僕は主人公になりたい ――最強の歯車・只野義人――   作:下等妙人

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第二章 密林の悪魔 5

「只野義人様、ですね? お車にご案内します」

 

 事務的な言葉に従い、白髪の少年は黒服についていく。

 そしてベルズタワーの外にて停まっていたリムジンのドアが開かれ――

 

 予想外の人物と、車内にて対面した。

 

「よぉ、ブラックナイト。初めまして、だな」

 

 悠然とした態度、まるで車内は我がテリトリーと言わんばかりの顔で、彼女、逢魔京香は言葉を紡いだ。

 

 不意打ちも同然の顔合わせに、義人は固まってしまう。

 

 それに対して、京香の隣に座る少女が不快感たっぷりといった声をぶつけてきた。

 

「京香様が挨拶をしてくださったのですよ? 速やかに挨拶を返しなさい、無礼者」

 

 それにハッとなると、彼は車に乗り込みつつ。

 

「……只野義人です。初めまして」

「つまらん自己紹介だな、マイナス八点」

 

 ダメだこりゃ、と言わんばかりに肩をすくめてみせる京香。

 

 そんな彼女にイラッと来た矢先、車が進み始めた。

 道路を行く車両の中で、白髪の少年は息を唸らせる。そうした何気ない所作に、彼女はツッコミを入れてきた。

 

「なんだ貴様、緊張しているのか?」

 

 それはこちらを案じての言葉、ではない。嘲笑うような、小馬鹿にしたような、不快極まりない語調であった。

 

 それから。

 

「ところで貴様、いつまで黙っているつもりだ? 言うべきことをさっさと言え」

 

 その発言に、白髪の少年は僅かながらも動揺する。

 

 ――もしかして、この人……僕の目的を把握してるのか? ここに居合わせのは、そのことについて話し合うため……?

 

 そう思いながら、彼は口を開くのだが。

 

「あなたが予想してる通り、僕はこの世界を――」

「貴様、何を勘違いしている? 謝礼の言葉を述べよと私は言っておるのだ」

「……は?」

「は? ではない。貴様は私に感謝する理由がある。よって礼を述べるのは人として当然のことだろう。まぁ、理由などなくとも人は私に感謝すべきだがな。逢魔京香とは存在するだけで感謝されるべき人間なのだ」

「……あなたの言ってることがちょっと理解できません。僕はあなたの世話になったことなんて一度も――」

「例えばだ。罠にかかっている鶴がいたとしよう。そいつは助けられた後、その場に糞を垂れて飛び去って行った。恩返しなどすることなく、な。貴様はその鶴と同じ糞垂れ野郎だ。私の世話になったことなどない? 阿保抜かせ。一度どころか二度三度とあるわ、この恩知らずめが」

「……身に覚えがありません」

 

 その返答に、京香は憮然とした態度となりながら。

 

「やれやれ、椿のやつめ。どうやって庇い立てをしたのか教えておらんな」

「庇い立て?」

「そうだ。貴様がやらかした喧嘩沙汰は十中八九私が、この私が、大事なことだからもう一度言うぞ、この、お・う・ま・きょ・う・か・が! わざわざ揉み消してやったのだ」

「……それは、全部叔母さんが――」

「ごまかせるわけなかろう、この愚か者。貴様、自分がしたことを思い返してみろ。随分と派手に暴れまくったよなぁ? 四條大橋の激闘、角宮通り一〇〇人殺し、そして鬼滅羅壊滅などなど、貴様の武勇伝(笑)は枚挙にいとまがない。これだけのことを一関東支部の長が揉み消せるとでも思ったか? だとしたなら、貴様は天下一品のド低能だな」

「ということはつまり――」

「貴様が娑婆の空気を吸えているのはこの逢魔京香の力あってこそだ。わかったらさっさと感謝の意を述べよ、この味噌っかすめが」

 

 ぶつけられる罵倒にイラつきながらも、義人は礼の言葉を紡いだのだが。

 

「どうも、ありがとうござ――」

「普遍的すぎてつまらん。マイナス一五点」

 

 その途中、バッサリと斬られてしまった。

 

 もう、どうしろってんだ。

 

 不快感が蓄積し、眉間に皺が寄る。そんな態度を、京香の側近らしき金髪の少女が非難してきた。

 

「なんですかその顔は。京香様を馬鹿にしているのですか。本当に腹立たしい糞野郎ですね。“あの男”とそっくりだ。忌々しくて仕方がない」

 

 何やらわけのわからないことを言ってきたが、とりあえず無視する。

 が、沈黙は訪れなかった。

 赤信号ゆえ、車両が停止した瞬間。

 

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