僕は主人公になりたい ――最強の歯車・只野義人――   作:下等妙人

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第二章 密林の悪魔 19

 そんな彼の心境をよそに、五人の少女達は称賛の言葉を送ってくる。

 

「とんでもない奴だな、君は。変身もせずに生身で倒すとはね」

「さっきの動き、アクション映画の主人公そのものだぜ。さっすがブラックナイト様だ」

「うむ。筆舌に尽くしがたい戦闘能力だ」

「た、助かりましたぁ……」

「……凄い」

 

 次々と繰り出される佞言(ねいげん)を全て無視しながら、白髪の少年は後ろを向いた。そうして、大の字に倒れた怪物を見る。

 

 胸部が破裂したような状態。それはついさっきの肘鉄が要因であろう。義人は人の姿であっても身体機能強化に類する異能は使用可能である。敵の致命傷は、その威力が遺憾なく発揮された証拠だ。

 

 そして、己が力によって仕留めた怪物を見つめながら、彼は疑問符を吐き出す。

 

「……なんなの、こいつ」

 

 濁り切った瞳が、糸の様に細められた。

 

 この怪物は、ベヒモスとは違う。もしそうなら、今頃総身が粒子に変わっている。

 さらに言えば、奴等のような無機質極まりない風ではない。足場としている怪獣と同様、完全に生命体といった感じだ。破裂した胸部から覗くピンク色の肉が、その印象をことさら強くしている。

 

「正体なんざ、どうだっていいさ。レベッカの仇が取れた。それだけで十分だ」

 

 言いつつ、ナンシーは遺体となった彼女に近寄り、ドッグタグを取った。

 

 遺品の回収後、皆は特に何も言うことなく、探索を再開する。どうにも冷然としすぎているように感じるが、そこらへんがプロらしさであるようにも思えた。

 

 一人欠けての進行だが、現状、特にこれといった支障はない。なので、彼には道中、思考をするだけの余裕があぅた。

 

 ――あの怪物は、おそらくリーパー、だな。問題が不正解になると、あぁいうのが配置されるってところか。……あの程度なら、僕にとってなんの脅威にもならない。けど、この子達にとっては――

『十分に脅威、でしょうねぇ。何せこいつら三下もいいとこですし。あの怪物みたく不意打ちを得意とするようなのが配置されるとしたなら、今後ばんばん死んでいくんでしょうねぇ』

 

 相棒の声は、どこか楽しげだった。

 そして数時間ほど探索を行ったが、モノリスは見つからず、また、有益な情報も得られなかった。

 

「……もう、夜か。ここらへんで休憩しよう」

 

 立ち止まり、提案するソフィア。

 義人としてはまだまだ余裕で回れるのだが、同行者達はそうもいかない。皆、大なり小なり疲労の色が見える。

 

 ――異能を使えば、皆の疲労を全回復させられるけど……視界が悪い夜中に動き回るのは、ちょっと得策じゃないな。この子達を守りきる自信がない。

 

 そう判断し、皆と同様ソフィアの言に従う。

 

 現在地はジャングルの只中である。鬱蒼とした木々と植物が視界一面に存在する空間。とはいえ、全員がくつろげる程度のスペースはあった。

 

 各々その場に座り込み、背負ったリュックを下ろし、中身を物色し始めた。おそらく携帯食料を出そうとしているのだろう。

 

 そんな彼女等に、義人は問いを投げた。

 

「アメリカのレーションは不味いことで有名だけど、実際のところどうなの?」

「えっと……正直、さほど美味しくはないですねぇ」

「だな。昔よかマシになったとは聞いたが、それでもあんま食いてぇもんじゃねぇ」

「オレは全然イケるがな! しかし量が少なすぎる! この倍は欲しいところだ!」

「とりあえず、不満があるってことはわかったよ。だったら……」

 

 義人は目前に大型のテーブルと椅子を創造し、その上に皿を出現させた。それら全てには湯気の立つ数多くの料理が盛り付けられている。

 それを見た同行者達は目を見開きながら、

 

「おいおい、マジでなんでもありかよ、我等がブラックナイト様は」

 

 ナンシーの言葉を皮切りに、称賛タイムが開始される。が、それらを一様に無視して、義人は椅子に座り込むと、

 

「食事は士気に影響を与えるからね。そういうわけで、こっちの方を食べよう。創り出せるのは僕の記憶の中にあるものだけだから、和食中心になるけれど……まぁ、レーションよりかはおいしいと思うよ? おかわりも自由だしね」

 

 その言葉に、レイチェルが真っ先に喜びの声を上げた。

 

 そして全員で食事。

 

 味の方は中々好評であった。特にかけそばが人気で、セシリーすら三杯ものおかわりを要求してきた。

 

 で、夕餉を終えた後、ソフィアが真剣な面持ちとなりながら言葉を紡ぐ。

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