【完結】閃光と隼と風神の駆ける夢   作:そとみち

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※注意
これを書いたのがアイネス実装前で、TSラストに出てくるアイネスが短距離Bだったので短距離レースに出走するような話になってます。
整合性などは投げ捨ててお読みいただけますと幸いです。
今後は基本的にマイル中距離走るのでご容赦。

さらに、これを書いたのがアプリのダートGⅠ増設の前のころなので、ファルコンの出走レースについても色々あります。
だいぶ先の話でその辺の整合性も取っていますのでご容赦。



なおアイネスは天井しました。

何故…
何故なの…
何故なのよォーーーーーーーーッ!!!!!












29 目指すもの

「さて、今日のミーティング内容は、みんなのこれからのレース出走のプランニングだ」

 

「はい」

 

「はーい☆」

 

「はいなの!」

 

 俺はチームハウスのソファに座る3人に向けて、ホワイトボードに掲げたジュニア期のレース日程を見せながら声をかける。

 今日のミーティングは、先日メイクデビューで鮮烈なデビューを果たした3人が、これからどのレースに出走していくかを決めるものだ。

 それぞれ、今後クラシック、シニアと走り抜ける中で、何を求めて…そしてそのためにはジュニア期にどのレースに出走するのか、しっかりと考えて決める必要がある。

 とても重要な内容のそれに、俺も改めて真剣な表情を作って話を進める。

 

「それぞれの距離やバ場適正にあったレースを走るのが基本だな。まず…フラッシュ」

 

「はい」

 

「君は中距離から長距離を得意としている…が、ジュニア期に長距離を走るレースはない。基本的には中距離のレースに出走していくことになると思う」

 

「はい、私も同様の考えです。マイルだと末脚が活かしきれないことがありますから」

 

 俺はホワイトボードにフラッシュの名前と、中距離レースのある日程にメモを取っていく。

 

「一番近い日程のレースが9月の後半にある芙蓉ステークスだ。次に10月前半の紫菊賞…どちらもOP戦だが、レース勘を失わないためにもどちらかには出走すべきだと考えている」

 

「そうですね。OP戦から出走し、重賞、GⅠ…と、順を追いたいと考えています。できれば早い時期のレースに出走し、レース内容の復習の時間を設けたいです」

 

「OK、なら芙蓉ステークスだな。そのあとは11月前半に百日草特別もあるが…これに出るか、もしくは11月後半開催のGⅢ、京都ジュニアステークスに出走をする選択肢もありだ。どうする?」

 

 ここで中距離の重賞レースが初めて出てくる。

 ジュニア期はまだウマ娘達の体も脚も未完成であり、URAの意向もあって長い距離のレースは数が少なく設定されているのだ。

 ただ、エイシンフラッシュの返答は俺の想像していたものと同じだった。

 

「もちろん、京都ジュニアステークスに。強敵と相まみえることを恐れていては、誇りある勝利にはなりません」

 

「…だよな、OK。じゃあその後は……」

 

「もちろん───ホープフルステークスへ」

 

 GⅢからGⅠへ。中距離を走るウマ娘の王道のルート。

 これをエイシンフラッシュはジュニア期を走り抜ける進路に選んだ。

 

「…了解だ。君ならそういうと思ってたよ。あまり悩まずに組み終わったな」

 

「ふふ。トレーナーさんにスカウトされる前でしたら、京都ジュニアやホープフルステークスではなく、1月の京成杯に出走してじっくりと自分の実力を定めてからでも…と考えていましたが」

 

 それも、彼女の取りえる選択肢の一つなのだろう。

 恐らく、この世界線ではない、自分が担当につかない世界線では、そういった選択をする彼女の姿もあったのだろう。

 

 だが。

 今のエイシンフラッシュは、俺の愛バだ。

 

「トレーナーさんと鍛えたこの脚が、どれだけの輝きを持つか…私は試したい。そして、両親と、あなたの為に、誇りある勝利を」

 

「…いいね、素敵な口説き文句だ。ときめいたよ。……君が勝ち取る勝利の為に、俺もより一層尽力するとしよう」

 

「ふふっ、よろしくお願いしますね」

 

