【完結】閃光と隼と風神の駆ける夢   作:そとみち

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第三部 クラシック期
42 フェリスの元旦


 俺は朝4時半にセットした目覚ましのアラームで目を覚ます。

 今日は元旦だ。昨晩は俺の愛バ三人を年越しの前に眠りの世界に誘って、ゆっくり風呂に入ってすぐに自分も寝た。

 昨日の時点までは作戦は見事に遂行されていたが、今日これで俺が彼女たちより遅く起きるようなことになればその時点で失敗になる。

 特に、毎朝5時に起きるのが習慣となっているエイシンフラッシュよりも早く起きる必要があったため、まだ日が昇るにも早いこの時間に目覚ましをかけていた。

 

「んー……ふぁ……ん。オニャンコポンもまだ寝てるか」

 

 昨晩ベッドを共にし、今は俺の腕の中ですんやりと眠っているオニャンコポンを起こさないように、俺はそろりと布団から抜け出る。

 この後愛バ達と顔を合わせるので、多少は身嗜みを整えておく必要があるのだ。鏡台のある洗面所へ向かい、軽く顔を洗い髭を剃って眠気を散らす。

 そうして朝のコーヒーを淹れていると5時になり、彼女たちの寝室から少し物音がし始めた。

 待っていると、まずやはりというべきか、5時ピッタリに目が覚めたらしいエイシンフラッシュが出てきた。

 

「……トレーナーさん…昨晩はやってくれましたね……」

 

「ははは。よく寝るウマ娘は脚が速くなるって言うからね、無理に起きててもらうのは気が引けたのさ。そんなに怒らないでくれ」

 

「…もう、意地悪。…おはようございます。そして、改めまして…あけましておめでとうございます」

 

「あけましておめでとう。今年もよろしくね、フラッシュ」

 

 姿勢を正して、ゆっくりとお辞儀をしながら新年のあいさつを交わすエイシンフラッシュに、俺も応える。

 その言葉で笑顔を浮かべて、彼女も身嗜みを整えるために洗面所に向かった。

 うん。言わなかったけど彼女、結構寝ぐせついてて可愛かったな。

 普段はミリ単位で容姿もしっかり整えている彼女の気の抜けた姿を見れる俺は幸せ者なのだろう。

 そんなことを思っていると、続けて寝室からもう一人、眠そうに欠伸をしながら出てくる愛バがいた。

 

「……ふぁ……ん。すっごくよく眠れたの…おはよ、トレーナー。布団いいの買ってたの?」

 

「そこそこのものではあるけど、どちらかと言えば布団乾燥機のおかげかな。この時期はお勧めだよ」

 

「そーなんだ…今度あたしも買ってみようかな…あ、いけないいけない。こほん。…あけましておめでとうなの、トレーナー!そして、立華さんとしても!」

 

「ああ、あけましておめでとう。今年もよろしくな、アイネス。トレーナーとしても、雇用主としても」

 

 二番目に起きてきたのはアイネスフウジンだ。

 彼女もまた、朝には強いウマ娘だ。何故なら彼女はこれまでに、朝刊配達や牛乳配達などの朝早いバイトも経験しているからだ。

 練習の時間で午後は使うから、朝のバイトを、と結構最近まではそのバイトをしており、バイト後に登校してた時期もあった。

 

 俺は彼女にも2つの立場から新年のあいさつを交わして、エイシンフラッシュに続いて洗面所に入っていくのを見送った。

 うん。彼女も当然だが寝起きなのでバイザーも外していて、普段は左で留めてる髪房もほどいており、その装いがかなり違っていた。

 活発的な印象を受ける髪結いがほどけることで、妙にこう、大人びたものを感じるのは俺だけだろうか?

 普段とは違う髪型をしているウマ娘に俺は弱い。

 

 …いかんな。トレーナーであり教職である人間の抱く思考ではない。年明けから大切な教え子にわずかでも煩悩を抱こうなどと不届き極まる。

 この後の初詣でその辺はしっかり落としてこよう…などと思っていると、もう一人、大切な相棒が起きだしてきて俺の胸元に飛び込んできた。

 

「お、起きたかオニャンコポン。おはよう、そんでもってあけましておめでとう」

 

 ニャー、と鳴いて返事をするのはオニャンコポンである。どうやら俺という湯たんぽがなくなったことで目が覚めたのだろう、布団を抜け出してきたようだ。

 もちろん猫を飼ううえで俺はオニャンコポンが部屋に閉じ込められないように配慮をしており、家の扉は鍵を閉めなければ基本的に押せば開くようにしてあった。

 俺の部屋から出てきてまず俺の胸に飛び込んでくるのだから、こいつも人懐っこいやつである。

 

