【完結】閃光と隼と風神の駆ける夢   作:そとみち

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119 クラシック期の振り返り

 

 

 

『止まらない!!止まらないぞスマートファルコン!!大井レース場の最終直線386m、ここに至っても全く速度が落ちないッ!!いやさらに加速したッ!!中距離こそが砂の隼の真骨頂か!?後続から追い上げるフジマサマーチとノルンエースだがこれは距離がある!!厳しいか!!ハルウララはなかなか伸びない!!これはスマートファルコンだ!!この距離は、2000m以上は砂の隼の領域だ!!スマートファルコン、今一着でゴーーーーーーーールっ!!』

 

 

『強いッ!!ひたすらに強いッ!!他のウマ娘も好走を見せましたが、しかしスマートファルコンが強すぎた!!これが世界の頂点だ!!中距離では負けられない!!世界の誇りを胸に駆け抜けた2000m……やはり出ましたレコードッッ!!!何と1分59秒8!!!2分切りィーーーッッ!!!とんでもない記録ですっ!!!ぶったまげたー!!!大井レース場2000mのレコードを2秒以上更新しています!!!』

 

 

 俺は年末、大晦日まであと2日である12月29日に開催された東京大賞典、その決着の瞬間をゴール板の前で見届けた。

 一番に駆け抜けてくる砂の隼を、見た。

 圧倒的だった。

 

 これまで国内でのダートGⅠはマイルレースのみを走っており、それぞれでもレコードかそれに近い凄まじいタイムをたたき出していた彼女だが、しかし中距離は格が違った。

 練習でも好走は見せていたため今日も勝利に不安はなかった。レースを共に走るフジマサマーチ、ノルンエース、ハルウララも中距離は走れるが……しかし、その距離適性にまだ不安が残る。

 ハルウララはジャパンダートダービーで見せた通り、中距離適性の克服を果たしてはいるが、完全に適応出来ているわけではない。並のウマ娘が相手なら勝負になるが、今日相対するウマ娘は並どころではない。

 フジマサマーチもノルンエースも同様だ。北原先輩の指導の下、中距離レースでも勝ちきれる実力は間違いなくついている。フジマサマーチなどは今回のレース、6バ身差の2着だが、それだって立派にレースレコードなのだ。

 あまりこういう表現は好まないが、中距離への適性のランク付けをするならば…フジマサマーチがA、ノルンエースがB、ハルウララがB~Cというくらいか。

 だがスマートファルコンはSを超えている。余りにも中距離に脚が適合を果たしている。

 

 恐らくは、ベルモントステークスで目覚めたゼロの領域の影響なのだろう。

 伝説を超え神話と成ったあのレコードタイムを記録した瞬間から、スマートファルコンにとってダートの中距離は絶対に負けられないレースになったのだ。

 そんな、背負ったものの重さ、誇りの強さを存分に感じられるレースだった。

 

「……ああ、くそ。判っちゃいたが中距離じゃスマートファルコンが抜けすぎるな…!!想像以上だ、えげつねぇわ立華クン…!」

 

「ウララぁ…!よく走った、頑張ったなぁ、苦手な距離で…っ!!くそ、やっぱ強ぇなぁ…俺らの目標はよ……!!」

 

 ゴール前の俺のそば、北原先輩と初咲さんからファルコンへの総評を頂き、俺は肩を竦めるのみに留めた。

 正直なことを言えば、俺だってそう思ってる。

 ダートウマ娘の育成経験と言うのは、俺にとってもそこまで多いものではない。

 

 いや、ウララだけは別でそりゃまぁ300年以上は育ててきた経験があるが、しかし彼女が俺と共に駆け抜けたレースはダートの短距離からマイル、および()()2()5()0()0()m()だ。

 それ以外でダートメインのウマ娘……となると、自分でも意外なほど育てた経験が少ない。

 オグリキャップやタイキシャトル、エルコンドルパサーやアグネスデジタルなど、ダートも芝も両方いけるウマ娘はこれまでにも担当についた経験があるが、しかしその子達も基本的には芝のレースをメインとしている。

 ダートの中距離以上を走れるウマ娘で、基本ダート専門の子というのは、何気にスマートファルコンが初めてだ。

 