 お互いにくすっと笑ってから、エイシンフラッシュのスケジューリングを完了する。

 さて次は、と残る二人に顔を向けるともんのすごい仏頂面を向けられた。

 なんで。

 

「ここにまだ二人も貴方の愛バがいるよね☆?」

 

「いきなり二人だけの世界に入ってるんじゃねぇの」

 

「誤解だ…」

 

「『誤解』…ですか?」

 

「フラッシュ、君の掛かり癖は治したほうがいいな?」

 

 俺はフラッシュにオニャンコポンをけしかけてモフらせることで事なきを得た。

 オニャンコポンのお腹を親指でぐりぐりするフラッシュくん。もっと我が子を優しく扱いたまへ。

 

「────さて、じゃあ次にファルコン。君の出走するレースを決めていきたい」

 

「うん!…とはいっても、ダートのレースしかないよね☆」

 

「だな。めぼしいダートのレースというと…」

 

 レースの日程表から俺はファルコンが出走できるダートレースに印をつけていく。

 しかし、ダートのレースは中央では最初の開催までかなりの時間が空く。

 重ねて、重賞のレースは一つもないときた。

 残念なことに、芝至上主義という部分はどうしても現実として存在する。

 

「最速が10月前半のプラタナス賞になるんだよな…その後は10月後半のなでしこ賞、11月前半のオキザリス賞、11月後半にはもちの木賞とカトレア賞、12月前半は寒椿賞があるな。この中から選んでいこう」

 

「うーん……どれもOPなんだよね。だったら私としては、どれに出走してもいいよ☆?なんなら全部出ちゃう?」

 

「流石にそれやったら俺が怒られる。間に最低でも2週間、出来れば1か月くらい間隔は空けたいから…そうだな、なでしこ、もちの木、寒椿、って感じか。10月までに出られるレースがもっとあればよかったけどな」

 

「そうだね…まぁ、でも。しょうがないよね……」

 

 ファルコンは仮に組んだレーススケジュールに、納得はしきってないようだ。

 レース出走をもっと増やしたい、という気持ちがあるなら、地方のレースに出るという選択肢もある。

 だが、地方のレースに出走しても……これも相手のウマ娘には大変申し訳ないが、恐らくはファルコンの一人勝ちになる。向こうもよく思わないだろう。

 いずれ出るレースに悩んだ時には提案してもいいかもだが……一先ずはこのプランで仮組とした。

 

「…よし、ファルコンの出るレースについてはこれを仮のプランとして、ちょっと保留。後でしっかりと納得できるまで詰めようか」

 

「うん…☆」

 

 思い悩んでいる様子のファルコンに、俺は声をかける。他の二人に比べれば、出走できる重賞もジュニア期には存在しないのだ。

 が、重賞がないのはもうどうしようもない。一先ず俺は話を先延ばしにして、次にアイネスフウジンのプランニングに進む。

 

「じゃあ……次はアイネス。君は短距離もマイルも走れるし、候補がかなり多くある。まずは君の希望から聞こうか」

 

「んー…そうね、あたしの場合は走る理由が理由だから、とにかく重賞に出たいの!」

 

 アイネスフウジンの伝える希望は、以前から把握していた。

 何を隠そう、俺が彼女を選ぶきっかけになった、彼女の家庭的事情である。

 先日、アイネス自身がフラッシュとファルコンにも説明をしているので、チーム内では彼女の事情について理解を共有できている。

 

「だよな。そうすると…選択肢は多い。まず7月後半、短距離の函館ジュニアステークスがある」

 

「出るの!短距離も苦手じゃないし…トレーナーなら、仕上げてくれるでしょ?」

 

「勿論。…次の重賞は8月後半の新潟ジュニアステークス、9月前半に札幌と小倉でそれぞれジュニアステークスがある。小倉は短距離でそれ以外はマイルだが…」

 

「……ちょっとわがまま言っていい?」

 

「構わないよ」

 

「8月後半の新潟に出て、9月前半のどちらかにも出る……っていう予定は、いけるの?」

 

 我儘。そう前置きしてアイネスが告げたのは間が2週間以内の連続出走。

 本来であれば、レースを走ったウマ娘はその後休養を取って足を休める必要がある。

 1週間以上の間を空けずに連続出走をすると、よほど体が丈夫なウマ娘でない限り、故障の可能性が高まる。

 どんなに短くても2週間、普通であれば1か月程度は休養と調整に充てるのが一般的だった。

 脚が仕上がり切っていないジュニア期であればなおのこと。連続出走は基本的にはさせないほうがよい。

 

