僕は主人公になりたい ――最強の歯車・只野義人――   作:下等妙人

79 / 98
第三章 影が行く 2

 ここは三階建てとなっており、医務室、厨房、食堂、通信室、公衆電話室、図書室、娯楽室など、様々な施設で構成されている。

 

 普通、この管理棟には常時多くの人が駐屯し、それぞれの役目を果たしているとのことだが。

 

「……無人」

 

 セシリーの呟きが、三階、通信室に溶けて消えた。

 

「おかしいな。無人の基地なんて、まずありえない……」

 

 ソフィアが顎に手を当て、眉根を寄せる。

 奇怪を感じているのは他の面々も同じであった。それは義人にしたってそうだが、しかし、彼が抱く疑問は、おそらく皆とは違うものであろう。

 

 ――密林エリアでも感じたことだけど……妙に、既視感があるんだよな。この状況。

 

 記憶の中にある、とある情報を思い返す。そして、それをこれまでの探索に当てはめた。

 

 ――ジャングルの中、正体不明の怪物に襲われる。怪物は人型で、爬虫類みたいな体と、ドレッドヘアーみたいな頭部器官、さらに頭全体を覆うヘルムが印象的。現在地は南極に似た場所。そこにある調査隊基地……これって、偶然かな? もしそうでなかった場合、ここで待ち受けてるのは……。

 

 フィクションが現実のものとなる。そんな予感を胸に抱きながら、白髪の少年は同行者達に向けて口を開いた。

 

「ここには何もなさそうだね。別の場所へ行こう」

 

 彼に従い、基地内から出ていく一行。それからしばらく銀世界を歩き続け、

 

「こいつは……湖、みてぇだな」

「か、カチコチになってますねぇ」

「ふぅむ、歩けるのかここは」

 

 六人の眼前に広がる光景。それは、凍った湖である。

 それも相当な範囲だ。おそらく、一キロ先まで同じ景観であろう。

 進むか否かを話し合う同行者達に、義人はまっすぐ前を見つめながら言った。

 

「歩けると思うよ。だって、結構離れてる場所にモノリスがあるし。まぁ、あれは撒き餌の可能性もあるけど……でも、大丈夫。全員を浮遊させて行動するから、湖面が割れて水中に落ちる心配はないよ」

 

 その言に、全員が肯定の意を示した。なので、白髪の少年は早速異能を使い、全員を僅かに浮かせて移動させる。

 そして、何事もなくモノリスの前へと到着。その途端、一行は恐ろしいものを発見した。

 

「おいおい、なんだよこりゃあ……」

「ははははは! どでかい魚だな! こんなもん食いきれんぞ!」

「ぎゃ、逆に食べられちゃいますよぉ」

「……巨大」

 

 モノリスの下、凍った湖面の先に、とてつもなく大きな怪物が、口を開けて止まっていた。

 

 水中も完全に凍っているらしい。そのため、奴は一ミリも動かない。しかし、

 

「問題に間違えた場合、こいつが襲ってくるってパターンになりそうだな」

 

 少年の呟きに、ソフィアが反応する。

 

「もしそうだった場合、ボク等は無抵抗のまま食われることになる。おそらく襲撃から捕食までコンマ一秒もかからない。そんな短時間じゃ、退避は不可能だ」

「いや、大丈夫。その時は僕が守る。……レベッカの一件もあるし、信用なんかこれっぽっちもないと思う。でも、信じてほしい。今回は絶対に大丈夫だから。あの時みたいに不意打ちをしてくるわけじゃないのなら、僕は誰も死なせない」

 

 彼の発言を、ソフィアは信じたらしい。他の四名も同様であった。

 なので、義人は彼女等に頷いてから、石版に触れる。

 すると。

 

◆第三問

 

 とろじょょかいもしきせよあきのをう

(※いっくよめ)

 

 F(青)A(青)X(黄)

 P(赤)U(赤)L(黒)L(黒)

 W(黄)I(青)S(黒)H(黄)

 R(青)O(黒)C(赤)K(赤)

 S(黒)E(青)T(黄)

 

 Q、上記の情報から「地名」を導き出せ。

 

 といった問題が、表示された。

 同時に、一行は早速思考を開始する。

 

「ううむ、やはり今回もさっぱりわからんぞ!」

「……もう期待してない」

「このいっくよめってのがヒントだと思うんだよなー。けどぜんぜん意味がわかんねー」

「いっくよめ……なんだか、どこかで聞いたような感じがするんだけど」

 

 ショートヘアの茶髪を掻くソフィア。そんな彼女を見やりながら、義人が口を開く。

 

「いっくよめ、っていうのは、俳句のことを言ってるんじゃないかな? ちなみに、俳句って言うのは五文字、七文字、五文字の順で言葉を並べて詩を作るってやつなんだけど」

『ひけらかす。知ってる知識を。ドヤ顔で』

 

 五・七・五のリズムで煽ってくる相棒を華麗にスルーしながら、義人は言葉を続けた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。