 そして、そんな経験不足な俺の脳髄を焼き切るには十分なほどの凄まじい走りを、スマートファルコンは見せつけてくる。

 魅せられる。

 あんな走りを見てしまったら、URAだってダートレースの増設や意識改革に乗り出すのも当然と言えた。

 

「…駄目だ、疼きやがる。ああ、ありゃ目に毒だ…ゴア呼んでアタシとゴアとファルコンで一回ガチの模擬レース企画しよォぜタチバナ」

 

「世紀の一戦じゃん。それ言いだすと多分引退した海外のダートウマ娘勢ぞろいするからダメです。ほら、労りに行くよ。アイネスはタオル、フラッシュは…」

 

「はい、バッグですね。準備できていますよ」

 

「年末最後のGⅠだからね、ライブでしっかり踊れるように脚のケアしてあげるの!」

 

 先日のチャンピオンズカップとは逆に、興奮が止まらないといった様子のSSを俺が窘める形で、レースを終えて観客席に手を振るファルコンのケアに向かうのだった。

 

 

 

 

────────────────

────────────────

 

 

 大晦日の前日、12月30日。

 我らチームフェリスのメンバーは、チームハウスで今年の総振り返りを行っていた。

 

「えー、今年の戦歴はホワイトボードに示した通りです。……感無量だよ、俺は。みんな、本当に…よく、ここまで走ってくれた」

 

 俺は、ホワイトボードに記した今年の戦歴について、改めて振り返り、感動で涙を零しそうになる。

 内容は、以下の通りだ。

 

 

~~~~~~~~~~~~~

 

【エイシンフラッシュ】

 

 GⅡ 弥生賞      1着(レコード)

 GⅠ 皐月賞      1着

 GⅠ 日本ダービー   1着(レコード)

 GⅡ 神戸新聞杯    1着

 GⅠ 菊花賞      1着(クラシック三冠)

 GⅠ 有マ記念     2着(レコード)

 

 総合成績 GⅠ3勝 <クラシック三冠>

 

 

 

【スマートファルコン】

 

 OP ヒヤシンスS   1着(レコード)

 GⅠ 皐月賞      3着

 GⅠ ベルモントS   1着(!世界レコード!)

 GⅢ シリウスS    1着(レコード)

 GⅠ JBCレディスC 1着

 GⅠ チャンピオンズC 1着(レコード)

 GⅠ 東京大賞典    1着(レコード)

 

 総合成績 GⅠ4勝 <世界レコード樹立>

 

 

 

【アイネスフウジン】

 

 GⅢ きさらぎ賞    1着(レコード)

 GⅠ 桜花賞      1着

 GⅠ 日本ダービー   2着(レコード)

 GⅢ 紫苑ステークス  1着

 GⅠ 秋華賞      3着(レコード)

 GⅠ ジャパンカップ  1着(レコード)

 

 総合成績 GⅠ2勝 <史上最速1ハロンタイム更新>

 

~~~~~~~~~~~~~

 

 

「……走りましたね、この一年間。振り返ると、レースの想い出が蘇るようです」

 

「ねー。皐月賞、懐かしいなぁ…ベルモントステークスも、アメリカ遠征楽しかったなぁ…」

 

「秋のころスランプだったの思い出すのー。でも、今は絶好調って感じ。来年はやってやるの!」

 

「アタシが来たのは9月のころだったな…改めて戦歴書き起こすとお前らバケモンだな」

 

「SSは全く人の事言えないからね。鏡見るかい?」

 

 3人それぞれ、感無量といった表情でそれぞれの戦歴を改めて確認する。

 そしてSSが零したコメントには俺がツッコミを入れて、それによりチームハウス内に笑顔の花が咲いた。

 アメリカクラシック最優秀ウマ娘兼年度代表ウマ娘が何言ってるんじゃい。

 

「…でも、SSの助けもあって、本当に、今年はよく走ってくれたよ。心からそう思う。有難う」

 

 話を切り替えて、まず俺はここまで走ってくれた愛バ達に頭を下げて感謝の意を示す。

 全力で俺がトレーナーとして彼女たちを支えてきたことは事実だが、しかし実際にレースで猛者たちと鎬を削りあったのは彼女たちだ。

 彼女たちの努力がなければ、ここまでの結果を生み出すことはできない。

 それぞれがスランプを乗り越えて、去年よりも一回りも二回りも、強くなった。大人になった。

 本当に、感謝している。

 