 だが、今の時期、ジュニア期に挑む前に()()()を終えている俺たちの場合は違う。

 

()()()()。その場合は札幌ジュニアは1800mと少し長めのマイルで、小倉は1200m短距離だ。小倉に行ってもらうことになると思うけどね」

 

「!ならそれでお願いするの!…そこまでの1着賞金の合計で、奨学金もこれまでの学費も全部納められて、妹たちの将来的な学費まで見込めるの。区切りをつけるためにも…勝っておきたい」

 

「…了解だ。ならそれでいこう。ただし、その間の練習とかは負担を減らすし、札幌ジュニアのレース内容によっては延期するからな」

 

「オッケーなの!」

 

 アイネスフウジンの過密なプランニングが組まれた。

 彼女自身の、家族に早く安心してもらいたい気持ちもあるのだろう。金銭的な面でこれまで苦労を掛けた分、なおのこと。

 それが彼女の今の走る理由の一つであり、彼女のモチベーションの元であるならば、俺はそれが成し遂げられるように全力で指導してやるだけだ。

 

 なお、賞金…これはもちろん、1位の賞金が全部勝利したウマ娘の懐に入るわけではなく、税金で差し引かれる部分や、指導するトレーナーに賞金の5%が分配される仕組みがある。*1

 俺個人としては金は全くいらないのだが、現実的な話でこれがないとトレーナーを目指す人が少なくなるし、実際に指導する内容にも熱が入らなくなるだろう。俺のような変人を除けば。

 必要な仕組みだとは理解しているし、金という意味ではなく…指導に対しての御礼を、形として受け取っていると考えれば、俺だってすべてを否定するわけではない。

 実際のところは賞金額は額面の半分程度に収まり、それらも貯金として学園に預けたりするのが一般的であった。

 学生の身分で大金など持っており、金銭感覚を破壊してしまうのもよろしくない。学園でも特段の事情がない限りは、お金周りのやり取りは慎重になりましょう、と授業でも出るほどだ。

 

 閑話休題。

 

「さて、そんじゃそこまでに重賞3つに挑むとなると……アイネス、最終的にはジュニア期は朝日杯か阪神のGⅠを目指すだろう?」

 

「もちろんなの!個人的には朝日杯がいいなーって思ってるけど…」

 

「ああ、それはどちらでも構わない。じゃあ朝日杯を最終的な目標地点とするとして…そうなると、9月後半から10月いっぱいくらいは、みっちりトレーニングの時期に充てようか。レースに出続けるだけじゃ、レース勘は磨かれるけど地力がつかなくなる」

 

「それでいいの!あたしも最初期に重賞に出まくる分、どこかでがっつり鍛えないと、っていうのはわかってるから」

 

「ならよし…それで、11月の前半にあるデイリー杯がマイルのGⅡだ。これに出てレース勘を取り戻して、朝日杯。こんな感じでどうだ?」

 

「それでなんの文句もないの!」

 

 決まった。

 秋初旬の9~10月は再度体を鍛えなおす時期に充てて、11月にレース出走、脚を休めつつ仕上げて朝日杯へ。

 ジュニア期全体で見れば出走するレースはかなり多くなるが、俺の方で足にかかる負担を軽減してやれば問題なく走れるだろう。

 

 これで一応3人のレースプランニングは立った。

 この後の今日の予定は、デビュー戦の後の脚のケアをしながら、それぞれのレースの過去の映像など視聴したり、レース場の情報などをタブレットで共有したりする時間に充てようと考えていた。

 

 だが、そちらに移行する前に、スマートファルコンから声が上がる。

 

「…ねぇ、トレーナーさん」

 

「ん、なんだいファルコン。君のプランなら、今日は仮組だから…後でまた相談の時間は設けるけど」

 

「ううん、もちろんそれもしたいけど…今、いいかな?………()()、空いてるよね?」

 

「うん?……ああ、なるほど」

 

 阪神。阪神ジュベナイルフィリーズだ。12月前半に開催される、芝1600mのGⅠレース。

 確かに、うちのメンバーはこれに出走する子はいない。

 そしてファルコンがそれを口に出す意味。俺は察した。

 

