【完結】閃光と隼と風神の駆ける夢   作:そとみち

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90 トレーナーズカップ ③

 

 

 

『それじゃ実況解説が変わりまして!実況はボク!トウカイテイオーと!』

 

『解説、メジロマックイーンでお送りしますわ!ゲート前に第三レースに出走するウマ娘の皆さまがお集まりになっていますわね!』

 

『第三レースは芝2000m右回りで行われるよー!一番よくある中距離レースって感じだね!ボクも走りたかったなー』

 

 俺はそんなアナウンスを耳に入れながら、しかしゲート前から目を離せないでいた。

 第三レースに出走する、サブトレーナー資格を持つウマ娘達。

 そのメンバーが、余りにも豪華過ぎて。

 

『さあ出走ウマ娘を一人ずつ紹介してイクモンニ!まずはやっぱりこの人から!!トレセン学園、初めてのウマ娘トレーナー!1番、ベルノライトだーっ!!』

 

『ベルノ先輩ですわね…戦績は地方メイクデビューで敗着のみとなっておりますが、しかしその後トレーナーを目指すことを決意。オグリキャップ先輩と共に中央トレセン学園に転籍し、それからは一人前のトレーナーになることを目指して日々努力されております。多くのウマ娘が求める勝利とは別の夢を選択された方ですが…その想いの強さ、そしてウマ娘がトレーナーになるという、新たな道を示した彼女の在り方には心からの敬意を抱きますわ。彼女がいたからこそ、こうしてウマ娘のサブトレーナーという制度も出来ています』

 

『だよねー!相談とかにも色々乗ってくれて身近な先輩って感じ!あっと、しかしなにやら顔色が悪いぞ!ダイジョウブー?』

 

「ひんひん……どうして私、こんなメンツと走らなきゃいけないのぉ……!」

 

 勝負服を持たないベルノライトが、学園指定の体育着にゼッケンをつけた装いでゲート前で天を仰ぎ涙を零していた。

 わかる。なにせ彼女はレースでの勝利を目指したウマ娘ではない。走りについては酷な話だが光るものは持っていない……

 ……いや以前メイクデビューやバレンタインで見せた逃げ足が出ればワンチャンあるか…!?

 ないか。周りが余りにも強敵過ぎる。オオカミの群れに投げ入れられたウサギに近い。強く生きてほしい。

 

「頑張れベルノー!!負けんじゃねぇぞー!!」

「ワンチャンある!ワンチャンあるって!」

「レースに絶対はないぞー!頑張れー!!」

 

「ふふ、凄まじいメンバーでなんとも羨ましいことだ。楽しんでな、応援しているぞ」

 

「ベルノが一着だとにんじんハンバーグなんだ!!勝てェーーー!!!絶対勝てェーーー!!!!」

 

 チームカサマツもよう応援しとる。

 先程、北原先輩が第一レースで敗北したため、オグリの飢えが高まっている。表情がなんというか、シンデレラグレイって感じだ。今彼女を走らせたら恐らくレコードペースで駆け抜けるだろう。怖い。

 

『さぁどんどん紹介していくよー!次は2番、チームスピカのサブトレーナー!異次元の逃亡者、サイレンススズカだー!!』

 

『正直、ここから解説は不要ですわね…この学園に彼女をご存じないウマ娘はいないでしょう。先日はチームフェリスのアメリカ遠征にも付き添い、スマートファルコン先輩の奇跡の一助ともなられております。勿論、わたくし達も日々お世話になっていますわ』

 

「ふー………早く走りたい…!」

 

 そして2番、サイレンススズカが勝負服に着替えて準備していた。

 異次元の逃亡者。その走りは他のウマ娘を置き去りにする。

 アメリカで俺がファルコンに教え込んだ『大逃げ』、その本家本元が解き放たれようとしていた。

 

『続けてイクモンニ!3番、ゴールドシップ!!黄金船の出航だー!』

 

『この方の破天荒さも学園で知らない方はいないでしょう。しかしそのサブトレーナーとしての知識は侮れませんし、他国の言語にも明るい方ですわ。ここ最近はヴィクトールピストさんの凱旋門挑戦に付き添っておられましたが、今日は日本に一時帰国されております』

 

「おー!!ゴルシちゃん脚もバッチリ作ってあっからよー!!今日は全員まとめて撫で切ってパンセポンセにしてやるぜぇーーっ!!」

 