「頭を上げて下さい、トレーナーさん。私たちは、トレーナーさんがいてくれたから、ここまで走れたのです」

 

「そうだよ☆!私達こそ、トレーナーさんにありがとうです!もちろん、サンデーさんも!」

 

「辛かった時もあったけど、トレーナー達が支えてくれたからここまで勝てたの。本当に、ありがとなの!!」

 

「………ちょっと泣きそう」

 

「俺もう泣いてます」

 

 そして愛バ達から逆に感謝の言葉を返されてお辞儀をされてしまったため、俺の涙腺は決壊した。

 SSは途中からの加入なのでまだダメージは小さいようだが、来年以降は君にも君専属のウマ娘をスカウトしてもらう予定だからね。存分に鍛え上げて存分に走らせてやって、そして泣くといい。

 トレーナー冥利に尽きるというものである。

 

 さて、こうしてお礼を言い合ってよかったね……で終わらないからこそ、反省会である。

 今年一年、反省点もあったので、俺は心苦しくもそれを指摘することにした。

 

「…うん、レース結果には俺も何の指摘事項もないんだけど……けど、一点だけ。今後チームでしっかり考えて行かないといけない反省点があります」

 

「……です、ね」

 

「……うん。何となくわかるな」

 

「心配かけちゃったからね…」

 

「ああ、わかってたかな?……今年、故障には至らなかったけれど、レース後の脚のダメージが大きかった。そこを来年は何とかしていきます。……これは君達に反省を促すものではなく、むしろ俺達トレーナーの指導不足の点なので。怒ったりしてはいないからね」

 

「現役やってりゃ怪我はつきもんだけどなァ。アタシの目から見ればまだ、お前らは体幹が極まりきってねェ。走るスピードやパワーはもう最高レベルまで仕上がってんだが、速く走れすぎちまって、筋肉がついてきてねェんだ」

 

 そう、俺が今年で一番大きな反省点だと考えたのは、彼女たちの脚へのダメージだ。

 彼女たちは現役の競走ウマ娘だ。無論、ウマ娘のレースにおいては怪我は付き物である。

 練習中に足を痛めてしまうもの、レース中に故障してしまうもの…それは様々で、どのウマ娘も決して逃れることのできない、永遠の課題と言える。

 不慮の事故だってどれだけ注意していても起きてしまうのだ。0にはできない。そこは全員が理解を落としているところだ。

 無論の事、それに備えるために俺は彼女たちのジュニア期で地固めと言う名の体幹トレーニングを実施し、優先的に体幹を鍛え上げている。

 他のチームだってクラシック期に入るにあたり体幹は仕上げているのが、同じレースを走っている様子から見て取れる。

 

 だが。

 今年の彼女たちは、俺の想像を超えて余りにも()()()()

 

「…正直なことを言えば、クラシック期でここまで速く走れるようになるって、チーム結成当初は思ってなかったんだ。シニア期に入ってからじっくり仕上げてようやく辿り着くであろうそのスピードの領域に、君達はもう踏み込んでしまっている」

 

「……それは、トレーナーさんがこれまで学んだ知識の上で、ということでしょうか?」

 

「ん。…ああ、そんな感じだよ、フラッシュ。俺が()()()()()()()()()()()()()()()()ウマ娘の中で、君達がクラシック期においては一番速いだろうな」

 

「そうですか。そう言われてしまいますと…少し、照れますね」

 

 俺の話に、俺の来歴を知るフラッシュから質問が飛んできたが、俺と彼女にだけわかるような符号で返事を返しておいた。

 今の一言で十分に伝わっただろう。俺のこれまで繰り返してきたループの中でも、群を抜いて君たちが速いのだ。

 まるで育成環境、それ自体ががらりと変わってしまったかのような今回の事態。

 俺の指導した体幹トレーニングの強度でも抑えきれないほどの彼女たちの豪脚から生まれる快速の走り。

 それを、今後はまずしっかり、怪我がないように、100%力を振り絞って走り切れるようにしてやらねばならない。

 

「…ってなわけで、SSも言ってくれたけど、年が明けたらしばらくはまた体幹トレーニングを中心に戻そうと思います。シニア級以降も、長く、速く走れるように…再度、地固めの期間を設けたい。また筋肉痛地獄になるかもだけど……それで、いいかな?」

