僕は主人公になりたい ――最強の歯車・只野義人――   作:下等妙人

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第六章 エンドロール 5

「……とにかく、最初は全員が黒幕って説が強いと感じてた。けど、何か違和があった。その原因はイリア、つまり君の存在だよ。ついさっきちょっと言ったけどね、僕の中で君があまりに特別過ぎたんだ。他の連中に無関心なのに、なぜか君に対してのみ、守らなきゃといった感情を抱いてた。それが理由で、全員が犯人ではなく、君が犯人なんじゃないか。と思うようになった」

「おいおい、それは随分と短絡的じゃないかなぁ? 根拠が勘だけって言ってるようなもんだよ?」

「別に勘だけってわけじゃない。ヒントの一つ、嘘つきって奴が、相当強い証拠だと僕は睨んでた。さっき言った通り、ヒントは全員に当てはまる。けど、この嘘つきってやつだけが、イリアにだけ当てはまらなかった」

 

 義人は各員の嘘つき要素を述べる。

 

 ナンシー=嘘のことわざやジョーク。

 セシリー=過去・経歴を虚偽。

 レベッカ=ツンデレ、つまり己の本音を偽る人格。

 レイチェル=嘘の武勇伝。

 ソフィア=虚偽の過去を語った。

 

「……と、皆嘘つきの要素を持っていたにも関わらず、イリアだけがなんの嘘もついてなかった。これはあまりにもおかしい。彼女にも、なんらかの嘘つき要素があるはずなんだ。それが見つかったのは、最後のヒントを手に入れた後だった」

 

 ここで一息吐いてから、続ける。

 

「生きているとは限らない。このヒントは、これまでに死んだ人間が犯人と考えるのが妥当だけど、それはミスリード。このヒントの真相は、イリアが嘘つきだと証明するためのもの。違う?」

「うん違う。でもま、とりあえず続きを話しなよ」

「……この生きているとは限らないってヒントを、さっき言った通り、死んだ人間の中に犯人が居るって考えちゃうような馬鹿はそうそういない。むしろその逆。深読みして、死んだ人間は犯人じゃないって考える人が多いんじゃないかな。で、ヒントの真意を推測する。つまり、このヒントに当てはめれば、死ぬ=容疑者から外れるってことになる。そしてもしイリアが嘘つきになるとするなら、このヒントに乗っかるという形しかない。つまり――死を偽装して容疑者から外れる。それが、イリアの嘘つき要素だった」

 

 そして、白髪の少年は結論を述べる。

 

「イリアがついた嘘は、自分が犯人だと述べるようなもの。よって、イリア=黒幕という結論が出た。君があの怪物に食われたと同時にね」

 

 その言葉に、クリスは首を傾げ、

 

「うーん、まぁ、合格ってことにしとこうかなぁ。正解を出してから思いっきり行きすぎちゃったって感じだねぇ」

 

 それから首の位置を戻し、

 

「よっちゃんさぁ、ちょっと深読みしすぎだよ。全員が犯人。この正解を導き出した時にそれを代理人もといイリアちゃんに言ってたなら、その時点で終わってたのにねぇ」

 

 真なる正解が出された直後、義人のすぐ目前に五人の少女が突如顕現した。

 ナンシー、セシリー、レベッカ、レイチェル、ソフィア。

 死した者を含めた五名が、生気のない顔をこちらに向けて来る。

 

『は、は、は、は、は。まるでゾンビですねぇ。チョーキモーい』

 

 イヴに同意しながら、一列に並ぶ少女達を睨む。

 そして。

 

「ところでさぁ。いくつか気になってることがあるんだけど、いいかな?」

「答えられるものなら全部答えてあげるよ。ばっちこーい!」

「まず、さっきも聞いたことだけどね、こいつらは何? もう説明タイムは終わったんだし、教え――」

「教えてあげないよっ! じゃん!」

「……古臭いネタをありがとう。で、答える気はないって解釈でいいのかなぁ?」

「ごめんね~? 教えてあげたいんだけどそれやるとルール違反になっちゃうからさぁ」

「意味わかんないよ。この腐れサイコ野郎。……次の質問だ。南極エリアの死体らしきもの。あれってなんだったの?」

「舞台背景みたいなもんさ。君、途中で舞台の元ネタがわかったでしょ? ボクは映画が好きでねぇ。こっち来てから色々と見たんだけど、今回の元ネタ映画達がトップレベルで好きなんだ。そういうわけで、現実に映画の世界を再現したかったからあぁいうのを配置したってわけ」

