僕は主人公になりたい ――最強の歯車・只野義人――   作:下等妙人

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第二章 密林の悪魔 15

 洗いそう

 な皿なん

 と冷たい

 水で水温

 9度沢が

 有る度に

 

 ここに、先刻の文字列を被せ、重なった文字を消去する。

 そうすると、

 

 洗   う

     ん

 

 

 

   度沢 

 有る度

 

 このようになる。

 残った文字を読むと。

 

「あらうんざわあるど……アラウンザワールド、直訳すると……」

「せ、世界一周、ですねぇ」

 

 イリアの言葉に、全員がスッキリとした顔をする。

 その表情はまさに、難問を解いた直後そのもの。

 だが――

 

「えぇい、なんとも惜しい! ここまで来たというのに、時間が足らん!」

 レイチェルが悔恨の声を吐き出した。

 

 そう、残り時間は二秒しかない。そんな秒数で解答を出し、確信まで抱くのは不可能。

 そのため。

 

『タイムアップ。第一問目は不正解となります』

 

 残酷にも、代理人の声が現実を教えて来た。

 それから数秒後、義人は問題の答えを口にする。

 

「世界一周。つまり、左側の文章にある世界という単語の周りにある文字を並べていくと……さばのみそに。だから、この問題の解答は鯖の味噌煮だ」

『正解でございます。あと五秒早ければ、ヒントをお伝えできたのですが』

 

 そう告げた後、奴は意味不明な言葉を述べた。

 

『それでは不正解となりましたので……“リーパー・アドヴェント”。ご愁傷様です』

「……何を言ってるのかなぁ?」

『申し訳ございませんが、内容につきましてはお答えできません。おそらく、すぐにでもおわかりいただけるものと思います。その時をお待ちください』

 

 慇懃に言い置くと、以降、代理人は完全に沈黙した。

 

「リーパー・アドヴェント……直訳すると……」

「し、死神出現、ですぅ……!」

 怯えたような調子で応答するイリア。

 

 一方で、他の面々はというと。

 

「ははははは、死神とはなんとも面白い! ぜひ出会ってみたいものだな!」

「アメリカのことわざにはこんなのがあるぜ。死神にビビってて男のケツが掘れるか、ってな」

「そんなことわざ聞いたことがないんだけど。大体意味がまったくわからないわ」

「……死神、配置」

 

 誰も彼も、恐怖した様子はない。

 ソフィアもまた同様で、

 

「今後は周辺の警戒を強めよう。何が起こるかわからないからね」

 

 当然の注意を呼びかけ、終いとした。

 

 そんな彼女等を見て、義人は思う。やはり全員が全員、戦士である、と。

 危険は承知の上。ならば、いかなる事態が起きようとも心を乱す必要はない。

 

 そうした一流の心構えができている。イリアにしたって、表面上は恐怖しているようだが、きっと芯まで怯えているわけではあるまい。

 

 そんな彼女等に僅かながらも信頼感を覚えると同時に――何か、妙な違和を感じる。

 さりとて、別段気にする必要もなかろうとして、義人は歩き出す。

 

 白髪の少年が先頭に立ち、他の面々が周辺を警戒しつつ進む。

 

 そんな中。

 

「…………っ?」

 

 義人は立ち止まり、木々を見つめる。

 そんな彼に、ナンシーが疑問符を送ってきた。

 

「おいどうしたよ? なんかあったか?」

「……何かに、見られてるような気がする」

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