 

「無論です。私は、トレーナーさんのウマ娘ですから。貴方とサンデーさんの指導に、全力を以て」

 

「ファル子ももちろんOK!もう二度とジャパンダートダービーみたいな出走回避はしたくないもん!」

 

「右に同じなの!有マ記念出られなかったのは悔しかったし、来年はあたし、もっといっぱいレース出るつもりだから!」

 

「言ったなァ?アタシもいるんだからな、限界見極めて手加減無しで行くから覚悟しとけよお前らァ」

 

 来年の練習の予定について説明し、またあの筋肉痛地獄が待っていることを告げた上で意思確認をしたが、愛バたちは全幅の信頼をもってYESの返事をくれた。

 何と心強いことだろう。

 今は体幹トレーニングに関しての理解が深いSSもついてくれている。さらに彼女たちの脚を研ぎ澄まし、磨き上げていくことが出来るだろう。

 俺は満足して頷き、チーム全体の目線合わせを終えたため、ミーティングを終了することにした。

 

「よし、それじゃあ来年もみんなで頑張ろうな。ではミーティングはこれで終わりになります」

 

「お疲れサン。来年もよろしくなァ」

 

「はい。お疲れさまでした。来年もよろしくお願いします」

 

「お疲れさまー☆!今日はみんな脚の疲労抜きだから練習はなし、だったよね?」

 

「お疲れ様なの!そうね、だからこの後はマッサージを受けて終わりのはずなの。…で、トレーナー。忘れてないよね?」

 

 ミーティング終了の挨拶を交わして、この後残る予定は彼女たちの脚の疲労…フラッシュは有マの、ファルコンは東京大賞典の、アイネスはJCのダメージを抜くためのマッサージをじっくり行ってチームとしての活動は終わりとなる。

 そして明日は大晦日。当然、年末から年始3が日はお休みとしているところではあるのだが。

 しかしアイネスの言葉で、俺もその心当たりに思い至って苦笑を零す。

 

「大丈夫、忘れてないよ。…明日の大晦日、みんなでまた蕎麦食べようか。ちゃんとそば粉は準備してるから、今日は家に帰ったらソバ打ちタイムです。今年はSSもいるからね、気合入れないと」

 

「おー。こいつらから聞いたところによるとタチバナのソバは絶品らしいじゃねェか。楽しみにしてるぜ」

 

「本当に美味しいんですよね、あの蕎麦。今年は食べ過ぎないようにしなければ…」

 

「うーん、今年こそ起きて年越しを…とも思うけど!あの蕎麦でお腹いっぱいになって寝るの気持ちいいんだよねぇ…!!」

 

「わかるのー。トレーナー、先週の家事代行の時にちゃんと布団に乾燥機かけておいたから、準備しておいてね?」

 

「OK、大丈夫。あ、前も言ったけど、事前にカフェイン取ってこないようにね。それで寝不足になっちゃっても困るから。眠くなったら寝よう」

 

 ミーティングを終えてマッサージのためのベッドの準備をしながら、俺たちは明日の事について話を広げた。

 事前に今年はどうするか彼女たちに相談しており、そして答えはやはりというか、俺の家でそばを食べて年越しして初詣に行きたい、との事だった。

 今年はSSも増えたので彼女も参加だ。彼女にも俺のソバの味を堪能してもらおう。

 家の使っていない部屋には布団を4枚問題なく敷ける広さもあるので、寝る場所とかも問題はない。

 今年は監督になる大人が一人増えているからフジキセキも問題なく外泊許可を出したという話だ。

 

 俺にとってはある意味今年の大一番ともいえるかもしれない。

 彼女たちの風呂上がりの髪型を見て掛からないように気を付けなければならない。

 朴念仁の俺も流石に理解した。彼女たちに俺の弱点を知られてしまっていることを。

 彼女たちは己の髪型を変えて俺をからかっているのだ。狼狽する俺の姿が見たいのだろう。

 JKらしい、可愛らしい悪戯心だとは思うが、しかし俺にとっては中々死活問題である。ホントに弱いんだよ君たちの髪に。

 

 俺はトレーナーだ。トレーナーなんだ。

 教え子をそういう目で見てはいけません。イイネ?

