【完結】閃光と隼と風神の駆ける夢   作:そとみち

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(ダービー)
オニャンコポンんんんんんん!!!(⤵)
ダービーのウマ娘公式の一枚絵最高か?(⤴)



48 春のGⅠ戦線へ

 

 

 

 

 3月。チーム『フェリス』が結成されて1年が経過したころ。

 俺は勝負服を着た愛バ達の横で、オニャンコポンを肩に乗せて座っていた。

 今日は学園の一室を利用して、愛バ達3人と共に各社の記者を集めて合同のインタビューが開かれている。

 

 これから始まる春GⅠに向けた各ウマ娘の意気込みなどを聞くために、URAの記者や学園側で選別された信頼のおける雑誌記者などが集められて、まとめて話を聞くというそれだ。

 これまでの世界線でもこういった場に参加したことも数えきれないほどあったが、今回はチームを運営している都合、今までの世界線よりもインタビューに応じる回数は増えていた。

 特に今担当している3人は、ジュニア期でそれぞれ大いにレースを荒らしまわり、実績もアクシデントを伴う1敗のみ。これからのGⅠ戦線で主役になっていくだろうと考えられる素晴らしい成績を残しているウマ娘だ。

 2月にはアイネスがきさらぎ賞でレコードを2秒縮めての一着、ファルコンがヒヤシンスステークスでレコードの大差勝ち一着、弥生賞はフラッシュがレコードで一着を取っている。

 最近はチーム『フェリス』がレコードブレイカーと呼ばれるようになってきた。事実、既にレコード勝ちを6回もしているのでやむ無しといったところか。

 弥生賞にはヴィクトールピストがくるかと思ったが、彼女は出走しなかった。まだフラッシュには及ばないとホープフルステークスで実感した彼女は、年明けから皐月賞へ直行することを発表し、その間は自分を鍛える時期に充て、今も猛練習を積んでいる。

 その代わりに出走してきたのがかつてファルコンと争ったメジロライアンだが、彼女の脚は2000mの適正距離であってもまだ育ち切っていない。差し合いの勝負となり、フラッシュがそれを制して、ライアンは2バ身差の2着となっていた。

 皐月賞には間違いなくあの二人が出てくるだろう。

 

「……それでは、チーム『フェリス』への合同インタビューを始めます。司会を務めさせていただく藤井です」

 

 URA専属となっている記者が今回の合同インタビューの音頭を取る。

 まず彼が大きな主題目を質問し、それに自分たちが答えてから、各記者がトレーナーやウマ娘に質問を入れてくる形式だ。

 その記者からの質問も、この場に同席している学園の広報担当の職員が聞いて、ウマ娘やレースに対して悪意があるとみなされた時点で、次回からその記者は呼ばれなくなる。

 国民的スポーツ、かつ相手はまだ未成年のウマ娘だ。彼女らのレースは社会現象として経済を回す大人気スポーツでありながらも、同時に彼女らウマ娘はまだ子供であり、社会的な配慮をされるべき相手である。

 街中でウマ娘に許可もなく直撃インタビューなどしようものなら法的に罰されるし、警備員も学園の周辺には多数配置されている。

 どうしても世間の期待が高ぶりすぎた結果、ファンが暴走してしまったライスシャワーの事件や、オグリキャップの密着取材など、そういった例もごく稀に起きてしまうのは事実として否定はできない。

 しかし、そういった過去の事例から人々は、記者たちは、ウマ娘達は学び、よりウマ娘達に負担がかからないように少しずつ調整をして、折り合いをつけていった。

 その折衝のなかで、常にシンボリルドルフや理事長が尽力しているのは、どの世界線でも変わらない。

 俺は彼女たちを心から尊敬している。

 

 閑話休題。

 

 さて、我らチーム『フェリス』に対して、まず聞かれた質問はこれだ。

 

「では──立華トレーナーにまず質問です。これからチーム『フェリス』の皆様は、どのGⅠに出走していくことになりますか?」

 

