僕は主人公になりたい ――最強の歯車・只野義人――   作:下等妙人

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第四章 大地の声 5

 これは少々、意外だった。義人=黒幕と皆が考えている場合、最低でも二人は見張りに付ける必要がある。一人だけでは不意打ちなどによって殺害された場合、仲間に危機を知らせることができなくなるからだ。

 

 氷雪地帯での救出劇や、このエリアでの行動により、少しは信頼を得ることができたのだろうか。

 とはいえ、そんなことはどうだっていいけれど。

 

 沈黙したまま、地べたに座り込んで時を過ごす義人とソフィア。

 彼としては、別に黙ったままでも問題はない。しかし、彼女はそうでもなかったらしい。

 

「ねぇ、ちょっと、お話しない?」

「……構わないよ。僕も、君にちょっと聞きたいことがあるし」 

「聞きたいこと、か。機密事項以外なら、なんでも答えるよ」

「そう。なら……君の過去を、聞かせてもらおうか」

 

 途端、ソフィアの顔に怪訝の色が宿る。

 

「過去? それはどういうことかな?」

「これまでの寝ずの番で、僕は自分の疑いを晴らすために君等の過去を聞いてきた。君達は僕を黒幕だと疑っていて、その理由が、自分の過去に関係性がある人物かもしれないから、だった。だから、僕は身の潔白を証明するために君等が抱えている殺されても仕方のない理由ってやつを聞いてきたんだ。まぁ、セシリーは答えなかったけどね。そんなものないって、嘘をつかれた。けど、君はどうかな?」

「……ボクは、君のことを黒幕だとは思っていない」

「そう。なら、個人的に気になるからって理由に変更しようか。マナー違反ってことは重々承知してる。でも、気になってしょうがないんだ。まぁ、君が嫌だと言うなら仕方ないけど」

 

 その言葉に、ソフィアは栗色のショートヘアをポリポリと掻いて、

 

「うーん、そうだなぁ……まぁ、減るもんじゃないし、別にいいけれど……ちょっと引いちゃうかもしれないよ?」

「大丈夫。そういうまともな神経は最近なくなったから」

「そっか、じゃあ、そうだな……前もって話しておくけど、ボクには殺されるかもしれない、なんていう怯えはないんだ。そういうのを防ぐために、徹底的にやったからね。で、本題だけど……ボクの過去になんらかの後ろ暗い部分があるとするなら、やっぱり復讐になるんだろうねぇ」

「復讐?」

「うん。ボクは相当不運な人間でね、身の回りの人間が大勢死んでるんだよ。家族であったり、友人であったり、色々とね。それが病気だとか事故だったなら、復讐なんかすることはなかったんだけど……他殺となれば、話が変わってくる。殺された人達は、皆ボクにとって大切な存在だった。それを殺されたとなれば……やっぱり、黙ってはいられない」

 

 そこで一息吐くと、彼女は過去を懐かしむかのように喋り出した。

 

「本当に、苦労したよ。何せ、復讐相手はどいつもこいつも特殊な立場を持っててね、そう簡単には殺せない連中だった。だから、ボクはアイアンブラッドに潜り込んだのさ。復讐を遂げるためにね。それで……最近、それがようやく完了した。ボクは、復讐をやり遂げたんだ。もちろん、ボクがやったなんていう証拠は残ってない。完璧に、徹底的に実行した。だから、ボクは誰からも殺されない」

 

 義人は眉根を寄せた。

 

 これはもはや、確定ではないか。

 ソフィアがしたのは、自白そのものである。自分が黒幕、もしくはその協力者だと、打ち明けたようなものだ。

 現在死亡した者が持つ過去を考えれば、ソフィアが復讐をした、と考えてもなんら不思議ではない。唯一レベッカが経歴不明であるが、おそらく彼女にもなんらかの暗い過去があるのだろう。

 

「ねぇ君、自分が何を言ったのか、理解できてるのかな?」

「あぁ、理解してるとも。冗談だよ。全部冗談。……そんな怖い顔しないでくれよ、本当に冗談だってば。ボクに後ろ暗い過去なんかない。けど、そう言ったって君は満足してくれないだろ? だから嘘の過去をでっち上げたわけだけど……ちょっと冗談が過ぎたね。悪かったよ」

 

 にこやかに微笑むソフィアだが、義人は彼女を睨んだまま。

 

 先刻の発言は、本当に嘘だったのか。

 答えは不明である。嘘にしては真に迫りすぎていた。が、もし真実だったとしたなら、なぜソフィアは自白などしたのか、ということになる。

 結局、真相は闇の中。

 しかし、ソフィアの名は、容疑者リストにしっかりと刻まれたのであった。

 

 

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