 

 

 

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────────────────

 

 

 

 場面は切り替わり、ここはURA本社ビル、その会議室の一室。

 年末のここ会議室で、URAの重役たちが全員で頭を抱えていた。

 

 どうする?

 いやマジでどうする?

 

 今日の議題は今年の優秀ウマ娘の選出だ。

 今年最後のGⅠである東京大賞典も昨日決着がついたところだ。

 レースの決着が出た直後から、最優秀ウマ娘、および年度代表ウマ娘を決める会議を開いていた。

 毎年議論が白熱するこの会議だが、しかし今年は例年になく熾烈を極めていた。

 会議は既に5回の休憩が挟まれ、6時間を超えようとしていた。

 

 会議が白熱するその原因は、当然、クラシック世代である。

 

「……誰を最優秀としても、文句は出ないだろうな…」

 

「逆に言えば、誰を指定しても違うだろう、という声は出るという事です。毎年の事ですが、今年はなおのことですね」

 

「やはり最優秀短距離はハルウララでいかないか?世間の人気は彼女が一番だろう。レースでもかなりの好走を見せている、JDDもJBCも一着だ」

 

「しかしダートです。芝の短距離は走っていませんし…でしたら最優秀短距離はシニアのバクシンオーでも…」

 

「最優秀ダートは間違いなくスマートファルコンとして、しかし彼女を年度代表ウマ娘として同時受賞とするか…?」

 

「ダートウマ娘で年度代表に選出された記録は過去にありませんが…」

 

「しかしダートは今まさに盛り上がっていくところだろう、勢いをつけるためにもそれもありでは?戦歴も世界を塗り替えるほどだ、反対意見は…」

 

「いえ、しかしこの革命世代で三冠を獲得したエイシンフラッシュも年度代表ウマ娘としての権利は十分に…当然、最優秀クラシックウマ娘としても…」

 

「だがそのエイシンフラッシュに有マ記念でレコード勝利したヴィクトールピストがいるぞ。凱旋門でも全く恥じることのない僅差の三着だ」

 

「グランプリレースで言えばメジロライアンはどうしましょうか?彼女こそ、宝塚記念で日本の歴史を塗り替えています。クラシック3冠のエイシンフラッシュが最優秀クラシックで、ライアンが年度代表とか…」

 

「記録を塗り替えたという話ならばスマートファルコンやアイネスフウジンもそうだろう。アイネスフウジンはウマ娘の限界値を超えた最速1ハロンの伝説を生んでいるんだぞ」

 

「そんなアイネスに先着しているサクラノササヤキとマイルイルネルだって立派に優駿です。二人ともGⅠ勝利、レコードもある。カノープス出身ウマ娘だけあって、ファンは多いですよ…」

 

「シニアならウオッカだって相当なものだ、GⅠ3勝、そのうち2つはレコード。シニア最優秀は彼女でいいだろうが、しかし例年ならば十分に年度代表ウマ娘になり得る…」

 

「しかしクラシックの世間の注目度が極めて高いことからも、今年の年度代表ウマ娘はやはりクラシックからで…」

 

「ああでもない…」

 

「こうでもない…」

 

「けんけん…」

 

「がくがく…」

 

 会議の時間は10時間にも及び、深夜テンションになりながらも確実にそれぞれの意見の根拠などを慎重に吟味した結果、ようやく今年のURA賞の受賞者が決定された。

 翌朝、休憩して改めて振り返り問題ないことを確認してから、確定とした。

 来年1月の頭には世間に公表される予定だ。

 

 なお、この後すぐにトレセン学園へ連絡を入れ、各チームのトレーナー、およびウマ娘には通知する予定である。

 それは事前に連絡をすることで、1月中旬に開かれる授賞式への出席をスムーズにするのが主な理由だ。

 

 しかし、今年はもう一つ、新たにトレセン学園へ通知しておくことがあった。

 各トレーナーへの通知は来年すぐにお願いする所だが、しかし理事長にはこの話を先に耳に通しておかなければなるまい。

 特に、今年の新星…革命世代が、シニア期に更なる革命をレース界に巻き起こすために。

 我々URAが、持てる全ての権力を使って準備した、彼女たちの()()()()()()()()を。

 

 

 

 ────URAもまた、革命世代の巻き起こす熱狂に、すっかりと脳が焼かれてしまっていた。

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