(ピコン)『今日からチーム『フェリス』にサブトレーナーがつくことになりました』
(ピコン)『以前からあるかも、と話していた件ですね。』
(ピコン)『このタイミング?』
(ピコン)『結構急な話なの』
(ピコン)『9月からトレセンに転入してきたトレーナーさんがつきます。実力は折り紙付き。マジェスティックプリンスがいたチームのサブトレーナーやってた人です』
(ピコン)『アメリカからですか。それはまた、すごいですね。』
(ピコン)『え、私のレース見て…ってコト☆!?』
(ピコン)『日本語大丈夫?ちょっと不安なの』
(ピコン)『日本語も話せるから大丈夫。みんな仲良くしてやってな。今日チームハウスで紹介するよ』
(ピコン)『はい、ご挨拶させていただきますね。』
(ピコン)『男の人?女の人?』
(ピコン)『いくつくらいなの?』
(ピコン)『俺より一つ下で、ウマ娘です』
(ピコン)『は?』
(ピコン)『は?』
(ピコン)『は?』
…というLANEのやり取りがあって、そうして昼過ぎのチームハウス。
集まった三人をソファに座らせて、俺は俺の隣に立つSSを彼女たちに紹介することにした。
なぜか3人から奇妙な圧を感じるな。どうしたんだろうか。やっぱり初めて見る相手で、しかもアメリカ出身の年上のウマ娘だ。緊張しているのかもしれないな。
うまい具合にアイスブレーキングしてくれるといいんだけれど。
「…というわけで、LANEでも紹介したけれど、今日からうちのチームのサブトレーナーを担当してくれる方です」『……SS、自己紹介して?』
『オーケー。…んー、あー……』
俺は英語で彼女に話しかけ、自己紹介をお願いした。
日本語を使うために一呼吸おいてから、彼女は3人を見ながら言った。
「…よォ、これから世話になるぜ。アタシはサンデーサイレンスだ。お前らよろしくなァ!」
「…ん?」
「…え☆?」
「…なんて?」
「……えーっと、SS?」
急な男言葉が繰り出されて、愛バたちも流石に困惑の表情を見せる。俺もだ。
どうした?ヤンキー漫画に出てきそうなくらい口が悪いが?
『…ちょっと、タチバナ。私の日本語、意味は間違えてないわよね?『こんにちは、よろしく』ってフレンドリーに挨拶したつもりなんだけど』
『いや、意味は間違っちゃいないが…SS、君、どんな日本語の覚え方をしたんだい?』
『オベから漫画やらアニメやら貸してもらって、それで掴みは覚えたけれど』
『そう…。…ちなみにタイトルは?』
『東○○リベン○ャーズとか』
『それで日本語教える奴いる?』
いねぇよなぁ!!?
オベ。オベイユアマスター君。どうしてその作品を選んでしまったんだい?
成程。どうやら彼女の中では特段口調を荒くするつもりなどなく、唯々フレンドリーに挨拶しようとした結果、ヤンキー言葉になったという事なのだろう。
どうして。
「…あー、みんな。SS…サンデーサイレンスはつい最近日本語を覚えたばかりでな。しかも○京リ○○ジャー○とかそういう漫画で覚えたらしくて、口調がそっちよりになった、ってことらしい。悪意は全くないから…うん。みんなからも挨拶してくれるか?」
「あ、はい。…いえ、日本語を覚える大変さは、私も理解していますから、そういうことであれば。…エイシンフラッシュです。サンデーサイレンスさん、よろしくお願いします」
「スマートファルコンです!よろしくね☆」
「アイネスフウジンなの。…サンデーチーフ、って呼んでもいい?」
「おー、フラッシュに、ファルコンに、アイネスだな。勿論名前は知ってるぜ。走りもレース映像は全部見てる。呼び方は好きに呼んでいいぜ」
「……SSが日本語に慣れるためにも、基本的にチームでは日本語で話そうか。…さて、SSのことについて、3人とも知ってる?」
俺はまずアイスブレーキングとして、彼女のことを3人に知ってもらおうと思い、問いかける。
