『向こう正面をウマ娘達が駆けていく!先頭は未だツインターボ!逃げまくった先に勝利がある!!しかしセイウンスカイとの距離が詰まってきているか!?中団ではグラスワンダーが位置を上げ、そして最後方のゴールドシップが徐々に、徐々に加速を始めている!不沈艦の出航だ!!この船に乗り遅れてはこの有マで勝利を掴むことは難しい!!バ群が少しずつ集まっていく!!最終コーナーに向かっていきます!!』
実況が伝える通り、1500mを越えた段階で、ゴールドシップが己の領域を存分に発揮した。
────────【不沈艦、抜錨ォッ!】
中盤にて発動するそれは、ここから先の減速がないことの証明。
ゴールまでの加速を齎すもの。
その恐ろしさはレースを走るウマ娘全員が知っている。
ここから先は、最後尾から上がってくるゴールドシップがペースメーカーとなる。
あれに抜かれたら終わる。
(へへっ…だがよぉ、やっぱここで堕ちてはこねぇよなぁ!!)
ゴールドシップがその表情に戦意溢れる笑みを浮かべてレース展開への所感を零す。
有マ記念、2500mというこのレースでは、スタミナが尽きた者から脚を衰えさせ、垂れていく。
最終コーナー前までに掛かり気味だったウマ娘などはこの時点で抜かしているが…今回は、やはりというべきか、前を走る優駿たちのその誰もが、己の追い上げに負けまいとさらに速度を乗せていく。
そんな中で、ゴールドシップは一つの音を耳にした。
それは呼吸音。
ああ。恐ろしく聞き覚えのあるその音。
チームで共に走る中で、その音を何度も耳にした。
ウオッカの奏でる、彼女の独特の呼吸によるスタミナ回復。
『好転一息』だ。
「────────フゥ────────!!!」
その音が、最後尾から追い上げるゴールドシップの耳に入る………と、
同じ音を耳にしていたウマ娘がいた。
驚愕と共に呼吸音を耳にしていたのは、先頭から二番目を走るセイウンスカイだ。
音の発生源は、3バ身先を走るツインターボの口元から。
(嘘でしょ…!?いつの間に覚えたのさ、
限りあるスタミナを消耗しながら走っていたツインターボが、もう間もなく逆噴射すると思わせるタイミングで、息を吐き続け────そして、一息にしてスタミナを好転させたのを、セイウンスカイは謎の既視感を伴いながら見届けた。
(オールカマーを走り切ったのはこれが出来るようになってたからか!!見逃した!!クソッ、これじゃ最終コーナーで堕ちてこない!走り切られる…ッ!!)
セイウンスカイは、ツインターボの走りを冷静に分析し、そして考えていた策が不発に終わったことを察した。
己のスタミナは十分で、ツインターボは呼吸とその走りからスタミナを消耗しており、恐らくは最終コーナーで垂れるであろうと推測していた。
コーナーの途中で追い抜いて、直後に領域を発動しぶち抜けるはずだったその未来は、彼女の好転一息によって泡と消えた。
『先頭のツインターボが最終コーナーに入っていく!!その脚は────衰えない!!まだターボエンジンは廻っている!!