 藤井記者から聞かれたそれは、まさしくこの場に集まった記者たちが一番に聞きたかった事だろう。

 何故なら、俺は彼女たち3人のGⅠレースの出走登録について、出走できる全部のレースに申請を出している。

 一般的にティアラを狙うならティアラ3冠への申請のみ、クラシック3冠を走るならクラシック登録のみ、と申請を出す段階でおおよそどのレースを求めていくのかわかるのだが、うちのチームはそうではない。出られる可能性のあるレースにはすべて届け出済みだ。

 だから、もしかすれば皐月賞に3人が行くかもしれないし、桜花賞にいきなりフラッシュが殴り込みをかけるなんて可能性もある。

 今日これから俺が話す内容が、記者たちにとっては金を生む情報であり、発行する雑誌の一面に載るようになるだろう。

 

 ちなみに俺がここまで情報を出さなかった理由は色々ある。

 まず、早い段階でどのレースに出走するかを世間に知られたくなかったのが一つ。

 早く知られれば知られるほど、やはりそれに伴って記者の取材というものは増えていく。ライバルウマ娘にも対策を取られることになるだろう。

 特に取材のほう。記者からの取材はゼロではもちろん困るのだが、多すぎればそれはウマ娘にとって負担になりかねない。

 そういった過度な取材を防ぐために、大切な情報をギリギリまで隠す系のチームトレーナーだという認識を記者間に広めたくて、今回の発表は後に送らせてもらった。

 そのような認識が広まった方が、こういう場でまとめて発表がしやすくなり、記者からの取材も減っていく。また、出走するレースについても発表前に記事に「~に出走 か!?」などと書かれた時のダメージが減る。世間が「このチームはギリギリまで出走レースを確定させない」と理解してくれれば、そういった賑やかしのガセ記事を見ても大きな噂話にならないからだ。

 もちろん今回の世界線では、うちのチームのウマッターが相当なバズりを見せているので、そちらで発表時期について言及するのも忘れない。どの時期のインタビューで発表する、ということを事前に公開していれば、それに対して余計な記者からの取材も減るというもの。

 

 つらつらと述べたが、まとめると。

 これまでの世界線で俺が学んだ記者との適切な距離感を作るために、うちのチームはそこそこ秘匿主義、ということだ。

 

「そうですね…今日まで皆様方が一番気にしてらっしゃった点だと思いますので、今日はまずはっきりと、彼女たちの直近の出走レースについてお伝えさせていただきます」

 

 俺は改めて、肩に乗ったオニャンコポンが机の上に降りたので、その背中を撫でてやりながら質問に答える。

 ところで先ほどからなぜ俺の方にカメラを向けてバシバシ写真を撮っているのだろうか?

 これまでの世界線でもなぜか担当のウマ娘よりも俺の顔を取りたがる記者が一部いたが、今回はいつも以上に多いな。俺としては自慢の愛バ達をもっと撮影してほしいのだが。

 …まぁしょうがないか。オニャンコポンは最高にかわいいうちのチームのマスコットキャラクターだからな。記者だってこの忠猫の写真を使いたくなるよな。わかるよ。

 記者向けの写真写りのいい笑顔を作ってオニャンコポンを撫でながら、そうして俺は彼女たちの出走レースについて一気に伝えた。

 

「…まず、アイネスフウジンが桜花賞へ。そして、エイシンフラッシュとスマートファルコンは、共に皐月賞へ出走します」

 

「おお…!」

 

「まず本社に情報送れ!今日の一面準備させろ!」

 

「エイシンフラッシュさんとスマートファルコンさんは皐月賞で雌雄を決することになるんですね!?」

 

「アイネスフウジンさんはトリプルティアラを狙いに行くという事でしょうか!」

 

「ぜひ、出走前のお気持ちを…!」

 

「あーあーあー、ちょっと待ってください記者の皆さん。ワイも皆さんの気持ちはわかりますが一つずついきましょう。ウマ娘さんたちも一気には答えれんのですから」

 

 俺の言葉に記者全員がメモを飛ばしながら、恐らく今年一番のネタであろうそれを手元のメモに書きなぐり、LANEで本社に送る様子が見られた。恐らく明日の新聞の一面や、特報で出される週刊誌に記事が載ることだろう。