これで知らないとなれば来歴を説明し、彼女がアメリカですさまじい成績を残したウマ娘だと知れば、敬意なども生まれるかと思っていたのだが。
「勿論、存じています。アメリカ遠征の時に3人で過去のアメリカ顕彰ウマ娘については調べましたので。その時にサンデーさんの戦績やレース映像も拝見しました」
「クラシック2冠、他にもGⅠ4勝…だったよね?サンデーさん。…ものすごいウマ娘さんだってことはファル子も知ってるよ」
「アメリカからのウマ娘って聞いたから誰が来るかと思ったけれど…まさか、生きる伝説が来るとは思ってなかったの。純粋にリスペクトなの」
「ハハハ。くすぐってェこと言うじゃねぇか」
どうやらアメリカに遠征の際に自分達でアメリカの有名なウマ娘を調べていたらしい。
ならば話は早い。ここにいるウマ娘の中で誰よりもGⅠのトロフィーを獲得しているSSの指導ならばすんなりと受け入れてくれるだろう。
「そう、すごい成績を残したウマ娘だ。だからこそ、彼女の指導論は俺たちチームの力になると思っている。体幹の重要さとかについても俺の論文に近い考えを持っているしな。…ファルコンには前に話しただろ。あのアメリカの人、SSなんだ」
「え☆!?5月ごろトレーナーさんが言ってた、自分とそっくりな論文ってサンデーさんだったの!?」
「おぉよ。あの論文に3万文字超で返事が来たときはアタシもビビったね。アタシと同じ頭おかしいやつが日本にもいるんだって興味が出て、そんでベルモントステークスのファルコンの走りを見てこいつだってなって、それでいてもたってもいられずにこうして日本まで来たってワケだ」
「彼女が日本に来た詳しい理由とかはおいおい話すとして…今日はサブトレーナーが増えたばかりだし、夏合宿明けで休んだ体をほぐすための運動だけに留めようか。本当は今後のレースプランのミーティングする予定だったけど、彼女に普段の練習の流れも教えたいしな。プランニングはまた明日にしよう」
改めて、俺は彼女の能力の高さについて太鼓判を押したうえで、チームの練習の一般的な流れを覚えてもらうためにも、今日はミーティングではなく練習に切り替えたいと相談する。
直近のレースに出走する予定は立てていないし、1日ずらすくらいなら影響は出ない。夏合宿後、5日ほど足を休めていた分のウォームアップも実際に必要なことではあったので、順番が前後しただけではある。
「いえ…もちろん、ええ。サンデーさんの成績については純粋に尊敬しますし、色々指導も受けたいですし…今日が練習に切り替わるのは問題ありません……が…」
「私も練習自体はいいけど……サンデーさん、ウマ娘なんだよね…じーっ………でっか…☆」
「あたしも体動かしたいし、それ自体はいいけど…サンデーチーフ、彼氏とかいるの?いや、特に深い理由はなくて純粋な興味なんだけど…」
そうして彼女たちの返答は、今日の予定が練習に切り替わること自体はOKというそれだったが、しかしなぜか俺と並んで横に立つSS、それぞれを交互に見やって、そうしてジト目を作り出した。ファルコンの最後のつぶやきは聞こえなかったことにしておこう。
なんだろう。俺たちに何かモノ申したいことでもあるのだろうか。
別にこれと言った心当たりはないのだが。
「…くっ、はは。なるほど、これがオベの言ってたやつか。ああ────安心しろよお前ら。アタシにその気はねェよ」
「え、何?SS、何か心当たりあるのか?」
「トレーナーさんはちょっと黙っててくれますか?」
「どうして」
「サンデーさん。今はそう言えるかもしれないけど、このトレーナーさんはヤバいよ?」
「余裕ぶってると一気にまくってくるの。逃げるなら今のうちなの」
話の流れがさっぱりわからないままに、しかしなぜだかSSに対して彼女たちの圧が強くなっていく。
どうした。喧嘩は駄目だよ?