 そしてスズカの隣、いつも通りの元気を見せて深紅の勝負服に身を包むゴールドシップの姿があった。

 フランスから遥々戻ってきたところだというのに大変に元気である。流石は常識の外にいるウマ娘だ。

 そのトモを見ればわかる。フランスで練習につきあう中で己の調整もしていたのだろう、脚が仕上がっている。彼女の気分次第だが、間違いなく好走が期待できる。

 ゲートさえしっかり出れば。

 

「スズカさぁーーーん!!けっぱるべー!!!にんじんハンバーグさらに勝ち取りましょうー!!」

 

「ゴルシー!!気合入れなさいよー!!」

 

「どっちも負けんじゃねぇぞー!!」

 

「先輩方、頑張ってください!!」

 

 スピカの面々も二人に熱い声援を投げかける。

 普段チーム内で世話になっているサブトレーナー、それを応援する声に熱が入るのも当然というものだ。なんだかんだゴルシだって頼れるやつだしな。

 

『ふふー、実況解説だからボク達は平等に紹介するよ!!次は4番!絶対の皇帝がターフに顕現!シンボリルドルフ会長だー!カイチョー!!頑張ってー!!』

 

『平等に紹介するんじゃありませんの!?ええ、しかし今回のレースの本命と言えるでしょう…GⅠ7勝、レースに絶対はないがこのウマ娘には絶対があるとまで言われた伝説です。日頃は生徒会長としてこの学園を支えてくれておりますが……明らかに、仕上げてきておりますね』

 

「…勇往邁進。今日は楽しもうじゃないか、皆。…皇帝の神威を見せてやろう」

 

 そして我らがトレセンが誇る生徒会長が登場だ。

 恐らく今日のこのレースをよっぽど楽しみにしていたのだろう。明らかに調子を整えてきているのが、レース前に気分を高揚させている彼女のその表情からわかる。

 ウマ娘にはピークがある。ドリームリーグのウマ娘は、そのピークをどれだけ長く保たせるかを求められる部分がある。

 しかし、ピークは一般的に長くは持たない……が、そんな常識にとらわれない理外のウマ娘だからこそ、ドリームリーグを走り続けられるのだ。

 今日のルドルフは走る。俺も思わずごくりと喉を鳴らすほどの完成度だ。

 

『続けていくよー!5番、またしてもチームリギルからの出走!幻の三冠ウマ娘!フジキセキだー!!』

 

『日頃は栗東寮の寮長をしていただいておりますわね。お世話になっているウマ娘の方も多いかと思われますわ…もちろん、その走りも凄まじいの一言。全く、リギルに所属しているウマ娘は化物揃いですわね』

 

『それボク達のチームにも言えることじゃない?』

 

「ふふ、今日の相手はポニーちゃんとは表現できないね。久しぶりに本気になりそうだ」

 

 強烈なフェティシズムを感じさせる、執事服にも似た勝負服を身にまとったフジキセキがゲート前で柔軟をしている。

 彼女は怪我によりクラシック期に辛酸を嘗め、しかし奇跡の復活を遂げてその後はシニア期を経てドリームリーグで走っているウマ娘だ。

 無論、強い。マックイーンの言う通り、リギルのウマ娘は全員が極めて高いレベルで構成されている。中距離よりかはマイルを得意としている彼女だが、他のウマ娘も一切油断はできないだろう。

 

「ルドルフー!フジー!アゲアゲで行きましょうー!フーー!!」

 

「タイマン張ってけー!!リギルここにあり、って見せつけてやりなぁ!!」

 

「会長、頑張ってください!会長が最強だと信じています!」

 

「フン……サブトレーナー資格を持っていないことが悔やまれるな。アンタ達と走ってみたかった」

 

「どっちも頑張るデース!!ハウディー!!」

 

「ハーッハッハッハ!!今日のこのレースは伝説になるだろうっ!!一瞬たりとも目を離せないね!」

 

「ふふ…どのようなレースになるか、楽しみです」

 

「スズカに負けちゃだめデスよー!!リギルの力、見せてやってくだサイ!!」

 

 リギルの他のメンバーも、それぞれ二人を応援していた。

 いや、どんな世界線でも改めて思うが。化物だなこのチーム。

 これを率いる東条先輩にはやはり敬意しかない。

 例えば俺が、この子たちを率いてくださいと言われたとしても、無理だ。どんなに経験を積んだとしてもできる自信がない。

 

