ちなみに君の気持ちとしては?」
「俺の気持ちなんて無視して好き勝手やった癖によく言うわ!」
「それに関しては謝らせてくれないか?」
「いいよ」
「すまないね……」
そう言って頭を下げる彼女。流石は皇帝と呼ばれるだけの事はある、とても素直だ。
だが彼女は知らない、俺とルドルフの間には決定的な価値観の違いが存在することを。
そして俺がそれを正すことは無いということを……なぜなら。
「よし、許そう!」
だって俺に損はないもん。
「ではこのお守りはありがたく受け取っておくよ」
「ああ、ルドルフが幸せな恋をして家庭を持ってくれたら嬉しいよ」
「そう思うなら早く私と婚約を結んでくれないか?」
「それとこれとは話が別です」
「君が望むならこの身一つくらい捧げようじゃないか」
「やめて?自分の身体を安売りするのはやめなさい」
「何を言っている、この前だって君が私を百万で買い叩こうとしていたではないか!」
「あれは冗談で言ったんだからマジレスしないでくれる!?」
「あ、そうだトレーナー君。忘れていたことがあるのだが聞いても良いだろうか?」
話を変えようとしてきたな?多分ルドルフの事だろうから察しはつくけどな。
「君の使っている薬、ゼプリオンで間違いないね?」
「あ〜……うん、俺が使ってるのは加水分解してからドーパミン受容体を抑制するタイプの精神薬だよ」
ドーパミンは簡単に説明するなら快感を感じるための材料、そのドーパミンの働きを抑える事で躁鬱の改善が期待できる。さらに、3ヶ月おきの注射なので他の薬に比べて面倒が少ない。
ここまではこの薬のいい所を説明してきたが実はあまりにもデメリットが多い。
それをノートパソコンで調べているルドルフがつぶやく。
「何だこの副作用の量は……吐き気に体重増減、肝障害に腎障害、精神障害、悪性症候群、挙句の果てには死亡例まで存在するだと!?こんな危ないものを打っているのか!?いつからだ!?」
「3年以上前からだな……でも大丈夫、量は最低限にしている」
「……本当に大丈夫なのか?」
「俺が今まで病気にかかったことがあるかい?」
「あるね、風邪に睡眠障害、体重増加、尿管結石、あと初対面で嘔吐をした事もあっただろう?」
そう言えばあったなぁ……あの時は死ぬかと思った……。
そんなことを思い出しながら苦笑いをしていると彼女がまたパソコンを操作し始めた。
すると何かを見つけたようで表情が変わった。
「へぇ…」
「ん?なんか見つけたの?」
「ふむ、という事は……ほう……」
「おい、何か言いたい事があるなら言えよ」
そう聞くがルドルフは無言のまま何かを探し続けている。……なんだこりゃ。
しばらくするとルドルフが急にこちらを振り向いた。何か面白いことでもあったのか笑みを浮かべて話し出す。
「さあ、時間にもなったしトレーニングに行こうか。今日は中距離を走りたい気分なんだ」
そういうとルドルフは颯爽と生徒会室を出て行ってしまった。……なんだったんだ?まあいいか!
トレーニングも終わり飯食って歯磨きして風呂入って眠剤を飲んでそろそろ寝ようかなと考えていたところにルドルフが一言切り出してくる。
「なあトレーナー君、最近君と私は恋人らしいことをしていないんじゃないか?」
「恋人らしい事ってなんだよ、一緒に寝ているだけじゃダメなのか?」
「それはそうなのだが……私も年頃の女として少し欲求不満になる時があるという訳なのだよ」
頬を赤らめもじもじしている彼女を見ると抱きしめたくなる衝動に駆られるが、なんとか我慢する。……いや嘘です。めちゃくちゃ抱き締めたい。
「というわけでだ、今夜は初めて君と愛を確かめ合いたいとおもうのだけれど……どうかな?」
「待て待て落ち着け、ルドルフは未成年だろうが……」
いくら愛のある行為とはいえ高校生に手を出すというのは……うん、流石に不味いと思うんだよね……。
それに俺は成人男性で彼女は女子高生、社会的にも色々と問題が発生する可能性が高くなるのは明らかである。
しかし彼女は引かない様子であった。それどころか俺に近づき耳元で囁く。
「いや、少し事情が変わってね、この場合君は罪に問われないんだ」
「どういう意味だそれ」
「いや何、未成年に対する淫行というものは互いが婚姻関係またはそれに準ずる恋愛関係の場合は該当しないんだ」
「それは知らなかったな……ってお前それって……」
「そうだ、君にも多大な責任が付き纏うが……覚悟はあるかな?」
「いや、無いね」
即答するとルドルフがしょんぼりした顔になり、目に涙を溜め始める。だが俺は悪くない、俺に責任を押し付けられたくないだけだから。
そう思っているとルドルフが予想だにしていなかったことを言い出す。
「口ではそうは言っているが君に限って体は正直になりやすいそうじゃないか」
「は?」
「君の使っているゼプリオンという薬、α交感神経の作用による持続勃起症という副作用が引き起こされるそうじゃないか」
「……お前まさか!?」
「そうだ、生徒会室で調べていた時に偶然目に留まったんだが……ほぼ毎日と言っていいほど性欲処理を行っていたようだね?最近は私がここに留まっているせいでシていないようだが……」
「なっ!?」
「ウマ娘の鼻を舐めないことだ、回数はまだしも、時間帯すら特定できる」
まじかよこの子、どんだけハイスペックなの?俺が童貞拗らせてるから気を使ってくれてるのかと思っていたのに……違ったみたいですね……。
俺が自分の浅慮さを悔いているとルドルフがさらに体を密着させてくる。そして潤んだ瞳の上目遣いでこう言う。