「ファルコン。()()()()()?」

 

 そう、俺は彼女にかつて言った。

 芝のレースも走れるようにすると。時間はかかるが、必ずと。

 だが、それはジュニア期のレースをしっかりと想定していたものではない。今出れば…もちろん、ファルコンの調子がいいのも加味して……相手に出てくるウマ娘次第ではあるが、勝ち負けになるだろう。勝ちを保証出来ての出走はない。

 

 ただし、気持ちもわからなくはない。

 同期のウマ娘二人が、GⅠに挑み、勝てばGⅠウマ娘として名を馳せる中で、重賞にも出走できないでOP戦のみ、というのは確かに……気持ちがいいものではないだろう。

 だから、出てみたい…という気持ちも大切なものだとは思うし、芝のレースをそれまでに走れるように仕込んでおくのは悪くないとも考えていたが。

 ただ、あまり無理はさせたくない。単純に出たいという話であれば、GⅡとか、もっと勝ち切れる芝のレースでも──────

 

「うん。出たい。出て、()()()()

 

「っ」

 

「勝ちたいんだ。…もちろん、ダート路線を走るのは私も納得してるよ?…けれど、一番近いダートのGⅠは来年の7月、ジャパンダートダービーだよね?それまで……少し、遠すぎるかなって。私、やっぱり大舞台でも走ってみたい。走って、勝ちたいよ」

 

 その、想い。

 その、「勝ちたい」という言葉。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 猛烈に記憶がリフレインする。

 何回も俺が繰り返した、あの3年間。

 ああ、君と同じような言葉を、()()から何度聞いて……そして、それを何度、涙に濡らしただろうか。

 

 あの時の光景がよみがえる。

 最後に、それを笑顔にできた、その軌跡(奇跡)を経てここに立っている俺が。

 スマートファルコンのこの想いを、否定できるわけがなかった。

 

「…わかった。勝とう。プラン変更だ。ダートのレースには出てもらうが、数を減らす。1つ…多くても2つまでにして、芝を走る練習にこれから取り組んでもらう」

 

「っ!……うんっ!ファル子、がんばる!!」

 

「ああ。確かにこれからファルコンがクラシックに入って、芝のレースを走りたい!ってなったときに全然仕上がってない、ってんじゃ話にならないしな。既にダートでの時計はクラシックでも通用するものを持ってるんだ。早めに取り組んでも問題ないだろう」

 

 プラン変更。俺はここまでに組んだファルコンのレースプランを消して、ジュニア期最後の目標に『阪神ジュベナイルフィリーズ』と大きく書き込んだ。

 

「君を勝たせる。芝のレースでも、隼は舞えるんだということを…見せつけてやろう」

 

「はい!!…えへへ、トレーナーさん、やっぱり優しいね☆」

 

「よかったですね、ファルコンさん。…そうなると、クラシックではライバルですね」

 

「ふふ、もし同じレースに出ても手加減はしてやらないの!」

 

「うん、もちろん!もしそうなったときはよろしくね!」

 

 ああ、チーム全体にもいい影響が出ている。やはり、同年代の友人同士、一人だけ重賞に挑戦できない、というのはお互いに気持ちのいいものではなかったのだろう。

 俺は思春期のウマ娘達の気持ちを汲み取れていない己の朴念仁を強く反省し、これからのチームフェリスの目標を改めて確認する。

 

 

 ────────ジュニア期のGⅠ、全制覇。

 

 

「勝つぞ。俺たちチーム『フェリス』を日本中に知らしめる。そのためにも…3人とも、これから一層、頑張っていこうな!」

 

「「「はい!」」」

 

 ニャー、と最後にオニャンコポンも気合の鳴き声を入れて、一致団結して目標に向かって邁進してく、今日はそんな決起集会となったのだった

*1
独自設定。




レースは実在のものとか特に詳しくは調べておらずアプリ準拠です。
前作の時からこのループトレーナーは我々アプリプレイヤー(3年で新しい世界線に飛ぶ)をイメージしておりますのでそういうことでどうか。

なおレース描写はGⅠ以外はさらっと流します。一つ一つ描写したら終わんない。
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