『ふふー、盛り上がってきてるねー!続けて紹介してイクヨー!6番!チーム『ベネトナシュ』からミホノブルボンだー!』

 

『二冠ウマ娘にして、今は逃げ切りシスターズと言うウマドルグループにも所属されておりますわね。正確なラップタイムを刻むペース走法から、サイボーグという異名を持ちますわ。間違いなくこの方も有力ウマ娘です』

 

「ミッション確認…強豪を相手にしての一着。難解ミッションですが、必ず。チームの為に勝利を」

 

「ブルボンさん、頑張ってね…!!」

 

 続いての紹介はミホノブルボン。距離適性を乗り越え、あらゆる距離で活躍するウマ娘だ。恐らくは逃げの作戦で、スズカの後ろを走り最後に差し切るようになるだろう。

 チームメイトのライスも全力で応援している。この世界線では、彼女たちの絆はこれまで以上に強くなっている様子だ。はーてぇてぇ。

 

『続いて7番と8番!ナイスネイチャとイクノディクタス!!チーム『カノープス』から参戦だー!頑張れネイチャー!』

 

『イクノさーーーーん!!頑張ってくださいましーーーっ!!!かっ飛ばせーーーー!!!』

 

「いやアタシたちはまとめて紹介されるんかいっ!まーいいけどさぁ!はぁー…とんでもないメンツに囲まれちゃってるよ、もう……ま、こっちも欠片も諦めてないんですがね」

 

「マックイーンさん、応援ありがとうございます。しかしかっ飛ばすとして、何を飛ばせばよいのでしょう?」

 

 まとめて紹介されてしまいツッコミを入れるナイスネイチャと、眼鏡クイッとしながらマックイーンに返事をするイクノディクタス。二人とも、カノープスに所属するウマ娘だ。

 テイオーによって雑に紹介された二人だが、しかし彼女たちも一切侮れない。GⅠ勝利こそない物の、重賞で安定して上位に入着する。その安定感こそ彼女たちの最大の武器であり、そしていつでも一矢報いる事が出来る実力を持っている。

 伏兵。その呼び名がふさわしく、そして英雄を斃すのはいつだってそんな存在だ。

 

「ネイチャー!!イクノー!!がんばるもぉぉぉん!!!」

 

「にんじんハンバーグのためにも頑張れ~!えい、えい、むん!」

 

「二人とも頑張ってください!!!全力で応援しますよぉぉぉ!!!!」

 

「ササちゃん全力はやめて。僕の鼓膜が破れる…でも頑張ってくださいね!」

 

 誰かがGⅠに出走するときは必ずチーム全員で応援に行くほど仲のいいことに定評のあるカノープスだ。応援の声にも熱が入っている。

 応援の声がウマ娘に更なる力を与えることは常識だ。二人の好走に期待しよう。

 

『さぁ続いて9番!!チーム『レグルス』からメジロブライトだ!今回参加するサブトレーナーの中では唯一のメジロ家ダモンニ!』

 

『ブライトさんもGⅠ勝利経験のある高い実力を持つウマ娘ですわ…2000mという距離はどちらかと言えばステイヤーである彼女にとっては短いかもしれませんが、それでも十分な実力を持つウマ娘です。頑張ってくださいまし!』

 

「ほわぁ~…こんなにお強い方々と走れるなんて、楽しみですねぇ~……でも、負けませんよ~!」

 

「ブライトー!!ブチかまして行けェー!!レグルスの底力見せてやれェーーーっ!!」

 

「ブライトさん、ファイトです!頑張って下さぁい!!」

 

「ふぅン…勝機はある。今回出走するウマ娘達は皆シニア以上で、走るスパンが空いている…つまり、脚を完璧に整えられてはいない、隙はある。頑張りたまえ!」

 

 小内トレーナー率いるチーム『レグルス』からはメジロブライトが参戦している。

 彼女はどちらかと言えばステイヤー寄りだが、しかし2000mのGⅢ重賞でも勝利経験のあるウマ娘だ。中距離の適性がないわけではない。問題なく走り切れる。

 追込の作戦を得意としているため、恐らくはゴールドシップと鎬を削りあうだろう。スタミナは十分な二人が、どのタイミングで加速してくるか。他のウマ娘達は注意を切れない、共に走るだけでプレッシャーを与える存在だ。