「さあトレーナー君、私に抱かれてくれないか?」
そんなことされなくても理性は既に決壊寸前だった。だってあんなに可愛くて美人なお嬢様からのお誘いだからさ。でも……
「だとしてもダメだ」
彼女の肩を掴み引き離し、そのままベッドに押し倒す。突然の事に困惑していたようだったが、やがて状況を理解したようで抵抗を始める。
人間とウマ娘の膂力の差は10倍近い、普通は簡単に振りほどかれる、だがルドルフはこの場を楽しんでいるようで笑みを絶やすことはなかった。
「どうして……?」
「そんな理由でルドルフを抱いたらそれこそ淫行になってしまう。ただでさえ立場が危うくなるのは分かりきった事なのに、そこに犯罪者まで加わるとなると洒落にならないぞ」
そう言うと納得したのかルドルフが大人しくなった。その表情からは諦めの色が見え、悲しそうな表情になっていた。
「じゃあ私の昂っているこの感情と身体の疼きはどうすればいいんだ……」
「すまない……」
「謝らないでくれ……君は何も悪いことをしていないんだから……」
「……」
「ならせめてキスをしてもいいか?これくらいなら問題はないはずだ……」
「えっ……うわっ!」
ルドルフに一瞬で上下反転させられて押し倒される形になる。目の前には彼女の端正で妖艶な雰囲気漂う美しい顔があった。そんな彼女に魅せられているうちに顔を引き寄せられて唇を重ねられる。
舌を入れられ蹂躙された後、ルドルフの顔がゆっくりと離れていく。互いの口から唾液が橋を作る、それを見た瞬間背筋にゾクッとした感覚が走った。ルドルフが満足そうに笑い出す。
「ふふふ、今のは挨拶のようなものだ。夜はまだまだ長いよトレーナー君、覚悟したまえ?」
「待て待て待て!ルドルフ!キスだけって言ったよな!?」
ルドルフは満面の笑みを浮かべるとこちらの静止を無視して俺の服を脱がせようとしてくる。
「俺は眠剤飲んだからフラフラなんだって!寝かせてくれぇー!!」
「ウトウトしながらされるのも気持ち良いものだよ?さぁ、観念してくれ……♪」
「ぐぐぐ……」
ルドルフはこの状況を楽しんでいるのか手加減をしているようでそれでも力は拮抗している、これならまだ説得の余地はありそうだ。
「トレーナー君はするよりされる方が好みなんだろう?今更何を遠慮しているのだ……」
「その情報一体どこで!?」
「君のスマホのブラウザ履歴からだ」
「oh……」
もうやだ死にたい……。ルドルフは呆れたような目でこちらを見つめている。
「はぁ、君に拒否権は無いんだよ、大人しく私にその体を差し出せ、そして私に挿し出せ!」
「なんだその汚ねえダジャレ!?お前そんなキャラだったかなぁ!?」
「む……そこまで言われると傷つくぞ、もう許さない、泣いても止めないからな」
「やめろぉ!!やめるんだぁ!!」
「ふぅん……♡」
耳元を甘噛みされて全身に電気が流れるように快楽が走る、思わず情けない声を出してしまう。それをルドルフは面白がるようにしてさらに耳を攻めてくる。
しばらくするとルドルフは自分の寝巻きに手をかけようとするが、そこで何かに気付いたのか手を止めた。
「しまったな、私は汗をかいていたんだ……臭いと思われたら嫌われてしまうかもしれないな……」
「あれ?ルドルフお前シャワー浴びてないの?……まあいい匂いだし気にしないけど……」
「そ、そうか、良かった……」
「良くないが?さっさと退いてくんね?とりあえず俺はもう寝るから、もう付き合ってられん」
「う、うん……」
先程の勢いを失ってしまったルドルフを押しのけて布団に入り込む。しかしルドルフの様子がおかしい、どこか寂しそうな顔つきでモジモジしていた。その姿は捨てられた子犬のような印象を抱かせる。
少し良心が痛んだ俺はルドルフの手を取り優しく抱き寄せる。するとルドルフは驚きで目を見開いたが、すぐに落ち着きを取り戻し俺の胸に顔を埋めてきた。頭を撫でながら語りかける。
「済まないね、他のことならなんでもするから機嫌を直してくれないか?」
「……本当か?」
「ああ……何でも言ってくれ」
「分かった……じゃあ……私に愛を囁いて欲しい……」
そう言うと上目遣いでこちらの目を覗いてくる。恥ずかしさで顔を真っ赤にしていたが、それは俺も同じだった。
「えっと……好き……好きだよ……ルドルフ」
「私もだ……私だけのトレーナー……大好き……♪」
ルドルフは嬉しそうに微笑み、幸せそうにしている。彼女の表情は美しく可愛らしく、見ているだけで心が満たされる。
するとルドルフは顔を上気させたまま俺に尋ねてきた
「トレーナー君、済まないがトイレを借りてもいいかい?」
「ダメです」
「えっ!?」
「こういう時は『良いですか』ではなく『します』と言うんだ、それなら断わりづらいだろう?」
「じゃあ今からトレーナー君をうまぴょいする!!」
「ごめんなさい、俺が悪かったから大人しくトイレに行ってきてください……」
トイレとうまぴょいを同列に扱うってことはつまりそういう事ですか!?まさか人のトイレで鎮めようとするとは思わないじゃん……普通逆では?と疑問を抱きながらも、彼女の尊厳のために何も言わずに送り出すことにする。
眠剤がそろそろ効いてきたのか意識が遠のく、ルドルフは名残惜しそうにしながらも渋々ベッドから離れて行った。
「また襲ってくるかもしれないけど我慢して欲しい、本当に申し訳ない」と言い残した彼女は最後にもう一度こちらを振り向いたが扉の向こうへと消えていった。…………