「そうだ、さっそくで悪いがオニャンコポン、ファルコンを起こしてきてくれないか?そろそろ起きないと身嗜みの時間がとれなさそうだ」

 

 頼む、とオニャンコポンを放つと、ニャー、と肯定の返事を経て、オニャンコポンが彼女たちの寝室に向かう。

 器用に扉の隙間に体をねじこみ、部屋の中に入っていき……しばらくして、オニャンコポンを抱えたファルコンが部屋から出てきた。

 

「目が覚めたら視界が全部オニャンコポンのお腹だったんだよね…☆すごい新年の目覚め方しちゃったかな…」

 

「やぁ、おはようファルコン。起こして悪いな、もうすぐ初詣の時間だったからね」

 

「んーん、よく眠れたから大丈夫だよ。あけましておめでとう、トレーナーさん☆」

 

「あけましておめでとう。今年もよろしくな、ファルコン」

 

 彼女とも新年のあいさつを交わす。エイシンフラッシュと入れ替わるように、彼女もまた洗面所へと向かっていった。

 普段はツインテールにしている彼女の栗毛は寝起きで当然縛っておらず、ふんわりと広がって、歩くたびに靡くような動きを見せていた。

 その綺麗な輝きに思わず、わずかばかり目で追ってしまった自分を叱咤する。綺麗なのは間違いないけど流石にそういう着眼点で彼女たちを見るのはNGだ。

 どんなにループを繰り返しているとはいえこちらは若い男性で、そういう相手からそんな目で見られれば彼女たちもいい気分ではないだろう。

 俺自身、いつまでも若者の心は持っておきたいと思う反面、そういった邪な思考を捨て切れておらず、やはり三つ子の魂は1000年近くたっても変わることはないようだ。

 煩悩退散。年明けから何考えてんだ俺は。

 

「トレーナーさん、私の分もコーヒーを頂いていいですか?」

 

「もちろん、みんなの分を作ってあるよ。ただし、ブラックだと起きたばかりの胃に悪いからミルクと砂糖は入れようか」

 

 俺はエイシンフラッシュにコーヒーを淹れてやるために、台所へ向かう。

 何度も俺の家に来ている彼女らは、いつの間にか専用のマグカップを俺の家に置いている。エイシンフラッシュのは黒塗りのシックなマグカップだ。

 アイネスのはピンク色の可愛らしいもので、ファルコンのはキャラメル色の美味しそうなもの。それぞれがよく合った色のものを使っている。

 エイシンフラッシュの分のコーヒーを淹れ、彼女が好みの量のミルクと角砂糖を入れてやり、ついでに他の二人の分までマグカップを準備してやった。

 コーヒーをもってリビングに戻れば、他の二人も身嗜みを終えたようで、リビングに戻ってきていた。

 全員揃ってまずコーヒーで一息つく。コーヒーだけで何にもお腹に入れないのもよくないので、みんなが起きてくる前に簡単に作ったサンドイッチもつまませる。

 お雑煮やおせちも準備しているが、それは初詣が終わってからだ。

 

「よし、みんな起きたな。これから初詣に出かけるけど、準備は大丈夫か?」

 

「はい。よく眠れましたし、問題ありません」

 

「とっても気持ちよく眠れたから大丈夫☆いつでもいけるよー☆」

 

「初日の出が出ちゃう前に早く出発するの!」

 

 了解の返事をもらったので準備をする。俺は車のエンジンを入れて温めだして、コートを着る。

 彼女らは一度寝室に戻りパジャマから服を着替えなおして、昨日着てきた上着もきちんと羽織る。

 マフラーなどで寒さ対策もばっちりさせて、いざ出発である。

 

 なお、向かう神社はトレセン学園の最寄りの所ではない。

 そこは学園の生徒やトレーナーも多く集まり、またそんなウマ娘らを一目見ようと一般客もかなり集まってしまう人気スポットとなっている。

 特に今年の注目度が高かったうちのチームの3人をそんなところに連れて行けば、ゆっくりと初詣ができないだろうと考えて、俺はこれまでのループでも愛用している、別の神社へ向かうことにした。

 そちらはそちらで、神主がフクキタルの実家なので人はそこそこいるのだが、それでも前に挙げた最寄りの所よりは落ち着いており、また来る客もウマ娘ファンはいるが、静かに応援してくれる人が多い。