しかしそんな愛バ達の圧をふんす、と鼻を鳴らして受け流し、苦笑と共にSSが言葉を続ける。
「わはは!いや、お前ら全ッ然人の事言えねぇだろうが。…あー、まぁあれだ。アタシは修道院育ちでよ。一応成人してからは修道会に入って、修道誓願してんだわ。ガッチガチなやつじゃねぇけどな」
「え。そうだったのか…いや、でもそれが今の話と何の関係が…」
「トレーナーはちょっと黙ってるの」
「どうして」
「修道誓願?…って、なぁに☆?」
「…簡単に言えば、シスターや神父さんなど、神に仕える人がその身を神に捧げ、貞淑を誓う事ですね。女子修道会にサンデーさんは所属しているのですね」
「そーゆーこった。だからそっちに狂うようなこたァねぇから安心しろ。お前らの邪魔はしねェよ」
話の流れはよくわからないが、とにかくSSが修道誓願を済ませていることを俺は理解した。
トレーナーとしての資格もありながら、修道誓願をしているとなれば彼女はシスターとしての資格も持っていることになる。
そういえば、彼女の現役時代の勝負服はシスター服を基盤としたものだった。
なるほど、生まれ育ちが修道院だというのであれば、あの勝負服も頷けるという所だ。
…結局それが今の話にどうかかわってくるのかがさっぱりわからないけど。
「…なるほど、納得しました。では、ひとまず…その話は終わりにしましょう」
「うーん、サンデーさんにその気がないって言うなら大丈夫かな☆それじゃ、これからよろしくお願いします!」
「安心したの。強敵現る、って感じだったから…心配ないなら今後色々レースの技術教えてもらうの!」
「おー。アタシもちゃんとサブトレーナーとして努める所存だからよ。お前らよろしくなァ」
「……………あ、なんかいい感じ?俺も話していい?」
彼女たちの間に流れる空気が緩んだのを見て、俺は願います!と手を上げて言葉を発する。
とりあえず発言は許してもらえたようで、改めて彼女のことをチームに紹介して、今日の練習について指示を出して、普段通りの一日の練習を進めるのであった。
しばらくはSSには俺の横でトレーナーとしての仕事を覚えてもらいつつ、雑用などもしてもらい、仕事の流れが分かってきたら愛バ達の個別指導の時の監督などをしてもらうつもりだ。
少しずつ、このチームに彼女がなじんでいけるように俺も尽力しよう。
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さて、そうして今日の一日の練習が終わり、シャワーを浴びて着替え終えた愛バ達がチームハウスを後にする。
「では、お疲れさまでした」
「お疲れ様でーす☆」
「お疲れなの!また明日ね、トレーナー、サンデーチーフも!」
「ああ、お疲れ様」
「またなァ」
彼女たちがチームハウスから去って行って、さて。
俺はSSに向き直り、さっそく今日の練習中に考えていたことを彼女に伝える。
「さて、SS。今日これから時間あるかい?」
「……あー。おい。タチバナ。二人きりなんだからとりあえず英語で話せ」
『ん…ああ、そうだね。いきなりずっと日本語っていうのも疲れただろう。楽にしていいよ』
『いや、そうじゃなくて……あー…もういいわ。で、何かしら。今日は予定はないけれど』
何やらSSがウマ耳をぴくぴくとさせ、なぜか扉の外を気にしていたが、なんだろう。何かの音でも聞こえたのだろうか?
しかし俺には何も聞こえなかったし、特段何も起きていないし、彼女もまぁいいということであれば。俺は話を続けることにした。
『ああ、せっかくこうしてチームで共にやっていく仲になったんだ。親交を深める意味でも、これから飲みに行かないか?もちろん奢るよ』
『ミ゛ッ』
ん?何だ今の音は?