────────────────
────────────────
「……だ、あああああああああああああああ!!!」
ツインターボが、最終コーナーを裂帛の鬨の声を上げながら走る。
己のできる最高の走り。
それを成したという実感がある。
それは、かつて、トウカイテイオーに諦めないことを魅せつけるために走ったオールカマーの様に。
まだ脚は衰えていない。
第四コーナーへ、自分だけが入っていく。
そして、その瞬間こそが。
第四コーナーで。
逆噴射せずに。
己が先頭で。
後続に差をつけて、突入することが。
ツインターボが、第二領域に目覚める条件だった。
────────【
覚醒する。
その領域は、更なる加速を齎すものではない。
減速を拒むもの。
本来であれば、最終直線で逆噴射、もしくはそれに近い減速を生んでしまうであろうその破滅逃げの最終行程にて、しかし第二領域の発動によりツインターボは減速を最小限に抑える。
そこまでに生んだバ身差をキープしながら、走り抜けることを目的とするもの。
誰よりも速く、コーナーを抜けて、減速せずに走り抜ける。
しかして、それを見て驚愕するのはセイウンスカイとメジロマックイーンだ。
好転一息によるスタミナの回復、およびその後の更なる覚醒で、ツインターボが逃げ切りを決め、走り抜けようとしている。
後続からも次々と領域に至る圧が放たれているが、先頭がまずい。
だからといって。
諦めるほど、この二人の心は弱くない。
いや、むしろそのツインターボの激走を見て、高揚する。
昂る。
連なるように、限界を超えていく。
「……負けるか!!私だって、黄金世代なんだあああああ!!!!」
────────【Do Ya Breakin!】
「メジロ家を……
────────【最強の名をかけて】
────────【貴顕の使命を果たすべく】
黄金世代の優駿が。
メジロ家の最高傑作が。
共に、同時に、第二領域に目覚めた。
最終コーナーの出口で、ツインターボに詰め寄る二人。
この二人もまたレジェンド級のウマ娘。
限界をぶち破る事には慣れている。
それを見ることも、それを成すことも。
逃げの3人が限界を超えてコーナーを駆け抜ける。
そして、それを見た後続も、次々と。
「セイちゃん…!私だって、負けないっ!!!」
────────【シューティングスター】
「黄金世代、最後の勝負と行きましょう………譲りませんっ!!」
────────【精神一到何事か成らざらん】
「かーっ!!アガってくるぜぇ!!構うこたぁねぇ、こっから全力だぁ!!」
────────【カッティング×DRIVE!】
「負けない…こっからだ!!グランプリを連覇するのはアタシだァッ!!」
────────【レッツ・アナボリック!】
己が領域を、次々と発動しながら、先頭に迫る。
最終局面に向けて己の魂の鼓動を放つ。
勝つのは己だと叫ぶように。
そして、そんな中で。
最後方、ゴールドシップが追い付かんとしていた位置で────このウマ娘もまた、領域に至ろうとしていた。
(…見えた!!私だけの道!!)
エイシンフラッシュが、コーナーを走るその先に、光り輝く道を見つけた。
それは彼女が領域へと至る道。
一年前のこの中山レース場で見た時のか細い光の筋ではない。
激戦を潜り抜けた今、その光の筋は帯となり、柔軟な発動条件をもって、最終直線に向かって伸びていた。
後はあそこに踏み込むのみ。
位置取り、
脚の溜め、
先頭との距離、
いける。
その光の筋に足を踏み入れて、己もまた領
────────『八方にらみ』
ざくりと。
それは領域に突入する瞬間に己の横から放たれた、睨みによるもの。
隣にいたナイスネイチャによる、完璧なタイミングでの最強の牽制だった。
光の道が、途絶える。
エイシンフラッシュは覚醒の直前に動揺させられたことによって、領域に入れなかった。
「……させないよ。この終盤に至っても、一番怖いのはフラッシュさんだから…ねぇっ!!!」
「ネイチャ、さん……ッ!!」
ナイスネイチャは、クラシック級のウマ娘を
特に、三冠を獲得したこのエイシンフラッシュを誰よりも警戒していた。
彼女のことを熟知していた。
なにせ、春先に……また、その後も何度も、併走をして、恐ろしさを誰よりも知っている。
だからこそ、領域に入るタイミングも掴めていた。
シンボリルドルフですらここまで鮮やかに潰し切ることはできないだろう。
理想的な妨害。
そして、それに動揺するエイシンフラッシュを差し置いてナイスネイチャもまた速度を上げる。
ここまで、ナイスネイチャの作戦は完璧だった。
このレースに至るまでに昼夜を問わず考えに考え抜いた、まるで珠玉の宝石のようなレースの支配は、この八方睨みをもって完成に至った。
そして、ナイスネイチャもまた目覚める。