 明日の新聞と週刊誌全部買う。*1

 

 そして我先にと質問し始める記者さんたちを藤井記者が抑えてくれる。

 この人も、これまでの世界線で何度か見てきた顔だ。しかし、大体はURAの傘下の記者ではなく、向こう側のパパラッチに交ざっており、当人が熱をもって我先にと質問をしてくるタイプで、むしろ若干押しが強い側の記者だったことを覚えている。

 しかしこの世界線では、どうにもウマ娘を第一に考える人格者となっていた。URA専属記者となったことで何か指導でもされたか、それともこの世界線の過去に何かあったのか。

 わからないが、しかしこうして適切にインタビューを進めていただけるのはありがたい。少し落ち着いた記者たちから挙手が上がり、藤井記者がその中の一人を差す。

 

「では……トゥインクルさんからどうぞ」

 

「ありがとうございます、月刊『トゥインクル』の乙名史です」

 

 いきなりかァ~…。

 

 乙名史悦子記者。

 この人はどの世界線でもまったくブレない。

 個人的には熱情を持つ彼女は大変に信頼のおける記者であり、これまでの世界線でも何度もお世話になった。

 自分がウマ娘の為に語学勉強をしたいと洩らせば、それの手伝いをしてくれたりと、実に気配りのできる大人だ。

 一トレーナーと記者としては、かなり深い関係のお付き合いをさせていただいた世界線も多い。*2

 ウマ娘への想いを語り合いながら、一晩を共に過ごしたこともある。*3

 唯一の問題点は、ウマ娘の話になると急に暴走し始めて早口になる点だろうか。それがなかったら乙名史さんではないとも言えるが。

 

「GⅠレースに出走する皆様から、まず一言、意気込みを頂ければと思います」

 

 とりあえずまだ暴走の兆候は見せていない。俺は並んだ順番、フラッシュ、ファルコン、アイネスの順番に答えるように示して、それぞれ彼女たちが想いを口にする。

 

「…誇りある勝利。それを求めて、私は日本でも格式の高いクラシックのレースに挑戦することにいたしました。その相手がたとえ同じチームの親友であっても、です。ファルコンさんと走りたいという想いも以前からありましたので、全力で彼女とぶつかりたいです。もちろん、出走してくるであろう他のウマ娘の方々とも。応援よろしくお願いいたします」

 

「…私の芝のレースへの挑戦はこれで2回目になりますが、全力で走り切って、勝ちに行きます☆!フラッシュさんとは…さっき言ってくれたように、私も親友と思ってるし、ライバルとも思っているので、大きなレースで戦えるのが嬉しいです!ファル子の応援、よろしくね☆!」

 

「あたしは桜花賞へ…ライバルと思ってる、カノープスの二人とも雌雄を決して、そしてあたしの強さをファンのみんなへ見せてあげたいと思ってるの。それ以上に、ここまで育ててくれた家族のみんなへ見せたい。負けるつもりは一切ないの!応援、よろしくなの!」

 

 うんうん。

 みんな緊張しながらも、しっかりと思いを形に出来ている。

 俺はちらっと乙名史記者の様子を確認した。プルプル震えだしている。あ、これはまずいな。

 

「──素晴ら」

 

「素晴らしい意気込みだと思います。私自身も、彼女たち3名の強い想いを受けて、彼女たちのその夢、勝利の為に、己の全てをかけて力になれるように、導いていきたいと考えています」

 

 爆発寸前に俺がカットインを入れて、へ?と絶頂を迎える寸前で焦らされた乙名氏さんが俺の方を向く。

 この人の爆発癖はこれまでの世界線で嫌というほど味わっており、それを抑える術もある程度も身に着けていた。

 つまりだ。

 この人が言いそうな感想を、先に全部俺が言えばいい。

 