俺はせっかくなので彼女のことをより知ろうと思い、そして成人済みのウマ娘でもあることから、一緒に飲みに行かないかと誘っただけなのだが。
まるで鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、そうしてなぜか頬が紅潮し始めるという珍しい表情をSSがしている。どうした急に。
『……ご、ほん!……いわゆる、ジャパニーズノミニケーション、というやつね?オベから聞いてるわ。ええ、ええ、もちろん!付き合ってやろうじゃないの!』
『大丈夫?ならよかった。店の予約取っておくよ。食べられない物とかある?…ああ、修道誓願してるんだっけ。もしかしてお酒自体駄目?』
『…ウチの宗派ではワインだけOK。あと…個人的嗜好で、肉全般がNGよ』
『了解。それくらいなら大丈夫だ』
俺は彼女の希望に沿った店を検索し、そうしてトレセン近くのベジタリアン向けの店を選んで2名で予約を入れる。
ウマ娘は人間と同じで基本的に何でも食べられるが、野菜が好きな子も多い。人参専門店などもあるくらいだ。
また、現在社会はベジタリアンの方向けのコースなどを置いてくれている店もある。俺が選んだのはそんな店で、ワインも注文できることも確認した。問題ないだろう。
『それじゃ、片付けしてから行こうか。チームハウスの戸締りについて教えるよ。後で合鍵も渡さなきゃな』
『…お手柔らかに頼むわよ』
お手柔らかも何も、そんなに戸締り自体は難しい事じゃないんだけどな。
俺はそうしてハウスの戸締りについて説明し、しっかりと施錠をしたうえで、SSを連れて飲み屋へ出発した。
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(嘘でしょ、嘘でしょ……こんなに早く誘われるの!?)
サンデーサイレンスは、内心の動揺を何とか誤魔化し切りながら、立華の後をついて歩いていた。
動揺の原因は、当然目の前の男である。
(オベが言ってた…日本では、男が女を呑みに誘うことは
サンデーサイレンスは頭がお花畑であった。
順を追って説明しよう。
まず、サンデーサイレンスはアメリカでは気性難として有名である。
これは事実だ。彼女はその育ちからくるプライドの高さから、同期のウマ娘に対しては積極的に仲良くしようとせず、媚びたりもしなかった。
形のゆがんだ脚や流星などを莫迦にするようなウマ娘にはレースでわからせてやったし、舐められないためにも愛想をよくしようとはせず、自分で何でもやってきたという自負がある。
その佇まいは彼女は気性難である、という流説を生み、そうして彼女もまたそれをちょうどよいと受け入れ、イメージが先行するままの、唯我独尊な存在として周囲から思われていた。
サンデーサイレンス自身もそちらの方が気楽だったため、そのままでアメリカでは過ごした結果、トレーナー資格を持ってサブトレーナーとして勤めていた時にも、あまりコミュニケーションを積極的には取らなかった。
トレーナーとしての手腕自体は高く評価されていたが、年若いウマ娘からすればすさまじい実績を持った気性難という噂のウマ娘がトレーナーになるという点で、委縮してしまうようなケースもあった。
それに該当しないウマ娘も当然いて、例えば同じく唯我独尊を貫いたマジェスティックプリンスなどがそれにあたる。しかしそれはあくまで少数派なので、アメリカでは彼女のトレーナーとしての能力を十分に発揮する事は出来なかった。
まぁ、ここまでは余談である。
重要なのは、サンデーサイレンスはこれまでの人生で、
彼女は修道院育ちである。
幼少時代から、周りにいたのは同じように修道院で育ったウマ娘か、年上の修道女か、あとは老人くらいの物。
学生時代も当然レースに出走するウマ娘であるからして、同年代の男の子などという存在は彼女の周りにいなかった。
トレーナー養成の専門学校時代もその気性難の噂が先行し、友人を殆ど作らなかった彼女は、その青春時代をほぼほぼレースか、修道院での見習シスターとしての業務に追われ、色恋話などは物語の上でのそれでしかなかった。
つまり、男性に対する免疫がゼロだったのだ。
実を言えば、朝からずっと、立華の前では彼女なりの虚勢を張り続けていた。
(今日、出来る限り隙を見せなかった…と思ってたのに!何!?あの3人が色に狂ってるのってもしかしてそういう事なの!?)