己の完璧なレース支配を土台として、絶対に勝ちたいという想いが、彼女の第二領域をこじ開ける。
────────【Go☆Go☆for it!】
「さあ……あとは全部ぶつけるだけっ!!先頭で待ってろターボォォォ!!!!」
ナイスネイチャが加速し、コーナーを抜けて最終直線に向かっていく。
それに続くようにアガっていくゴールドシップ、直線に入り一気に伸びていく。
優駿たちが、己が一着を取るのだと最終直線に向かい、横に広がり加速して行く。
『最終コーナーを上がって先頭は未だツインターボ!!その速度は落ちないがしかし後続がさらに伸びてくるっ!!セイウンスカイが!!メジロマックイーンが上がってきた!!』
『そしてそんな先頭を貫かんとスペシャルウィークもグラスワンダーもやってきたぞ!!ヴィクトールピストもそれに続く!!その後方にメジロライアン!!ウオッカも今日は早い位置から伸びてきます!!しかしその後方から更なる加速をもってナイスネイチャと────エイシンフラッシュが苦しいか!?ゴールドシップが今エイシンフラッシュを差した!!残り250mッ!!三冠ウマ娘が苦しいかッッ!?』
エイシンフラッシュは、領域に入れずに、堕ちた。
実況も、観客も、それを見届けて。
しかし。
「……来ないはずが!!ないでしょう!!!フラッシュ先輩が!!!」
「来る…絶対に、来る!!フラッシュちゃんは、来るッ!!!」
ヴィクトールピストが。
メジロライアンが。
エイシンフラッシュが最終直線で迫ってくることに、一切の疑念を抱かなかった。
彼女は、来る。
限界を乗り越えて、絶対に、来る。
それは、世代で共に走り続けてきた彼女たちだからこそ出せる結論。
どれほどの窮地になっても。
どれほどの劣勢になっても。
どれほどの、絶体絶命の危機になっても。
────────────────
────────────────
(…………)
エイシンフラッシュは、己が許せなかった。
油断はなかったと言えるだろう。
しかし、私は、シニア級のウマ娘の底力を、どこかでまだ
レース前に研究の為にライバルウマ娘の過去のレースを見て、それで事前に彼女たちの走りの傾向を見積もった。
その上で今日のレースの作戦を組み立てた。
彼女たちが得意とする戦術、得意とする作戦、領域の効果、それをしっかり把握したうえで、今日は勝てると判断していた。
だが、今日と言う有マ記念のレースにおいて、彼女たちは過去のレースを置き去りにして、進化した。
誰もが、己の限界を超えてきた。
自分たちの世代が、これまでのレースでやってきたことを、彼女たちは成した。
シニアを走るウマ娘達、その誰もが激戦を潜り抜けてきた猛者なのだ。
私達が経験したようなレースなど、それこそ幾重にも束ねて経験してきている、ベテランのウマ娘達。
その経験を、
己への叱責と、強い反省。
そして、相手のウマ娘達への、誇らしいほどに走る彼女たちへの、純粋な敬意。
そして。
「─────フラッシュゥーーーーッッ!!!!!」
「─────お前なら行ける!!!ぶち抜け!!!」
「─────後ろから、全部捲ってこいッ!!!」
私の、トレーナーの、声が聞こえて。
負けられない。
勝ちたい。
素晴らしいライバルたちに、私の全力を見せつけたい。
エイシンフラッシュの中に生まれる、新たなる熱。
残り直線250m。
前を走る優駿たちを差し切るには、十分な距離。
「──────────────!!!」
ゼロの領域、ではない。
脚は残っていた。
精神的に追い詰められてもいない。むしろ高揚に溢れていた。
だから、これは純粋な新領域の発現。
エイシンフラッシュが内包する可能性、第二の
────────だが。
この中山レース場で。
この冬の有マ記念で。
それに目覚める意味。
────────【Guten Appetit】 Mit Kirschblüten
エイシンフラッシュが、第二領域に目覚めて。
そして、運命の扉が開かれた。
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──────────
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──────
─────
────
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─
領域に目覚めた時の心象風景。
それを、コンマ1秒にも満たない一瞬のうちに、エイシンフラッシュは感じ取っていた。
そこに立っているのは、コック服を来た私。
キッチンで、お菓子を作っている私。
ああ、それはきっと、私の未来の姿なのだろう。
ドイツで両親の後を継いでケーキショップを継ぐ私の、そんな想いが見えて。
そして、その心象風景の中で、私は。
(……?)
