僕は主人公になりたい ――最強の歯車・只野義人――   作:下等妙人

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第六章 エンドロール 4

 腹を抱え、狂ったように笑う。

 そうした様子に名状しがたい苛立ちを感じる義人。

 

『こいつキチガイですね。真性のキチガイですよ、マジで。あー、怖いですねぇ。頭がイってるような奴はどいつもこいつも駆除すべきだと思います』

 ――お前が言うな、このブーメラン野郎。

 

 相棒にツッコミを入れた後、周囲を見回す。

 化物達が、停止していた。

 それと同じく、ソフィアもまた、止まっている。

 

「……どうやら、君が黒幕とみて間違いないみたいだねぇ?」

「そうだよー?」

 

 あっさりと認めてから、奴は小首をかしげて見せた。まるで、それがなんだってんだバーカと嘲笑う様に。

 

 仕草が一々腹立たしい。今すぐに殴りかかっていきたい。

 その欲求を抑えながら、義人は質問する。

 

「君は、何者なのかなぁ?」

「何者? あ、そういえば名前を名乗ってなかったねぇ。でも色々あるからなぁ。地理的には日本に近いわけだから、外山道無って名乗った方がいいのかな? あー、でも今は体が違うし、ボクとしても新鮮な気持ちでプレイしたいんだよねぇ。そういうわけで――ミカエル。クリス・ミカエル。気軽にクリス様って呼んでよ。ボクは君のことよっちゃんって呼ぶからさぁ」

「君って馬鹿なの? 誰も君の名前なんか気にしてないんだよ、このゴキブリ頭。一体何が目的でこんなことをしたのか、どういう立場の人間なのか、そういうことを聞いたんだけどなぁ?」

「目的? そんなの決まってるじゃないか。ゲームだよゲーム。楽しい思いがしたかっただけさ。ま、君をテストするって意味合いもあったけど、それは三割ぐらいの気持ちだねぇ。あ、ところでさ、一応聞いとくけど、なんでイリア=黒幕って正解に辿り着いたのかな? ほら、こういうのって説明が大事じゃん? 勘で正解しました、みたいな理由だったら最初からやり直しすることになるから、嘘でもちゃんとした理由を言ってね! じゃあ説明タイムスタート!」

 

 なんでわざわざ、という思いはある。

 だが、このサイコパスじみた少女は、何をしでかすやらわからない。ゆえに、今は大人しく要求に従ってやろう。

 

 そう取り決めると、彼は口を開いた。

 

「最初の段階では、全員が犯人って説を有力視してた。何せ、ヒントには共通点があったから。特等席で見ていて、嘘つきで、重要な任務があって、武器を持ってない。これって全員に当てはまる特徴だよねぇ? 特等席で見てる。これは言うまでもない。重要な任務にしてもそうだ。武器を持ってないってのはちょっとひっかけじみてたな。ナイフだとか銃器だとか、そういう意味ではなく、カラーズとしての武装を持っていない。そういう意味だったんだろ?」

「だいせーかい! そこに気付くあたり、やっぱ間抜けな不良キャラじゃないっぽいね」

「……五人についても色々聞きたいことがあるけど、今は置いておこう。続きになるけど……僕はこの全員犯人説を有力視してはいた。でもそれには二つの問題があった。まず、確たる証拠がないってこと。この点は、ついさっき解消されたよ。第一問に挑戦した時点で僕は何か違和を感じてた。その理由は――問題を読めるわけがないのに、平然と読み込んでいること。これが違和感の原因だった」

 

 これまで出された問題を思い返す。

 それらの中には、日本人でなければ理解すらできない内容が多々あった。それなのに、彼女等はそこについてなんら言及することなく、理解しているかのような様子を見せていたのだ。

 

 この点について、義人は本当についさっきまで気づかなかった。

 彼は異能を使用することで英語を日本語に変換している。よって、感覚的には外国人と接しているのではなく、日本人と接しているのとさほど変わりがない。

 

 それにより、見逃していたのだ。彼女等が日本人にしか理解できないような問題文を、理解できるという状況の奇妙さを。

 

「おそらく、問題は日本語で書かれてた。今思えば、挑戦した問題の数々は、日本語以外の言語じゃ再現不可能なものばかりだ。それは日本人の僕なら理解できる。でも、彼女達は違うはずだ。いくら語学が堪能であったとしても、言葉遊びができるようなレベルに達する必要なんかないんだよ。彼女等は普遍的な会話と読み書きができれば、おそらく任務に差し支えるようなことはないんだから。……もっとも、あの五人が本当に特殊部隊だったらの話だけど」

 

 チラ、とソフィアを見やる。

 生気のない目。微動だにしない体。

 その様子からは、人間らしさというものをこれっぽっちも感じない。

 

「特殊部隊どころか、人間じゃなかったりするのかなぁ? あの子達は」

「そうだよー?」

 

 クリスはあっさりと認めた。

 

「……なるほど、人じゃないから、僕は守れなかったことを気にしなかったのか。で、人である君は守れて嬉しいと感じたわけだ。まぁ、そんなことはどうだっていい。奴等が人じゃないというなら、一体なんなんだ? 君が僕と同じ存在だってことはわかる。ブラックなんだろう、君も。けれど一つ不可解なのは……ブラックに、生命体を創造する力なんか存在しない。それなのに、なぜ君はこの怪獣を創ることができたのか。それが全くわからない」

「怪獣だけじゃなくて、五人の女の子もボクが創ったんだよ? ソフィアちゃんとかかなりいい感じに仕上がったと思うんだけど、君はどう思う?」

「どうでもいい。質問に答えろ、この白髪馬鹿」

「あひゃひゃひゃひゃひゃ! 自分も白髪のくせに白髪馬鹿とか! しかもそこまで頭良くないのに人のことを馬鹿扱い! やっばい、マジウケるー!」

 

 抱腹絶倒。そんな態度に、秒刻みで膨大な怒気が蓄積されていく。

 

「……質問に、答えてくれないかなぁ?」

「その前に説明タイムを済ませてほしいなぁ?」

 

 モノマネの如く言い返してくる白髪の少女。やはり何から何まで不愉快の極みである。

 募る苛立ちを堪えながら、義人は続きを語る。

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