 

『続いて紹介するのは10番、スーパークリーク!今日は気合入ってるよー!そして11番のタマモクロスもやる気満々だー!』

 

『先ほど、彼女たちのチームトレーナーである奈瀬トレーナーと小宮山トレーナーが好走を見せたばかりですからね。きっと奮起されているのですわ』

 

「えへへ…奈瀬ちゃぁん…見ててくださいねぇぇ~~!!!」

 

「スマン。ウチ帰ってええか?この状態のクリークと走りたくないんやが!?」

 

 続いて紹介されるのはスーパークリークとタマモクロス。

 先程第二レースで走った奈瀬先輩と小宮山先輩、それぞれのチームのサブトレーナーを務める、ドリームリーグのウマ娘だ。

 この二人の活躍については説明不要と言ったところだろう。しかし今回はスモック姿の奈瀬先輩が観客席から応援していることで、スーパークリークが魔王へと覚醒を果たしている。ステイヤー気質の彼女だが、間違いなく今日は好走を見せるだろう。

 

「クリーク、勝てば僕は今日の件で何も言わないことにする…!頑張れ!」

 

「タマちゃーん!!ぶち抜いてきなさーい!!」

 

 お二人も観客席からよう応援しとる。

 奈瀬先輩の己の身を投げうつかのような献身的な応援を受けてクリークがさらにやる気を見せている様だ。あれで掛からなければいいのだが。

 

『さぁさぁどんどん紹介していくよー!続きまして────────』

 

 その他にも、有力チームからそれぞれウマ娘のサブトレーナーがどんどん紹介されて行く。

 テイオーとマックイーンの解説を聞き、それぞれのウマ娘の熱意を感じ取りながら…俺は、強烈に、一つの考えが浮かんできていた。

 

 チームの、サブトレーナーをしているウマ娘。

 この条件に当てはまる、最近知り合った、あの子。

 そういえば────この騒動が起きる前から、姿を見ていない。

 

 つまり。

 日本のこのトレセン学園で、アメリカGⅠを蹂躙した彼女が、走る。

 

『────さあっ!最後のウマ娘の紹介になるよー!トレセン学園に最近赴任してきたばかりのトレーナーさんで、何とアメリカから転籍してきたウマ娘ダヨー!』

 

『ご存じない方もおられるかもしれないので、詳しく紹介いたしますわ。9月にトレセン学園に赴任され、あのチーム『フェリス』のサブトレーナーを務めておられます。これまでの戦績は…アメリカの中央レースを暴れまわり、アメリカクラシック2冠、GⅠ6勝…アメリカ年度代表ウマ娘と最優秀クラシックウマ娘のW受賞。…自分で解説しておいてなんですが、化物ですわね…!』

 

『見た目はカフェに似てるけど別人だからね!!では紹介しようっ!!チーム『フェリス』から、16番!!サンデーサイレンスの登場だーーーっ!!』

 

 観客席からの歓声に応じるように、そのウマ娘はやってきた。

 

「……S、S…!」

 

 俺は思わず声を上げる。

 

 そこにいたのは、修道服を模した漆黒の勝負服を身にまとった、サンデーサイレンスだった。

 

 現役時代の勝負服だ。激走を潜り抜け、スカートの所々がほつれてしまっているそれに身を包み、ゆっくりとゲート前に近づいていく。

 トレーナーになってからの彼女としか会っていない俺の眼に、今の彼女はまるで別人のように映る。

 奇跡の体現者。運命にかみついたウマ娘。

 アメリカのGⅠを蹂躙した伝説が、そこにいた。

 

「……ハッ。久しぶりじゃねぇか、この鉄檻も」

 

 懐かしむようにゲートを眺めて、SSが言葉を零した。

 そうして、しかし、彼女はそこで一つの動作を始める。

 

 それは、アメリカの彼女のレースを見ていれば、誰もが知っていること。

 彼女がレースを走る前、ゲート前で必ず行うルーティーン。

 

 静かに、芝の上に片膝をつき。

 両手を胸の前に組んで。

 

 ────────神に祈りを捧げる。

 

 修道服の、修道院育ちの彼女がするその祈りは、余りにも堂に入っていた。

 その厳かな振舞いは、現役時代も、そして今も、見ている者に必ず()()を強要する。

 