 チーム『スピカ』の沖野トレーナーも愛用している神社であり、そこで初日の出を見終わったら早目に退散することを予定している。

 

 車に3人と一匹を乗せて、出発する。

 今日は幸いにして雲一つない空のようで、6時前の今は少しずつ空が白み始めているところだ。

 このまま普通に車を走らせれば、ちょうどよいくらいになるだろう。

 

────────────────

────────────────

 

 そうして俺たちは神社に到着した。

 初日の出の予定時刻まではあと10分。いい時間だ。

 予想した通り、神社は人込みとなっていることはなく、問題なく回れるくらいに空いていた。

 

「…初日の出までおよそ8分と20秒。まずはそちらを見ることからですね」

 

「うん、お参りはその後にしよっか☆あ、でも焼きトウモロコシおいしそう…!」

 

「屋台をめぐりたい気持ちはわかるけどそれも後にするの!いい所探さないと!」

 

「いや、その後の屋台もよく考えて食えよ?帰ったらおせちとお雑煮準備してるからな?」

 

 食欲が零れだすファルコンに苦笑しながら、俺はオニャンコポンを肩に乗せながら3人を引き連れて、街を見渡せる高台になっている景観スポットへ向かう。

 そういったスポットがいくつかあり、それぞれとても良い景色と、初日の出が綺麗に眺められるのだ。本当にいい穴場の神社である。

 高台に向かう途中に、巫女服を着たフクキタルと会ったので軽く挨拶を交わしておいた。彼女も毎年、この神社の運営で忙しくしている。巫女服似合ってるぞ。

 

 そうして順路を上って高台に着くと、そこには既に来ていたのだろう、学園の別のウマ娘達が集まっていた。

 というか、出会うだろうなとは思っていた。

 あの人、これまでの世界線でも、チームメンバーが多い時は大体ここに連れてくるからな。

 

「お、立華君!あけおめ!奇遇だな、君達もこの神社にしたのか?」

 

「ええ、穴場だって前にお伺いしましたからね…()()()()。あけましておめでとうございます」

 

 沖野先輩率いる、チーム『スピカ』だ。

 彼と、その後ろに彼の率いる輝かしい戦歴を持つウマ娘達がぞろぞろと集っていた。

 チーム『スピカ』とは去年に一度併走をさせていただいており、その時のお互いの面合わせは終えている。

 

「皆さん、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

 

「あけましておめでとー!みんなも来てたんだ☆?」

 

「あけましておめでとうなの!わー、ここいい眺めなの!」

 

 うちのメンバーたちがスピカのみんなにそれぞれ挨拶を交わす。

 向こうからも返事がくるが、みんなでまとめてわいわいと話すものだから、ずいぶんと(かしま)しくなってしまった。

 

「あけましておめでとうございます。スピカは毎年ここなんですよ、ファルコン先輩」

 

「あふぇまひへふぉめへほーごふぁいまふっ!!もぐもぐ…!」

 

「スペちゃん!?焼きそば食べながらしゃべるのヤメナヨー!あ、あけましておめでとーっ!」

 

「あけましておめでとうございます。昨年は素晴らしいご活躍でしたね、そちらのチームは」

 

「おー!アタシもぱかちゅーぶで実況してて楽しかったぜー!あっけおめー!」

 

「あけましておめでとうございます!今年は同じレースで走りたいですね!」

 

「あけおめっす!練習でもまた会うこともあるでしょーし!今年も頑張りましょうね!」

 

 誰が誰だかは察してくれ。この人数の会話を正確に表現するのはつらい。

 しかし、改めて一人…そう、これまでの世界線でも珍しい、スピカに加入した彼女は、フラッシュに大きくお辞儀をする。

 

「あけましておめでとうございます、フラッシュ先輩。…先日のレースの、その、目は大丈夫でしたか?」

 

「ええ、ご心配頂いて有難うございます、()()()()()()さん。この通り、すっかり治りました…あの時は、全力でお相手できずに申し訳ありません」

 

「いえいえ、そんな!事故でしたからいいんです!…けど、全力で、という点は次は是非とも。今年はよろしくお願いします」

 

「はい、こちらこそ。次は負けません」

 

 先日のホープフルステークスで勝利したヴィクトールピストが、エイシンフラッシュとお互いに意気揚々とあいさつを交わした。

 彼女たちもまた、先日のレースでお互いに思う所があるのだろう。

 フラッシュとしては、勝ちきれなかった相手として、次は勝ちたい。

 ヴィクトールピストとしては、不完全燃焼だったあのレースに歯噛みして、次はしっかりと勝負したい。

 