エイシンフラッシュの意識が、その光景に僅かな違和感を抱く。
三人分のケーキで間違いない。材料の分量を見誤ることはない。
だが、三人前を作るというシチュエーションに、余りにも心当たりがなかった。
ケーキを作る。
と、なれば、チームのメンバーに作った物だろう。
私が心象風景に見るほどの想い出ならば、それであろう。
だが、三人前を作るということは、まずない。
トレーナーと二人きりでケーキを楽しむなら、二人前。
チームみんなで食べるとなれば、私とファルコンさん、アイネスさん、そしてトレーナーの分で四人前。
サンデーさんがチームに入った後で、その全員分を作るなら、五人前。
────────三人前?
しかし、心象風景の向こうの私は、それを随分と楽しそうに作っている。
ケーキが完成に至り、皿に乗せて、そうしてその向こう、テーブルについてケーキを待っていたであろうその二人へ配膳していく。
その姿を、私が見ている。
────────私が、私を見ている?
笑顔を浮かべた私が、まず一つ、目の前に座る男性へケーキを置く。
それは、間違いなく愛するあの人。
黒いシルエットに包まれているが、その輪郭でわからないはずもない。
立華勝人が、そこにいて。
そして、その隣。
黒いシルエットに包まれた、もう一人の、誰かがいた。
────────貴方は誰?
身長は低い。
耳と尻尾がある事から、ウマ娘であることが分かる。
随分と、
お互いに、笑顔を浮かべているのが雰囲気でわかる。
────────これは、
記憶にない。
記憶にないそのシチュエーションを、まるで誰かの記憶を見ているかのような違和感をもって、エイシンフラッシュが受け止めた。
もう一つのケーキを、そのウマ娘の前に。
そして、最後の一つを私の前に。
三人による、お茶会が開かれる。
ケーキを食べる立華勝人は、とても楽しそうにしている。
その隣で同じように、楽しそうにしている彼女。
まるで、彼のパートナーは私であるとでも言いたそうな、その様子。
彼の隣に立っているのは、私ではない。
スマートファルコンでも、アイネスフウジンでも、サンデーサイレンスでもない。
彼女は。
彼女の、名は。
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──
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─────
──────
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────────────────
『残り200m…ここで!!ここでついに来たエイシンフラッシュゥ!!!その末脚は誰にも並ぶものはないっ!!ぶっ飛んできた!!ツインターボは先頭が厳しいか!!後ろとの距離がもうないぞ!?だがその後ろも接戦だ!!集っている!!この有マの最終直線に!!優駿たちが集う!!エイシンフラッシュが位置を上げる!!先頭から2バ身もない!!!だが誰が勝ってもおかしくないぞ!!盛り上がって参りましたァッッ!!!』
残り200m。
この地点で、優駿たちはその差をほぼ無くしていた。
横に広がり、そして誰もが一着を目指して全力で爆走する。
もう牽制も何もない。ただ、己の全てを振り絞る。
そんな、真っすぐにゴールだけを見るはずの、最後の200mで。
~ ~
(……?)
最初に気付いたのは、先頭を必死に走るツインターボだった。
冬の中山に、ひらりと。
一枚の桜の花びらが舞っていた。
(……!)
ひらり、ひらりと。 ~ ~
(……!)
まるで、踊るように。 ~ ~
(……!)
桜の花びらが、幾つも舞う。 ~ ~
(……!)
それは、ツインターボのさらに三バ身先から、生まれていた。 ~ ~
(……!)
魂の、幻影。 ~ ~
(……!)
舞う桜の花びらが、そこに、誰かが走っているような、そんな幻影を生む。 ~ ~
(……!)
このレースに挑むウマ娘の中で、その幻影を見たのは、9人。 ~ ~
(……!)
セイウンスカイ。グラスワンダー。ゴールドシップ。スペシャルウィーク。メジロマックイーン。ナイスネイチャ。ツインターボ。ウオッカ。
そして。 ~ ~
(……!!!!)