 観客席のウマ娘達が、全員、沈黙した。

 

 祈りの邪魔にならない様に。

 その、厳粛たる修道女に、敬意と畏怖を持って、この場にいる全員が沈黙し、レース場に静寂を生んだ。

 

 サンデーサイレンス(沈黙の日曜日)

 

 その名の通り、彼女は観客に沈黙を強制させる。

 

 

 数秒か、数十秒かと感じさせたその祈りを終えて、サンデーサイレンスが目を開き、立ち上がる。

 

『……っ、っと!凄いキレーだったね…思わず黙っちゃった!うーん、サンデーさんカッコいいー!!』

 

『ええ、確かな信仰を感じる振舞いでしたわね…すでに成人され、レースからも引退されているとのことですが…しかし、その佇まいは変わらずといったところですね。ファンになりそうですわ』

 

「ハハ、応援ありがとよォ!ロートルがどこまで走れるか…目ん玉かっぴらいてよく見ときやがれ!」

 

 祈りを終えたSSに、ウマ娘達から歓声が上がる。

 わかる。俺も彼女の祈りを生で見たのは初めてだが、めちゃくちゃ堂に入ってた。シビれた。

 これは全力で応援しなければなるまい。

 

「SSー!!かっこよかったぞー!!頑張れよー!!」

 

「サンデーさん、頑張ってください!」

 

「ぶっちぎっちゃえー☆!!」

 

「サンデーチーフの凄さを見せつけるの!!頑張れー!!」

 

「ッ…ったく、言われなくても頑張ってやらぁ。よく見とけよ、アタシの走りを」

 

 SSが俺の、観客席のチームメンバーからの応援に気付き、そうして苦笑を零して見せた。

 

 彼女が現役を退いてからそれなりに年数が経っているのは事実だ。トレーナーの専門学校を卒業するほどの時間がそこにはあり、現役時代の好走を見せるには難しい……と言う見解が一般的だろう。

 しかし、俺はサブトレーナーである彼女の監督をするにあたり、練習で併走も務めてもらうため、彼女の脚もしっかり診させてもらっている。

 そしてそれを見た俺の結論。

 

 ────────SSは、全盛期を保っている。

 

「…貴方と共に走れるとは光栄だ、サンデーサイレンス。今日は胸を借りさせていただくよ」

 

「あァ?…会長様よ、言葉と表情が全然一致してねェぜ。日本のそういう(へりくだ)る文化好きじゃねぇんだよ。本音を言いな」

 

 そんなSSに、ルドルフが声をかけに行ったのを俺は見た。

 宣戦布告…という言葉がぴったりだろう。皇帝の雰囲気を携えたルドルフの眼は、新たな強者との闘争にさらに燃え上がっている様だ。

 

「おや、気に入らなかったかな?ではお言葉に甘えて本音を零そうか。…個人的に、アメリカとは多少の確執があってね。引退した身に鞭打つようで誠に申し訳ないが、私の鬱憤晴らしに付き合ってもらいたい。───絶対を見せてやる」

 

「…ハハハハ!!最高だぜ!そうこなくっちゃあなァ!いいぜ、挑発に乗ってやる!芝とダートの違いとか、引退がどうとか、ピークがどうだとか…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。見せてやるよ、アメリカを蹂躙したアタシの走りを」

 

「…ああ、心が躍るな。今日はいい日だ。最高のレースにしよう」

 

 バチッ、と紫電がルドルフの足元から迸る錯覚さえ生むほどの、凄まじい圧のやり取りを終えて、ルドルフがゲートに入っていく。

 それを間近で受けた周囲のウマ娘達は、圧に怖気づく…()()()()()()()()()()()()

 何故ならそこに集う彼女たちもまた猛者揃い。

 誰よりも勝利を求める、強い意志を持つ才気煥発のウマ娘達。

 

 そんな彼女らが織りなす夢のレースが、始まる。

 

 

『順調にゲート入りが終わったよー!!それじゃはっじまるよー!!トレーナーズカップ最終レース!……スタートだぁ!!!』

 

 

貴方の夢は?

  • ベルノライト
  • サイレンススズカ
  • ゴールドシップ
  • シンボリルドルフ
  • フジキセキ
  • ミホノブルボン
  • ナイスネイチャ
  • イクノディクタス
  • メジロブライト
  • スーパークリーク
  • タマモクロス
  • サンデーサイレンス
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