 お互いにライバルとして認め合い、そうして高めていける。

 それは、とても素晴らしいことだと思う。俺は満面の笑みでその様子を眺めていた。

 隣の沖野先輩の顔を見ても同じような顔だ。わかり味が深い。

 

「───────────あ、始まった!」

 

 それは誰が挙げた声だったか、その声を合図にみんなで地平線の彼方を見れば、空を明るく照らしていた光、まぶしい太陽がその頭をのぞかせていた。

 初日の出の時間だ。

 それぞれのウマ娘達が、思い思いに感嘆の声を漏らす。

 そして、そんな彼女たちを後方トレーナー面して眺めている我ら男性陣。

 沖野先輩が、彼女らの邪魔にならないように、小さくつぶやいた。

 

「……いいもんだよな。やっぱ、こういうのがさ」

 

 それは、想いの籠った言葉。

 俺はその言葉に大きく頷いて同意を返す。

 

「ええ。やっぱり彼女たちは…ウマ娘ってのは、楽しく、輝いてなきゃいけない。俺もそう思います」

 

「いいね、やっぱ立華君はわかってるな。…甘酒飲むか?」

 

「いただきます。先輩も車で来たんでしょうし、飲みすぎちゃダメですよ?酒にあんまり強くないんですから」

 

「大丈夫だっての。優秀なナビゲーターいるしな」

 

 大人同士でも、それぞれ挨拶と、彼女らへかける(カケル)想い(ユメ)を乗せて。

 みんなで初日の出を拝みながら、こうしてチーム『フェリス』の新年は始まっていった。

 

 

 




クソボケのヒミツ②
実は、普段と髪型が違うウマ娘にクッソ弱い。






アンケートでステータス開示して♥が多く、しかし閑話にするほどの文量でもないため以下に投稿しておきます。
設定程度のそれでしかないし今後の描写でここにないやん!みたいなスキルも生えてくるかもなんでご容赦やで(フラグがないとは言ってない)



エイシンフラッシュ
(ジュニア期終了時点)

芝:A
ダ:E

短:F マ:D 中:A 長:A
逃:G 先:B 差:S 追:B

スピード:C
スタミナ:D
パワー :C
根性  :E+
賢さ  :C+


【スキル】

領域
①【■■■■■■■■・■■■■■■■】
未発動

コモンスキル
・中距離直線◎
・差しのコツ○
・全身全霊
・位置取り押上げ
・差しコーナー○
・静かな呼吸
・差し牽制
・逃げ牽制
・先行牽制
・束縛

特殊スキル
・地固め(真)
・独占力(真)
・逃げ牽制(砂)
・逃げ牽制(風)
・シックスセンス(■■■)



スマートファルコン
(ジュニア期終了時点)

芝:C
ダ:A

短:A マ:A 中:A 長:D
逃:S 先:D 差:G 追:G

スピード:C+
スタミナ:E+
パワー :C
根性  :D
賢さ  :E+


【スキル】

領域
①【キラキラ☆STARDOM】
()()レース中盤の直線で前の方にいるとき、後ろのウマ娘と距離が近いと譲らない想いが力になる。
②【■■■■】
未発動

コモンスキル
・コンセントレーション
・逃げのコツ○
・地固め
・先駆け
・チャート急上昇!
・注目の踊り子
・逃げコーナー○
・逃げ直線○
・先頭プライド
・差し駆け引き

特殊スキル
・地固め(真)
・独占力(真)
・差し牽制(光)
・逃げ牽制(風)
・切り開く者(■)


アイネスフウジン
(ジュニア期終了時点)

芝:A
ダ:E

短:B マ:A 中:A 長:B
逃:S 先:C 差:G 追:G

スピード:C+
スタミナ:E+
パワー :D+
根性  :C+
賢さ  :D


【スキル】

領域
①【■■■■■■!■■■■!】
未発動

コモンスキル
・集中力
・逃げのコツ○
・遊びはおしまいっ!
・スリップストリーム
・スピードイーター
・じゃじゃウマ娘
・逃げコーナー○
・逃げ直線○
・先頭プライド
・逃げ焦り
・差し牽制


特殊スキル
・地固め(真)
・独占力(真)
・差し牽制(光)
・逃げ牽制(砂)
・姉御肌(家族)


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