「特に、フラッシュとファルコン…この二人は、親友であっても、それでもお互いに勝ちたい、競い合いたいという想いを持って、皐月賞に挑みます。トレーナーである私がそれを否定しようとは一切思いませんし、やはりウマ娘とは、自分が望むレースに出て、そこで勝利を掴むことが一番嬉しいことだと考えているので。それは勿論アイネスもそうです。彼女たちがベストコンディションでレースに出て、そして悔いを残すことなく走り切れるように、私は彼女たちを全力で支援いたします。彼女たちがレースで見せる走りを、輝きを、ぜひご期待ください」

 

「……はっ、す、素晴らしいコメントをありがとうございました…!」

 

「いえいえ。彼女たち3人の想いを、いい記事にしてあげてくださいね。信じてますよ、乙名史さん」

 

 爆発が不完全燃焼で終わった乙名史記者が、それでも無意識でメモを取っていた手を止めて、お礼を述べて頭を下げる。

 そんな様子の彼女に、俺はウインクを返して笑顔を見せる。

 この人、暴走するところを除けば本当にウマ娘のことを考えるいい人だからな。笑顔も見せたくなるってものだ。

 何ならこの世界線でもうちのチームの番記者になってくれないかなとか思ってたりはする。

 しかし妙だな。俺の左側に座る愛バ3人のほうが急に気温が下がった気がする。この部屋の空調壊れてませんかたづなさん?

 

「…なるほど、噂通りの敏腕トレーナーやねぇ立華はんは。…っと、こほん。では、次の質問に入りましょうか。質問のある記者は挙手をお願いします───────────」

 

 そうして、つつがなくインタビューは進んで。

 3人の出走レースを、そして想いを聞き遂げた記者たちは我先にとそれぞれの会社へ戻り、記事を書きに走るのであった。

 パパラッチステークス開催!と毎回言いたくなるこの光景、結構好き。

 

────────────────

────────────────

 

 合同インタビューも終えて、俺は3月のトレーニングでもみっちりと彼女たちを鍛え上げた。

 4月から始まるクラシック期のGⅠ戦線。

 それに向けて、彼女たちが全力を出せるように。本気で、雌雄を決せるように。

 勝負に後悔が生まれないように。

 

 乙名史さんに言ったことは嘘ではない。俺は、俺の全てをかけて、彼女たちを輝かせる。

 その想いは、どの世界線でも失われることのない、俺の意志だ。

 俺の信じる彼女らもまた、俺のその想いに応えてくれて、さらに実力を、脚を磨いていく。

 コンディションは万全だ。

 

 

 春のGⅠ戦線が、始まる。

*1
!掛かり

*2
番記者になってもらった。

*3
飲み屋で。




なお桜花賞はナレ死です。アイネスすまんやで…







以下、この世界線の過去のバタフライエフェクト。


────────────────
────────────────

 これは、立華勝人がトレーナーとして中央に配属になるよりだいぶ前の話である。


「────────なにやっとんのやお前ら!!いい加減にせぇよホンマ!」

 ウマ娘のレース関係の記者である藤井は、トレセン学園の周辺で恥知らずにも一人の少女を囲むパパラッチ共に怒号を飛ばした。
 その中心にいるのは、今日本で最も名前の売れているウマ娘、オグリキャップだ。
 人気は留まるところを知らず、彼女のぱかぷちはもはや1世帯に1つはあるとニュースでも流れるほどの社会現象を引き起こしていた。
 葦毛の怪物。
 地方からやってきて中央で何度も激戦を繰り広げ、そして勝利してきた灰被り姫(シンデレラグレイ)

 しかし、その人気により週刊誌などの市営の記者が暴走を始める。
 どこぞの三流週刊誌が「オグリキャップ24時間密着取材!」などと謡い始め、実際に朝から彼女の寮の前にまで張り込みを行い、学園内にすら忍び込む有様。
 オグリキャップも、また周囲のウマ娘もそんな記者からの執拗なインタビューに疲弊してしまうほどだった。