そんな彼女が、しかしトレーナーとして大成するという強い意志を持って来日し、立華の下で彼の指導を学ぼうと決意していた。
これ自体は本気である。サンデーサイレンスは、幼少期の
そこに邪な想いなどない。
いや、無さ過ぎた。彼女は純粋すぎたのだ。
初めての同年代、一つだけ年上の男性の下につくという彼女の人生で過去に経験したことのないシチュエーションであっても、その目的の為であれば我慢できた。
その内いい距離感を保って、自分も男性に慣れて、頑張れるだろうと思っていた。
男性とのコミュニケーションに関する心配事も、オベイユアマスターに事前に相談することで、心構えが出来ていると思っていた。
人当たりをよくするようにと彼女からアドバイスを受けて、気性難と噂されている自分がよりよいトレーナーになれるようにと尽力してくれたオベイユアマスターの事を、内心ではありがたいとまで感じていた。
飲みに誘われたらその後送りオオカミという文化がある、と彼女からも事前に聞いている。気を引き締めて掛からねばなるまい。
なお当然のごとくそれは誤った認識であり、わざと間違った知識を教えたオベイユアマスターによるサンデーサイレンスへの密かな報復であることを彼女は知らなかった。
さて、しかし相手はクソボケである。
ウマ娘の男性観を破壊することに定評のある男だ。
相手が悪かったと言わざるを得ない。
(大丈夫…ウマ娘に人間が敵うはずがないんだから…!ええ、そうよ。もし万が一そんな流れになったらぶん殴ってやればいい…!)
大丈夫、大丈夫…と内心で何度も唱えながら、しかし気楽そうに目の前を歩くこの男に、余りに自分が警戒心を抱けないことに逆に危機感を覚える。
今日一日、ずっと彼の隣にいたと言っても過言ではない。
本来であれば、男性への免疫がないサンデーサイレンスにとって、緊張と不安を伴うはずだったそれなのだが。
彼の態度は、言葉は、優しかった。
今日一日で、一言でも、自分の外見について侮辱するような言葉も零れなかった。
耳当たりがいい彼の声に、まるでウマ娘の為に生まれて来たかのようなこの男の雰囲気に、安心を覚えてしまっていた。
(駄目…駄目よ。こんなに早く絆されては駄目。適切な距離感を保たないと……そう、あの子たちにも申し訳が立たないわ…)
そうしてサンデーサイレンスは、前を歩く立華に気づかれないように、ちらりと後ろを振り向く。
そこには誰もいないように見えるが、しかし壁の向こうからちらりちらりと尻尾が見え隠れしているのを彼女たちは気付いてない。
先ほどチームハウスを出ていった、フェリスの3人だ。彼女たちが拙い尾行をしていた。
彼女らがチームハウスを出て行ってすぐに「時間ある?」なんて立華が聞くものであるから、それがウマ娘の耳を持つ彼女たちに聞こえてしまい、その後しばらく扉の前に3人が張り付いていたことをサンデーサイレンスは知っている。
目の前のクソボケは全く思い至っていないようであったが。
(勘弁してよね……勤務初日から随分なハードモードじゃない…!)
サンデーサイレンスは半ばヤケになったような気分で、初めて男と二人きりの飲みという戦場へと向かうこととなった。
なお、余談であるが。
立華とサンデーサイレンスが予約を取っていた店に入っていった後の出来事である。
「お二人が入っていった店…どうやら未成年立ち入り禁止、という所でもないみたいですね。乗り込みましょう」
「うんうん☆出来る限り近い席で、バレないところにしないとね…☆」
「大丈夫なの、この店前にバイトしてたことがあるから店長と顔見知りなの。裏口から行こう?」
個室の予約を取った二人に対して、アイネスの元バイト先であるその店に立華の愛バたる三人も裏口から乗り込んで、絶対に位置が見えない逆側の個室を3人で抑える形となった。
何も知らない立華と、内心でテンパりまくっているサンデーサイレンスと、掛かり気味の3人と、どうしろってんだという顔をするオニャンコポンの、それぞれの想いが渦巻く飲み会が始まろうとしていた。
修道誓願とか修道院絡みのところはふわっふわで行きます(鋼の意思)