僕は主人公になりたい ――最強の歯車・只野義人――   作:下等妙人

44 / 98
エピローグ二 神代天馬はヒーローを目指す

 六月五日。午後一時三〇分。鏡原市霊園。

 

 親族の墓前にて、天馬は言葉を紡いだ。

 

「最近忙しくてさ、だからあんまり来れなかったんだ。ごめんな」

 

 中で眠る父母に、彼は自分の思いを打ち明ける。

 

「墓参りに来ない間、色んなことがあったよ。まぁ、全部オレがどうしようもねぇ馬鹿だってことをアピールするような内容なんだけどさ。ほんっと、散々な一カ月だった……でも、マイナスばかりってわけじゃない。オレさ、これからは自分と戦ってみるよ。椿さんに言われて、気づいたんだ。オレは憎しみを正当化してたってことに。親が殺されたんだから当たり前、これは自然なことなんだ、みてぇに言い訳してさ、そんで、この感情はしょうがないものだって、そう思い込んでた。でも、それは逃げでしかないんだよな。オレ、自分の中の闇から目をそらして、逃げてたんだ。だから、間違った方法でそれを消そうとして……最低なこと、しちまった」

 

 俯きながら、後悔の念を吐き出す。だがすぐに前を向いて、決意の言葉を口にした。

 

「オレはずっと、敵とか運命とか、そういうのとは戦ってたけど、自分との戦いには逃げてばっかだった。けど、これからは違う。もう自分から逃げたりしねぇ。憎しみとか復讐心とか、そういう気持ちに負けたりしねぇ。絶対打ち勝って、そういうどうしょうもねぇ感情を綺麗さっぱり消してやる」

 

 そこで一度呼吸すると、彼は穏やかに微笑んだ。

 

「それが、オレのすべきことなんだ。自分に勝って、“もう一度”ヒーローの心を得てみせる。椿さんは“多分無理だけど頑張れば”みたいに言うんだろうけどさ、オレは何があろうと諦めねぇ。あん時味わった気持ちを、もう一回感じてぇんだ」

 

 先月の激闘を回想しながら、天馬は言葉を紡ぐ。

 

「上位ベヒモスと戦っててさ、こう思ったんだ。“オレ達”は今、最高のヒーローだ、って。あん時ゃ憎しみとか復讐心とかそういうの全部消えててさ。一緒に戦ってたあいつの思いとか、自分の必死さとか、そういうのがリンクして……うまく説明できねぇんだけど、オレは短い時間、完全なヒーローになれた。その時の気分が忘れられねぇ。ひたすら真っ白、っていうのかな。本当に綺麗で、眩い感じなんだ。あれ味わったら、もうウジウジなんかしてられねぇよ。自分は人間だからとか、そんな言い訳もう二度とする気になれねぇ。……後何年生きてられっかわかんねぇけどさ。そっち行く前に、絶対ぇヒーローになってみせる。あいつらと、一緒にな」

 

 二人の顔を思い浮かべて、彼は美貌に微笑みを張り付けた。

 それから親に別れの挨拶を述べ、帰路へつこうとする。

 その背中に。

 

『頑張れ、天馬』

 

 弾かれた様に、後ろを向く。

 そこには誰もいなかった。だが、それでも。

 

 栗髪の少年は力強く頷いて、両親に感謝の念を捧げるのだった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。