「アホどもが…!お前らがどんだけ醜いことしとんのかわかっとんのか!?相手はアイドルでも何でもない!ただの女の子やぞ!?」

 そうして、藤井は記者の生き汚さ、人間の欲が行きつく先の醜さを見せつけられた。
 かつては、自分も向こう側に位置していたのかもしれない。
 美味しいネタを探すためにウマ娘に取材が出来る機会を必死に見つけ、そうして強引にインタビューをした経験も、何度もある。

 しかし、彼女らの織り成すレースを見て、その輝きにいつしか魅せられていた。
 彼女たちが全力でぶつかり合うレース、それ自体が尊いのだと。
 そうして、記者はその尊さを民衆に伝える役割なのだと。
 いつからか、そんな思いが芽生えていた。

 だというのに。
 ()()()()()()

「…オグリ、このバカ共は俺が抑えとるさかい、はよう登校せや」

「あ…ああ、すまない。恩に着る」

「気にするこたあらへん。…応援しとるで、頑張り」

 そうして、一喝してパパラッチ共の脚を止め、囲まれていたオグリを救い出して学園へ向かわせた。
 彼女はウマ娘である。本気を出せば、もちろんこんな浅ましい人間どもから逃れることもたやすいであろう。走ればいいだけだ。それで何人か人を跳ね飛ばし、逃げることが出来る。
 だが、世間から注目されすぎている今の彼女にはそんな強引な手段が取れるはずもなかった。
 何をしても、記事にされる。
 それは、アイドルである前に、ウマ娘である前に、一人の少女である彼女にとって、どれほどの苦痛であっただろうか。

「…クソが。とっとと()ねや!警察呼んでもええんやぞ!」

 オグリが行ってからようやく藤井は本心の不機嫌を露わにして、怒鳴り散らして三流記者共を帰らせた。
 しかし、これでは一時的なもので終わってしまうだろう。
 明日にはまた、彼女が記者に囲まれる、そんな日に戻ってしまう。

「…こら根本から変えていかんとアカンな……」

 藤井は、これまで己の仕事に誇りをもっていた。
 ウマ娘達の輝きをよりよい文章に起こし、最高の写真を撮り、そうして世間に過不足なく伝えるのだと。
 しかし今、その誇りが失われようとしている。
 これまで自分がやってきた…それすらも、この腐った澱みが続いていては侵される。記者全体が同類に思われる。

 これまででも、規模は違えど同じような事件は何度か起きていた。
 であれば、パパラッチの澱んだ膿が溜まってしまっている今、それをすべて切除し、そうしてウマ娘達が何の心配もなく競い合えるような、そんな関係を記者とウマ娘達の間で構築しなければならない。

「……まずURAか。以前から打診されてたあの話…しゃあない、受けるか。ついでルドルフに話通して…学園の今の理事長も消極的やしここらから変えんとアカンか……」

 決意を持った瞳で、藤井が携帯を取り出す。
 自分に出来ることを。
 それは小さい変化かもしれない、何も生み出せないかもしれない。

 でも、変えようと思ってなりふり構わずに行動した、ウマ娘達の姿を彼は知っていた。
 だからこそ。

「…はっ。あん時のルドルフの気持ちがよう分かるで」

 苦笑を零しつつ、世界を変える一歩目を。
 藤井の指先が携帯のボタンを操作する。
 それは蝶々の小さな羽ばたき。


 2週間後。
 トレセン学園周辺に警備員が配置され、記者の異常な頻度の取材が落ち着きを見せた。

 1か月後。
 ウマ娘とURA、および大手雑誌会社との間で条文が交わされ、ウマ娘の生活を害しない上での取材に留める内容の協定が結ばれた。

 3か月後。
 ウマ娘に対して未だに強引に取材する記者、および薄汚い恣意的な記事を上げていた木っ端の雑誌各社が次々と廃刊になり、務めていた社員及び記者でまともな者は大手雑誌会社に吸収された。

 半年後。
 オグリキャップ復活、ラストラン。
 神はいる。そう思った。


 だが、人を裁く神がいなくとも、人は己の行為を反省し、改善し、前に進めることを証明した。
 誰も知らない歴史の裏の一ページに、それはしっかりと刻まれて───────────




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