「ふぅん。くっだらない理由だねぇ。深読みするんじゃなかったよ」

 

 そう答えてから、義人はさらに問いを重ねた。

 

「この子達は、生物ではあるけど人間じゃない。そう解釈していいのかな?」

「うーん、そもそも生物かどうかもわかんないねぇ。色々特殊だもの。ま、人間とは全く違う存在だから、人間扱いはしなくてもいいんじゃないかなぁ?」

「あっそう。なら……暗殺業務のせいで報復を恐れる子は、存在しないんだね?」

「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ! そもそもそんなほっそい神経で暗殺の仕事なんかできるわけないしゃーん! フィクションでもおかしな人間性って叩かれるよ、きっと!」

「ギャング同士の抗争で弟が殺されちゃった女の子は?」

「そんなテンプレ過ぎる過去を持ってる子なんか存在しませーん!」

「長い時間をかけて復讐をやり遂げた子は?」

「全部嘘っぱちでーす!」

「ふぅんあっそう――騙してくれてどうもありがとう、クソッタレ」

 

 死刑宣告を済ませてから、義人はそれを直ちに実行した。

 

 掌に血色の剣を生成し、一閃。

 

 前方を横薙ぎにして、並列した五人の肉人形の首を刎ねる。次いで、連中の体が斃れ伏せるよりも前に、漆黒の鎧は周囲に無数の剣を召還し、推進させた。

 

 凄まじい勢いで、四方八方へと飛ぶ紅(くれない)の刃。それは目前にて倒れ行こうとしていた五つの肉袋はもちろんのこと、周辺に存在していたあらゆる化物共を串刺しにしていく。

 

『は、は、は、は、は。爽快ですねぇ。ようやく来ましたか。虐殺タイムが。しかし――主犯が意に介していないというのが、なんとも腹立たしいですねぇ』

 

 イヴの発言は、まさに義人の心情を代弁するものだった。

 剣によって絶命したのは雑魚のみ。肝心の親玉は、球体状の防護壁を形成し、事なきを得ていた。

 

「あんなもの、ブチ破ってやる……!」

 

 掌に血色のエネルギーを蓄え、射出の準備を整える。

 と、その最中、後頭部にちょっとした衝撃。

 

 後ろを振り向くと、ビルや飲食店など、様々な建造物にジャングルで出会った怪物達が陣取っていた。

 二メートルを超える巨体と、人間+爬虫類のような姿。マスクを被った頭部が印象的なそいつらの肩にはキャノン砲が装備されており――

 

 次の瞬間、奴等が一斉に砲撃してきた。

 

 迫りくる熱量の塊。嵐の如きそれに対して、義人は何もしなかった。

 受ける。ただ、受ける。

 結果として、全弾命中。しかしながら、ダメージを受けたのは鎧の周辺地帯のみ。彼自身の体には、傷一つ付いていなかった。

 

 砲撃によって舞い上がる埃。それが胸元あたりに付着したので、ささっと右手で払うと――左手に蓄積しておいたエネルギーを、返礼として放出した。

 まるで濁流のような激しさを持つそれは、瞬く間に人型の化物を飲み込み、射線上にある建物を破壊する。

 

 義人は腕を動かすことで、血色の奔流が進行する軌道を変化させた。

 

 ビルが、商業施設が、マンションが、次々と消し去られ原型を失っていく。小型の敵集団を倒すことを目的にした攻撃とは思えぬド派手なそれにより、前方一面が完全に焦土と化した。

 

『うっわー、わたしでも引くぐらいの壊しっぷりですねぇ。この意気で世界中の大都市を吹っ飛ばしてくれると嬉しいんですが』

 

 楽しそうに言葉を紡ぐ相棒を無視して、義人は最後の仕上げを行った。

 

 第二形態への変身。

 頭部に三本の角が伸び、背部、両肩など、全身の随所に巨大な棘が生える。

 悪魔のようなおぞましい姿となってから、彼は天空へと人差し指を伸ばし――

 

 指先から、無数の光線を放出した。

 

 血色のそれは瞬く間に怪獣の体表全体へと広がり、やがて着弾。ありとあらゆる場所に破壊をもたらし、全てを消し飛ばした。

 ジャングルの木々を、氷雪地帯の氷と施設を、荒野の上にある岩や建物を。そしてここに存在する文明的な色を、まっ黒に塗りつぶす。

 

 残ったのは綺麗さっぱりとした平地と、二体の怪物。

 義人とクリス。彼等だけ。

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