エイシンフラッシュ。
この9人が。
何かに引き寄せられてこの有マに集まった9人が、同時にその幻覚を見た。
エイシンフラッシュの第二領域の覚醒によって生まれた、仄かな影。
季節外れの桜の名残を、見た。
そして確信に至る。
ああ、私は。
あれと、共に、走るために。
勝つために。
今、走っているのだと。
その桜の幻影は、速度を落とさずに最終直線を吹き抜ける。
花信風。
一陣の春風が、冬の中山に吹いていた。
────────────────
────────────────
『残り150m…ここで!!ここで全体がさらに加速!!誰もが勝利を譲らない!!誰もが勝ちたい!!そんな想いが見て取れるような全霊の走りだ!!!その眼差しはまっすぐに前を向いて─────な、なんと!?ここでこのウマ娘が来た!!!来たぞッ!!!』
「…………ああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
────────【届いた祈り、叶った夢】
桜の幻影に惑わされなかった、大外を走るウマ娘が、ここで第二領域に目覚めた。
ヴィクトールピスト。
彼女は、周囲の気配…勝利に向けて爆走する彼女たちが、最終直線にて更なる加速を果たしていったことに、驚愕と、敬意と、疎外感のようなものすら感じられて。
秘めたる激情が、爆発した。
私だって世代のウマ娘だ。
この有マ記念で、勝つために走るウマ娘だ。
私を、見ろ。
そんな強い想いが、彼女の第二領域を引き出した。
切り札を最後に切ったのはヴィクトールピストになった。
それは、かつて立華勝人が過去の世界線で彼女の走りに見た領域。
【
純粋に、加速と、スタミナの回復を齎すもの。
それが最終直線で、先頭までの僅かな差を埋めきるために放たれた。
激情の第二領域により、ヴィクトールピストが伸びた。
一気に、先頭との距離を詰める。
その激走に気付いた周囲のライバルたちもまた振り絞って加速する。
運命の決着は。
『ヴィクトールピストがここで来たッッ!!!伸びていく!!先頭のツインターボを捉えるに───至る!!至った!!残り50m、エイシンフラッシュも伸びるがこれは届かないか!?去年の冬の中山の再現なのか!?昨年のアクシデントによる決着を実力で再現するのかヴィクトールピストォ!!!』
『もうゴールは目前!!バ群を抜けだしたエイシンフラッシュ!!しかし大外ヴィクトールピストが速い!!ヴィクトールピストが譲らないっ!!ヴィクトールピストだ!!ヴィクトールピストだッッ!!ヴィクトールピストが今!!一着でゴーーーーーールッッ!!!!!』
『今年の大一番、冬のグランプリを制したのはヴィクトールピストです!!後ろは団子だが二着はエイシンフラッシュ!!三着はナイスネイチャが入ったか!?写真判定が待たれます!!……おっと、やはり出ました!!レコードだ!!レコードです!!ゼンノロブロイの出した2分29秒5を大きく上回る2分28秒3!!大レコードだ!!恐らくは先頭集団、その全員がレコードでしょう!!しかしその先頭はヴィクトールピストです!!やはりこの世代は強い!!まさに革命!!レース界に革命が止まらない!!革命世代がまたしても伝説をこの有マに刻んだーーーッッ!!!』
────────────────
────────────────
「はぁっ…!…はぁっ、はぁ…………」
エイシンフラッシュは、ゴールを過ぎて、走る脚を緩めながら…己の敗北を理解した。
ヴィクトールピストに、負けた。
最終直線で、私と、彼女で、見ているモノが違った。
異なって、しまった。
「はぁ…………はー……あ………」
そして、掲示板を見る。
そこには、一着に名前を刻んだヴィクトールピストと、二着に滑り込んだ己の名前と。
レコードの文字が、光っていた。
「………あ………」
レコードタイムは、2分28秒3。
「……あ、……あ、あ……!!」
涙が、溢れてくる。
負けたことによる、悔しさよりも。
「あ、あ、あ、ああ………!!!」
私の。
私のトレーナーが、どれほど。
どれほど、過酷な運命を背負っていたのか、理解できてしまって。
「ああ……あああ…………!!!」
その脳裏に浮かぶのは。
────────立華勝人が、ハルウララと共に歩んだ3年間の記憶。